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2009/04/16

スノーボールアース(全球凍結)と生命進化の物語

 田近英一/著の『凍った地球 スノーボールアースと生命進化の物語』(新潮選書)を読んだ。
 過日、NHKテレビで「スノーボールアース」説を特集していて、こういった分野にも興味はあっても疎い小生、へえスノーボールアース説なんてものがあり、既にある程度までは定説になっているんだと、軽いショックを受けたのだ。

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← 田近英一/著の『凍った地球 スノーボールアースと生命進化の物語』(新潮選書)

 著者の田近英一(たぢか・えいいち)は、「1963年、東京都生まれ。理学博士。東京大学准教授。専門は地球惑星システム科学」といった方。
 
 その著者が語るように、「現在の地球は間氷期にあり、さらに氷期に向かっている。そう聞くと、少なからずの人が驚く。地球はかつて、数百万年もの間にわたってすべてが凍りついていたと聞くと、さらにびっくりする」(「凍った地球―スノーボールアースと生命進化の物語― - 選書・編集者のことば」より)わけで、小生はびっくしりしたなーもー、の一人というわけである。

 スノーボールアースといって、単なる氷河期と思ってはいけない。
 似て非なるものだ。
「スノーボールアース」は、「全球凍結」と訳されるもので、文字通り地球表面が赤道も含め全面的に凍りついてしまうという状態。
 熱帯でさえ、氷点下(マイナス50度)!

 本書についての、出版社サイドの説明によると、「全球凍結は、現在の穏やかな気候と生命進化に深く関わっている」とした上で:

地球はかつて、現代の温暖化とは比較にならないほどの気候変動を経験した。中でも、数百万年にわたり凍りついていたという「全球凍結仮説」は最も衝撃的だ。厳寒がもたらしたものとは? 大気の変化、温暖化プロセス、プレートテクトニクス、太陽の影響、生物進化など、様々な角度から、コペルニクス以来の大仮説が証明されていく。

 地球表面が分厚い氷に蔽われてしまうというのも驚きだが、実はそれは話の半分で、この「全球凍結」状態こそが、生物の進化に根底的な影響を与えた、という説で、むしろこの点にこそ、本書の著者の説くところなのである。
 というのも、かつて地球が全球凍結というのは、上記したように基本的には定説になっている。
 著者は、その点の説明にも力を入れているのだが、それ以上に生物進化への全球凍結の影響の大きさを説として唱えているわけである。

 全球凍結は、容易に想像が付くように、ようやくにして地球に生命が誕生し、微生物がヨチヨチ歩きし始めていたのが、液体の水が完全に凍ってしまうことで、まさに大絶滅の危機に瀕する、過酷な試練だった。
 その大絶滅の危機たるスノーボールアース状態を幾度となく潜り抜けることで、やがて来る生命の大進化に繋がっていったというのだ。
 著者は、「私たち人類を含むすべての動植物の出現へとつながる真核生物の誕生や、多細胞生物の誕生は、実はこの全球凍結イベントと密接な関係にあった可能性があるらしい」と説く。
 つまり、「全球凍結イベントは、単なる気候変動ではなく、生命進化史上きわめて本質的な意味を持つ出来事だった」というのだ。

 さらに著者は、「地球全体が凍結するという現象は、太陽系外の惑星系に存在するであろう地球とよく似た「水惑星」に共通した性質であ」り、「全球凍結の研究は、実は、宇宙における地球のような惑星の存在とその気候状態、さらには地球外生命の存在の理解にもつながるような広がりを持っている」とも考える。

 著者も言うように、「目をつむって、想像してみてほしい。月から見た地球。それが、雪だるまのように真っ白なのだ。ブルー・プラネット(青い地球、水の地球)ではなく、ホワイト・プラネット。そうした白い惑星を、誰か(地球上以外の生物)が見たとしたら、この惑星には生物はいないと思うにちがいない。何せ、厚いところで数キロにもおよぶ氷床に覆われているのだから。しかも、気の遠くなるくらいの期間、凍結状態が続いていたのだ。が、7億~6億年前、こうした全球凍結状態が、ほぼ間違いなく起こったであろうことが、本書を読むとわかってくる」(「凍った地球―スノーボールアースと生命進化の物語― - 選書・編集者のことば」より)。
 従来なら、そんな凍て付いた真っ白な惑星であったら生命など存在しえるはずがないと想定しただろうが、我が地球においてまさにそんな危機を乗り切ることで、生命体が「真核生物の誕生や、多細胞生物の誕生」といった段階に至るのを見たとしたら、宇宙で探索されている惑星を見る目も違ってこようというもの。

 だからこそ、「今、もし天体観測によってホワイト・プラネットが見つかったならば、私たちはそこに生物存在の可能性を見出すにちがいない。スノーボールアース仮説の研究によって、そのメカニズムがわかってきているからだ。さらに本書では、そうしたホワイト・プラネットの発見の可能性は決して低くないと言っている。つまり、全球凍結仮説は、地球上以外の生物の発見にもつながるエキサイティングな研究であることがわかる」(「凍った地球―スノーボールアースと生命進化の物語― - 選書・編集者のことば」より)わけである。

 まあ、たまには地球環境問題を宇宙スケールで見つめてみるのもいいのでは(← 自分に言っている)。

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→ 全球凍結しちゃったら、雪景色はこんなものじゃ、すまない!

参考
 以下は、著者おすすめの全球凍結のシミュレーション動画(3分20秒):
地球が全部凍った時の動画 (宇宙 画像、動画情報:宇宙アストロ百科)

 以下は、田近英一東京大学助教授が取材協力した、「スノーボールアース」についての分かりやすい説明:
Nikon 光と人の物語 光をはね返す星 スノーボールアース

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