鈴なりのスズメたち
本日は、「岩佐又兵衛…浮世絵の源流? 劇画の開祖?」をアップしました。
← 昨日(19日)、精米に行ったら、小屋の外でスズメたちが作業する小生の様子を窺っていた。お零れ、頂戴って言ってそうな表情。こうして見ると、スズメも可愛い!
さて、以下の一文は、小生の旧著からの抜粋です:
私はきっと自分だけの楽しみを求めているに違いない。だがそれが何なのか自分でも分からないでいるのだろう。今、目の前に獲物がある。それをひたすらに追う自分の姿を突き放したような冷ややかさで見ているのだ。その気持ちの正体が何かは言葉では表現できるようなものではないと思われた。私は肉の海で溺れてみたかった。溺れ込み、沈み込んで、圧倒する濃密な汗とよだれの滴る歓喜の修羅場の只中で、自分の身のうちにしつこく潜み根付いてしまった、決して何者とも和することのない眠らぬ虫を殺してしまいたくてならないのだった。女の肉が私の肉と区別し難いほどに交わって、私は白いふくらはぎ、それとも柔らかな和毛(にこげ)に覆われた深くて細い小川の魚をつっつく水鳥、あるいは金剛像に纏わり付く蛇だった。薄明かりの部屋の中で石ころが転がって、ありとあらゆるところにぶつかり、積年のうちに堆積した垢や苔を嘗め回し削り取ろうとしていた。燃え上がる欲情の洪水が浜辺の砂山を押し流すのだった。できれば同時に私を食い尽くす虫をも窒息させてほしいと思った。
気怠い淀んだ空気が漂っていた。私から女に注がれた精力も彼女の肉体の精気と一緒に浮遊し、中空で性懲りのない戯れを演じていた。女は隣で軽い鼾(いびき)を立てている。裸のまま体を折り曲げて、無邪気な顔を枕に埋めるようにして寝ているのだ。私はその幼さの残る寝顔を見ながら、いつもの性癖を果たしたいという欲動がむくむくと湧いてくるのを憂鬱さと、そして少しばかり待ち遠しいという念で待っていた。こうなったら私にはもう制する力は残っていないのだ。私の中の遥か奥の院の何者かが勝手にやっている、そうとしか私には言えない。
「ラヴェンダー・ミスト」p.31-2(『化石の夢』所収)
↑ スズメたち、虎視眈々と、お零れを狙っている。小生、意地悪なので、多分、一粒も落とさなかった。ゴメンね!
89年に作ったもの。ジャクソン・ポロックの「ラヴェンダー・ミスト」を横目に真夜中過ぎに創作していた。丁度、20年前の作品である。文章が若い!
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