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2008/08/30

二週間ぶりに図書館へ

富山で久しぶりの図書館」なる日記を書いたが、その時借りた本の返却の日が来た。
 返却の前日、なんとか読了。
 空模様が心配されたが、幸い雨に祟られることもなく、自転車で散歩を兼ね、街中へ。

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← 図書館の近くで見つけた噴水。夏の真っ盛りだったら、涼しげだったろうけど…。

 借りていたのは、ジョン・D・バロウ 著の『宇宙に法則はあるのか』(松浦 俊輔 訳 青土社)である。
「2004-06-24」の出版なのだが、実際には改装した本。最初に刊行されたのは、日本において宇宙論がまるでバブル経済の象徴の如く白熱していた頃で、その頃、スティーヴン・ホーキング著の『ホーキング、宇宙を語る』 (早川書房)がベストセラーになったというと、ピンと来る人も居るかもしれない。
 ということで本文が書かれたのは下手すると今から二十年ほど以前となる。

 小生は科学啓蒙書は出来るだけ新しいものを読むようにしている(お気に入りになったら、再読はするが)。
 科学は理論的探求も大切だが、特に宇宙論は天文観測の最新のデータが肝要。
 データにまるでそぐわない理論は、大半はボツとなる(例外もあるが)。

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→ 松岡みやび『クリスタル ハープ』(コロムビアミュージックエンタテインメント)

 本書を読んで、懸念はまさに杞憂で終わった。
 当時としての最新の宇宙論を踏まえつつ、筆者は冷静に探求の問題点を探ってみせてくれる。
 決して哲学の本ではないのだが、自然は数学の言葉で書かれているという小生にとってはガリレオの気になる見解も含め、ついつい形而上的瞑想に誘われる。
 教科書的網羅をしているようで(最初は、その点が気がかりだった)、段々議論が深まってくる。
 まるで小生が昨年から今年に掛けて読んだレオナルド・サスキンド著『宇宙のランドスケープ--宇宙の謎にひも理論が答えを出す』(林田陽子訳、日経BP社)ポール・デイヴィス著の『幸運な宇宙』(吉田三知世訳、日経BP社)リサ・ランドール著『ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く』(向山信治/監訳 塩原通緒/訳、日本放送出版協会 )ブライアン・グリーン著の『エレガントな宇宙』(林 一・林 大訳、草思社刊)リー・スモーリン著の『宇宙は自ら進化した』(野本陽代訳、NHK出版刊)といった本(の見解)を踏まえているかのような議論が展開されていた。
 アインシュタインの相対性理論がニュートンの重力の理論を包摂しているように、スーパー・ストリング理論が相対性理論を包摂できるのか、古典理論を完成したとも言われる相対性理論と量子力学との婚姻が成るのかどうか、結構、瀬戸際にあるらしい。
 それにしても、人間原理の不可思議さを思う。

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← バルザック著『あら皮――欲望の哲学』(小倉孝誠訳=解説 バルザック「人間喜劇」セレクション 第10巻)

 借りてきたのは、迷った挙句だが、オノレ・ド・バルザック著の『あら皮――欲望の哲学』(小倉孝誠訳=解説 バルザック「人間喜劇」セレクション 第10巻)である。
 数年前からバルザック熱が個人的に高まっていて、文庫本などで何冊か読み返したが、今後、彼の「人間喜劇」ワールドを堪能したいと思っている。
(これも、与謝野晶子訳『源氏物語』を予想外に早く面白く読了できたから、次へと読書の触手を伸ばせるのだ。)

「バルザックの小説の特性は、社会全体を俯瞰する巨大な視点と同時に、人間の精神の内部を精密に描くというところにある」というが、むしろ、「Letter from Yochomachi (Blogger) 8-18 Today バルザック没 (1850)……文明とは人間の物欲の産物である!」にあるように、「書いて書いて書きまくった生涯だったが、実にお金のことを詳しく書いた。彼は、人間とか人生というものはその経済的側面を精密に描くことなくしては描写し得ないと信じていたのだ。おかげで19世紀ヨーロッパの経済事情が、また当時のヨーロッパに蔓延していた俗っぽい「物欲」が、実によくわかるのである」という評が的を射ていると思う。
『源氏物語』もだったが、宮中での言葉遣いや風俗が精彩に描かれていて、当時の貴族社会が彷彿とする。
 とにかく、何よりバルザックのヴァイタリティに感服するばかりだ。

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→ クリフォード・A.ピックオーバー著『メビウスの帯』吉田三知世/訳 日経BP社)

 さらに、クリフォード・A.ピックオーバー著の『メビウスの帯』吉田三知世/訳 日経BP社)も借りてきた。
 これは、「メビウスの世界へようこそ!!エッシャーの版画作品でお馴染みのメビウスの帯のトリビアに加え、結び目理論、クラインの壺、ペンローズ・タイルなど、トポロジーの旅を味わう」というもので、専ら、寝床での楽しみのための本。
 読んでいるうちに眼が回って、きっとすぐに眠りに就けるだろう。

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← 久世 光彦 (著)『早く昔になればいい』(新潮文庫) (画像は、「Amazon.co.jp: 通販サイト」より)

 借りた本の三冊目は、ある意味、待望の本。
 以前から借りようと思いつつ、でも、買って読みたいと思ったりして迷っていた。
 それは、久世 光彦 (著)『早く昔になればいい』(新潮文庫)である(小生が借りたのは中央公論社の単行本だった)。
 何ゆえ本書を読みたかったのかは、拙稿「無言坂…早く昔になればいい」に縷々書いたので、ここでは略す。
 読む前からドキドキしている。
 なんだか、少年の日の自分の出来事(仕出かしたかもしれないこと)を書いているような気がしているのだ。

 さて、今回は4階の一般図書室で本を三冊借りたあと、さらに5階の青少年図書室へ向った。
「音と映像資料コーナー」でCDを借りるためである。
 日記に何度も、帰郷して以来、音楽的に貧弱な環境に参っていると書いた。
 生活に時間的なことも含め、余裕があるわけではないが、やはり音楽が聴けない状況は辛い。
 貸し出し期間が一週間と短いのは苦しいが、とにかく音楽に飢えている。贅沢は言っておられない。

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→ 加藤登紀子「全曲集「百万本のバラ」」(ポリドール) (画像は、「Amazon.co.jp: 通販サイト」より)

 借りたのは加藤登紀子の「全曲集「百万本のバラ」」(ポリドール)と研ナオコの『研ナオコ スペシャルベスト』(ポニーキャニオン)と、松岡みやびの『クリスタル ハープ』(コロムビアミュージックエンタテインメント)の三点。
 歌手では竹内まりや高橋真梨子薬師丸ひろ子なども考えたが、まあ、今後の楽しみである。

 ハープのCDを物色したがなかなか見つからず、いらいらしていたら、偶然、松岡みやびの『クリスタル ハープ』のジャケットが、これを借りてよとばかりにこちらに向いていて、これに決めた、である。

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← 研ナオコ『研ナオコ スペシャルベスト』(ポニーキャニオン)

富山で久しぶりの図書館」なる日記でAVコーナーがプア、なんて軽率なことを書いたが、じっくり眺めたら、これはこれで小生には宝の山に見えてくる。
 当分は借りるもの、聴くものに事欠くことはないだろう。

 日々、神経をすり減らすことが続いている。
 せめて、本と音楽に対面する間は辛いことは忘れていたい。
 語り合う相手がいない小生には、こうした空間に遊ぶのが今は至福なのである。

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→ ジョン・D・バロウ 著『宇宙に法則はあるのか』(松浦 俊輔 訳 青土社)

 図書館へ向う途中、公園の脇を通りかかったのだが、そこに噴水があることに気付いた。
 なので、帰り道、ちょっと立ち寄って、噴水から吹き上がる水をちょっと愛でる。
(冒頭の写真を参照。)
 曇天だったので、爽快というわけにはいかなかったけれど、水の諸相の演出する世界は渇いた心を潤してくれる。
                           (08/08/25 記)

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コメント

関東東海では集中豪雨で死者も出ています、電車の遅延も相次いでいます、お互い無事にネットできるありがたさよ!
加藤登紀子さんの「バラ」の歌はロシアの看板描きピロスマニがかかわっていましたっけ?
Bunkamura「青春のロシア・アヴァンギャルド」の音声ガイドに出ていたのです。
僕は図書館で借りないですね、線も引けないし、借り物だと思うとつい億劫になるというか、汚しちゃだめとか思ったり。
図書館は自転車を止めておく場所ですね。

投稿: oki | 2008/08/30 22:33

oki さん

>関東東海では集中豪雨で死者も出ています、電車の遅延も相次いでいます

小生、29日の夜半近くに富山を発ち、30日の7時20分頃、東京駅に着きました。
深夜バスを使ってのミニ旅行です。
雨、東京で祟られました!

>加藤登紀子さんの「バラ」の歌はロシアの看板描きピロスマニがかかわっていましたっけ?

この辺りのことは、興味があるので、後日、改めて調べてみたいです。
「バラ」の歌は、小生には思い出の絡む懐かしい歌なのです。

>僕は図書館で借りないですね、線も引けないし、

この話題は前にも書いて、前にも同じようなコメントを頂き、今回も同じようなレスを書くことになりますが、まあ、小生も借りて読むのは好きじゃない、(新刊や古本を問わず)書店で物色して、買って読むのが望みです。
蔵書にもしたいし、読み返したいし。
でも、もう、5年以上、貧すればどんすの生活。ま、窮余の一策です。メリットもありますし。

投稿: やいっち | 2008/09/01 07:09

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