サルガオセモドキに遭遇!
過日、家族らで「富山県中央植物園」へ行ってきた。
そのレポート(日記)は時間があれば別個に書く(かもしれない)が、ここでは番外編的にあることについてメモしておきたい。
富山県中央植物園でちょっと自分には驚きの出会いがあったのである。
→ 「富山県中央植物園」で遭遇した「サルガオセモドキ」
出会いといっても、人との遭遇という意味ではない。
ある植物との思いがけない、しかし場所が亜熱帯の植物も鑑賞できる植物園であれば意想外と感じるほうが無知にすぎない、そんな出会いがあったのだ。
それは、別名を「スパニッシュ・モス」時に「フロリダ・モス」とも呼ばれる「サルガオセモドキ」というエア・プラントの一種との思いがけない対面なのである。
この「サルガオセモドキ」(スパニッシュ・モス)への思い入れについては、主に拙稿である「苔の花…スパニッシュモス」に縷々書いておいた。
要は、『スパニッシュモス』と題した未完の長編を94年に書いたのだが、その当時は実物はおろか、図書館で図鑑に当たっても画像(写真)さえ発見が困難で、何かの小さな写真や説明文を材料にその植物に付いて想像の中でイメージを膨らませ、小説を書き進めたという経験があったという話である。
上で「エア・プラントの一種」と書いているが、「エア・プラント」は「気生植物」と訳される。
小生は、この「気生植物」という説明…というよりイメージあるいは観念に触発されて一気に小説の構想(イデア)が自己増殖する観念の入道雲のようにして成ったのだった。
その後、ネットが発達して画像もネット上でそれなりに見出すことが容易になり、「苔の花…スパニッシュモス」なる拙文を綴ったのである。
この記事に続いて小生は続篇モドキの雑文をも書いている:
「タンブル・ウィード…風転草」
すぐ上で、「この「気生植物」という説明…というよりイメージあるいは観念に触発されて一気に小説の構想(イデア)が自己増殖する観念の入道雲のようにして成ったのだった」と書いているが、ここにはもう少し入り組んだ、いかにも小生らしい混乱(誤解)もあったのだった。
「サルガオセモドキ」(スパニッシュ・モス)についての説明を読みつつ、頭の中では、タンブル・ウィード(風転草)を思い浮かべていたのである!
「苔の花…スパニッシュモス」はブログで読めるので、ここては旧稿である「あるエッセイを読んで」を実物の「サルガオセモドキ」と対面した記念に(?!)ホームページから転記しておく。
これで、「タンブル・ウィード(風転草)」との対面が成れば、涙なみだの話になるのだが、そこまでうまいわけにはいかなかった。
← 思わず何枚も撮っていた。
=== === === === === ===
「あるエッセイを読んで」:
朝日新聞夕刊の文化欄の中に「時のかたち」というコラムエッセイがある。書き手は随時、変わるのだが、今は青山南氏という翻訳家でエッセイストの方が受け持っておられる。
小さな欄だし、書き手の関心事が素直に出ているようで、大概、目を通す。 けれど、いつもは、目を通すだけで通り過ぎるだけである。
しかし、9月13日付けの「スペイン苔」と題された一文は。小生の目を惹いた。話題が「スパニッシュ・モス」ではないか。
この「スパニッシュ・モス」は、青山南氏の説明によると、直訳ではモスが苔なので、「スペイン苔」になる。だから、表題もかくのごとくなのだ。
辞書には「サルガオセモドキ」と出ている。植物の一種なのである。青山氏は、アメリカ南部の小説によく出てくるこの植物が謎だったという。その植物をアメリカ南部のルイジアナ州ラフィットという町で、ご自身が確認したという。
確認してみると、(西部劇などでは)時折登場する、土埃を舞い上げて風の吹きすぎる荒野や寂れた西部の田舎町の町外れなどにある林に迷い込むと見られるものである。(青山氏の表現を借りれば)「巨大な(おもに樫)の枝から、白っぽいトロロコンブのオバケみたいなのがだらーんと何本も垂れている」(「Spanish moss スパニッシュ・モス」より)、あの木の枝の塊である。
写真を見ていただければ分かるように、何処か不気味な感じがある。「亡霊みたいなかんじ」と青山氏が書いているのも、実際に、「夕闇のなかでいきなり出くわした」りしたら、そのように実感するかもしれない。
また、巨大なトロロコンブは、見た感じ乾いているように思われるかもしれないが、実は、触れてみると柔らかく、花も咲く着生植物であり、エア・プラントの一種なのである。
エア・プラントとは、気生植物であり、根がほとんどなく培地に植え付けなくても空中の湿度だけで育つ小型の植物で、日本でも一時期(バブルかバブルが弾けた直後の頃?)、手間が掛からないからと、室内に気軽に飾るに相応しい植物として持て囃されたことがある。
が、手間を懸けなくていいのだと誤解され、すぐに枯らしてしまい流行は一過性のものに終わった。
それでも、今でも、ドライフラワー花材として使われることもしばしばである。
ある辞書によると「フロリダ・モス」と呼ばれることもあるという。
上記したように別名「サルガオセモドキ」という。「モス」と命名されながら、実は苔ではなく、サルガオセという地衣類に、似て非なるものであるので 「モドキ」とされているのだ。
→ 「サルガオセモドキ」は、根がほとんどなく培地に植え付けなくても空中の湿度だけで育つ小型の(?)植物。触ると案外と柔らかな感触だった。
さて、ようやく本題に入る。
実は、小生は、94年の失業時代に、その名も「スパニッシュ・モス」というタイトルの長編を書いたことがあるのだ。300枚を一区切りとして、第三部まで書き上げたところで、失業保険も切れてしまい、中断になったままである。
「根がほとんどなく培地に植え付けなくても空中の湿度だけで育つ小型の植物」ということで、主人公の根無し草的な、自分でも自分を掴みかねている画家の卵の心性を象徴するのに、格好の材料のように思えたのである。
そう、青山氏があれこれ調べられたように、エア・プラントという植物の存在をある日、知り、しかもそれが別名サルガオセ・モドキと言うのだと知るにいたって、小説の構想とまではいかないが、少なくとも着想の上では、かなりインパクトを与えられのだ。
図書館で調べて、やっとスパニッシュ・モスの写真を拝見することもできた。 94年の夏頃は、まだ小生はインターネットからは縁遠かったので、今のようにネットであっという間に様々な説明や写真をゲットするというわけにはいかなかったものだ。
エア・プラント=気生植物という中空に漂い(実際には、勿論、漂ってはいない。しかし、木の枝から落ちて、荒野を風の吹くままに転がることは、往々にしてあったようだが)空中の湿気を吸って生きる主人公は、ある銀座で働く女のヒモ状態で生活している。
女は彼の才能を信じているのだ。
銀座の女は美貌だが、彼は画家としての才能にある日までは根拠のない自信を持っていた。しかし、自分の顔に密かにコンプレックスを持っている。が、彼はある日、突然、自分の才能に疑いを持ち始める、というところから物語りは始まる。
← タンブル・ウィード (画像は、「タンブル・ウィード - Wikipedia」) 『スパニッシュ・モス』と題した小説を書いた時、脳裏に浮かべていたのはこの「タンブル・ウィード」だった。でも未完ながら900枚まで書ききった際には、「スパニッシュ・モス」と混同していた…。
実は、ある日、女が部屋の中でドライフラワーを飾るのだ。それがスパニッシュ・モスなのだが、その別名が「サルガオセ・モドキ」だと女に説明されて、彼は何故か自分のサルっぽい顔を女に揶揄されたような、当てこすられているような気になってしまう。
別にそれが切っ掛けということではないのだろうが、彼のどうしようもない自信喪失の始まりとが、女のちょっとした気まぐれな振る舞いと、不思議に絡み合っているかのようなのだ。
彼は、自分には根がない。この世と絡み合う何の絆もないと感じ始める。女は、自分の才能のなさを感じとってしまった。画家としての才能のない自分は、女のただのヒモに過ぎないではないか…。自分は、中空を当てもなく漂っているだけの無益な存在なのではないか…。
小説の展開はともかく、「スパニッシュ・モス」という名前を久しぶりに目にして、仕事に体力も精力も奪われ、掌編を綴るのがやっとの現状を鑑み、長編に躊躇なく挑戦できた当時がちょっとばかり懐かしく、今への失望さえも覚えたので、こんな長々としたメモを綴ってみたのである。
(02/09/15作)
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