水辺へ、そして夕焼け
16日(木)、夕陽をそして夕焼けを追って、自転車を駆って久しぶりに親水公園へ、さらに神通川へ。
風のない一日だったので、空中には埃が漂っているようで、必ずしも綺麗な夕景には巡り合えなかったけれど、慌しい日常の中、目にだけは眼福を与えることができたと思う。
或る日、こんなことを書いたことがある。
あるいは、そもそも夕焼けの光景が何か関係しているのだろうか。世界が茜色に染まる時間。空の青も醒め、木々の緑も闇の色に染まる直前、真っ赤な陽を浴びて戸惑い、屋根も木の板塀も人も橋も大地さえも一色に染まっている世界。
夕焼けは血の色なのだろうか。記憶の海の底深くに沈んで思い出せるはずもない羊水の色を無理にも思い出させるようでもある…、と。
あるいは、こんなことも書いてみた…。
羊水の中の赤が記憶の海の底に焼きついているからだなんて、何て頓珍漢なことを言う奴なんだろうと思うだろうか。
ま、いい。
時代錯誤で浮いた存在なのは分かりきっている。
この親水公園(正式名称は、「富山県富岩運河環水公園」)がほんの何年か前までは水の澱んだ運河であり、木場であり、水に漬かった木材特有の分厚い、澱んだ空気が辺り一帯に漂っていただなんて、信じられないかもしれない。
でも、今は市民の憩いの場所となっている。
過日は、運河クルーズなんてイベントも行なわれたほど。
環水公園としてあまりに綺麗に整備されていて、薄汚れた格好で歩いたりすると、浮いた存在になってしまうので、小生など、普段着姿ではちょっと敷居が高い。
どんなに綺麗かというと、たとえば、このサイトの画像を:
「お散歩 ~富岩運河環水公園~ - そらいろカフェ - 」
なので、ほんの時折、夕焼け狩りに事寄せて、自転車で散策に来る。
お洒落な格好で散歩に来る方が多いようで、そんな中、みすぼらしい格好の小生、気が弱いこともあり腰が引ける。
不審者に思われても困るし、撮影も控えめに、というか、及び腰である。
ちょっとだけ撮影で佇んだだけで、さっさと引き上げた。
今年の秋口だったか、この親水公園脇に日本で初めてという、カフェもできた。
正式名称は、「スターバックスコーヒー富山環水公園店」らしい。
全国でも珍しい(あるいは唯一か)、公園内のスターバックスということで、人気も上々だとか。
小生、手抜かりなく「スターバックスコーヒー富山環水公園店」の光景をデジカメで撮ったのだが、そこはそれ小生のこと、逆光になってしまい、何の写真なのかさっぱり分からない(文末に画像を示す)。
なので、その店の光景などは、下記を:
「環水公園に「スターバックス」がOPEN CASABLANCA in the Valley」
「スタバ公園(スターバックス公園) 行って来た^^ 7 - 斬りバカ日誌 - 」
「【新着情報】 自然と人が調和する富山県の新しいオアシス 富山県富岩運河環水公園」
「環水公園内スターバックス - カイやま日記 - 」
この公園については、既に何度かレポートや日記(「出来たばかりの郷里の公園を散歩した」)を書いたので、夕陽を追ってさらに神通川へ。
実際、今年の三月に散策した時のほうが、空気が澄んでいて遠望すると立山連峰も見事だった:
「帰郷して初めて散歩した(1)」
「帰郷して初めて散歩した(2)」
神通川の土手に立つのは、ほぼ一ヶ月ぶり:
「夕焼けを追って」
時間の経つのが早い。
秋の日のように釣瓶落としの如く、時が過ぎ去っていく。
この一ヶ月、自分は何をしただろう。
日々の生活に追われていただけではないか。
それがダメだとは思わないけれど、何か空しい。
36年ぶりの帰郷で富山の町の変貌ぶりに驚いたり、案外と変わっていないようでもあり、帰郷して既に7ヶ月半以上は経ったというのに、自分の居場所を見出せないでいる。
家がないわけじゃない。
でも、座がフワフワしている。落ち着かないのだ。
理由を数え上げたら切りがないけれど、時代の変化、町の変化(特に居住する人たちの変化)に追いついていけないことが大きいような気がする。
36年というのは、やはり、一人の人間にとって短からぬ歳月である。
まして、コミュニケーションを保つのが苦手な人間には尚更である。
帰郷して、まだ、同窓生とは一人も話しをしていない!
高速道路が充実し、車での仕事柄、富山を縦横に走る農道などの道路の立派さも知ってきている。
新幹線の工事も着々と進んでいる。
富山空港が出来たのは、小生が富山を離れてそんなに間もない頃だった…と思い込んでいたが、調べてみたら、就航は1963年(昭和38年) 、つまり38(サンパチ)豪雪の年だった。
帰省しても学校に疎遠なのは、保育所も小学校も中学も高校も、小生が卒業した翌年には校舎が建て替えられたという現実が要因として大きいとは思う。
学校へ行っても、校舎を見ても全く馴染めない。
当然だ。新しい校舎には一度だって足を踏み入れたことがないのだから。
ちょうどそのように、町を歩いていても、未だに我が町を歩いているという気になれない。
何かが違う。
何もかもが違うわけじゃないのだろうけど、浦島太郎の気分、気取って書くと、自分が異邦人であるかのようだ。
ただの一人も、胸のうちを語り合える相手がいないからだろうか。
でも、今後、そんな相手が自分に作れるとも思えない。
だから、自分がますます浮いていくと感じるのだろうか。
↑ 小生の手になる「スターバックスコーヒー富山環水公園店」の光景…のはずなのだが、思いっ切り逆光になってしまった。
(P.S.:)
ほぼ同じ画像を使って、モノローグ風な別ヴァージョンを作ってみました:
「水辺へ」
関連拙稿:
「帰省の列車から」
「寒波の中の帰郷」
「寒波の中の帰郷(続)」
「帰京ドタバタツーリング」
「黒の河」
「田舎での一日(付:田舎で思ったこと)」
「自分にとって田植えをするとは」
「ヨットの帆ならぬ」
「一本の木を友にして帰郷せし」
(08/10/18作)
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コメント
はじめまして、こんにちは。
夕陽を背にした環水公園はまったく違ったものに見えますね。一次は散歩コースにしていたのですが真夏の暑さでやられて以来行っていません。おまけと言ったらなんですが「スターバックスコーヒー」まで出来ているなんて知りませんでした。なんか自分の住んでいる近くの写真ばかりなので妙に親近感を覚えます。ボクも市立図書館駅前出張所の愛用組です。何といってもネット申し込みで駅前で受領すればいいだけですから重宝します。但しなかなか読み切って返却することが難しいので電話で延長しまくり組のひとりとなってしまいました。帰郷されて、未だ馴染めない御様子ですがいつかどこかでお会い出来そうな気がします。
投稿: 南無 | 2008/10/20 18:27
南無さん
はじめまして!
書き込み、ありがとうございます。
環水公園へは、小生は時間的な余裕もないことから、夕暮れ時に、自転車を駆ってほとんど駆け抜けるようにして散策するのです。
真昼間の環水公園は、多分、(木場の頃は別として)歩いたことがないような。
市立図書館の本館やCiC内の図書館、これからきっと随分とお世話になるはず。
本も借りるけど、CDを借りるのが楽しみ。
やはり時間がないので、(今もですが)CDを流しながら本を読んだりネットしたりしてます。
富山には、家庭の事情もあり、ほとんど引きこもりみたいな生活になっていて、馴染む機会も今の所、ないような状態。
まあ、焦らず追々に慣れ親しむものと淡い期待をしています。
そうそう、週に一度は市街地を自転車で駆け抜けるので、何処かで擦れ違うかもしれないですね。
どうぞ、よろしくおねがいします。
投稿: やいっち | 2008/10/21 03:20
スターバックスを“スタバ”と言って恥じない最近の自分にちょっと満足感と違和感を感じている年寄です。が、オープン以来この店はいつもいっぱいで店に入れないでいます。なにせこういう店はレジ?で口ごもってしまってスマートに注文ができないのです。冬が近くなってお客が少なくなってから行きたいと考えています。
それにしても富山らしくないこの辺りの風景はいったいどうしたことなのでしょう。みんなの力?で育てていきたい“富山”の一つですね。
投稿: かぐら川 | 2008/10/23 00:41
かぐら川さん
スターバックスは、親水公園内の店だけじゃなく、富山では未だ入った事がない。
昔ながらの喫茶店でないと落ち着かない。コーヒータイムをじっくり過ごさせる雰囲気がない(と自分には感じられる)。
この夏、東京へ行った際、帰りのバスの待ち合わせに初めてスタバに入りました:
http://atky.cocolog-nifty.com/manyo/2008/09/post-0a3a.html
多分、誰かに誘われない限り、最初で最後になりそう。
富山の町がドンドン綺麗になっていくのはいいけど、富山らしさってことを考えさせられるようでもある。
環水公園は地の利を生かしたってことなのでしょうけど、問題は町並み。
街路樹が東京より遥かに貧弱だし(これが不思議)、街中に城址公園や市役所の川沿いの公園以外に緑の園が少ない。
では、どうあれば富山らしいのか。
なかなか答えは見つかりにくいのでしょうね。
投稿: やいっち | 2008/10/23 09:04
“街路樹が東京より遥かに貧弱だし(これが不思議)、街中に城址公園や市役所の川沿いの公園以外に緑の園が少ない。”
実際のところ、数量的には(たとえば単位面積当たり)は、どうなのかわかりませんが、やいっちさんのコメントを読んだとき、「~ンッ、鋭い」と思わずうなったことです。決して富山は緑が少ないとは思いませんが、都市における緑の豊かさ(質的なものをふくむのでしょうね)を考えるとき、「貧弱」という点は、核心をついているような気がします。
やいっちさんの指摘と問題提起は、深いですね。
投稿: かぐら川 | 2008/10/29 01:49
かぐら川さん
街路樹のことは、小生の率直な印象です。
東京というと、大都会で緑が少なそうなイメージを持たれがちですが、実際には、少なくとも大阪などに比べて随分と緑が多い。
(家族連れや恋人同士が一日か半日をゆっくり過ごせる程度の規模があるような)大きな公園が幾つもあります。
23区に限っても、神宮外苑、皇居、日比谷公園、芝公園、青山公園(霊園)、井の頭公園、上野公園、砧公園、旧古河庭園、旧岩崎邸庭園、清澄庭園、小石川後楽園、石神井公園、善福寺川緑地(公園)、祖師谷公園、台場公園、浜離宮恩賜庭園、水元公園、向島百花園、明治公園、谷中霊園、代々木公園、夢の島公園……。
街路樹もかなり整っている。
分離帯が緑の帯ってのが多い。
荒川や多摩川などの土手は言うまでもない。
そんな東京から富山に来ると、富山ならあるはずの、もっとあっていいはずの緑の少なさを痛感させられてしまうのです。
まあ、車で少々走れば緑に満ちた場所はいくらでもあるという考え方もあるけど、やはり、市街地にも充実していてほしい。
特に街路樹の貧弱さを感じます。
但し、小生の印象です。
データで比較したら、あるいは人口比だとどうかは分かりません。
環水公園も、芝生が広くて気分がいいし、花々もいいのだけど、同時に、木立の緑がもっと欲しい。
何年か後には立派になるのでしょうけど。
投稿: やいっち | 2008/10/29 03:09
富山の街路樹のことで少々。
東京だと、道路の交差点でない場所での右折可能な場所は限られている。交通量が多いから仕方ないのだろうけど。
その点、富山はほとんど何処ででも右左折が可能。店や個人の駐車場が一杯ある。
よって、道路の路肩は、車が進入できるような箇所が必然的に多い。
となると、街路樹を連続して整えるわけにはいかなくなる(中央分離帯をグリーンベルトにしている東京のようなわけはいかなくなるし)。
結果、途切れ途切れな街路樹や草花の列となってしまう。
そもそも、ちょっと市街地を離れたら緑は一杯あるので、市街地にわざわざ緑を欲する気持が薄いのかもしれない。
投稿: やいっち | 2008/11/16 02:39