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2008/06/24

「風天」の渥美清さん

渥美清さんの173句見つかる、俳号「風天」で心情生き生き」 ( 「YOMIURI ONLINE(読売新聞)」より)という記事をたった今、ネット上で読んだ。
(記事の内容は、末尾に全文とはいかないが転載する。)

9784903175171

← 『風天 渥美清のうた』(森 英介, 石 寒太:解説 発行:大空出版

 渥美清さんのファンなのか、それとも、「男はつらいよ」の寅さんのファンなのか、自分でも分からない。小生は既に彼に付いて(というより彼への思い入れというべきか)は、幾つか雑文も書いている(末尾で示す)ので、本稿では彼の句の紹介に留めておく。
(「風天(フーテン)」という言葉(俳号)については、拙稿「風天居士…寅さん」にやや詳しく書いた。)

 見つかった句の全貌は分からない。「発見された全句を収めた「風天 渥美清のうた」(大空出版)は、27日発売される」というから、それを待つことにする。

 上掲の記事には幾つか紹介されている:

雲のゆく萩のこぼれて道祖神
ようだい悪くなり苺(いちご)まくらもと
秋の野犬ぽつんと日暮れて
花道に降る春雨や音もなく

 この中の1995年1月の作という「花道に降る春雨や音もなく」については、例えば読売新聞朝刊(24日付)の「編集手帳」でエピソードが紹介されていた。
 小林信彦(著の『おかしな男 渥美清』(新潮文庫))によると、「渥美清さんはその3ヶ月ほど前、付き人の篠原靖治さんに、「シノ、おれは癌なんだよ」と打ち明けている」のだとか。
 
 この機会に、ネットで渥美清さん(例によって、以下、敬愛の念を籠めて敬称は略させてもらう)の俳句を検索してみた。
 例えば、「きっこの日記 2004/03/11 (木) 愛しの寅さん 3」では、「フーテンの寅さん、こと、渥美清は、俳句を詠む。俳号は、風天(ふうてん)と言う」として、下記が紹介されていた(このたび発見された俳句ではないのだろうが):
ベースボール遠く見ている野菊かな  風天

花びらの出て又入るや鯉の口  〃

すだれ打つ夕立聞くや老いし猫  〃

赤とんぼじっとしたまま明日どうする  〃

あと少しなのに本閉じる花冷え  〃

手袋ぬいであかり暗くする  〃

年賀だけでしのぶちいママのいる場末  〃

背のびして大声あげて虹を呼ぶ  〃


 この中の、「赤とんぼじっとしたまま明日どうする」なる句は人気があるようで、方々で紹介されている。
 例えば、「『増殖する俳句歳時記』 October 16 2000 渥美 清」では、清水哲男氏の句評を読むことが出来る。
「三木露風の童謡「赤とんぼ」を思い出」しつつも、渥美清独自の持ち味が出ている…と。
 この句の「じっとしたまま明日どうする」の「じっとしたまま」に彼の体調(病)の状態を重ね合わせると、生活感というより哀感を嗅ぎ取ってしまうのは、あるいは読み込みすぎなのだろうか。

 俳句を純粋に句として詠む際には、句を詠んだ人の人生やその時の情況などが分からずとも、句のみで屹立しているに越したことはない。
 が、やはり、とはいっても、句に詠み手の人生を重ね合わせてしまうのも人情なのだろう。
 まして、相手は渥美清なのだ。

 せっかくなので、「赤とんぼじっとしたまま明日どうする」を含む「アエラ句会』の風天の全45句を」ネットで探し出してみた(典拠は、「『俳句朝日』1996.10 p159」のようである)。
 多少のダブりはあるが、全45句を以下、掲げる:

赤とんぼじっとしたまま明日どうする
村の子がくれた林檎ひとつ旅いそぐ
どぶろくやはらかく噛んで眠くなってくる
花冷えや我が内(うち)と外(そと)に君の居て
あと少しなのに本閉じる花冷え
病む母の声たよりシャボン玉
ひとり遊びなれし子のシャボン玉
豆ふ屋の奥ぼんぼり雛くらく
小道具の失せしまま雛決まり
やはらかく浴衣着る女のび熱かな
うつり香の浴衣まるめてそのままに
ぬれている五重の搭も紫陽花と
幼き日紫陽花の家と場所知らず
一っ杯めのために飲んでるビールかな
そば食らう歯のない婆(ひと)や夜の駅
ベースボール遠く見ている野菊かな
時雨きてかっこうの声遠く
花びらの出て又入るや鯉の口
いく春や誰や名前呼ぶように
晩春や下宿のギターつたなくて
初めての煙草覚えし隅田川
閉ざされし茶亭すだれのほつれかな
すだれ打つ夕立聞くや老いし猫
蛍消え髪の匂(にお)いのなかに居る
団扇にてかるく袖打つ仲となり
月ふんで三番目まで歌う帰り道
蒼き月案内子に命やどすよう
羽虫飛ぶ葡萄のさだめ客の果て
雛にぎるように渡すぶどうひと房
はだにふれとくしたような勝力士
砂つきて首かしげるや負けずもう
大きめの手袋した子の息白く
手袋で泣いた腕白目の赤く
家政婦の残せし手袋水冷えて
手袋ぬいであかり暗くする
股ぐらに巻き込む布団眠れぬ夜
いわせれば文句ありそなせんべい布団
年賀だけでしのぶちいママのいる場末
達筆の年賀の友の場所知らず
乱歩讀む窓のガラスに蝸牛
なが雨や銀の帯ひく蝸牛
枝豆の皮だけつまむ太い指
枝豆を噛む口許や話好き
背のびして大声あげて虹を呼ぶ
お遍路が一列に行く虹の中

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→ 小林信彦/著『おかしな男 渥美清』(新潮文庫)

渥美清さんの173句見つかる、俳号「風天」で心情生き生き」 ( 「YOMIURI ONLINE(読売新聞)」より):

 映画「男はつらいよ」シリーズの人気俳優、渥美清さんが作った俳句が173句見つかった。

 1996年に亡くなるまで私生活について多くを語らなかった渥美さんだが、発見された俳句からはその心情が生き生きと伝わってくる。

 俳句を発掘したのは、コラムニストの森英介さん。長野県小諸市の「渥美清こもろ寅さん会館」で紹介されていた句の出所が不明であることを知り、関係者に当たったところ、渥美さんが、73年から76年にかけて、ミニコミ誌「話の特集」編集長が主宰する句会に参加していたことが判明。事務局の記録から渥美さん作の135句が見つかった。

 さらに、この句会のメンバーだったイラストレーターの和田誠さんの指摘で、渥美さんが70、90年代に二つの句会に参加していたことが分かり、計38句の存在が確認された。

 俳号は「風天」。渥美さんが演じ続けたフーテンの寅次郎にちなんだ名だ。最も古い句の一つが、69年から始まった「男はつらいよ」シリーズが軌道に乗り始めた73年の「さくら幸せにナッテオクレヨ寅次郎」。

 「雲のゆく萩のこぼれて道祖神」など旅の句や、「ようだい悪くなり苺(いちご)まくらもと」「秋の野犬ぽつんと日暮れて」など身の回りを詠んだ句など、国民的なスターとは違う一面をうかがわせる句がずらり。「花道に降る春雨や音もなく」は、亡くなる1年半前、95年1月の作として記録が残っている。

 森さんは「関係者でも渥美さんが俳句をたしなんでいたことを知らない人が多い。私生活もほとんど知られていないが、気持ちがふとにじんで作ったような俳句からは、寅さんでない渥美さんの心が見えてくる」と話している。発見された全句を収めた「風天 渥美清のうた」(大空出版)は、27日発売される。

             (2008年6月23日14時31分 読売新聞)


関連の拙稿]:
風天居士…寅さん
指パッチン(寅さんの映画を見る)
西田敏行のこと

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