テラ・アマータ
昨日26日の午前、最終的に部屋を引き払って明け渡し、昼前には、東京駅へ向い、正午12分の列車で富山へ。
身には、パソコンと貴重品とを会社への自転車通勤の際に背負っていたデイバッグに詰め込んで。
帰宅した夕方からは早速、家事を始める。
← J.M.G.ル・クレジオ著『愛する大地 ~ テラ・アマータ』(豊崎 光一訳 新潮社)
今日27日の午前には転入の手続きを済ませ、午後には25日に発送していた引越し荷物が届いた。ほとんどの荷物は納屋に当面、仮置きし、前の部屋で使ってきた机と椅子、ロッキングチェアーなどはこれから住み暮らすことになる部屋へ運び入れた。
自分のための箪笥も棚もないので、荷物を納屋から出して整理しようにも、置き場所がない。
なので下着を含めた衣類でさえ当分、荷解き出来ないのである。
午後の4時頃には最低限、暮らせる体制にすることが出来たし、それ以上に引越しのための荷造りなどを含めると、十日以上に渡る連日の作業や事務手続きなどの心労の疲れがドッと出たし、取りあえずは段取りに頭を悩ませつつも、引越しを終えたことでホッとしたこともあり、部屋のど真ん中に鎮座しているロッキングチェアーに腰を深く沈めて瞑目…する間もなく睡魔に襲われた。
心労には、ガッカリした思いも含まれている。
東京との(敬愛する人との)別れ、頑張っていよいよなれる寸前だった個人タクシーへの辛い断念、最初から最後まで一人きりで引越し作業をする自分、故郷へ戻っても浦島太郎状態で途方に暮れている自分、そして26日が誕生日だったのだが、その事実に親も含め誰一人気づくことがなかったという現実(両親の誕生日には何がしかのことはしてきた)。
これが自分という男の現実なのである。
誕生日は、小学校か中学の時に家で祝ってもらったことがあったと記憶する。
その時以外は、誕生日はいつも一人ぼっちだった。
一人ぼっちだから祝うことなど考えられず、ただ時の流れを徒に眺めるばかり。
敬愛する人の誕生日には、呼ばれることもありえず、一人で勝手に祝う。
そして今、田舎に、両親の下に帰っても、やはり一人。
そんな事態を予感…というより予測して、日曜日の夜には大好きな(太りすぎなので普段は、控えている)ピザを注文し、引越し祝いを兼ねて誕生日を東京での残り少ない日々をかみ締めつつ、腹いっぱい食べたのだった。
ひとり…。
今後とも、どんな喜びも労苦も誰とも分かち合うことはないのだろう。そういう人間なのだろう。自業自得というものなのだろうか。
現実の生活においては、ひたすら黙々と、ということになる…、そう思い知らされると暗澹たる思いに駆られないわけにいかない。
そんなあれこれの思いが胸に去来して、ガッカリして力が抜けて、何をする気力も湧かなくなってしまった。
ロッキングチェアーだけがそんな自分を受けとめてくれる。
だからこそ、ロッキングチェアーに体が何処までも深く深く沈んでいってしまったのだ。
このような人間なのだけど、我が地を愛そうと思う。
誰も自分を愛することはなく、我が愛すべき土地さえも自分に対して無関心であり続けるのだとしても、縋りつくように、しがみ付くように、この地に生きる。
J.M.G.ル・クレジオに『テラ・アマータ』(原作:Terra Amata)という題名の本がある。『愛する大地』(豊崎 光一訳 新潮社)と訳されている。
意味合い的には、「愛する地球」なのかもしれない。
高校生の時に読んだのか、大学生になりたての頃に読んだのか覚えていない。
読んだ時の印象も薄れてしまっている。
ただ、この題名に辟易したことだけは覚えている。そして理由も分からず、やたらと切なくなったことも。
きっと小生は、あの頃以上に乾いた気持ちを持て余しつつ、我が地に生きるのだろう。
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コメント
遅ればせながら、
誕生日、それにお引越し、
おめでとうございます。
ル・クレジオは私の好きな作家の一人。
最近は作風がまるで変わってしまいましたが、
「逃亡の書」「物質的恍惚」「大洪水」「向う側への旅」などには大いに感心した覚えがあります。
圧縮凝縮の果てに宝石化したようなあの文体には痺れました。
あれは高校か大学の頃ですかね。。
――それはともかく、
富山の風物もまたブログで紹介してくださいね。
楽しみにしてますよ。
投稿: 石清水ゲイリー | 2008/02/28 09:20
お帰りなさい!
お引越し、文面以上に大変だったことでしょう。
お疲れもしばらく残ることと思います。
やいっちさんのように上手く表現できないだけで、同じ思いを抱いている人間もたくさん居るはず。
そういう私自身も、「人生、捨てたもんじゃない」と思える日を夢見て生きている1人です。
今まで、生まれた土地でしか暮らしたことがない(=帰れる所が無い)のですが、やいっちさんの、長年、暮らされた東京への離れがたい思いは想像できます。
でも、何でもが東京からの発信では悲し過ぎます。
これからの、富山におられてこその発信がとっても楽しみです。
お誕生日は私と2日違い、魚座ですね。
遅ればせながら、お誕生日、おめでとうございます!
どうか、充実した1年になりますように。
投稿: 雫 | 2008/02/28 12:44
石清水ゲイリーさん
メッセージ、ありがとう!
引越しは第一段階が終わったってところです。
まずは一息ですが。
ル・クレジオは、初期のものしか知りません。
あの世界は、石清水ゲイリーのような詩的センスがないと十分には味わいきれないでしょうね。
富山情報などボチボチ発信していければと思っています。
これからも宜しく!
投稿: やいっち | 2008/02/28 17:05
雫さん
コメント、メッセージ、ありがとうございます。
誕生日、2日前に迎えましたよ。
日々はアップアップなのに、歳月の過ぎ去るのだけは早いものです。
小生の書いているものは、呟きであり愚痴であったりして、来訪し文を読まれた方が、なんだかナーといった気分にならないか、ちょっと心配。
もっと楽しいものをと思ってはいるのですが。
小生の帰郷は、放蕩息子の何とかかもしれない。帰ってきた以上は、我が地を少しは、情報発信を含め豊かにしたいと思っています。
せっかくですから、ネットの強みを発揮したいもの。
誕生日が2日違いなのですか。奇縁ですね。
刺激し合ってネットを含め、お互い、生活が充実したものにしたいものです。
これからもよろしくお願いします。
投稿: やいっち | 2008/02/28 17:24
2月26日は国見さんのお誕生日でしたね。お祝いメールを出そうと思っていたのに、今年は私のほうがあまりに忙しくて気がついたら通り過ぎていました。本当にごめんなさい。
お引越しが無事済んで良かったですね。ご両親もきっと、可愛い息子が手元に戻って安心していらっしゃると思いますよ。誰も自分を愛することがないなんて言っていないで、良い人がいたら結婚してください。
だけど、国見さんは面食いだから、美人ばかり追いかけていたら難しいですよ。人間、顔じゃないんだから。心のきれいな人を見つけてね。
投稿: ゆうこ | 2008/02/28 21:07
ゆうこさん
小生の誕生日は、どこにも示していないので、ネット上の知り合いが誰も気付かないのは当然ですね。
帰郷してまだ数日ということもあってか、まだ地に足が着いてない。
部屋も仮住まいといったふうで、どうもふわふわしている。
ずっとこちらなのだという覚悟が定まっていないからかな。
地元で仕事を始めたら少しは落ち着くかな。
投稿: やいっち | 2008/02/29 00:54
やいっちさん、26日が誕生日でらしたのですね(^^)。田舎に帰るということはやはり最初は抵抗感があると思いますけれど、慣れればやいっちさんのような方は地方では貴重な人材で活躍の場が多いかもしれませんよ。
私もかつては自分のような人間はこの世でただ一人っきりだと思い込んでいましたけれど、それは思い込みで、自分から人との共通点を見つける努力を始めたら、私は孤独ではなくなりました。その時に、それまでの孤独な気持ちをたくさんの方と共有できるようになり、楽しい気持ち以上にそれは仲間との絆になるのだと私は思います。
まずご両親にとって息子さんと同居できることは何よりの幸せだと思います。また新しい人生の舞台でがんばっていってくださいね(^^)。これからも応援しています。
投稿: magnoria | 2008/02/29 19:10
magnoriaさん
magnoriaさんの日記は毎日、覗いてますよ。
常に前向きでひたむきで、誠実で。
裏方役としても頑張っておられて、眩しい限りです。
同時に、いろんないい本を紹介されてますね。
積極性が大事なんですね。magnoriaさんの日々の日記を読むとつくづくそう感じます。
両親のこと、居間で三人で食事やら一服やらしていて、ふと、こんな場面もあと何年続くのやら…、なんて思ってしまいそうになります。
ぶるる!!
いけないですね、こんな自分。
自分のほうが先に参っちゃうかもしれないのに!
郷里に戻ってまだいろんな機関の住所変更の手続きやら、書き換え、名義変更、etc.で奔走し、家事は勿論だけど、引越し荷物の開梱も少しずつ始めていて、まだまだ慌しいばかり。
追々に地に足の着いた生活に持っていくつもりでいます。
これからもよろしくね。
投稿: やいっち | 2008/02/29 22:57