« 雲に覆われた真夜中の明るさ | トップページ | 我がタクシードライバー時代の事件簿(5…後篇) »

2009/11/23

我がタクシードライバー時代の事件簿(5…前篇)

 バイクも含めて、小生は事故の経験はあまりない。
 しかし、皆無、というわけではない。
 ライダー歴は35年となったし、車の免許も今年で28年。

 タクシードライバーとしての営業中の事故も、接触程度の小さなものが何度か、経験している。
 今日は、その中でも警察を呼ぶことになった、悪質な(相手方が!)ケースについてのメモを再掲する。
 細部を弱冠、編集したが(バイクでの事故など、本題に関係ない部分を略した)、原則として、メモ書きした当時のままの文章である。

 衝突でボンネットなどがへこんでいる様子や、警察官達の現場検証の様子を写した写真があったのだが、画像は呼称してしまった古いパソコンの中(ハードディスク)で、掲げることができないのが残念である。


小生、事故の当事者となるの巻(前篇)

(前略)
 とある秋の日(15日)の夜11時10分頃、事故に遭った。
 タクシー営業中の事故である。
 場所は、祝田通りと内堀通り、そして晴海通りが交差する、祝田交差点である。とても大きな交差点。脇には日比谷公園。あるいはお堀、皇居の一角。警視庁もやや遠くに見える。

 事故は、その交差点のど真ん中で起きた。

 小生は、お客様をお乗せして、祝田通りを霞ヶ関から皇居の方向へ向っていた。
 祝田交差点で直進しようと、信号待ちをしていた。
 中央の分離帯脇の車線にいる。信号が青に変わった。左右の安全確認。
 どんな場合でも、スクーター(オートバイ)に乗っている場合でも、安全確認は徹底してやる。これは長年のライダー生活、ドライバー生活から得た鉄則である。誰かに言われてやっていることではない。骨身に徹して、必要だからやっていること、既に本能の域に習慣が染み込んでいる。

 安全確認をしたら、すぐスタート。逆にグズグズするのも危険である。後ろから突っ込まれる恐れがあるからだ。右方向からも左方向からも車のやってくる様子はない。
 小生は安心して、しかしそれでもするするとスタート。すると、交差点のど真ん中直前で左方向から、つまり、三宅坂方面から銀座方向へ、内堀通りの中央側の車線を車がやってくるのが見えた。
 信号は赤のはずなのに、止まるどころか減速する気配が微塵もない。

 えっ、どうしてそっちから交差店内へ車が来るの、さっきまで視野の中になかったじゃない、信号は? 間違いない、当方が青だ。もう避けられない。衝突必至。

 衝突が不可避と悟った瞬間、小生が考えたことは、衝突のショックを最小限に減らすことだった。どうせ、ぶつかるものであっても、その衝撃を最小限に減らすことは可能なのだ。

 問題は、ぶつかるとして、ぶつかる衝撃を最小限に減らすため、今、踏んでいるブレーキを更に思いっきり踏み込むか、それとも加減するかの判断だった。

 小生は、後部座席にお客様が乗っていることを鑑み、可能な範囲でブレーキの踏み込みを加減すべきと判断した。本当のパニックブレーキになると、相手の車にも打撃は大きいが、自分の車も急減速の勢いが強く、下手すると後ろのお客さんが、前の座席に頭をぶつける、あるいは、前の席を越える可能性だって、皆無というわけではない。
 ぶつかるのは仕方ないとして、小生は、お客さんの体が振られる度合いを可能な範囲で最小限にすべく、ブレーキを加減したのである。

 ギリギリの状況の中で、それなりに冷静に対処しえたと思う。これは、ドライバー生活より、ライダー生活で得た教訓が大きい。どうにもブレーキが間に合わない状況に遭遇しても、決して目を閉じてはいけない。最後の最後の瞬間まで、何が起きているかを見る! その中で最後まで諦めることなく、ハンドルを切るか、ブレーキを加減しつつ(!)駆使するか、残された僅かな工夫の余地であっても、その乏しい可能性を探る。

 とにかく、可能な限り最後まで見るということが大事なのだ。
 突然、前の車がガソリンスタンドやファミレスに車を突っ込むため曲がるかもしれないし、不意に止まるかもしれない。何が起きるか分からない。それでもタイヤが二つしかないオートバイで、事故を回避すべく努力するのだ。
 オートバイの場合、悪いのが相手であっても、被害の程度は車よりはるかに大きい。車にとってただの接触でも、オートバイ(ライダー)には致命的ということも十分にありえるのだ。

 峠道でのパニック。雪道でのスライディング。雨の日のマンホール(雨の日のマンホールは路上の危険物の最たるものだ!)。雨の日のヘルメットの視界の悪さ。雨の日の工事現場の道路の上の鉄板。自転車の予想外の走行。歩行者。
 路面の小さな穴(これがバカにならない。十センチ巾ほどの穴でも、名刺大ほどの接地面しかないオートバイには、車にとっての蓋のないマンホール以上の脅威となりえる。

 ドンッという鈍い音が夜の皇居のお堀前で響く。
 交差点のど真ん中での衝突。
 激しい衝突ではなかったが、事故は事故である。
 相手の車のフロント部分の右側面に小生の車(タクシー)のフロント左部分が軽くぶつかっている。

 さて、小生のタクシーは、交差点のど真ん中で止まるわけにもいかず、車は動くようなので、交差点を真っ直ぐ渡って内堀通りの曲がり角の先に止めた。相手方も、最初心配したようには悪気のある相手ではなくて、逃げる素振りもなく、大人しく小生の車の後に停車させた。

 それからが、ひと悶着。彼は開口一番、僕が悪いんですから、信号を見落としたんですから、と、やたらと低姿勢。恐縮振りを示している。
 そのうちに、酒を飲んでいると自分から白状。ばれると困るから、示談にしてくれと頼んでくる。

 が、自分と相手の二人だけなら、せめてお客さんが乗っていないのなら、なんとかなるかもしれないが、そうはいかない。お客さんに聞いたところ、首が変だとも言っている。
 小生は携帯を持っていないし、近くに公衆電話もないので事故の相手側に携帯を借りて会社に電話。あれこれ、指示される。案の定、警察を呼べ、お客さんが怪我しているのなら、救急車を呼べ、必要な事項を調べてメモしておけ、などなど。

 ひと悶着あった挙げ句。小生は警察を呼ぶと相手方に宣言。

 これからが情ないことに。上記したように小生は携帯を持たない。だから、相手方に借りて電話するのだが、その110番しても、繋がらない。彼にさせても繋がらない。どうして? である。そのうちに、お客もいらいらしている。オレは急いでいるから、できるだけ早く帰りたいのだと言い張る。
 仕方なく、小生は、お客さまにお願いして、お客様にお願いして、お客様の携帯で110番へ通報してもらった。

 警察沙汰になると決まった時点で、相手方も開き直っている。
 自棄というか、不貞腐れ気味。お客さんも苛立っているのが分かる。
 パトカーの来るまでの時間が長く感じられる。

 そういえば、示談の真っ最中にパトカーがこちらの交渉の様子や事故の程度などを観察しつつ、傍を通り過ぎたのだった。
 パトカーは、こんな時に限って、なかなか来ないんだね。

 相手方の男性とお喋り。普段は呑まないんだけどね、って、ゴールド免許だった。必要事項を事故報告メモ書に書き込んだり、いろいろ関連事項を思いつく限りメモする。無論、会社へも連絡する。

 そうこうするうちにやっと警察が来た。
 で、警察官が相手方の男性の傍に近づいて、直感したらしい。
 そう、酒のことである。
 いやに低姿勢だし、何かあると気づいたのだろう。それに、小生は華が悪くて臭いには鈍感なのだが、警察官はすぐに酒の臭いに気づいたらしいのだ。
 彼をパトカーの中に導き(あとで知ったのだが、アルコールの検知をしたらしい)、取調べというか、事情聴取。小生は、その間、お堀を眺めたりして、ボンヤリ立っているしかなかった。しかし、お客さんのこと。彼は、早く帰りたいという。怪我も明日、必要があったら病院に行く、必要があったら連絡する、という。

 で、警察官に聞くと、名前とか聞いたら、返してもいいよ、という。なので、他の空車のタクシーを捉まえ、乗り換えていただく。ここまでのメーター料金は、小生が立て替えることに。
 さて、警察官は、現場検証をするので、応援を二名ほど寄越して欲しいと無線で連絡している。

                             (この稿、続く。)

                              03/10/16

|

« 雲に覆われた真夜中の明るさ | トップページ | 我がタクシードライバー時代の事件簿(5…後篇) »

タクシーエッセイ」カテゴリの記事

ドキュメント」カテゴリの記事

思い出話」カテゴリの記事

旧稿を温めます」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/52847/46771693

この記事へのトラックバック一覧です: 我がタクシードライバー時代の事件簿(5…前篇):

« 雲に覆われた真夜中の明るさ | トップページ | 我がタクシードライバー時代の事件簿(5…後篇) »