図書館の本のこと(続)
読書家というのは、一日三冊、年間で千冊は読まないと、そう自称・他称することは出来ないだろう(読書の中味・質は言うまでもない)。
それでも読めるのは十年で一万冊、生涯で十万冊を読めるかどうか。この他に主要な雑誌や論文もある。現代ならネット情報(小生など、紙の本や雑誌・新聞よりネットの文章を読むほうが時間的にも量的にも多くなっている)。
← 「図書館の利用」 (画像は、「図書館 - Wikipedia」より) 小生は未だ一度も地下(?)の閉架書庫を覗いたことがない。
読める人でそうである。
まして遅読の小生だ、生涯で一万冊だって無理。
本には和書(日本語)の本もあれば洋書(欧米や韓国、中国語などの本)もある。
本を読むとは、読まない・読めない・今生接することのない世界を思い知ること、荒波逆巻く大海を手漕ぎで乗り出していくような、そんな無謀な営為なのかもしれない。
今、読んでいる本に熱中しその世界に没頭しえるとしても、その夢のひと時は本を手放すと共に余熱・微熱も何処へやら、活字の宇宙の広さ・深さに呆然とする。
それが嬉しい戸惑いだったのはまだホンの少しは不遜でありえた若き頃の、それもほんの一瞬で、呆気なく知の宇宙から滑落していった。
一方で、活字の宇宙はあるいはビッグバン宇宙の拡大にも増して急膨張を続けている。
何かを読んで我が世界をほんの幾許かでも広め豊かにしても、現実の世界はその何乗倍もの凄まじさで豊かさ・深さ・複雑さを加算していく。
嵐の海の木の葉、急流に翻弄される笹舟どころの騒ぎではないのである。
…と書いてきて、ビッグバン宇宙の現実に符合し追随するかのように活字の宇宙が急拡大し、それでも宇宙の膨張に追いつけなくて、ついには情報が電子化されて、知の宇宙もビッグバンし始めてしまっているのかもしれない、なんて思えてきた。
読めないどころか、手にすることさえないどころか、その背表紙さえ目にすることのない本のほうが圧倒的に多いということ(読んでも理解不能云々はさて置くとしても)。
そうは云っても、自分は今ここに生きているわけであって、できることやりたいことの万分の一であろうとやっていくしかない。
美は細部にありを敢えて誤解・誤用すると、一冊の本に宇宙を感じることだってできるし体験としてありえることでもある。
宇宙の全てを飲み乾すことは叶わないとしても、この胸を何がしかの思いで一杯にしたり熱くなったりすることは誰しもが可能なのだと思う。
小生には図書館(の本)をよく利用した時期が何度かある。学生時代、その後の上京してからのフリーター時代、94年3月に会社を首になっての失業時代(職にありついてからも借金まみれでサラリーマンになっての二年も続く)、不況と営業不振のゆえに本を買えなくなった04年以降帰郷直前までの時期。
それぞれの時期に数百冊は借りているので(図書館内で読むことは少ない)、友人・知人からの借りたものも含めると千冊は軽く越えているはず。
(帰郷してからは、図書館事情が芳しくないのと、日々が慌しいこともあって、旧蔵の本で急場(?)しのぎしている。)
→ ウンベルト・エーコ 『薔薇の名前〈上〉 』(河島英昭 訳 東京創元社) 図書館というと、何故かこの「薔薇の名前」を連想してしまう。
図書館に絡む思い出も少なからずあるが、これは今回は保留にしておく。
それより図書館の開架の独特の匂いが図書館というと自然と脳裏に浮んでくる。
本の紙魚の匂いなのか埃なのか、昔は木造の図書館が多かったこと、床も机も木製だったことが関係しているのか。
それとも昔はエアコンなどなくて、夏などドアや窓が開けっ放しだったりして、机に向ってじっとしていると、緑の香、土の香りが感じられていたのか。
それでもやはり書物から漂いくる匂いが一番印象的である。
紙魚の匂いでもあろうが、本の表紙などに滲み込んだ手垢やあるいは汗の名残りもあるのだろうか。
古本というと、鉛筆などでの書き込みも時折遭遇する不愉快なものである。
感想か、ただの強調か、メモなのか、大概は他人の書き込みは不快の種である。
ただ、めったにないことだが、借りた人・読んだ人が挟んだものか、ちょっとしたカードや栞が挟まっているのを発見することがある。
趣味で栞を集めている小生は珍しい栞に意外なところで出会うと単純に嬉しい。
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