「新じやがいもころころ転び名は男爵」村山古郷の周辺
今日は村山古郷(むらやま・こきょう)という俳人の命日(1909年6月19日 - 1986年8月1日)である。
といっても、小生は彼に付いて、何も知らない。
← 村山 古郷 (著) 『昭和俳壇史』(角川書店) (画像は、「Amazon.co.jp: 通販」より)
これでも、季語随筆のサイトとして、このブログを立ち上げたもの。
少しは俳句に関係する話題を採り上げたい。
「村山古郷 - Wikipedia」によると、以下のようにあるだけ。あとは著書が掲げられるだけで、俳人なのに、句が一つも載せられていない:
京都府生まれ。本名・正三。國學院大学国文科卒。中学教師を務めていたが、1941年、日本郵船に入社。内田百閒に師事し、鴨立庵第二十世庵主。俳誌『嵯峨野』を主宰、俳人協会理事を務めた。1978年、『明治俳壇史』で芸術選奨文部大臣賞受賞。
(転記文中に、「鴨立庵」とある。西行が一時、住み、「心なき身にもあわれは知られけり鴨立澤の秋のタ暮れ」をこの庵で詠んだとも言われる、「鴨立庵」。「鴨立庵」で風情・外見を見てもらうとして、村山古郷は、その第二十世庵主だったわけだ。)
ネットでは、彼に付いての情報はあまり見つからない。
それでも、たとえば、「今日の歳時記0617」には、以下の句が載せてあるなど、決して忘れられた俳人ではないようだ:
新じゃがも 顔丸々と 見られけり 村山古郷
新じゃがいもがよほど、お気に入りのようで、以下の句もある:
新じやがいもころころ転び名は男爵 村山古郷
新じやがいも顔まるまると煮られけり 村山古郷
「日刊:この一句 バックナンバー 」には、次の句が載っている:
敗戦の矛を擲(うが)つや油蝉 村山古郷
「作者はこの句について次のように書いている。「八月十五日終戦の大詔が発せられ、私のいた浦賀基地では、徴用船の武装解除が始まった。油蝉の鳴きしきる炎天下、銃座撤去が毎日続いた」」など、いつもながら、坪内稔典氏の短評は簡潔だし分かりやすい。
さらに探すと、「村山古郷 murayama kokyou」なる頁に遭遇。
村山古郷の句が21も載せられていて、嬉しい。
ここには、幾つか、転載させてもらう:
草青む家の貧しさ子は知らず若草に牧夫も牛も染まりけり
日本海真向きにラムネ鳴らし飲む
芋嵐猫が髯張り歩きけり
おでん酒うしろ大雪となりゐたり
雪ふり出す鍋つつきゐてひとの家
忘れられた俳人ではないとはいっても、彼に付いて語ったり、言及したりしているサイトは少ない。
やはり、『明治俳壇史』や、『石田波郷伝』、『明治俳壇史』、『昭和俳壇史』(以上、いずれも、角川書店)といった著作の書き手としての重みが大きいのか。
といっても、『季題別村山古郷全句集』(季書房, 1997)が、左記のように、十年余り前に出たばかりなのだ。
『波郷さんのベレー帽』(富士見書房)など、村山古郷が誰彼について語る著作は多いが、何とか村山古郷のことをもう少し知りたい。
俳人だから、幾つかの句が詠まれればそれでいいようなものだが、あまりに情報が少なすぎる。
それでも、さすがに、坪内稔典氏の「日刊:この一句 バックナンバー」は貴重な情報を与えてくれる。
以下の句を載せた上で、「古郷はこの昭和16年の句について、「中学の教師を止め、日本郵船に入社した。内田百閒先生の推輓による。国文を修めながら、商社に入る。志と異なる人生の道であった」と書いている」などとある(もっと詳しい記述が見られる):
郵船ビルの階踏みのぼり新社員 村山古郷
→ 村山 古郷 (著) 『明治俳壇史』(角川書店) (画像は、「Amazon.co.jp: 通販」より)
と思って、「村山古郷」という人物名だけをキーワードにしつこく検索を繰り返したら、ビックリするようなサイトに遭遇した。
「WelCome 季書房 HomePage」である。
「季 書 房」(ときしょぼう)といっても、「拙生傘寿を機に出版業務は廃止、好きな俳句の道をホームページを通じ青少年にひろめてまいりたいと思います」ということで、4年前に出版業からは足を洗ってしまわれたようだ。
但し、志は今も、というわけであろう。
そのホームページの中に、「季題別 村山古郷全句集」がある!
つまり、『季題別村山古郷全句集』(季書房, 1997)のネット版を自ら立ち上げておられるというわけのようだ。
その頁を開くと、「村山古郷」の横顔についても、ネット上で見いだしうる中では一番、詳しい。
多少、「村山古郷 - Wikipedia」とダブる面もあるが、一部、転記させてもらう:
大正十三年十三歳の頃から兄葵郷の手ほどきで句作を始め、大森桐明や、内藤吐天らの「中心」という俳句雑誌に投句していたというから、俳句的には早熟であったといえよう。
そのあと伊東月草の「草上」に投句し、昭和六年二十三歳の三月、晩学の笈を負って上京し、志田素琴に師事し、月草主宰「草上」の編集に携わり、仕事をしながら苦学を続けた。昭和九年素琴の「東炎」同人となり編集を担当。昭和十四年國学院大学を卒業した。昭和十九年戦争激化により俳誌統合が行われ「東炎」は終刊となった。
今日は、「村山古郷」について、あれこれ調べて、「WelCome 季書房 HomePage」(「季題別 村山古郷全句集」)に出会えただけで、幸いとする。
(09/07/31 作)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 指紋認証は止めた!(2023.11.29)
- 敢えて茫漠たる液晶画面に向かう(2023.11.28)
- その須藤斎の著書なの?(2023.11.27)
- 閉じるとピタッと止まる、その快感!(2023.11.24)
- 生物たちの軍拡競争に唖然(2023.11.22)
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 指紋認証は止めた!(2023.11.29)
- 敢えて茫漠たる液晶画面に向かう(2023.11.28)
- その須藤斎の著書なの?(2023.11.27)
- 閉じるとピタッと止まる、その快感!(2023.11.24)
- 生物たちの軍拡競争に唖然(2023.11.22)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 重い腰を上げて次々と(2023.10.27)
- 桶作りは杉や竹作りから(2023.09.25)
- 光は闇を深くする(2023.09.10)
- 朋あり遠方より来たる?(2023.08.22)
- 自分を褒めたくなる(2023.07.11)
「季語随筆」カテゴリの記事
- 陽に耐えてじっと雨待つホタルブクロ(2015.06.13)
- 夏の雨(2014.08.19)
- 苧環や風に清楚の花紡ぐ(2014.04.29)
- 鈴虫の終の宿(2012.09.27)
- 我が家の庭も秋模様(2012.09.25)
「俳句・川柳」カテゴリの記事
- ナイチンゲールのローズ・ダイアグラム(2023.05.26)
- 蝉時雨に梅雨明けを予感する(2020.07.29)
- アレホ・カルペンティエール『バロック協奏曲』へ(2019.07.09)
- オリオンの真下春立つ雪の宿(2016.01.12)
- 苧環や風に清楚の花紡ぐ(2014.04.29)
「古典」カテゴリの記事
- 扇風機点けっ放しを繰り返す(2023.09.28)
- 自己満足…自分の勝手?(2023.05.16)
- 今はもう叶わない(2023.05.12)
- 秋風の吹くにつけてもあなめあなめ(2023.05.11)
- 天才は天才を知る(2023.05.07)
コメント