海の宇宙ステーション:シーオービター
フランク・シェッツィング著の『知られざる宇宙 海の中のタイムトラベル』(鹿沼博史/訳、大月書店)を読んでいたら、「シーオービター」の話題に出会った。
今日も海に関わる話題だが、どうも、海という言葉を(無論、本物の海を前にするともっと!)心が騒ぐ。
→ 『海の宇宙ステーション シーオービター(Sea Orbiter)』(Illustration: Jacques Rougerie) (画像は、「Gemini - Research news from NTNU and SINTEF」より) このイラストも建築家のジャック・ルジュリさんの手になるものらしい。建築家も画才が必要だと痛感させられる。あくまでイラストとしての。その出来で行きすぎる人の目を一瞬でもオヤッと立ち止まることに成功するかどうかも、成功の鍵を握るのだろう。上掲書を読んで興味を抱いたのだが、ネットでこうした画像を見て、とりあえず記事に仕立てようかなと思ったのだ。ただ、子供の頃なら単純に夢物語であったのだが、漁業が乱獲で先行きが危惧されつつある中、これで、海の中が探査され尽くしたら、海は一体どうなるのかって、余計な(?)懸念を出だしてしまう。時代というものか、年齢なのか。
それでいて、眺めている分にはいいが、海は怖いような気もする。
母なる海、でもあるが、未知なる海、いまだ闇の海と感じられてならないのだ。
なので、これから紹介する話題も、ちょっとアイロニカルに感じつつ、それでも惹かれるものがあってと、なんだか複雑な心境。
そうした心境になるのは、小生には海は宇宙そのものに感じられるから、なのかもしれない。
本文にも詳しく書いてあるが、どうやら「Sea Orbiter:2年で世界を一周する海の宇宙ステーション」のようである。
テレビか雑誌でこの「シーオービター」の話題を仄聞したことがあるような気がするが、せっかくなので、ちょっとメモしておく。
ちなみに、今日のブログでは扱わないが、日本の建築家・菊竹清訓も、こうした発案を先駆けて発信していたと上掲書にあった。
「Sea Orbiter:2年で世界を一周する海の宇宙ステーション - Engadget Japanese」:
フランスの建築家Jaques Rougerieが構想する「海の宇宙ステーション」Sea Orbiter。高さ50メートルにおよぶ巨大ブイまたは海上建造物といったもので、動力を使わず風と海流に乗って二年で地球を一周します。用途は海洋・環境・生物学の研究観測施設。現在は模型でのテストがおこなわれている段階ですが、NASAやESA(欧州宇宙機関)が実現に興味を示しているとのこと。
環境や海洋生物の観測に成果が期待できるのはもちろん、将来の月面基地や有人探査計画に向けて「科学者チームを逃げ場のないところに年単位で押し込めておくとどんな惨劇が起きるか」の観測に最適なためではないかと思われます。
← 『海の宇宙ステーション シーオービター(Sea Orbiter)』(Illustration: Jacques Rougerie) (画像は、「Gemini - Research news from NTNU and SINTEF」より)
詳しくは、下記(英文):
「Gemini - Research news from NTNU and SINTEF」
「The upper part of the Sea Orbiter will be a scientific station for studies of the climate and changes in water and the atmosphere. The station will make wave measurements and calibrate the precise position of satellite trajectories. The underwater part of the new vessel will be equipped with a fish-collection system for studies of the pelagic ecosystem, plankton biodiversity and fish stocks. 」とあるように、壮観な海の浮遊建造物の海上部分は、気象や海水、気温の変化などの科学的研究を行い、水面下では研究のための海洋生物の蒐集などを行なう。
未知の生物の発見が大いに期待される。
それはまあ、当然として、さらに下記が興味深い。
「The unique vessel will take two years to cross the seas, and will provide a number of new ways of making continuous observations. For the 16 member crew who will live on board during cruises, it will be a trial just to live in such a confined space, with so many other people. The challenges involved will be akin to living on board the space shuttle. 」
まあ、閉ざされた空間の中での集団生活ということで、16人の乗組員の心理状態の変化も調べられる。
いずれは宇宙へ旅立つ場合の予備的研究の意味合いもある。
また、スペースシャトルの乗組員にとっては、訓練にもなる。
→ 『海の宇宙ステーション シーオービター(Sea Orbiter)』 「Sea Orbiter:2年で世界を一周する海の宇宙ステーション - Engadget Japanese」 乱獲による激減が問題になっているタツノオトシゴみたいって、酷評(賛美)する人も。
さらに、心理状態の変化の研究の目的がえげつない。「将来の月面基地や有人探査計画に向けて「科学者チームを逃げ場のないところに年単位で押し込めておくとどんな惨劇が起きるか」の観測に最適なためではないかと思われ」る…。
おいおい、公然とそんなこと言っていいのか。
でも、シリアスな事態が宇宙旅行中に発生してもらっても困るわけで、必要な研究ということなのか(あるいは、将来は人間ではなくロボットが旅する)?
閉鎖された建造物で海洋を集団で長期に渡って旅する。それでさえ、どんな葛藤がありえるか想像を超えるものがあるだろう。まして宇宙空間となると、シーオービターみたいに海上に浮上して助けを求めるといったふうにもいかず、現実的には救助は不可能(に近い)だろうし。
絶好のシミュレーションの場であり研究の場なのだから、「NASAやESA(欧州宇宙機関)が実現に興味を示していると」いうのも当然だろう。
小生は、小学校の終わり頃からだったろうか、童話から次第にSF(空想科学)小説へと(漫画は三十代半ばまでずっと)読書の趣向が変わっていった。
探偵小説は好きだったが、どうも推理小説はあまり好まなかった。
近所の貸本屋さんで漫画の本を借り切ったら、発売日の合間にはSF(空想科学)の本を借りまくっていた。
ジュール・ヴェルヌは無論、欠かすはずがない。
高校の頃までは地底世界があると信じていたような気がする…。
← ジュール・ヴェルヌ著の『月世界旅行―詳注版』(高山 宏訳、W.J. ミラー注、ちくま文庫)
いよいよジュール・ヴェルヌの『海底二万マイル』や『月世界旅行』が現実味を帯びてきたということか。
『地底旅行』については、岩盤や地盤を貫いて旅するとなると、あるいは海底や宇宙を旅行するより困難なような気がするが、どうだろう。
尚、小生には拙稿「ジュール・ヴェルヌ…オリエント」がある。
ジュール・ヴェルヌは実は、「悲観主義的な一面」を若い頃から持っていたのであり、子供向けのSFや冒険小説家の枠に留まらぬ作家だという認識が近年高まっている。
体裁を大人向けにして翻訳が試みられるようになるのも近いのではなかろうか。
…と思ったら、うっかりしていた。
既に試みは始まったいたのだ。しかも、小生、最近の翻訳書『月世界旅行―詳注版』を読み、「アイロニカルな文明批評」の色彩も濃厚な本書の紹介も試みていた!!
「ジュール・ヴェルヌ著『月世界旅行』」
とにかく、「知られざる宇宙 海の中のタイムトラベル」でも書いたが、海はほとんど手付かずの世界、未知の世界なのである。
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