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2009/05/16

最古のビーナス像発見のニュースに関連して

3万5千年前のビーナス像…クロマニョン人のペンダントか」( YOMIURI ONLINE(読売新聞))といったニュースを昨日の新聞その他で目にした。

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→ 画像は、5月14日付読売新聞朝刊より。

 古代史や考古学などに関連した話題には目がないので、メモしておきたい。

 やや偏屈なところもある小生、そもそも、こういった像を命名するのに、すぐビーナス像とするのは、如何なものか、なんてことも考えなくもない…、ことも末尾で呟いておく。

3万5千年前のビーナス像…クロマニョン人のペンダントか」( YOMIURI ONLINE(読売新聞)):

 約3万5000年前に彫られたとみられるビーナス像を、独チュービンゲン大学の研究チームが、同国南西部のホーレ・フェルス洞窟(どうくつ)で発見した。

 マンモスの牙を彫ったもので、人類最古の彫像となる。14日付の英科学誌ネイチャーに発表する。

 ビーナス像は高さ約6センチ、幅約3・5センチで重さ約33グラム。左肩と左腕の部分が欠けているが、ほぼ完全な姿で発掘された。頭部はもともとなく、上端にひもを通す穴がある。当時欧州に進出していた現生人類(クロマニョン人)が作り、ペンダントにしていたとみられる。これまで最古の彫像は同じ洞窟で発見された3万~3万3000年前の水鳥や馬の頭だった。

 東京大学総合研究博物館の西秋良宏教授は「年代的に見て欧州に現生人類が進出した直後に、彫刻といった芸術が花開いたことを示す成果だ」と話している。
                     (2009年5月14日02時28分 読売新聞)

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← 「3万5千年前のビーナス像」 (画像は、「3万5千年前のビーナス像…クロマニョン人のペンダントか」( YOMIURI ONLINE(読売新聞))より) なお、サイトによっては、3万年前としている:「Techinsight » 【EU発!Breaking News】世界最古のビーナス像が発見される(ドイツ)


「頭部はもともとなく」というのが気に掛かるが、このビーナス像を見て、少なからずの人が、縄文時代の女性像(土偶)、「縄文のビーナス」を連想したのではなかろうか。

 しかし、国宝となった縄文のビーナスに限らず、日本の縄文時代の女性像は概して胸がキュートである。


 豊かな胸の女性土偶画像が見つからなかったので、ここでは遮光器土偶を示しておく:
遮光器土偶 - Wikipedia

 遮光器土偶は、「縄文時代につくられた土偶」で、「主に東北地方から出土し、縄文時代晩期のものが多」く、「遮光器のような目に加え、大きな臀部、乳、太ももと女性をかたどっていること」などが特徴のようだ。

Jomonstatue

→ 「遮光器土偶」 (画像は、「遮光器土偶 - Wikipedia」より) 「一部では宇宙服を着用した宇宙人の姿を模ったものであるという説」も提唱されたりするが、宇宙服を着用しているんなら、地球人が中に入っていてもいいのでは、と思ったりもする。

 遮光器土偶はともかく、女性の姿をかたどった、今回のビーナス像から連想する像というと、「ヴィレンドルフのヴィーナス」が有名だろう:
「ヴィレンドルフのヴィーナス - Wikipedia」(Venus of Willendorf Venus von Willendorf)

「女性の姿をかたどった、高さ 11.1cm(4-3/8インチ)のスティアトパイグス(steatopygous、臀部突出)型小像で」、「22,000年から24,000年前に彫刻されたと推定された」もの。
 ヴィレンドルフの「ヴィーナス像は、写実的な肖像というより、むしろ理想化された女性の姿を表している。像の女陰、乳房、膨張した腹部は非常に顕著であり、多産・豊穣との密接な関係を示唆している。小さな腕は乳房の上でまとまっており、像には明瞭な顔面がない。頭部は、組み紐の巻いたものや、目、頭飾りの一種と考えられるもので覆われている」。

Venuswillendorf

← 「ヴィレンドルフのヴィーナス」 (画像は、「ヴィレンドルフのヴィーナス - Wikipedia」より)

 腕の大きさなど異同はあるが、巨大な胸(乳房)や頭部(顔面)のないことなど、共通点も多い。
 この<ヴィーナス像>について、上掲の頁では、「「こういう小立像を皮肉にも《ヴィーナス》と名づけるのは、未開社会についての、女性についての、あるいは美意識についての、現代におけるある種の仮定にぴったりと合うのだ」とクリストファー・ウィットコムは指摘している」などなど、いろいろな説が示されており、なかなか考えさせられる。

 云えることは、こういった立像をヴィーナスと(安易にも!)呼称するのは、後世の学者らであって、実際にこういった像が作られ使われていた時代において、どのような認識がされていたのかは、慎重で丁寧な議論や研究が必要だろう。

Venus_de_lespugue

→ 『レスピューグのヴィーナス』(Venus of Lespugue)(パリ人類史博物館) (画像は、「Venus of Lespugue - Wikipedia, the free encyclopedia」より) 「先史時代の地母神の一。南フランスのガロンヌ県のレスピューグで発見された」。

 女性を地母神として崇めないまでも、尊重したのか、それとも、徹底して子供を得るための道具という認識だったのか、両極端の考え方(解釈)がありえるのではないのか。
 道具という認識(扱い)だったからこそ、頭部がなかったり、顔面がない(あるいは腕もない)し(纏足を連想する?)、性的な部分のみ強調されている、といった理解も不可能ではないはず。

                                      (09/05/15 作)

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