懐かしき(?)ゼンマ明けの朝
局部麻酔での手術や治療は、わりと多くの方が経験があるのではなかろうか。
歯の治療でも局部麻酔をされるのだから、わりと多くの方というより、相当多くの方かもしれない(麻酔をされての治療経験の有無の統計なんて、あるんだろうか)。
でも、全身麻酔での手術となると、そう多くはないのでは。
← 五日の夜、「世界まる見え!テレビ特捜部」を団欒のテレビで見ていたら、「歌え!踊れ!熱狂70万人、リオのカーニバル」ということで、「サンバチームの奇跡のパフォーマンスをご紹介」していた。いつもながら、圧倒される狂熱ぶりとスケール! これはテレビの画像を撮影したもの。機会があったら、他の画像も紹介したいが、さて。
(註)、医者用語なのか、ただの通称なのか、分からないが、40歳の時の全身麻酔による手術の際(そのどんな場面で聞いたのか忘れた)、「全身麻酔」を「ぜんま」と呼ぶことも知ったっけ(以下、時々、全身麻酔と表記せず、「ゼンマ」と略記する場合があることを断っておく。ついでながら、「局部麻酔」の略称は「きょくま」である)。
小生はゼンマでの手術を何度か経験している。
ただ、子供の頃(十歳)のゼンマの体験はあまり覚えてない。
足の踵(かかと)付近へ注射され、顔(口)にマスクされ、なかなか麻酔が掛からず、神経質云々というお医者さんか看護婦さん(当時は看護婦さん!)の話があったような、なかったような。
最後に全身麻酔を施されての手術を受けたのは、40歳直前の頃だった。
手術の内容・目的は、この際、省略する。
印象に残った点が幾つかあって、この以前、子供の頃の全身麻酔での経験…感覚とは随分、違うと、麻酔に掛かる直前、感じていたこと。
どう違うかと問われると、返答に窮する。
紙に水が染み通るように、感覚が徐々に失われていくような、気が遠くなるような、そんな印象が残っていたが、40歳の時の全身麻酔では、まるで違うのだった。
話を先に進める前に、そもそも全身麻酔とは。
「全身麻酔 - Wikipedia」によると:
全身麻酔(ぜんしんますい、英General anesthesia)とは麻酔方法の一つ。中枢神経に薬物を作用させ、無痛、意識の喪失・健忘、筋弛緩、有害反射の予防、の4つを満たす状態にすることで患者の肉体的・精神的苦痛を取り除く。局所麻酔との大きな違いは意識消失の有無である。
「術前訪問」があって、「患者を訪問し、診察や問診、実際に行う予定である麻酔方法の説明などを行う。手術前の患者はいろいろな疑問、不安を抱えている。これらに真摯に耳を傾け、的確な説明をし不安を取り除く。術前訪問は患者の状態を自分の目で確認し情報を得ることのみならず良好な医師-患者関係を築く第一歩となる」という。
実際、手術の何日か前に(多分)麻酔医によるそんな訪問と説明を受けた。
→ 五日の朝、近所の家の塀や柿の木にそれぞれ野鳥が止まっていた。
また、「前投薬」ということで、「術前の不安を取り除いたり、術中の有害な自律神経反射を抑制する目的で行われる投薬」を受けたことも覚えている。
但し、病室では、ただの精神安定剤を呑んだだけで、実際には「前投与と呼ばれる薬剤投与」は、手術室で手術直前に投与されていたのかもしれない。
この点は、記憶が曖昧である。
言うまでもないことだが、話の順番が違ったが、手術前には、いろんな種類の検査を受けた。
「一般の採血、採尿はもちろん、肝機能検査のための試薬を用いた採血、腎機能検査のための試薬を用いた採尿、胸部レントゲン、心電図、その他、病気に応じての検査など。こういった検査で問題がないとなれば、全身麻酔下で手術という事になる」ようである。
こうした検査で結果が手術に耐えるとなれば、次の段階として全身麻酔のための準備作業に入るわけである。
なので、麻酔の話をお医者さんからされる頃は、手術の日も間近なのである。
ドキドキしている。
なるようにしかならない、開き直るしかない。
でも、やっぱり怖い。いろんな心理や妄想が駆け巡る。
← 同じく、日本テレビの「世界まる見え!テレビ特捜部」から。ステージ自体が凄い!
「全身麻酔」(ホームページ:「東麻酔研究所」)によると、冒頭に、「点滴から眠る薬(静脈麻酔薬、じょうみゃくますいやく)を入れ、患者さんに眠って頂きます」とあるが、情けないことに、点滴を受けたかどうか、覚えていない。
術後は何日間、点滴を受けたのは覚えているのだが。
また、「呼吸も止まりますので、人工呼吸しながら、口の中へ管(気管内挿管チューブ)をいれ、のどの奥の気管(きかん)の中まで入れます」というのだが、口の中へそんな管を入れられたかなんて、まるで覚えていない。
ただ、覚えていないのは尤もな話で、「目が覚めている状態では、気管に管をいれるなんてとても苦しくて、大変ですが、眠られた状態で行いますので、全くわかりません」なのである!
当然ながら、ゼンマをされるに当たって、手術室で口にマスクをされる。
ガスの麻酔薬を嗅がされるわけである。
このときの昏睡状態に陥るまでの感覚が実に印象的だった。
この点は、あとでまた触れる。
手術が終わって麻酔も覚め、気が付いたらチンチンに管が通されていた。
まあ、ゼンマの効いている間もオシッコは膀胱に溜まるわけで、量が一定限度を超えたら出てくる。
でも、自力ではトイレでオシッコできないから、その間は、管を通して尿をボトルに溜めておくわけである。
最初はそんなことがされていると気づかず、看護婦さん(当時はまだ看護婦さんだったはず)が病室にやってきて、管を抜いていって初めて気づいたような。
そうか、寝ている間にチンチンが……だったのか、と軽いショック(?)を受けた…ような。
もっと違う機会に違う形で触れてもらえたら、なんて思ったような思わないことはなかったような。
さて、肝心の全身麻酔をされての体験のこと。
ゼンマをされるのは初めてじゃないのに、麻酔が効いてくる感じがまるで予想と反していた。
予想といっても、子供の頃の麻酔体験しかないから、その時の状態とは麻酔の効き方が違う! と感じていたのである。
徐々に意識が遠退いていくとか、そんな感じではなかった。
体の遠い部分から、体が泥か鉛か、とにかく肉体とは異質な何かへ完全に変質していくのである。
体が重いようであり、しかもさらに重くなっていくようであった。
ああ、もしかして肺も含めた内臓が死んでいってしまう、後戻りできない闇の世界へ落ち込んでいってしまう。
肺もゴムのように、それも弾むことを忘れた死んだ固いゴムのように変貌し、息もできなくなってしまう。
麻酔は脳にも効くのだろうか。意識が遠退いていくような、それでいて、最後まで明晰(といっても、小生の頭脳がそんなに明晰なはずはないのだが、その時だけは醒め切っているように自分では感じられて)、肺が心臓が麻酔でどうにかなる、その前に意識が遠退いてしまうと思っていたのに、そうではなかった(ように感じられた)のである。
→ 同じく、「世界まる見え!テレビ特捜部」から。昨年は、日本人ブラジル移住100周年記ということだからだろう、日本をテーマにしたチームも。寿司屋に招き猫に金閣寺に大仏に金太郎(相撲取り?)に、とそれぞれ趣向を凝らしていた。クイーンダンサーの中には(アンジェラ・ビスマルクさん)、日本風を演出しようと顔を整形した人もいた!
意識だけははっきりしている、その一方で体がドンドン真っ黒な物体に沈下していく。自分の体が何か得体の知れないモノに浸食され死の領分へと捥ぎ取られていくのを無力にも、ただ見守っているだけ。
まあ、実際のゼンマによる手術だと、「手術が終わりに近づくと徐々に、麻酔ガスの濃度を下げてい」くとかで、「この時期がもっとも不安定で、着陸が難しいように、麻酔から患者さんを無事覚ますのが大変」なのだとか。
意識より、ただ肉体のほうが凝り固まったゴムになるのを手を拱いて<眺めて>いながら、自分の体は賦活するんだろうか、このまま事故か何かの異変でこの世に戻って来れないのではと、そんな心配でオチオチ意識を失えない! そんな気分だったっけ。
「手術終了時に麻酔ガスを止め、人工呼吸を続けながら、患者さんが自分で呼吸をし、呼びかけに反応するまで待ちます。患者さんが、自分で十分呼吸でき、呼びかけに反応するようになってはじめて、口の管を抜きます」というが、これまた情けないことに、小生は口から管を抜かれたのかどうか、まるで覚えていない。
覚えていないことばかりだ!
最後に、これまた余談になるが、小生自身にとっては極めて印象的な事実があったことをメモっておきたい。
← 当然ながら(?)、「世界まる見え!テレビ特捜部」では、スタジオでもサンバ! 三人の素敵なダンサーは、確か、「サンバノバ「SambaNova」」からの出演だったはず。日本人ダンサーも見たかったなー。
それは、ほとんど生まれて初めて熟睡を経験したということである。
小生は、十歳の時の手術で鼻呼吸ができなくなった。
当然ながら、睡眠時無呼吸なわけである。
睡眠時無呼吸症候群というのがあるらしいが、小生は端的に睡眠時は口呼吸だけ。
なので、目覚めの時は疲れ果てている。疲労困憊なのだ。
試しに、息を止めて一分でも二分でも頑張る、そんな遊び(?)を試みたことがあるかもしれない。
それが結構、きつい体験だということは実感で分かるだろう。
小生の場合、睡眠時にはずっと何回もそれを繰返すわけだ。
40歳での全身麻酔での手術で、手術が無事、完了して、病室で意識が戻った時、とっても爽やかだった。
最初は、点滴で体の血が綺麗になったからかな、なんて暢気に思っていた。手術が無事だとも聞いたから安心したこともあって。
でも、そうじゃなかった。
全身麻酔で人工呼吸したので、普段の一晩中の睡眠時無呼吸による体(や脳味噌)へのとんでもない負担が、その夜に限って、人工呼吸での呼吸をちゃんと出来ていたから、だから、体が疲れ切ることはなかったのだ!
熟睡って、こんなことだったのかと(ほとんど)生まれて初めて知った。
ほとんど、というのは、十歳の手術の時までは鼻呼吸ができていたから、熟睡も出来ていたはずだからだ。
でも、小生には十歳以降の、眠る前より起きた時こそが一番、体が疲れきり体力を消耗しきった状態となるという睡眠をずっと経験してきたので、十歳以前のことはもうわすれちまったのだ。
朝の目覚めの時、そして起き上がるとき、小生は体力を使いきってしまう。精力の大半を起きるために使い果たす。
ようやく起きた時は、もう、昼行灯である。ボーとしている。精も根も尽き果てているのだから当然なのだが。
それだけに、グッスリ眠れたゼンマによる手術の日の夜が、朝の目覚めが自分には驚異だった。みんな、こんなふうに眠れているんだと、しみじみ羨ましいと思った。
かといって、毎晩、ゼンマというわけにもいかない。
あのゼンマ手術明けの朝が実に懐かしいのは、そんなわけがあるのである。
→ 六日の朝、母をデイケアセンターに送り出したあと、ふと見たら庭の隅にある梅の木に小さな蕾らしきものが。まだ本格的な寒波は来ていないのだが…。
参考:
「全身麻酔 - Wikipedia」
「初めての手術で、全身麻酔みたいですが、不安でいっぱいです - 教えて!goo」
「全身麻酔」(ホームページ:「東麻酔研究所」)
「睡眠時無呼吸症候群と私」
「1プラス1の間には」
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