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2009/09/30

杉浦貴美子著『壁の本』が気になります

 確か読売新聞の書評欄でだったと思うが、杉浦 貴美子【著】『壁の本』(洋泉社 (2009/09/17 出版))なる本が刊行されたことを知った。

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→ 今日(29日)のゴーヤ。さすがに草臥れてしまっている。長いこと、活躍してくれてありがとう!

「ヒビ、錆び、剥がれ、シミ、痕跡…。ありふれた壁に潜んでいる、偶発的な美しさとドラマ。壁写真家、初の壁写真集。壁を見るのが楽しくなる壁コラムや壁鑑賞の手順、壁素材解説も収録」ということで、本の題名は、まさに内容そのまま、ストレートに付けられているようだ。

 壁への関心…というより、壁の変幻に惹きつけられてならない性癖(?)は、若い頃からのことなのだが、いつ頃からなのかは覚えていない。

 ただ、80年代の後半、抽象表現主義のアート作品やアールブリュットへの関心が呼び覚まされた頃、ジャクソン・ポロックのドリッピング作品に惹きつけられたり、フォンタナなどの画面をナイフで切り裂く作品の現物を(原美術館で)見る機会があったりして、自分の中の嗜好に気づかされたのは間違いない。

 ただ、あくまで自覚させられたのであって、古びた壁面に妙に惹かれる性癖のようなものはずっと前からあったようように思う。


 変な話だが、74年から30年近くライダー生活を送った。
 オートバイでコンクリート舗装の路面を走っていると、特にコーナリングの際は、コンクリートやアスファルトがやけに身近に感じられてしまう。
 ほんのちょっとバランスを崩して転倒すると、普通の着衣など呆気なく、引き裂かれ引き千切られて、生身の体がコンクリートの面で削られてしまう。
 路面が、おろし金となって我が身を襲う、そんな事態が直下に、眼下に常に待ち受けている。
 だからといって、ライダー生活の故に、壁面に関心を抱くようになったわけではないのだが。

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← 杉浦 貴美子【著】『壁の本』(洋泉社 (2009/09/17 出版))

 上掲書は、新聞の書評で知っただけで、読んだこともないし、そもそも現物の本を目にしたこともない。
 ネットで大よその内容は分かるが、何しろ、写真こそが本書の眼目のようだから、今は、勝手に想像することさえ、小生の貧弱な想像力では叶わない。

 古びて、解体を待つばかりのビルの壁面や朽ちたドアの表面。錆び付いたフェンス。使用禁止となったブランコや滑り台。
 いろんなアート作品を見てきたけれど、現物の持つ、あるいは小生に茫漠感や漂白感といった感覚を掻き立てる力には、及ばない。
 まあ、所詮、小生にはアートを心底、味わう感受性が欠如しているってだけのことなのだろう。
 
 壁を巡って、例えばある拙稿の中で、以下のように書いている:

 タピエスやジャン=ミシェル・バスキアの示す世界の苦しいほどの詩情。干からび、宇宙船に刺し貫かれ、爪を剥ぐ痛みが薬物中毒の身には痒みにさえも感じられない、そんな詩情が詩情と言えるのならば、だが。
 人の情は場末の町の地下道のコンクリート壁の擦り傷ほどにさえ痛々しいとは感じられない、そんな時代。

 別の旧稿でも似たようなことを書いている:
 高架線の下の崩れた壁とか、出来てから何十年も経て朽ち始めたようなコンクリートの壁の悪戯書きや、風雨に晒され磨り減ったよ壁面の、茫漠とした感じが好き…

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→ 今日(29日)のヘチマ。ヘチマの実は一つも生らない。なのに、もう涸れ始めている! 何故?

 同じようなことを繰り返し書き連ねている:

 持て余す魂。漂白する魂。壁にこすり付けられ傷ついた心。心とは壁の傷。磨り減り光沢も塗装も剥げ落ちた壁の染みにこそ親近感を抱く魂。紫外線に琴線を打ち砕かれて目は街中を泳いでいる。何処にも焦点が合わないのだ。

 よほど、執着する何かがあるのだろう:
 そこには影がない。俺の逃げ場所が欠片もないのだ。あるのは照明、白い壁、磨きこまれたガラスのショーケース、無数の鏡、そして無数の視線。

 …ということで、目下、気になる本(写真集)に事寄せ、余談を書いてみた。

                                      (09/09/29 作)

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