我がタクシードライバー時代の事件簿(1)
タクシー客で何が困る、迷惑かというと、酔漢、特に車中で吐き気を催す人。
後部座席で客が「おえっ!」なんてやっていると、気が気でない。
無論、そんな時は、備えてあるビニールの袋を渡すし、客が要望すれば(時には、しなくても)、車を一旦、止めて、道端での始末と相成ることもある。
← 「タクシードライバーの推理日誌スペシャル「東京~宮崎日向灘、殺人画の乗客!!慰安旅行で巻き込まれる謎の連続殺人!?再会した女に秘密あり」」の一場面 (画像は、「どうせ誰も見てませんからっ☆★ 「タクシードライバーの推理日誌スペシャル」(土ワイ)」より)。
が、中には、いきなり、一気にゲボッとやっちゃう客も居たりして、ただただ迷惑なのである。
車の中で店を広げられてしまった場合、お客さんが降りた後、車を会社か何処かの公園へ回送し、車の清掃である。匂いは一時間じゃ、消えない。ビニールマットやシーツなどの清掃にも手間取る。マットの下の床もちゃんと洗わないといけない。
洗うといっても、要は用意してある古い手拭い(雑巾)などで、せっせと拭い去るしかない。
建前としては(会社の推奨として)、迷惑料として、二時間の営業ロスということで、数千円を戴くことになっているが、大概の客は酔っていることを理由に(しかし、実際には吐いた段階で意識がはっきりしているのだが)、あとは野となれ山となれで、運賃だけ払って、さっさと立ち去っていく。
案外と足どりはしっかりしていたりする!
特に新人時代、そうした酔漢の客を乗せる仕儀に相成ったものだが、そんな中、忘れられない客がいる。
今回は、その話をメモしておく。
早くも十年以上の歳月が経過したが、昔、「和歌山毒物カレー事件」があった。
「和歌山毒物カレー事件は、1998年7月25日夕方、和歌山県和歌山市の園部地区で行われた夏祭において、提供されたカレーに毒物が混入された事件」で、林眞須美が逮捕され、状況証拠で死刑が確定してしまった。
この事件については、今はコメントしないが、実は、この事件のほんの一週間ほど前だったか、小生の身近で、この事件が発生した時、ああ、あんな風だったなと思い返される小さな<事件>があった。
といっても、要は、夜半を回るかどうかという刻限、我がタクシーに乗った酔漢が帰宅の途中、吐いたものの、やがて我がタクシーの車内で昏睡状態に陥り、帰るべき家の住所も分からず、困ってしまったといったもの。
乗った時点で既に酩酊状態で、飲み会で一緒だった同僚か上司が、頼みますなどと、我が車に無理矢理、押し込んでしまったもの。
連中にすれば、厄介払いができたというくらいのものか。
→ 富山は、このところグズついた天気が続いている。今朝(未明)も雨の中の仕事だった。ほぼ真っ直ぐ、かなり近くに鮮烈な稲光と猛烈な雷鳴を目撃。真っ暗闇の中での雷光だけに、眩しいというより、恐怖感を覚えた。風も急に強くなって、なかなか辛い仕事となった。この日中の青空もほんの暫しで消え去り、雲に覆われてしまった。今日は、病院でインシュリン注射の練習。母の退院に向けての準備作業の一つ。
酔漢といっても、実はうら若き、可愛い、小柄な女性。
なので、男性客なら、車内で寝込んでも、体を揺すって起こすこともできるが、女性客だと、体どころか、衣服にさえ触れるわけにもいかず、大声を張り上げて起こすしかなく、なかなか難しいのである。
車を何度も止めては、行き先を聞き、途方に暮れつつも、ようやく住所を聞き出し、家に付いたが、車内で昏倒しているような状況で、仕方なく家人(女性の母親というより、祖母ほどの年代の方だった)を呼び起こし、二人して、なんとか娘さんを玄関の中まで運び入れたのだった。
酩酊を過ぎて、意識朦朧の姿、死ぬほど吐く姿…。
仕事柄、酔漢には何度も出くわしたけれど、あれほどひどい状態の客には、二度と出会っていない。
そんな<事件>があって間もなくの毒物カレー事件で、テレビ画面で苦しそうに吐く姿を映され、直近のその女性の姿とダブって、妙に印象的なのである。
(こんな酔客を乗せてしまったことで、営業的に数万円の損害である。稼ぎ時がフイになってしまったのだ。こんな場合は、車内でゲロを吐かれた時以上に悲惨で、ただただ泣き寝入りである!)
(09/11/14(5) 作)
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