デューラーのモノグラム(サイン)の謎
過日、アルブレヒト・デューラー(Albrecht Durer 1471-1528)を扱った。
せっかくなので、ちょっと瑣末なことをついでにメモしておきたい(後日の調べもののためにも)。
→ 「キリストのモノグラム「ラバルム」。ギリシア語「Χριστος」での最初の文字「ΧΡ」の重ね合わせ」 (画像などは、「モノグラム - Wikipedia」より。詳しくは、「ルドルフ・シュタイナー 『内的霊的衝動の写しとしての美術史 』 (GA292)」を参照のこと)
彼の絵で(絵の本題には直接関係ないのだろうが)、つい気になったのは(というか、彼の絵を見るたびに気になってしまうのは)、絵の作者を示すサイン代わりの、AとDを組み合わせたあのマークである。
見ようによっては、デザイン化されたAは、まさに鳥居のように見え、そうした神社の鳥居の下にでっかい岩でも置いてあるようなこのマークは、専門的は、どう呼称するのか。
モノグラムでいいのかどうか、分からないが、本稿では、正式名称だという理解のもとに先に進む。
「アルブレヒト・デューラー-主要作品の解説と画像・壁紙-」によると、アルブレヒト・デューラーは、「画家名のAとDを組み合わせた史上初のモノグラム(氏名の頭文字など、文字を組み合わせたマークやサイン)を使用した人物でもある」という。
モノグラムなんて洒落た名称は知らなかったが、それらしいものは子供の頃から目に親しんできた。
それは(地方にあって少年時代を過ごした中年以上のものなら、大概の方は同じ事情なのではないかと思われるのだが)、読売巨人軍の野球帽などの正面ど真ん中に燦然と(?)輝く、あのYとGを組み合わせたマークである。
というか子供の頃はそれしか知らなかったし眼中になかった(YGマークは、今も使われているのだろうか)。
← ルイ・ヴィトン神戸・旧居留地店 (画像などは、「ルイ・ヴィトン - Wikipedia」より)
先に進む前にモノグラムについて、改めて説明を付しておきたい。
「モノグラム - Wikipedia」によると、「モノグラム (monogram) とは、2つ(まれに3つ以上)の文字や書記素を組み合わせた記号」で、「個人や団体の頭文字で作られ、ロゴタイプとして使われることが多い」という。
従って、「単に並べただけのものとは区別される」わけである。
若い人やブランド物が好きな方には、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)などの、小物などに付されたあのマークのほうが馴染み深いか。
好きな方には言うまでもないだろうが、「創業者ルイ・ヴィトンのイニシャル「L」と「V」を重ね合わせた幾何学文様をキャンバスに使用している」わけである。
あるいは、「モノグラム - [ファッション用語集]All About」によると、「手拭や浴衣にデザインされる、日本での歌舞伎役者の家印(いえじるし)も同様に「モノグラム」と呼べるかもしれない」などとあって、素直に納得していいものやらどうやら。
まあ、今はこの点にはこだわらずに通り過ぎる。
→ アルブレヒト・デューラー作『1500年の自画像(28歳の自画像)』 (画像は、「アルブレヒト・デューラー-主要作品の解説と画像・壁紙-」より)
さて、それにしても、「画面にモノグラムを加えるのはデューラーが歴史上最初の人だったといわれています」などと、多くのサイトでこのように説明されていて、これは定説のようだが(小生には確かめる術も余裕もない)、では、デューラーは何ゆえ、どういう切っ掛けでこういったモノグラムを付したのだろうか。
そもそもモノグラムを発想したのは誰なのか。
というのも、絵画の画面にモノグラムを使ったのは、デューラーが最初といった説明は、少なからぬサイトで散見されるとして、モノグラム自体を着想したのはデューラーとはされていない(ように読める)。
「モノグラム - Wikipedia」でも、肝心の説明が全く施されていない。
尤も、「「モノグラム」を初めてデザインした事でも有名」といった説明をされているサイトもあって、紛らわしい。
← 上掲の「アルブレヒト・デューラー作『1500年の自画像(28歳の自画像)』」から、モノグラムを拡大してみた。
今は、調べる時間がないので、ある程度、推測でメモしておくが、デューラーが作品の署名としてモノグラムを使うようになったのは、やはり、キリスト教の影響が大きいのだろう。
但し、デューラーのキリスト教とは、当時の権威あるカトリックではなく、彼が心酔したマルティン・ルターのキリスト教である。
「ルドルフ・シュタイナー 『内的霊的衝動の写しとしての美術史 』 (GA292)」にて、紀元後数世紀の時点でのモノグラムの原型的な像(写真)が載せられている。
こうした宗教的背景や信仰がデューラーのモノグラムの淵源として考えられるのかもしれない。
しかし、現段階では、あくまで推測・憶測に留まることを銘記しておく。
(10/01/11 作)
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