「たばこ1箱千円」から大麻の話へ
本稿は、「中島らもと大麻と煙草と」を転記したもの。先ごろ、「たばこ1箱千円」にという話題が世上を少々賑わせたので掲載する。
今の小生としては書き換えたい部分もあるが、敢えて原則原文のまま旧稿を温める。
「たばこ1箱千円」については、「「たばこ1箱千円」で超党派議連 消費税アップけん制も」などを読むと、「自民党内で浮上している消費税率引き上げ論をけん制する狙いも見え隠れする」などと、やや生臭い思惑で浮上したようで、小生としては納得がいかない。
← 清水登之・画「大麻収穫」 (画像は、「清水登之氏の「大麻収穫」」より。)
何も「たばこ1箱千円」なら煙草を吸う人が減って、健康問題(伴って医療費の削減)の解決の一助になるではないか、という大上段の議論が足りないから…という意味ではない。
例えば、「たばこ1箱千円」なら煙草を吸う人が減って…という議論にしても、やや疑問がある。アメリカなどの煙草メーカーは国内の煙草の販売量が減った分以上を、日本を含めたアジアやアフリカでの販売強化で補ってきた。
日本の煙草メーカーも海外(アジア・アフリカ)での販売戦略を強化するのは歴然としている。
国内で出る臭いモノに蓋をしたら、その強烈な悪臭は後進国で思いっきりぶっ放されている、というわけである。日本(国内)さえよければそれでいいのか、という議論もあっていいはず。
まあ、ちょっとだけ変化球をひょろひょろ投げてみようかなということである。
一読すれば分かるが、焦点は煙草ではなく、大麻である。
そう、「法律の目的を記した条文はない」不思議な「大麻取締法」!
煙草を許可しているのに何故、大麻がダメなのかの理由を当局は明確に示せるのだろうか。
あるいはアメリカへの遠慮? それとも惰性?
「(前略)第2次大戦後の占領政策の中で神道との結び付きの深い大麻に対して占領米軍が危惧をもち、また当時発達しつつあったアメリカにおける石油化学産業や木材パルプ産業の意向をうけてその市場の確保という経済的思惑などを背景として、大麻の規制が行われたのではないか」というのは、歴史的背景として真実なのか。
「たばこ1箱千円」というのなら、「大麻1箱千円」ってのも、検討してみる値打ちがあるのでは。
なお、この旧稿を書き下ろした当時の事情については、当該頁の冒頭に注記してある。
車中でラジオを聞いていたら、作家・中島らも氏が有罪判決を受けたと聞いた。
5月26日の朝日新聞夕刊によると、執行猶予付きの有罪判決を受けたようである。
そもそも同氏は、「自宅に大麻約6・4㌘所持していたとして大麻取締法違反(所持)の罪に問われていたのである:
http://www.yomiuri.co.jp/hochi/news/feb/o20030205_10.htm (← 既に削除されている)
正確には、大麻所持現行犯による逮捕だったらしい。小生は、中島らも氏が人気作家だったことは知っているが、彼の本を一冊も読んだことがなく、せいぜいラジオで少々彼の声を聞いたことがある程度である。あるいは、何かの囲みのコラムくらいは読んだことがあるかもしれないが、それ以上は彼に付いて知らない。
彼は、上記したように、大麻取締法違反の容疑で逮捕された。法律を犯したのだから、逮捕されるのは、当然である。そのことに異議を唱えるとか、逮捕されて喝采するとか、とにかく何の感懐も湧かない。
もう一度、書くが、彼は大麻取締法違反の容疑で逮捕された。麻薬取締法で逮捕されたわけではない。実は、ここに小生が関心を抱いた切っ掛けがある。
例えば、こんなサイトがある:
「大麻取締法違反被告事件[意見陳情書]」
ここでは、大麻取締法違反に問われている被告についての意見陳情書を読むことが出来る。その要旨の大枠は、そもそも大麻を取り締まる大麻取締法の正当性を疑うというものだ。
大麻が麻薬の一種であるなら、麻薬取締法の対象となる薬物なり毒物に含めておけばいいはずである。何故、大麻は麻薬取締法ではなく、大麻取締法という独立した法律で括られているのか。
あるいは、そもそも大麻は麻薬などの劇物なのか。煙草と比べて毒性は強いのか弱いのか。こうした知識は小生にはまるでないのである。だから、同氏が逮捕され、その流れとして釈放されたと聞いても、まあ、法律違反したのだから、当然である以上には考えようがないわけである。
医学的な研究が大麻について、どの程度になされているか、小生は知らない。ただ、少なくとも煙草より有害だという研究結果は出ていない。むしろ、大麻を吸う事で他のより有害な薬物に手を出さずに済むとか、大麻を吸引しても禁断症状が出ないとも聞いている。
だからといって、別に小生は大麻を解禁しろという主張をするつもりはない。ただ、煙草の製造販売が認められているのに、何故、大麻がわざわざ大麻取締法で取り締まられるのか、その根拠がわからないし、分からない以上に理不尽さを感じるだけである。
大麻とはなにか、については、下記のサイトを参照願いたい:
「大麻とはなにか?」
→ 「麻の葉」 (画像は、「アサ - Wikipedia」より。この頁は一読の値打ちあり。「麻」文化の根深さ大切さが分かるはず。)
これを読むと、大麻や麻と日本人とのかかわりは相当に古く且つ深いことが分かる。その大麻が規制されたのは、戦後のアメリカの占領政策の中においてであるということも、小生は初めて知った。
多摩川が「麻が多く栽培されてきた川という意味」で、この文字が使われているというのも、初耳である。同上のサイトでは、「私が住んでいる国分寺は、武蔵の国の時代に「多麻」とよばれた地域で、特産品として朝廷に麻布を献上していたと言われています」とあるが、確かに麻に関係が深いこともあるが、そもそも多摩は、高麗(コマ)からの渡来人の居住の地(あるいは他の地からの移住の地)だったことに由来することもあるのではないかと思う。
大麻の使用によって、何か大きなトラブルを起こしたという事例があるのかどうか、小生は知らない。むしろ、同上のサイトにあるように、大麻を薬草(ハーブ)の一種と捉えた方が適切なのではないかとさえ、思えるのである。
下記サイトを見て欲しい:
「薬物乱用について」
薬物乱用防止パンフレットなどを見ても、確かに大麻が記載されているが、覚醒剤やシンナー、煙草、アルコールなどについての記述に比べて、特段の記述がない。そもそも書くべき根拠がないのではないかとさえ、思われてくる。
実は、中島らも氏は、冒頭近くで示したサイトで見られるように、「中島容疑者は出世作の小説「今夜、すべてのバーで」でアルコール依存症体験を題材にしたほか、「ガダラの豚」では主人公に、麻薬やマリフアナを肯定するせりふを語らせた。海外での薬物体験や麻薬文化などを、さまざまなエッセーや小説で書き、薬物は作品の一つのテーマだった」のである。
つまり、ある意味で、彼の言動は当局の神経を逆撫でするようなものだったのである。
どんな法律であれ、法律は法律であり、その法律に敢えて抵触するような言動は許さん、とうことなのか。
同サイトには、「近所の人によると、中島容疑者は夜中に大音量で音楽をかけていることもあり「近所付き合いもなかった」という」が、彼の逮捕の切っ掛けも通報によるものらしい。
今、小生は、うっかり言動と一括りに書いたが言論で大麻取締法は根拠が薄い、存在する意義がないのではと主張することは、問題ないはずで(その主張の当否はともかく)、中島らも氏が逮捕されたのは、実際に使用したからである。つまり、言動の「動」をやってしまったわけだ。
中島らも氏について、仮に非難するなら、悪法といえども法律なのだから、それを破ったのは拙いということもある。しかし、それ以上に作家として、「海外での薬物体験や麻薬文化などを、さまざまなエッセーや小説で書き、薬物は作品の一つのテーマだったが「日本国内では絶対に(麻薬は)やらない」が口癖」だったのに、それを自らが破ったことに惜しまれる点があるのだろう。
「同容疑者に近い関係者の間には、逮捕の報にやりきれなさが漂った」というのも、言行の不一致に、裏切られた思いがあるからなのだろうか。
冒頭の朝日新聞の記事によると、裁判官の話として「(前略)今後は法に触れる行為をせず、執筆活動を続けることで信頼回復に努めると誓っている」と伝えている。
さて、中島らも氏は、今後、どのような「言動」を展開されるのだろうか。大麻のことは、禁句になるのだろうか。さすがに再度、大麻を使用することはないが、大麻を禁制品にする根拠がないことからすると、「言」については、大麻についても意気盛んに続けてもいいのではないか。
それとも、大麻に触れたら、即、執行猶予は取り消しとなるのだろうか。
もしかしたら同氏は、同氏を逮捕した厚生労働省の前で煙草をスパスパしながら、大麻などについて従前通りの主張を展開する……なんてことは、ないだろう ……ね。そんな根性があったら凄いけど、そんなことはできない…、よね。
(03/05/27 記)
[煙草関連の拙稿]
「カナダでのマリファナ事情あれこれ」
「たばこの日 たばこの火」
「煙草の値段は命の値段」
「「煤払」…末期の一服」
「煙草に火を点けて」
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コメント
大麻をやるぐらいなら煙草を吸えという政府・マスコミの策略だったりして
投稿: 西村友佑 | 2008/07/02 17:20
西村友佑さん
>大麻をやるぐらいなら煙草を吸えという政府・マスコミの策略だったりして
冗談も大麻にしろってことでしょうかね。
ところで、タバコ一箱千円の話題、雑談で喫煙者とお喋りしても、反対する人が案外と少ないって印象を受ける。
まさか、一箱千円にはならないだろうって、高を括っているのかな。
投稿: やいっち | 2008/07/03 03:50