富山のタクシー/運転代行事情
小生は東京でタクシードライバーとして12年と3ヶ月ほど働いてきたこともあり、郷里の富山に帰ってきても、富山のタクシー事情がどうしても気に掛かる。
なのでそのうちに(まだ事情がつかみきれない面が多そうで基本的に印象を連ねることに終始しそうだが)、小生が見た富山のタクシー事情なる一文を書くつもりである。
← 桜越しのいたち川。4月6日、撮影。「富山県富山市を流れる延長約12kmの河川。常願寺川と神通川という富山の2大河川を結ぶ川である」(「いたち川 (富山市) - Wikipedia」より)。小生の家もこの2大河川の間の扇状地に位置している。
が、その前に、これは特に夜、さらには夜中になると顕著な傾向として明らかな<現象>の見られることもあり、今日は富山(乃至恐らくは多くの地方の市街地)の、都会では(少なくとも東京では滅多に)見られない交通事情の一端についてメモしておきたい。
伝えたいのは、自動車運転代行(業者)の車が、夜も深まりとともにタクシーの数を圧倒しそうなほどに活躍している、という事実である。
話の順番として、まず「運転代行(業)」とは何ぞやについて説明しておくべきだろう。
「運転代行業の定義」なる頁を参照させていただく(ホームページ:「株式会社 第一通商」)。
「運輸行政の対象とされている運転代行業の定義」とは:
行政の対象としている運転代行業というのは、主に飲酒等のため自己の車両を運転する事が出来なくなった者に代わって、その運転を代行するサービスであり、運転者が2人1組となって、顧客の車両に顧客を乗せて、それに代行車が着いていく形態で営業するものをいいます。
この頁には、「タクシー事業者による運転代行(いわゆるタクシー代行)、陸送業や自家用自動車管理業にあたるもの、運転者の派遣とみられるもの等は、含まれません」とあるが、一般の人は恐らく、運転代行業を厳格に理解しているわけではないだろうから(また利用客にはそこまでの理解は特に必要がないだろう)、タクシー代行も含めて運転代行なのだとここでは考えておく。
(どうしてもきっちりした理解でないと気が収まらないという人は、一例として、「神奈川県警-自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律概要」などをじっくりお読み願いたい。平成14年6月1日にこの法律が施行されたわけで、結構新しい法律のようである。)
「運転代行 - Wikipedia」には更に詳しい説明が得られる:
業務は、2人1組で車(随伴車)1台を用いて行なわれる。まず、酒を飲んでしまったなどの理由で自動車が運転できなくなった人(顧客)からの依頼を受け、待ち合わせ場所(飲食店など)に2人で随伴車で向かう。そこで、顧客車のキーを預かる(そして、もし、顧客車が遠くに駐車してある場合には、さらに随伴車でそこへ向かう)。2人のうちの1人は顧客車を運転し、顧客自身や顧客車の搭乗者もこちらの車に乗せて、目的地(顧客の自宅など)まで移動させる。もう1人は、空の随伴車で目的地まで随行する。目的地に着いたら、顧客に車を返し料金を受け取る。そして、2人で随伴車で営業所に戻る。
小生は東京でタクシードライバーをやっていた際は、運転代行の車には滅多に見かけかなったし、たまに見かけても、タクシーのライバル業が現れてきたとか、ちゃんとした法整備がされていないんじゃないかとか、事故など万が一の際の補償などは心配がないのかとか、要するに冷ややかな目で見ていたものだった。
普通の白ナンバーの車でお客さんを乗せていたりする光景を見かけたりすると、ああ、またお客さんが奪われた…という思いで、冷ややかというより憎たらしくも感じて横目で見遣っていたような。
折りしも不況や規制緩和で客の減っていた中での運転代行業者の出現で、余裕を持っては受けとめられなかった気がする。
小生の浅い理解の一方で時代は確実に(特に地方は)運転代行の車をも必要とする社会に移行しつつあったのだ。
「ちゃんとした法整備がされていないんじゃないか」という点については、現在は既に立派に法整備されていることは既出の通り(例えば、「自動車運転代行業に従事する人が代行運転普通自動車を運転する場合にも、普通第二種免許が必要」といっことも含めて)。
但し、「北國新聞・富山新聞 運転代行の取り締まり強化-利用客車両への保険加入も」(2/7付け)なる記事に見られるように、実際には(法的にも)未成熟な業界(良心的にやっている会社ほど損を被るとか、一般社会からの認知度が低いとか)であるようだ:
国土交通省と警察庁は7日、飲酒運転防止の一環として運転代行サービスを安心して利用できる環境を整えようと、料金システムの透明化や悪質業者に対する取り締まりの徹底などに乗り出すことを決めた。利用客の所有車に適用する車両保険への業者の加入義務付けも検討する。警察庁によると、運転代行サービス業者は2007年8月末時点で7007あり、02年末より1・7倍に増え、代行運転中の事故も2・4倍に増加。営業免許を持たない従業員に運転をさせて摘発されるケースもある。
警察庁が昨年10月に実施した一般アンケートでは「料金が不透明」「安心できる業者が分からない」「事故時の補償が不十分」などの回答が多かった。
このため、両省庁は都道府県警や運輸支局を通じて、業者に料金表の明示や利用前の概算額の説明を徹底させ、明細を記した領収書の発行を指導。業界団体による優良事業者認定にも協力する。
転記文中、「悪質業者に対する取り締まりの徹底」というくだりがある。
「運転代行 - Wikipedia」によると、「従来は法規制が全くなく、参入障壁が少ないことからこのサービスを行なっている業者が多かったが、暴力団の資金源になっているケースが少なくなかった。そこで2002年6月(飲酒運転の厳罰化が盛り込まれた道路交通法改正とセット)に「自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律」が施行され、都道府県公安委員会の認可がなければ営業することができなくなった」というのである。
さて前置きが長くなった。
富山などの地方都市を中心に急激に運転代行業者が、つまりは運転代行の車へのニーズが高まっているのは何故なのか。
これは何と言っても、飲酒運転への厳しい取締り、罰則の強化、社会の飲酒運転への厳しい目、そういった要因が連動していることが挙げられよう。
その前に地方都市は、東京や大阪などに比べ、地下鉄などの公共輸送機関の乏しさも背景にある。
富山は、驚いたことに、市街地どころか県庁所在地近辺や桜木町界隈でさえ、交通網が整備されていないのだ。
道路を新たに作るより、ライトレールや路面電車、深夜バスなどの充実を急ぐべきではないかと思われる。
無論、前提としての車社会という現実が大前提なのは言うまでもない。
バス路線は、帰郷してつくづく思い知らされたが、路線の数も便数も嘆かわしいほどに減ってしまっている。
移動は車であり、車がないと閉じ篭り状態に追い込まれる。
車を買わないと(所有しといないと)、社会の中の一員ではないかのようだ。地方都市の旧来の商店街は寂れ、街道を過ぎ行く自動車の人が気まぐれに店をみつけてくれたら御の字である。
スーパーさえも近所から消え失せ、コンビニで安からぬ商品を買うしかない…。
(実際、自分はおろか知り合いに車に乗せてくれる人がいないと、市街地にあってさえ、陸の孤島状態である。そんな老人家庭の如何に多いことか!)
→ 同じく、いたち川。「宮本輝の小説「螢川」の舞台となった川である」。拙稿に、「宮本輝著『泥の河・蛍川』雑感」がある。
車社会。
通勤も仕事も車。夜は付き合いで飲み会。
従来は呑んでも乗るぞ! という風潮であり、それを許容していた(?)のかもしれないが、飲酒運転への警察や社会の目が厳しくなり、車を置いていける人はタクシー、朝から通勤などで車を使いたい人は運転代行の車を利用するというわけである。
あれやこれやで運転代行の車のニーズは高まる一方と思われる。
それこそ、車社会からの大転換あるいは公共の輸送機関やルートの充実といった事態が置きない限り運転代行業の需要の衰えはありえないだろう。
何たって、タクシーで市街地などから帰宅する料金よりも運転代行を利用したほうが安い! 且つ、一緒にマイカーも運んでもらえる。夜、したたか呑んだときも翌朝にはマイカー通勤が可能なのだ。
マイカー通勤の方など、運転代行の車を利用しない手はないのだ!
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