バイクとて風が友とは限らない!(後篇)
雨の日、まして風が吹いているとなると、普段以上に気を使う。
雨がしっかり降っているときは、新聞を一部一部、ポリエチレン(ビニール)の袋に詰める。
これなら、少々の雨なら、濡れても平気。
→ 今朝(9日)の「クレオメ(西洋風蝶草)」。台風の風になぎ倒されて、花々は千切られ、見るも無惨な光景。我が家の庭の多くの草花が哀れな末路を辿ってしまった。…それでも別の、何かしらの草花が咲いてくれることだろう。
ところで、台風の風で我が家にとんでもない<事件>が発生していた。
もう少しで大惨事になるところだった。
樹高が十メートル以上もある、樹齢数十年の杉の木が倒れたのだ。
杉の木は防風林の役目を担ってきた。つまり、すぐ脇には我が家の台所、細い道路を挟んでは隣家の居間。事故の一歩手前だったのだ。
その詳細は、画像も含め翌日、報告したい。
とはいっても、雨で困ることもある。
バイクは素手で運転している。
家の前までは新聞が濡れていなくても、最後には一部ずつ取り出して家の玄関付近の郵便受け(投函口)に差し込む。
だから、走行中に濡れた手でも大丈夫なようにビニールの袋に入っていると、安心して新聞を手に持つことができるわけだ。
雨が最初から降っているときは、経費の節減に煩い所長(店長)も、新聞全部をパックすることを大目に見てくれる。
困るのは風である。
後の荷台の新聞は、ゴム引きのビニールカバーで覆うからいいとして(当然、ゴム紐でしっかり縛る)、前の籠には、薄いビニールのパックで詰め込んだ新聞を覆ってあるだけ。
風が吹くと、覆ったビニールカバーが吹き流されて、籠の中の新聞が雨の直撃を受けることになる。
ビニールの袋がパカッと開いたりしないよう、ビニールの大きな袋の口の部分の端っこをハンドルを握る手に持って、走行する。
さて、そんな細かな工夫をしつつも、とにかく今は風雨が問題である。
幸い、当日は、雨のほうは実際にバイクを走らせて間もなく、小降りになってくれた。
その代わり、風は猛烈。
ただでさえ、バイクが走行することで風を巻き起こす。
そこへ台風の風。
小生が受け持つ地区に辿り着くまでは、両側で四車線の県道を走るしかない。
吹きっ晒しを延々と走る。
小生は、営業所を出て間もなくして、風にバイクが煽られ左右に振られて、もう、怖くてお家(うち)に帰りたくなってしまった。
ビビッてしまっていた。
それでも、ライダー生活29年の経験のある小生である。
雪道を走ったこともあるし、台風と競争しながら東名を走ったことがあるし、雨の中、数百キロを走ったことも何度もあるし、パンクしたタイヤのまま東名を二百キロほど走行したこともある(その時は小雪が降っていたっけ)。
地上を走るヨットと化したバイクでの営業。
負けてたまるか、である。
風に負けないためには、気を確(しっか)り保つこと。
風に降られても、ライダーが地上に対し、直立していれば、また目線を目標に向けてまっすぐ向けているなら、決してバイクは倒れない! そう、自分に言い聞かせて走り続ける。
そして、やっと、一軒めの家に辿り着いた…。
強風(突風の連続のような嫌な風)のため、停めておいたバイクが倒されたり、あるいはサイドスタンドごと、バイクが風でズルズル引きずられていったり。
怖いのはカーブである。
何たって、新聞配達で、住宅街を縦横無尽である。
カーブの連続といって過言じゃない。
バイクが直立していたら、道路に垂直を心がけて走ればいいが、カーブだと、そうはいかない。車体を斜めにする、すると、風が勝手にもっと倒そうとする。
風が勝手にもっとカーブさせようとして、溝(どぶ)や電信柱、塀や柵にバイクを直撃させようと風が意地悪しているみたい。
…というわけで、台風の影響の風(雨)という憂き目に遭いながら、普段より一時間、長い時間を費やしての死に物狂いの仕事となったのである。
ちなみに、世は未だに自己責任という為政者や経営者側に都合のいい発想の蔓延っている時代である。
強風との戦いで増えてしまった一時間の労働時間は、サービス残業であり、一切、お手当は付かない。
責任は課されるが、だからといって褒められもせず、家族も含め誰にも労(ねぎら)われることもなく、ただ仕事を遣りきったという男の意地と自己満足だけで家路に着いたのだった。
真面目なものが損をする?
何か変、と思うのは小生だけだろうか。
新聞配達員(アルバイト)として末端の現場で働いてみて、理不尽とまでは言わないが、容易には承服しかねる点が少なからずある(し、経験してきた)。
機会があれば、立派な社説を掲げる新聞社の末端の現実の、その一端くらいはメモしておきたい。
(09/10/08 作 画像のみ9日に追加)
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コメント
「負けてたまるか」 - 渥美清の往年のドラマみたいですね。新聞業界は出版の中でも厳しいでしょうね。さらにプリント媒体を配達するとなると何時まで続くかも分かりません。
タクシー業界よりも斜陽でしょうから労働条件もさらに厳しいことと思います。
投稿: pfaelzerwein | 2009/10/10 04:22
本当に大変なものなんですね。想像以上。
闇と風雨の中、クルマの往来のある四車線道路を何キロも走るなど、僕には怖くてできそうもありません。
洩れ聞くところの新聞社社員の高給厚遇、あるいはその無知傲慢偏向その他を思うと、僕も腹が立ってきますよ。
「メモ」を待っています。
投稿: 石清水ゲイリー | 2009/10/10 09:20
pfaelzerweinさん
強風は、バイクの強敵です。
雨や雪より、かも。
傘でもチェーンでも防げない。
ひたすら精神力が肝要かと。
新聞(書籍も次第に)は、次第に電子化されていくのかな。
アナログ人間世代が減っていって、デジタル人間が増えるからには、紙の新聞は段々減っていくのでしょうか。
音楽でさえ、ダウンロードの時代ですものね。
ま、どっちにしたって、先のことを見越して仕事しているわけじゃない。
当面の生活しか見ていないのです。
投稿: やいっち | 2009/10/10 13:21
石清水ゲイリーさん
台風のもたらす風(や雨)と闘いつつ、バイクを駆るのは、想像以上に大変です。
掛け値なしに死に物狂いでした。
販売店(に限らないでしょうが)、社員とバイトの待遇は雲泥の差です。
雨具もヘルメットも自前。
通勤手当は出ない。
サービス残業、めいっぱい。
うまく配って、当たり前、ミスしたら叱られるだけ。
街中で新聞などを配達するアルバイトを見かけたら、励ましてやってください。
尤も、多くの方々が目覚める頃には、配達は終わって、皆さんは、ポストに投函されている新聞を何気なく目にするだけでしょうが。
投稿: やいっち | 2009/10/10 13:26
台風の中でなんの手当てもなしに
就労というのはやはりおかしい
ですよね!<`ヘ´>
---------------
確か、
今回の台風では倒れた木に衝突して、
お一人亡くなっていますね?...(T_T)
下手をすると労災すら認められない
のかもしれないのですよね?...{{>_<}}
投稿: Kimball | 2009/10/11 12:54
Kimballさん
先の台風でのバイクの事故死、他人事ではなかったです。帰宅する車の中で、ラジオのニュースで聞いて、ショックでした。
社員だったのか、バイトだったのか、会社(新聞社の系列)は何処だったのか、営業所の責任者はどんな人間なのか、それらで、随分と処遇が違うでしょう。
我が営業所は…、ああ、考えたくない!
投稿: やいっち | 2009/10/12 09:58
弥一さん、古紙の回収はやられているのですか?家の方は朝日新聞は古紙回収の日にちが決まっていてトラックが来ますが、毎日東京新聞は配達員が回収します。今日電話をかけて回収を頼み、ついでに美術チケットを要求したら、横浜美術館があると。こちらはうれしいですが、配達員は大変。古紙の整理袋も一ヶ月に一回、ポストに入れる仕事もあるしー。しかも道が工事で通行止めだったりするとー。弥一さんの記事で配達員に会ったら、お疲れ様と言ってあげたい気持ちになりました
投稿: oki | 2009/10/19 17:46
okiさん
営業所の誰かが古紙を回収しているのでしょうが、小生は新聞配達だけです。
但し、古紙回収袋は新聞と共に配達します。
新聞配達、掛け値なしに大変です。
多くても月に一度しか休みがないし(無論、無給の休みですが)。
投稿: やいっち | 2009/10/20 21:13