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2008/09/15

メビウスとエオゾーン

[本稿は、東京・浅草へ向う当日の夜に書いていたもの。載せる機会を逸していた。]

 クリフォード・A.ピックオーバー著『メビウスの帯』吉田三知世/訳 日経BP社)を読んでいたら、「エオゾーン」という言葉に出会った。
 小生は初耳(多分)。
 何やら化石の歴史や岩石などに関係する言葉らしい。

August_ferdinand_mebius

→ アウグスト・フェルディナント・メビウス(August Ferdinand Möbius、1790年11月17日 - 1868年9月26日) (画像・情報:「アウグスト・フェルディナント・メビウス - Wikipedia」より。)

 本書は、「メビウスの世界へようこそ!!エッシャーの版画作品でお馴染みのメビウスの帯のトリビアに加え、結び目理論、クラインの壺、ペンローズ・タイルなど、トポロジーの旅を味わう」といった本で、メビウスの輪(帯)で有名な数学者アウグスト・フェルディナント・メビウスの生涯や研究に付いての本であり、凡そ、そういった分野とは関係ないのに、なにゆえ「エオゾーン」なんて言葉に言及されているのか。

 どうやら本書の著者クリフォード・A.ピックオーバーの気まぐれ(?)で、アウグスト・フェルディナント・メビウスの末裔ですらないカール・アウグスト・メビウスの研究を、同じメビウスつながりという理由だけで(!)、というかメビウスという名前がついているがゆえにこそ、数学の話題から脇道に逸れたのであるとか。

 小生には興味のある話題なので、こういった余談は大歓迎である。
 それに、小生は憚りながら、「メビウスの輪」という言葉(概念)には、数学には疎い人間ながら、びびびと来る人間の一人である。
 これまで小説やエッセイに何度となく(性懲りなく)「メビウスの輪」という言葉を織り込んだものだった(小生の場合、何故か「メビウスの帯」ではなく、「メビウスの輪」という言葉を使いたくなる傾向にある)。

「メビウスの輪(帯)」とは、「メビウスの帯 - Wikipedia」によると、「帯状の長方形の片方の端を180°ひねり、他方の端に貼り合わせた形状の図形(曲面)」なのだが、まあ、ひとひねりを加えるだけで、一つの面を辿っていたはずが、気がつけば裏面へ、裏面に張り付いてたはずが、這い蹲っていったら、もとの表の面という、外面と内面、表と裏とが自在に行き来できてしまう、その不可思議さに小生などは惹かれてしまうのだ。
 トリックのような、でも、決して騙されているわけでもない。
 現実という時空の不可思議さ奥深さ多彩さを象徴しているようで、数学的な意味合いなど分からないのだけれど、「メビウス「の輪(帯)」という言葉を聴くだけで、脳髄のどこかがピーンと張り詰めるような感覚があり、ついつい瞑想の世界へ誘われてしまうのだ。

 だから、本書の著者クリフォード・A.ピックオーバーの気まぐれ(?)は、僭越ながら分かるのだ。

Stromatolites

← 「こぶのように見える先カンブリア代のストロマトライトの化石 Siyeh層中にあるものを撮影。米国モンタナ州グレイシャー国立公園」 (画像・情報:「ストロマトライト - Wikipedia」より。)

 カール・アウグスト(1825-1908)はドイツ初の公営水族館の建設責任者となり、また、クジラの骨格や真珠の形成について世界的な研究者だった。
 が、「彼の一番の自慢は、長いあいだ生物と考えられていたエオゾーン・カナデンセが、じつは鉱物が凝集したものだと明らかにしたことである」という。

「今では、この生物まがいの不思議な凝集物は「偽の地球初の動物(false dawn animal)と呼ばれている」。
「エオゾーン・カナデンセが生物に似た性質を持っていたおかげで、大勢の人がだまされてしまった」ようで、英国科学振興協会会長のチャールズ・ライエル卿や、さらにはかの「チャールズ・ダーウィンも、『種の起源』の第4版(1866年)に、地球上の生命が単純な単細胞生物から複雑な多細胞の動植物へと徐々に進化したことの証拠としてエオゾーン・カナデンセを紹介することができて嬉しい限りだと記している」という。
 エオゾーン・カナデンセは、ジョン・ウイリアム・ドーソン卿という当時最高の地質学者の一人も単細胞原生動物の殻だと結論していた。
 彼が「エオゾーン・カナデンセ」と命名したのである。「カナダで見つかった地球初の動物」という意味だという。
 一方、「エアゾーンは無機物で、大理石のなかで鉱物が層状に堆積したものに過ぎないと主張する者もいた」。
 激しい論争が10年、繰り広げられた挙句、カール・アウグスト・メビウスが、エオゾーンは生物などではないことを示した。というのだ(この項は、『メビウスの帯』p.64-5参照。)

 残念ながら、ネットでは(小生には)カール・アウグスト・メビウスについての情報を得ることはできなかった。

Alh84001_structures

→ 火星由来の岩石から発見された、一時は<生物の痕跡>かと騒がれたPNC隕石ALH84001 (画像は、「ALH84001 - Wikipedia, the free encyclopedia」より。) 素人には、生物の痕跡なのか、鉱石なのか、判断が付かない。「PNC隕石ALH84001」などについては、「INTEC JAPAN/BLOG ●火星に生物の痕跡発見か !(EJ第1527号)」参照のこと。

 せっかくなので、メビウスから離れ、表題に偽りアリとなるが、「エオゾーン」について、若干、メモしておく。

「ストロマトライト - Wikipedia」によると、今では「藍藻類(らんそうるい・シアノバクテリアとも)の死骸と泥粒などによって作られる層状の構造をもつ岩石のことである。特に、内部の断面が層状になっているものを指す」と明確になっているが、そこに到るまでには経緯があったようだ。
「古くからこの岩石の存在は知られていたが、1883年にJ.ホールがそれを「クリプトゾーン」(Cryptozoon)と名付けた。しかし当時は、これらが生物によりつくられたものかどうかは不明だった。その後、似たような構造は「エオゾーン」や「コレニア」と呼ばれた」のだ。

 この混乱については、「生物界の変遷と地球環境の変化」などが詳しい:

 1900年代初期にウオルコットが記載したストロマトライト(stromaは”bed”,1ithosは”rock”を意味するギリシア語)の一種,エオゾーン・カナデンセEozooncanadenseは生物起源ではなく,接触変成作用によるものと考える研究者は多かった。各地のストロマトライトの構成物質が石灰岩だったり,チャートやマンガン鉱,酸化鉄鉱などと変異があることも非生物起源と見る見方の原因となっていた。アジア地域ではクリプトゾーンやコレニアと呼ばれた渦巻き石灰岩は,顕微鏡で拡大しても生物組織が見いだせなかったため,疑似化石に格下げされた時代もあった。しかし,1954年にストロマトライト中にラン藻の化石が見つかった。さらに1960年代後半,オーストラリアの西海岸,シャーク湾のハメリンプールで,西オーストラリア州地質調査所のプレイフォードが現生のストロマトライトを発見し,構造と生成のメカニズムを報じると情勢は一変した。縞状構造は潮の干満と関連したラン藻の生成と死滅の繰り返しによる堆積構造だったのである。

                              (08/08/29 記)

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