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2007/11/01

絵画は自然科学的実践 ? ! …コンスタブル(前篇)

水、海、と来ると、次は雲である!」などの記事で、リチャード・ハンブリン著『雲の「発明」 気象学を創ったアマチュア科学者』(小田川佳子訳、扶桑社)を、そして、本書で採り上げられている(テーマそのものでもある!)ルーク・ハワードのことは、多少なりとも紹介している。

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← ジョン・コンスタブル『ハムステッド・ヒースの木立、日没』(ホームページ:「静岡県立美術館」)

 ルーク・ハワードについては、その気象学の歴史などで果たした役割や重要さに比して、少なくとも日本語でのネット上ではあまり情報が多いとは言えない(小生の探し方が悪いのかもしれないが)。

 ゲーテに雲の(科学の研究の)面白さを、もっと端的に雲の魅力を教え気付かせた人物として銘記してもいいかもしれない。ハワードにより雲の観察や研究の面白さを啓発されたゲーテは、その後はハワードへの感謝の念を終生忘れなかったし、雲の観察をずっと続けたのだった(この辺りも調べたら面白そうだけど、今回は割愛する)。

 リチャード・ハンブリン著『雲の「発明」 気象学を創ったアマチュア科学者』は、小生にとっては掘り出し物だった。
 私事の都合があって、本を読む時間が来月くらいまではあまり取れないので、就寝前、あるいは寝起きなどに気軽に読める本ということで、「海」「水」などが読書でのマイブームテーマになっていることもあり、題名の雲の「発明」にも興味を掻き立てられたこともあって、軽い気持ちで借りたのだが、実に面白かった。
 そう、既に読了したのだが、返却期限が来た時、再度、借り、今も手元にある。

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→ ジョン・コンスタブル『フラットフォードの水門と水車場』(以下、画像は全て「ジョン・コンスタブル (ロマン派)」より。ホームページ:「アート at ドリアン 西洋絵画史・ギリシャ神話・聖書の物語」)

 本書に付いては、以下ではあまり触れないので、冒頭の拙稿や(その中でも紹介・参照しているが)「雲は天才である (書物漂流)」(NBonline(日経ビジネス オンライン))などを参照願いたい。

 今日は、本書の中で採り上げられている画家ジョン・コンスタブル(John Constable, 1776年6月11日 - 1837年3月31日)のことを話題の俎上に載せる。
 コンスタブルは有名な画家だし、まずは「ジョン・コンスタブル - Wikipedia」で大よそのことが分かる。
 一般的には「同時代のウィリアム・ターナーとともに、19世紀イギリスを代表する風景画家である」の一言で通り過ぎられてしまうようである。
 ターナーと比しても地味な印象を持つ。

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← ジョン・コンスタブル『ウィヴァンホー・パーク、エセックス』(画像は、「ジョン・コンスタブル (ロマン派)」より。ホームページ:「アート at ドリアン 西洋絵画史・ギリシャ神話・聖書の物語」)

 小生はターナーの風景画でありながらロマンチックでドラマチックでさえもある表現が若い頃から好きだった(何かの本で、ターナーは空気そのものを描いた画家だという一言に参ってしまった)。

 一方、コンスタブルは確か、展覧会へ一度足を運んだことはあるのだが、印象は薄い。若い人間にはターナーのほうが強烈な印象を残すのは致し方ないのかもしれない。
 が、遅きに失しているが、本書リチャード・ハンブリン著『雲の「発明」 気象学を創ったアマチュア科学者』を読んで認識を新たにし、ここに簡単にでも触れないでは気がすまないのである。

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→ ジョン・コンスタブル『干し草車』(画像は、「ジョン・コンスタブル (ロマン派)」より。ホームページ:「アート at ドリアン 西洋絵画史・ギリシャ神話・聖書の物語」)

 風景画は今でこそ、絵画のテーマとして確固たる位置を占めていると思っていいだろう。
 が、「西洋絵画の歴史においては、神話、聖書のエピソード、歴史上の大事件や偉人などをテーマとした「歴史画」が常に上位におかれ、「風景」は歴史画や物語の背景としての意味しか持っていなかった。17世紀オランダでは風景画が発達したが、ヨーロッパ全土で風景画が市民権を得るには、フランスのバルビゾン派、イギリスのターナーやコンスタブルが登場する19世紀を待たねばならなかった」のだった。

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コメント

ジョン・コンスタブルの雲はブリテン島のそれそのものと思います。あのなんとも緯度の高い薄い空と凝縮した空気感はあの島独特のものです。

それに比べるとターナーなどは何でもないことを見落として、アルプスの空などに心を奪われたようです。その分、島では屋内に篭って他のものを観察し続けたようです。

コンスタブルの風景は今も変わらず英国の風景であることを付け加えておきます。

投稿: pfaelzerwein | 2007/11/02 02:23

pfaelzerweinさん
さすがにpfaelzerweinさんは、コンスタブルの見た空や雲を知っているのですね。
いつかは「あのなんとも緯度の高い薄い空と凝縮した空気感はあの島独特のものです」という空や風景を現地に立ち、自分の目で見てみたいものです。

若い頃はターナーのほうがダイナミックでいいと思っていたのですが、コンスタブルを採り上げた以上は、一度はターナーも特集してみたい。

投稿: やいっち | 2007/11/02 02:49

本文にあまり関係のないコメントですが・・・
「ヒースの木立」という絵のタイトルに、あれ?と思いました。
私がもの知らずかもしれませんけれど、ヒースというと潅木(よく見るのは大きくても膝丈程度)というイメージがあって、「木立」という言葉がどうにも似つかわしくありません。この絵の原題が何であるか、とても興味深いです。

「Hampstead Heath」というタイトル(?)で沢山の作品の画像がヒットしてくるところからも、作者の思い入れの深い題材なのでしょうね。

湿った冷たい空気が自分を取り巻いているような気持ちにさせてくれる絵画だと思います。とりとめなくてすみません。

投稿: 縷紅 | 2007/11/02 23:32

縷紅さん
コメント、ありがとう。
さすが着眼点が違いますね。

おっしゃられるように、「Hampstead Heath」というタイトルの絵が複数、見受けられるようです。「後篇」でその画像を載せたいと思います。
小生は、単純に、「ハムステッド・ヒースの木立」と受けとめています。あくまで「ハムステッド・ヒース」と呼称される一帯に木立のある場所があったという理解です。
つまり、「ヒースの木立」じゃなくって、「ハムステッド・ヒース」にある木立ってことですね。
残念ながら原題は分かりません。
コンスタブルの中で人物像(男性の裸体画)があって、ああ、こういうのも描いていたんだなって。
ポスター画像ですが、普段、あまり紹介されない傾向の作品もあったので、100枚以上の画像を観れるサイトをメモしておきます:
http://www.allposters.co.jp/-st/John-Constable-Posters_c23471_.htm

投稿: やいっち | 2007/11/03 07:51

こんにちは。
昨夜は書き込みをした後で、そういえばheathという言葉には「原野」という意味もあるんだっけ・・・と思い至りまして。お恥ずかしい。
「ハムステット・ヒース」という地名あるいは地域名(区切り方の勘違い)という御説も納得できます。(^^)

静岡の美術館に所蔵の絵画なら、いつか本物を見る機会もあるかもしれませんね。
その瞬間を楽しみにしたいと思ってます。

投稿: 縷紅 | 2007/11/03 14:27

縷紅さん
またまたコメント、ありがとう。
あの、言葉の区切りとして、「ハムステット・ヒース」の木立だろうと思うだけで、「ハムステット・ヒース」というのは、まさにイギリス文学で連想するあの「ヒース」が一面に生い茂る風景が名前の由来でもあると思っていました(きちんと確かめておらず、勝手に思い込んでいた。そこまで深く考えていなかったのです)。

ネットで探したら、下記の記事が見つかりました:
http://www.shosbar.com/mybritain/Aa2heath.html
やはり、「ハムステット・ヒース」という地(地名)には原始林かと思わせる林があったし、今もあるようです。
但し、小生は言うまでもなく実際には見ていないのですが。

投稿: やいっち | 2007/11/03 14:38

TBの受付&弊ブログへのTBありがとうございます!

ヨーロッパ全土で風景画が市民権を得るまでは、19世紀まで待たねばならなかったとは、たしかにそうですね。本当に勉強になります。
コンスタブルは好きな画家の一人で、自分の中では有名な画家なのですが、美術好きはともかく、なかなか一般には知られていない画家かもしれません。
コンスタブルの雲を見ていると、美術は自然に迫るきわめて有効な方法だと思うときがあるのですが、あと一人、ロシアのワシーリェフという画家の絵にも同じような感懐を抱いています。

投稿: オペラ座の灰燼 | 2007/11/04 01:15

オペラ座の灰燼さん
TBだけして失礼しました。
こちらこそTB、コメント、ありがとう。
嬉しいです。

まあ、風景画についてはもっと突っ込んだ議論が必要なのでしょうね。特にカメラ(写真)撮影の技術の登場と発達が絵画に与えた影響の深甚さは言うまでもありません。
絵画にその存在意義を問うものでもありました。

なので、本稿ではテーマを相当程度に絞って、むしろ、雲の科学、あるいは気象学との絡みで風景画を少し見直してみるという試みをしているのです。
雲の呼称について世界で共通認識が19世紀の末になって持たれるようになった、そうした時代の推移にあって絵画においてどのように雲などが描かれたのか。

コンスタブルについては今回、認識を新たにしました。
(彼に付いてはもっと語るべきことがあるようですが、まあ、稿を改めて。)

ワシーリェフのことは多分、初耳です。
ワシーリェフについては、レーピン著の回想録『ヴォルガの舟ひき』(中公文庫)の中に生き生きした記述があるとか:
http://www.eonet.ne.jp/~nostalghia-1983/zapishite2/moscow023.html

と思ったら、さすがオペラ座の灰燼さん、既に採り上げておられたのですね:
http://blog.goo.ne.jp/phantom_o_t_o-0567/e/5cd15a5711ffd41435a0d8ac73bcd0b9
(この記事の中に小生がURLを示した頁が紹介されていた!)

いつか機会を設けて、彼に付いても特集してみたいものです。
教えていただき、ありがとう!

投稿: やいっち | 2007/11/04 02:53

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上の絵は、イギリスの画家ジョン・カンスタブル(もしくはコンスタブル、John Constable(1776-1837))という画家が描いた「主教の庭から見たソールズベリー大聖堂」(1823)という作品だが、カンスタブルの風景画は雲に特徴があって、雲の習作もたくさん描いている。たとえば次のような。 カンスタブル「雲の習作」(1822頃) カメラを手にしているときに、空にカンスタブルが描いたような雲があると、とても運がいいと思っているのだが、そうなかなかカメラに収まるものではない。 でも、この前のや... [続きを読む]

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