鳥の鳴き声…「聞きなし」あれこれ
蓮実香佑著の『おとぎ話の生物学 森のキノコはなぜ水玉模様なのか?』 (PHP新書)が期待していた以上に面白い。
そもそも、小生は、前にも書いたように、「ほとんど、この題名、特に副題と、表紙の絵に惹かれて手に取ったようなもの」なのだが、同時に、キノコ類とかコケ類といった生き物への興味あり、おそらく、「森のキノコはなぜ水玉模様なのか」について、一冊を通じて語っているのだろうと思っていた。
が、違った。
まさに、「おとぎ話の生物学」で、「だれもが一度は読んだり、聞いたりしたことがあるおとぎ話や昔話――当たり前のことと思っていた事実を詳細に科学的に検証していくと、意外な真実がわかってきた」といった本なのだった。
参考のために、章立てを転記しておく:
1 桃太郎はどうして鬼退治に出かけたのか?
2 ウサギはなぜカメに負けたのか?
3 竜宮城はどこにある?
4 森のキノコはなぜ水玉模様なのか?
5 オオカミなんか怖くない?
6 スズメのお宿はどこにある?
7 タヌキは本当に化けるのか?
8 カチカチ鳥の正体は?
9 本当にキリギリスが悪いのか?
10 ジャックと豆の木は天に届いたのか?
11 世界で一番大きい生き物はなに?
12 カキの種に価値はあるのか?
13 かぐや姫はなぜ竹から生まれたのか?
← 蓮実香佑著『おとぎ話の生物学 森のキノコはなぜ水玉模様なのか?』 (PHP新書)
そう、「森のキノコはなぜ水玉模様なのか?」は、あくまで話題のうちの一つなのである。
まあ、それはそれとして、読んでガッカリはしなかった。
どの章も、自分の好奇心のためにも、要点だけでも抜粋してメモっておきたいような内容。
そんなことをするときりがないので、ちょっとコネタだけ。
「8 カチカチ鳥の正体は?」に、鳥の鳴き声について、「聞きなし」なる話が載っている。
「聞きなし - Wikipedia」によると、「聞きなし」とは、「聞き做し(ききなし)は、動物の鳴き声、主に鳥のさえずりを人間の言葉に、時には意味のある言語の言葉やフレーズに当てはめて憶えやすくしたもの」で、「意味のある言葉を当てはめる場合もあるが、広義には人間の言葉の発音に置き換えたものを指す」という。
それ以上の説明は当該の頁を見てもらうとして、さっそく事例だけ挙げてみる:
イカル 「お菊二十四」、「月・日・星」
ウグイス 「法華経」
ホオジロ 「一筆啓上仕り候」、「源平ツツジ白ツツジ」
ホトトギス 「特許許可局」、「テッペンカケタカ」
コノハズク 「仏法僧」
ヒバリ 「リートル・リートル・ヒーチブ・ヒーチブ(利取る・日一分)」
ツバメ 「ハーシーブイシーブイ(歯渋い)」
サンコウチョウ 「月日星、ほいほいほい」
以上は、「聞きなし - Wikipedia」に載っている例の数々。
恐らくは、それぞれの聞きなしに由来に関する伝承があるのかもしれない(未確認)。
上掲の「イカル」については、「しろく二十四」とか、「ホオジロ」は、「札幌ラーメン、味噌ラーメン」と、「ホトトギス」は「おととこいし」と、聞きなされていると、本書には書いてある。
さらに、「ヒバリ」は、朝、太陽が昇ると「銭くれ銭くれ」で、夕方になると「くれーくれー」と鳴きながら降りてくるという。
「ヒバリ」については、お話によっては「日一分(ぶ)、日一分、利取る、月二朱、月二朱」と太陽に向かって利息を叫んでいるという聞きなしもあるとか。
さて、本書から上記以外の「聞きなし」の事例を:
サンカノゴイ(ボウボウ鳥) 「ボウボウ」
コジュケイ 「ちょっと来い」
センダイムシクイ 「焼酎一杯グイー」
ニワトリ 「コケコッコー」
カラス 「カーカー」「アホウアホウ」「可愛可愛(かわいいかわいい)」
トビ 「海干(ひ)いよぉ」
これらのそれぞれに聞きなしに由来に関する伝承が書いてあるのだが、面倒なので転記は省く。
聞きなしに由来に関する伝承だが、時代や世相、話を作った人の心理事情なども影響しているのだろう。
例えば、「ハト」など、お腹が空いていると、お腹が「クークー」と鳴いているように聞こえてならなかったりするし、「カラス」など、何か失敗した時などは、「アホウアホウ」とか「カーカー」どころか、両者が相俟って「バカァバカァ」と聞こえて癪に障ってならなかったりする(小生だけか?)。
ちなみに、「8 カチカチ鳥の正体は?」だが、「ジョウビタキ」だとか。
著者によると、「この鳥は尾を振りながら、ヒツヒツ、カッカッカッと鳴く。このカッカッカッというくちばしを打ち合わせる音が、火打ち石をたたく音に似ていることから、「火焚き(ヒタキ)」と名づけられたのである」という。
参考にならない無関係拙稿:
「酔漢賦(鳥名篇)」
(10/02/11 作)
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