門前の小僧習わぬ何とやら(後篇)
実際に壊すのは鋭角部分の二辺をそれぞれ一メートルあまりずつ。
つまり、大よそ二メートルほどを破損するわけである。
最初、コンクリートを手持ちのハンマーなどで壊せるのか、心もとなかった。
天気には恵まれた。
しばし、コンクリート塀を眺め、呆然といった態(てい)。
→ 作業開始二日目。ほぼ破壊し終わった段階。
しかし、やるしかない。
祭日である。
普段なら日中は、男性人は仕事で通りかかることはないのだが、休日ということもあり、近所の方々が通る、通る。
いかにもこういった作業に不慣れな人間が何をやっているか、という好奇の目を感じる。
逐一、通りかかる人に説明したいが、みんな通りかかるだけ。
近所の奥様方とは、ゴミ捨ての際などに挨拶するから顔見知りだが、男性陣(ご亭主陣)は、町内会で顔を合わせたかなという程度である。
ほとんど、顔さえ、見たことがない。
← ないことを願っていたが、残念ながら鉄筋が若干本、入っていた。どうする…。結局、ハンマーで叩き曲げた。
しかし、実際にやりだすと夢中である。
ハンマーを振り下ろすと、最初はびくともしなかったコンクリートの塀が、次第に罅割れてくる。
大小の破片が飛び散るようになる。
破壊されたコンクリートの破片が段々、山になっていく。
嬉しくなる。
鋭角のコンクリート塀の片側だけ、申し訳程度の鉄筋が入っていたが、存外、入っていない塀と同じ具合に壊れていく。
地面と同じ高さまで、塀を壊す。
築山の土は、大したもので、なかなか崩れない。
植わっている木の根っ子が縦横に土の中を這い巡っているのだろう。
→ 削った箇所の前に一輪車を置いている。工事箇所を守る意味もあるが、崩れる怖れが皆無ではないのだ。
それに、龍の目とかいう草の根が、土を固める役目を担っているらしい。
ただし、鋭角部分の土を除去したので、当該部分は土が剥き出しである。
それなのに、崩れない。
ただし、雨が降ったら、呆気なく土が雨に溶け、崩れ去るのは目に見えている。
コンクリート塀の必要十分な長さ部分の破壊作業が思ったより捗(はかど)ったので、破片と成ったコンクリート塀の残骸(コンクリートの塊)を剥き出しとなった土の斜面に、積み木のように積み重ねていった。
あくまで応急処置である。
が、結構、うまい具合に積み重なって、城の石垣にも見えなくもない(冷静に見たら、コンクリートの破片にしか見えない)!
← 作業の初日に、門の角付近から撤去したツツジのうちの一本。撤去する必要はなかったのだが、ここは収まりがいいので、このままに。
ほぼ、コンクリート塀の破損作業が終わった頃、昨日の方が所用から戻ってこられ、家の前を通り過ぎた。
また、車を止めて、いろいろアドバイスを呉れる。
コンクリートの破片を積み重ねるだけじゃ、崩れやすいし、みっともないので、重ねた透き間に土を埋めなさい。
埋めるだけじゃなく、竜の髭を適度な大きさに千切って植え込んでいくのがいい。
そうしたら、見栄えもよくなるし、崩れにくくなる…。
それだけじゃなく、庭への入口の、昨日今日で破損した反対側も鋭角になっているから、そちらのコンクリート塀も適度な分、壊したほうが、車が入りやすいし、目隠しの杉の立ち木を移動させれば、陰になっている梅の木が表から見えやすくなって、恰好がいい、なんてことを仰る。
適当に相槌を打って誤魔化した。
もう、二日目の作業が終わったばかりで、ヘトヘトなので、先のことまで考えられないのだ。
→ 作業二日目、コンクリート塀の破壊・撤去も終わった。夕方、ホッとした気持ちで夕景を追いに自転車で近所へ。
二日目も作業を終え、竹箒で掃いたりして、作業現場を片付け、衣服を着替えてから、再度、庭に出てみた。
適度以上の疲労で体の節々が痛い。
でも、とりあえず、最低限の目標を果たし、結構、自己満足の気分である。
思ったより、コンクリートの塀が壊れやすいことに驚いていたりする。
三日目は、削ったり掘ったりして剥き出しとなった築山の一角に応急処置として破損したコンクリートの塊を石垣状に積み重ねている、その透き間に土を押し込んだり、竜の髭を植え込んだりといった作業に没頭した。
三日目の今日も、晴れている。
汗びっしょり。
暖かいので、作業着の下は、アンダーシャツ一枚。
厚手のビニールの手袋、庇のついた帽子、長靴、そして、コンクリート塀をハンマーで叩いて破損する際に、コンクリートの欠片が飛び散るので、透明なゴーグルで目を防御。
この透明なゴーグルは思い出の品である。
← 築山の土が剥き出しになったので、破損したコンクリート塀の破片を積みあげて応急の壁に。透き間に土を埋め、さらに竜の髭を植えつける。根付いてくれるだろうか。草が蔓延ってくれたら、応急じゃなく、そのまま完成としたい思いで一杯。
こうした作業は、小生が雑にやるものだから、結構、早く終わった。
なので、チューリップの花壇を整地。
片側は屋根瓦を埋め込んだりして、囲ってあるが、反対側は地面にダラーと繋がっているので、そのしまりのない部分にコンクリートの小さな円柱を並べていく。幅一メートル、長さ四メートルほどの花壇の完成である。
植えたチューリップが、上手く咲かなかったのは、地面とほとんど同じ高さで、水はけが悪く、花が咲く前に球根が腐ってしまったからだと、作業の初日にやってきた親戚筋の方に教えてもらったのだ。
なので、チューリップを植える面の四方を囲み、盛り土をして、花壇らしくしてみたのである。
→ 作業三日目は、築山の剥き出しの壁に嵌めこんだり積み上げたコンクリート片の壁を補修する作業に追われる。竜の髭よ、根付いてくれ! 撤去した土砂を上から盛ったりして、草むしりで懸命だった小生が、水をたっぷり撒いたりして、ここでは草よ根付けと願ってる。
三日目の作業も終わった。
入口の削った箇所の前に一輪車を置いて、工事箇所を守る。
当面、コンクリートの塊と土や龍の目などが絡み合って安定し落着くまで様子を見る。
風雪に耐えられるようであり、削った築山の土が崩れてこないことを確認できたら、一輪車をどかし、晴れて工事完了を宣言するつもり。
← 作業三日目の夕方。汗もシャワーで流し、着替え、疲れているけど、気分的はふんわり。すると、我が家の屋根の上空をジェット機が。四日目の同じ時間にも見かけた。定期的に飛んでいる?
雑草の育ちからからして、二週間も様子を見れば、ダメかどうか、判断が付くはず。
それまでの楽しみである。
ダメだったら、ちゃんとしたコンクリートブロックを購入してきて、積みあげ、コンクリートで固めるつもり。
そうしなくて済むよう、龍の目には頑張って根を張ってほしいものである。
門前の小僧習わぬ経を読む、ではないが、門前での馴れない土方仕事はこうして幕を下ろしたのである。
(09/04/30 作 09/05/02 加筆)
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コメント
破壊および修復の一連の作業、お疲れ様でした。
コンクリート塀が一般人に毀せるのだろうかと思っていましたが、そういえばベルリンの壁も崩せましたしね(?)。
龍の髭、根付けばいいですね。ブロックで固めるより見た目が良さそうだし。
ところで今朝、我が家の給湯器が故障してしまいました。しばらくは冷たいシャワーを浴びることになりそうです。
投稿: 石清水ゲイリー | 2009/05/03 10:17
石清水ゲイリーさん
作業完了見舞い、ありがとうございます。
コンクリートの壁、分厚くて10センチ以上。
納屋にあった古いハンマーで叩いて壊れるのか、心配でしたが、数時間でほぼ完了。
案ずるより…なんとか、でした。
それより、おっしゃられるように、土止めに応急に積み重ねたコンクリート片の斜面に、龍の髭が根付いてくれたと願っています。
毎日、夕方、水をやって、早く根付けと見守っていますよ。
ああ、石清水ゲイリーさんも水シャワーですか。
井戸水ならいいけど、今の時期は水道の水は冷たい(呑むにはいいけど)。
シャワー、過日、知り合いが水量調節してくれたんだけど、相変わらず水がチョロチョロでるだけ。
もっと暑くなるまでは、作業で汗ビッショリになっても、濡れたタオルで顔や首筋や体を拭くだけで、シャワーは我慢することにしました。
石清水ゲイリーさんも、修理が終わるまでは、濡れタオルで体を抜いてしのいだほうがいいかも?
で、実は、今日(三日)から、反対側のコンクリート壁(角)の撤去(破壊)作業に取り掛かりました。
左右、どちらからでもバックで入りやすいようにと。
今日はまず、コンクリート塀の中の生垣2本と土砂を撤去・移動。
明日はいよいよコンクリート壁の破壊作業で、腕がなります ? !
投稿: やいっち | 2009/05/03 22:05
紫の3弁の花は、オオムラサキツユクサですね。属名の「Tradescantia(トラデスカンティア)」(園芸種ではこのカタカナ名で呼ばれるものもあるようです)は、イギリスのチャールズ1世の庭師“Tradescant”の名前からきているようです。「the Tradescants」で検索するとおもしろいですよ。
投稿: かぐら川 | 2009/05/05 19:45
かぐら川さん
冒頭の紫の花、オオムラサキツユクサ(大紫露草)なんですね:
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/HTMLs/ooMurasakiTuyukusa.html
>属名の「Tradescantia(トラデスカンティア)」(園芸種ではこのカタカナ名で呼ばれるものもあるようです)は、イギリスのチャールズ1世の庭師“Tradescant”の名前からきているようです。
なるほど、ネット検索すると、「露草科 ◇属名:ムラサキツユクサ属(Tradescantia=トラデスカンティアは17世紀のイギリスの「Charls 一世」の園丁師。兄の「John Tradescant (c.1570-1638)」に因んだ名前。弟は「John Tradescant(1608-1662)」Tradescantsは、庭造り、旅行で収集した珍しい植物コレクションで有名になりました」という一文が見つかりました。
リンク、やはり撥ねられるかな:
http://blogs.yahoo.co.jp/chameleon_arms/43248345.html
いつもながら、花(の画像)を見て名前が分かることに尊敬というのか、感動してしまいます。
[何故か、前のコメントはリンクを張ったらスパム扱いされたけど、今度はOKだった。不思議!]
投稿: やいっち | 2009/05/06 01:14