雪形……むぎや・麦屋節・麦や節
どういうわけか、一時期、小生の拙稿「雪人形」へのアクセスが突如、増えたことが。
まあ、冬だし雪の季節だから、「雪 人形」といった検索語で、間違って(?)小生のサイトへもアクセスする人が多少、居たのだろう。
→ 「白馬の雪形(神奈川県・丹沢山地)」 (画像は、「雪形 - Wikipedia」より。)
せっかくなので、「雪人形」でネット検索してみたら、「中川岳志のブロク゛ 雪人形」というサイトが上位に浮上してくる。
合唱曲「むぎや」の歌詞についての話題のようだ。
が、「むぎや」であって、「麦や節」でも、「麦屋節」でもない。
小生、「むぎや」も「麦や節」も「麦屋節」も、それぞれの異同がよく分からない。
理解が浅く、そもそも郷里の富山で歌われるのは、「麦や節」なのか「麦屋節」なのか、それとも「むぎや(節)」なのか、覚束ないのだ。
『こきりこ節』や『越中おはら節』などと並び、富山を代表する民謡だというのに!
検索してみると、「五箇山 麦屋節の里通信」なんてサイトが浮上してくる。
ってことは、五箇山でのそれは、「麦屋節」なのか。
実際、「YouTube - 麦屋節」などもある。
が、さらに検索すると、「麦や節動画」(要Windows Media Player)ってのもある。
一体、どれが正しいのか。
すると、下記のような恰好のサイトを発見:
「中川岳志のブロク゛ 「麦屋節」という名前の由来を考える」
これを読むと、どうやら、「麦屋節」ってのは歌詞の最初の言葉を取っての、便宜的な表記で、それが一部に(あるいは広く)広まってしまっているらしい(断言は小生は避けておく)。
順序が逆になったが、我が郷里・富山は五箇山の「むぎや節」の歌詞を示しておく:
麦や菜種は二年で刈るが
麻が刈らりょか半土用に
浪の屋島を遠くのがれて来て
薪こるてふ深山辺に
烏帽子狩衣脱ぎうちすてて
今は越路の杣刀
心淋しや落ち行くみちは
川の鳴瀬と鹿の声
川の鳴瀬に布機たてて
波に織らせて岩に着しょう
鮎は瀬につく鳥は木に止まる
人は情の下に住む
なるほど、歌詞の冒頭が「麦や菜種」とあるので、それを取って「麦や節」と呼称されるのだし、民謡の題名としても、「麦や節」が真っ当なのだろう。
ただし、紛らわしいことに、下記のサイトもある:
「NHKアーカイブス 保存番組検索: NHK文化シリーズ 生活の中の日本史「民謡紀行」(5)-麦屋節-」
(能登の"麦屋節"と岡山の"麦屋節"を紹介し、この二つの関係をさまざまな面からさぐり解明する。)
もっとも、これだと五箇山の「麦や節」は、埒外のようだ。
他府県の「むぎやぶし」は、本稿では考慮の外に置く。
少なくとも、我が富山(五箇山)のものは、「麦や節」でいいのだ…よね(← 自信なし)。
さて、では、「むぎや」って何。
これは冒頭のブログ記事「中川岳志のブロク゛ 雪人形」を読むのがいいようだ。
小生も以前、ブログで取り上げたことがあると思うのだが(自信がない。確か「雪形」という名称だったはず……」だ!)、「雪人形」がキーワードである。
先に進む前に、下記の合唱組曲(の歌詞)を読んでおくのがいいだろう(できれば、メロディも楽しむともっといい):
「むぎや」(混声四部合唱 合唱組曲「富山に伝わる三つの民謡」より)
その「むぎや」の途中に、「山と谷間の雪人形」という歌詞(言葉)がある。
この言葉の意味は、「中川岳志のブロク゛ 雪人形」にあるように、下記の通りである:
富山ではいくつもの山が連なって立山連峰を形成するのですが、雪解けにより白い山がやがて地肌を見せるようになります。この部分は黒くなりますが、これは山によって当然に時期が異なり、白い山が一斉に黒くなる訳ではありません。当然に積雪量の少ない山から黒くなってきます。
そして、ひとつひとつの山で考えると尾根と谷があり、冬の間に雪崩が起きたりして谷の方に雪が沢山たまります。これが春になると日当たりの良さも手伝って尾根の部分から黒くなっていきます。この尾根と谷の形により、それぞれの山で毎年同じように、時期によって白い部分と黒い部分が特徴ある形を模っていきます。これを「雪絵」と呼んでいます。富山では「僧ヶ岳」という山の「僧と犬」の雪絵が有名です。これは白地に黒の絵になります。
さて、「むぎや」に出てくる「雪人形」ですが、「人形山」という山があって、こちらは谷が人形の形をしていて、雪解けとともにまず二人の人形が白い形で現れます。最初は手をつないでいるのですが、雪解けが進むと「手をつないだ」部分が細いためこの雪が次第になくなって、手が離れた格好になっていくのです。
この「雪絵」(「雪形」あるいは、昔は「残雪絵」とも)については、下記が詳しい:
「富山の雪形とその伝承 講師 長井真隆」
「雪形 - Wikipedia」
「Yukigata Home Page」(雪形ホームページへようこそ! この中の、<第7回雪形ウォッチングの報告>など。)
まあ、とにかく「むぎや」は、岩河 三郎氏が作曲した、上記したような事情に基づく合唱組曲であり、我が富山は五箇山の民謡は「麦や節」(か「むぎや節」)といった表記が妥当なのだと分かっただけでも、ちょっと嬉しい。
← せっかくなので、小生の手になる立山連峰の光景(薬師岳周辺か)。雪形が見出せるってわけじゃない。載せたかったので載せただけ。 (画像は、「今日は外出三昧? ! 「猫! そして幻のポインセチア」篇」より。)
なお、いかにも「雪形」(雪絵)を想わせる画像(写真)ということで、下記サイトが分かりやすくていい:
「白馬の雪形・雪型大集合!長野信州雪形ウォッチング 代掻き馬~五竜菱、種まき爺さん、珍しい雪形まで」
空の雲に人それぞれに何かの形を読み込むように、溶け始めた雪山の雪面(峰峰)にも、思い思いに形や意味を描いてみるのも楽しいものだろう。
参考:
「とやま映像館」
(この頁の中の「城端むぎや祭」参照。)
「五箇山の民謡」
「NHKアーカイブス 保存番組検索: NHK文化シリーズ 生活の中の日本史「民謡紀行」(5)-麦屋節-」
(能登の"麦屋節"と岡山の"麦屋節"を紹介し、この二つの関係をさまざまな面からさぐり解明する。)
「思い出は淡き夢かと雪の降る」
「雪形 - Wikipedia」
「風光る…杉菜…こきりこ」
(08/11/29作)
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コメント
これはこれは確かなフォロー、誠にありがとうございます。「むぎや」は富山では「おわら」や「こきりこ」に比べてマイナーなのですが、全国の中学生の間では、最も有名な富山の民謡になりつつあるようです。本当に嬉しいことです。
拙ブログは、「むぎや」に関してそれ程多く話題にしていないのに、「むぎや」によるアクセス件数が余にも多いので、驚いているところです。きっとそれくらいに、全国で歌われているのではないでしょうか。
投稿: trefoglinefan | 2008/12/13 10:48
やいっちさん、中川さんは旧知の?友人です。こっそりブログも拝見していたのですが、やいっちさんが紹介されたのを機に、初めて書き込みをしてきました。
といっても、かぐら川やアリオーソという名では、私のことをわかられないはずなので、「????」という顔をされていることと思い、ちょっと愉快です。
投稿: かぐら川 | 2008/12/13 16:23
trefoglinefanさん
コメント、ありがとうございます。
日記の文中にあるように、ひょんなことから「むぎや」のことを知りました。
今は、もしかして「こきりこ」などに比べマイナーかもしれませんが(小生が疎いだけって可能性が大でしょうけど)、今後一層、広く歌われるようになるのでしょう。
富山のことをもっと知ってもらうためにも、そう願ってます。
ネット上では意外なキーワードでの検索でヒットすることがあって、小生のようなマイナーなブログでも、時に検索件数が増えることがあります。
結構、古い記事や、自分では力を入れて書いたけど、アップした当初はあまりアクセスされなかった記事が、そうした形で日の目を見るのは嬉しいものです。
投稿: やいっち | 2008/12/13 19:59
かぐら川さん
>中川さんは旧知の?友人です。
!!!
驚きました。
思いも寄らない形で人と人が繋がっている。
小生の記事が契機で初の書き込み。
書き込みにどんな反応をするのか、興味津々です。
縁が深まると面白いですね。
投稿: やいっち | 2008/12/13 20:06