冬に幽霊考?
→ 丸山応挙『幽霊画』(バークレー美術館蔵) (画像は、「第126話落語「応挙の幽霊」の舞台を歩く」(ホームページ:「落語の舞台を歩く」)から)
幽霊に付いて、当り障りのない考察を試みよう。
小生、怖がりなので、幽霊の気の障るような考察はしないつもりである。幽霊さんに気が付かれないよう、こっそりと、そして不意に幽霊さんが現れて絡まれないよう、辺りの気配を十分に探りつつ、あれこれ意味のない探求を試みたい。
それにしても、まず幽霊について先ず気づくことは、幽霊には足のないとされること。
幽霊は、江戸時代の怪談ものだと、柳の枝の垂れる薄暗いお堀端で不意に現れる。牡丹燈篭は別として、そうした状況で現れる幽霊さんというのは、決まって足がない。というか、下のほうが曖昧模糊としている。
よく、幽霊には、足がないって言うけど、何処までがないんだろう。
洒落た和服姿の若い女の幽霊さんが、しゃなりしゃなり…じゃなく、ススーと現れる。
美人である。
間違っても平安朝の丸顔美人ではない。
やややつれたような恨めしげな表情を痩せぎすな顔と体に漂わせている。間違っても、ハーイなんて、陽気には現れてくれないし、挨拶もしてくれない。
その幽霊。和服を脱いだら、あたい、もっと凄いんですって、思い切り良く脱いでいただいて、スッポンポンになって頂いて、腿の辺りから先がないのか、腰の辺りから先がないのか、確かめてみたいものだ。
考えてみれば、そもそも、幽霊って文字通り、霊なんだから、服を着ているのが、本来、おかしいのだ。
人間が霊になりえるのだとしても、着衣は浄土へも冥界へも行けないはずじゃないのか。
誰かが霊的存在になったら、着衣も装身具も遺品の類いはみんな一緒にあの世か何処の世か知らないけど、何処かしらの世界に移っていくというのだろうか。
言うまでもなく、おかしい!
遺品は遺品として、遺族等には思い入れの対象になりえるというのは分かるけれど、あの世へ一緒に行くというのはありえないのではないか。
そう、人がこの世に恨みを残してあの世へ移れずに、幽冥の境を彷徨っているのだとしたら、それは霊魂についてはそうであって、着衣にまでこの世に恨みや未練や復讐の念があるわけじゃなかろう。
魂が宿っていた肉体でさえ、この世に見捨てられ朽ち果てるか、腐るか、焼き消されるに任せているというのに。
だから、小生、幽霊は、断固、素っ裸のスッピンで現れるべきだと信じる(但し、繰り返すが、最低限自称でもいいから美しい旬の女性限定)。
万が一、着衣の幽霊だったら、お前、おかしいんじゃないか、脱げよ、そうじゃないと幽霊と認めてやらないぞと脅してやればいいのだ。
もしかしたら、そのスッピンの顔が怖いのかもね。
だって、化粧品や装身具がこの世に残ったままなら、当然、化粧もこの世に取り残されるはずだ。居場所を失ってウロウロするのは魂だけ。当然ながら、着衣はなく、化粧もないスッピンというのが理屈なのだし。
もしかしたら、素顔を見たなー、裏飯屋…じゃない、うらめしやーと出現する?
ということで、幽霊がうら若き美人であり、この世を立ち去り難く、魂として漂っているというのなら、それはそれで結構だから、素っ裸での登場を期待したいものである。
なんといっても、これからの季節、暑くなる。裸だって、寒くはないはずだし。
昔、幽霊が何故、夏場に現れるのか不思議だった。芝居の都合上、夏枯れを防ぐため、また、冷房のない昔のこと、暑い最中に来てくれたお客さんに怖い話で少しでも涼んでもらいたい一心だったのだろうと思っていた。
しかし、そうじゃないのだ! 幽霊は真っ裸なのだ。だから、夏場にしか現れようがなかったのだ!
[「幽 霊 考」からの抜粋です。旧稿を温めたくて載せたのです。冬に炬燵に入りながら幽霊を思う。これもまた一興。…あっ、小生の部屋には炬燵がなかったんだ。ひぇー。逃げ場がない。頭を隠す場所がない!]
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