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2007/11/12

命と引き換えの自然描写:大下藤次郎(前篇)

 外を出歩く余裕がない!
 ストレスが溜まっている。
 せめてもの慰みに、ネットで美術巡りの旅をする!

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→ 大下藤次郎:『穂高山の麓』 (1907) (画像は、「独立行政法人国立美術館」より) 是非、クリックして拡大画像で見てほしい。この作品は、小生にとっても発見だった!

 コンスタブルの周辺をネットであれこれ探っていたら、その過程で「「コンスタブル」と「大下藤次郎」」という頁(ホームページ:「笹山登生の政策道場」)に行き当たった。

 この頁には、ルソー、ミレーなど、いわゆるバルビゾン派と言われる、自然を描いた多くの画家たちにその切っ掛けを与え、自然を描くことに目覚めさせた画家コンスタブルに焦点が当てられている。
 それまでの宗教上のテーマを描くための背景でしかなかった風景に、まさに描かれるべき主体としての魅力が溢れていることを教えたのがコンスタブルだったわけである。

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← 大下藤次郎 『六月の穂高岳』(31.0×48.0㎝ 水彩・紙 1907年制作) (画像は、「北アルプスの麓・安曇野の美術館 安曇野アートライン : 市立大町山岳博物館 | 美術資料紹介 : 大下藤次郎 六月の穂高岳」より。この頁には、本人の言葉を引用する形でこの絵を描く際の生々しいエピソードなどが紹介されていて興実に味深い。)

 小生は拙稿の中で風景を自然科学的姿勢で観察し、絵画も自然科学の営為の一つだと信じるコンスタブルの思想を示した。

 上掲の頁には、その点を興味深いエピソードで示してくれている。
「ターナーの描く絵の世界が想像の理想美に満ちた世界だったのに対し、コンスタブルのそれは、自然が語りかけるメッセージに素直に従った世界を描いたものでした」とか、「こうして、コンスタブルの「当たり前のことを当たり前に」描く画法によって、多くの画家たちは長年の催眠術から解き放たれたかのように、自然を動きまわり真の自然の姿を確認しようとしたのです」という結論に至る論旨を是非、当該の頁で味読してもらいたい。

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→ 大下藤次郎 『穂高山の残雪』(明治40年?) (以下、画像は「考える葦笛 日本の風景画……ラスキンの赤い糸(4)」より) 一見すると、綺麗な風景画と思えるだけかもしれない。あるいはこうした風景画を描ける人も他にいるのだろう。が、今はともかく明治の世にあっては現場に向かうだけで大仕事。現場でこれぞという風景に際会しても虫などに襲われてひどい目に遭う。そうした苦労など絵の評価とは関係ないことかもしれないけれど、こんな光景が昔、あったのだということを描き残そうとする精神は感じ取りつつ絵を眺めるのも一興だろう。

 さて、上掲の頁には、コンスタブルの画業の独自性や意義が示されると同時に、「日本においても、日本の原風景をとどめることに情熱を燃やした画家がいました」として、大下藤次郎が紹介されている。

大下藤次郎 - Wikipedia」では大下藤次郎(おおした とうじろう、1870年7月9日 - 1911年10月10日)についてあまり多くの情報は得られない。

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← 高階秀爾/美術出版社編集部著『水絵の福音使者 大下藤次郎』(美術出版社) 「画家、文筆家、編集者、教育者、実業家などさまざまな顔をあわせもち、近代日本の水彩画発展に大きく寄与した大下藤次郎のすべてを画文集と評伝にまとめました。美術出版社創業100周年記念出版」だって。こんな本が傍にあったらナー。

月刊美術雑誌『みづゑ』の創刊者でその発行元「春鳥会」の創立者でもあった」(ホームページ:「美術出版社グループ」)という側面でさえ、年譜でようやくそれと分かる程度である。

命と引き換えの自然描写:大下藤次郎(後篇)」へ続く。


[後日、後篇をアップした際、前篇を読み返しつつ、さらなる情報を探していたら、上掲の『水絵の福音使者 大下藤次郎』を発見すると同時に、下記のサイトをヒットした:
高階秀爾『水絵の福音使者・大下藤次郎』 - 関心空間
 ここには末尾の一節のみ転記させてもらうが、是非、当該の頁を覗いてみてほしい。 (07/11/17 追記)]:

 ちなみに風景の中でも特に藤次郎は「私は湖水が好きだ」と言っているが、水面、そしてそこに映る空、そういったものの描写はやはり素晴らしい。そして、そういうものの表現には確かに水彩画という技法が生きる。あの美しい空や水を、水彩という淡い表現で写してみようと思ったその気持ちはよくわかる。

(「命と引き換えの自然描写:大下藤次郎(後篇)」へ続く。)

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投稿: やいっち | 2007/11/17 18:26

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