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2009/03/13

「トゥルー・ストーリーズ」へ!

 確か新聞の書評で採り上げられているのを見て借り出したポール・オースター著の『幻影の書』(柴田 元幸訳 新潮社)に魅了され一気読み。

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← 仲村トオル主演『偶然の音楽』(世田谷パブリックシアター 既に公演は終了している) 最近、仲村トオルが主演の土曜ワイド劇場『刑事殺し』を観たが、年輪を重ね、いい味を出していた。『あぶない刑事』の初々しさとは大違いだった。

 この本の返却と交換に図書館の書庫にあった『ムーン・パレス』(柴田 元幸訳 新潮社)を借り、やはり一気読み(実際には、家庭の雑事の合間を縫ってだが)。

 二冊目も期待が裏切られることなく、読む手を止められないまま、頁がドンドン進んで行く。
 二冊目を返却と同時に三冊目として、『偶然の音楽』(柴田 元幸訳 新潮社)を借りる。

 これまた、読ませる!

 日記にあれこれ書いているように、実際には読書どころではないのだが、ポール・オースターの語り口の上手さ、ストーリー展開の秀逸さなどに、頁に目を落とした瞬間から彼の世界へ引きずり込まれる。
 細切れなほど断続的にしか読めない現実があるのを忘れさせる。

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→ ポール・オースター著『偶然の音楽』(柴田 元幸訳 新潮社)

 彼が例えばカフカが好きで影響されていると解説などで知って、最初は世界が違いすぎるのではと思ったが、読むほどに、ああこれは確かにカフカだ、アメリカのカフカ、アメリカの西部や東部を彷徨って留まることを知らないアメリカの荒野に息衝くカフカなのだと納得した。
 アメリカというと、ハリウッド映画じゃないが、都会などの摩天楼的世界が印象に強くなってきているが、実際にはどんな大都会であっても、ラスベガスであっても、ほんの百年、二百年、三百年の昔は荒野だったり、先住民の土地だったわけである。
 テレビドラマ『CSI』が好きで、再放送も見ているのだが、このドラマでも、場面の切り替えで、空から都会を俯瞰する光景をしばしば見せてくれる。

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← ポール・オースター/著『幻影の書』(柴田 元幸訳 新潮社)

 気づくのは、天を突くかのような高層ビル群やハイウエーなどは、アメリカの大地のほんの一角に犇き合うように、窮屈に固まっているのであって、その周囲を荒野や原野が囲繞していること。
 否、大都会など、砂上の楼閣であり、荒野という砂漠の上に、たまさか浮いているだけであって、せいぜい数十年か百年ほども過ぎたら、また、元の荒野に戻るのだ…、恐らくは一層、荒廃した殺伐とした姿を曝け出すに違いないのだと思わせる。
 きっと、民族の魂など、たかが数百年程度では大地に定着などできないのだろう。
 あるいは、日本人の演歌好きなところを見ると、千年でも大地への定着など、無理なのかもしれない。
 演歌では流れるとか、北へ帰るとか(北ったって、北朝鮮の意味じゃない、シベリアかモンゴルか満州かバイカル湖周辺の何処かだ)、南へという歌詞が多い。
 日本人の多くは流れ者であり、氏素性の知れない者であり、あるいは血筋を誇る者であっても、辿ると、朝鮮か東南アジアか中国大陸かモンゴルかだということを体の中の血が告げているのだろう。
 まして、アメリカなど尚更だろう。

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→ ポール・オースター/著『トゥルー・ストーリーズ』(柴田 元幸訳 新潮社)

 先住民族を虐殺し土地を奪い、全ての約束を破ってまでアメリカという巨大な大陸を得た。聖書の約束にはこだわっても、先住民との約束は呆気なく、良心の痛みもなく破り続けてきての今がある。
 だからこそ、良心の気づかれざる痛みがあるからこそ、内心忸怩たる思いがあるからこそ、正義を世界のどこの国より声高に唱えるしかないのだろう。
 盗人猛々しく!
 あと数百年は犯した罪の贖罪に至るはずもなく、癒されることのない魂を抱えつつ、一生、そして代々、彷徨い続けるしかないのだろう。
 自由の国アメリカだし、希望の国アメリカでもあるのだが、キリスト教原理主義の国そのものでもある。正義の国でもある。
 そんなアメリカだからこその文学。
 カフカ(の城)は、静的な形で永遠に辿り着くことのない何処かへ不毛な日々を空回りする。
 ポール・オースターは、車や飛行機があって、見かけは動的だが、やはり、決して至りつくことのない何処かへ、魂は彷徨い続ける。

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← ポール・オースター著『ムーン・パレス』(柴田 元幸訳 新潮社) 「オースターそしてブレイクロックの月」参照。

 …というわけで、今、脇にはポール・オースターの四冊目の本が置いてある。
 今度は『トゥルー・ストーリーズ』(柴田 元幸訳 新潮社)である。
 順不同で読んでいる。行った図書館にはこれしかなかった(一冊でもあって幸いだったが)から慌てて手にとったのである。
 まだ、読まない。
 楽しみは取っておく。
 読みかけの本が二冊あるし。

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→ 母への母の友だちからのプレゼント。リハビリ施設へも一緒に通っている。毎年、春先に贈ってくれる。造花のように綺麗…というのは褒め言葉にならないんだろうけど、左右対称だったりして、子供でも絵に描きやすいし、チューリップに限っては、賞賛の言葉となりえるような気がする。今年は何かお返し、しないと。

 今になって気がついたのだが、本書は「著者とっておきの傑作エッセイ集」だって。

 えええー、小説じゃないの?
 オースターの小説を読みたくて、たまたま一冊だけあった本を借りてきたんだけど、ちょっとショック。
 でも、いいか。オースターのファンとなった以上は、彼の本なら何でも読む!

 というわけで、まだ、沢山、彼の作品は出ていることだし、今後の読書の楽しみもたっぷりあるというわけである。

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