ビルマと呼ぶかミャンマーか、それが問題だ!
[本稿は、「埴谷雄高「死霊」の構想メモ見つかる!」に埴谷雄高関係の記事と併せ掲載していたもの。が、あまりに性格の違う記事なので、若干の補筆を施し、ここに独立させることにしした。 (07/10/06 記)]
← 10月3日の夜、芝公園にて。照明(ライトアップ)が夏ヴァージョンの東京タワーです。
今日は、「ミャンマー」という国の呼称についても、メモ程度には触れる積もりで居たが、ちょっと余裕がなくなった。
ここでは、「ミャンマー - Wikipedia」から国名に関係する部分を転記するに留めておく(太字部分は小生の手になる):
1989年6月18日に軍事政権は、国名の英語表記を、Union of Burma(ユニオン・オブ・バーマ)から Union of Myanmar に改称した。軍事政権が代表権を持つため国連と関係国際機関は、「ミャンマー」に改めた。また日本政府は軍政をいち早く承認し、日本語の呼称を「ミャンマー」と改めた。日本のマスコミは多くが外務省の決定に従ったが、軍事政権を認めない立場から括弧付きで「ビルマ」を使い続ける社・媒体(朝日新聞社、『週刊金曜日』など)もある。アウンサンスーチーや亡命政府「ビルマ連邦国民連合政府」など軍事政権の正当性を否定する側は、改名が軍事政権による一方的なものだとし、英語国名の変更を認めていない。タイの英字紙、英BBC、「ワシントン・ポスト」などの有力英語メディア、ドイチェ・ヴェレやARDなどのドイツ語メディア、および主要な人権団体は "Burma" の呼称を続けている。アメリカ合衆国、イギリス、オーストラリア政府などは "Burma" とし、EUは "Burma" と "Myanmar" を併記している。一方、ロシア・中国は軍事政権との良好な関係から「ミャンマー」を使用している。
「軍事政権が代表権を持つため国連と関係国際機関は、「ミャンマー」に改めた」ということ。
要は、我々がミャンマーと呼称するということは、軍事政権に加担することになりかねないということ。
しかも、「日本政府は軍政をいち早く承認し、日本語の呼称を「ミャンマー」と改めた」のだった。
小生も、不勉強だったこともあり、事情を知らないまま、素直に「ミャンマー」という呼称を受け容れていた(使ってもいた)。慙愧の念に耐えない。
日本人ジャーナリストの長井健司さんが軍の兵士により至近距離から射殺されるという不幸な事件があった。
日本の政府も対応はしている:
「外務審議官、日本人ジャーナリスト射殺事件の解明求めミャンマーへ」(「asahi.com:朝日新聞の速報ニュースサイト」より):
外務省の藪中三十二外務審議官が30日、ミャンマーで取材を行っていた日本人ビデオジャーナリストが銃撃され死亡した事件を受け、同国当局に事件の全容解明を求めるため、成田空港からミャンマーに向けて出発した。
(中略)
藪中審議官は空港で記者団に対し、ミャンマー訪問の目的について、事件の徹底した調査と現地邦人の安全確保を求めることに加え、民主化運動に対して武力でなく対話の使用を求める国際社会の声を届けることだと述べた。
→ 同じく10月3日に撮影。10月5日(金)にオレンジ色が基調の冬ヴァージョンのライトアップに変わった!
が、日本の政府当局の対応は、厳しく抗議したとか、真相を解明する、場合によっては制裁も、などと言っているが、実際にはかなり抑制的な(触らぬ神に…的な)対応である。
冷静な対応と思いたいが、日本とビルマとの経済的な結びつき、早くから軍事政権下の「ミャンマー」を認めたことなどもあり、世論が沈静化した頃には、お茶を濁す措置で終る可能性が大と見受けられる。
日本の政府は、表向き、軍の対応を非難しても、デモを制圧したことに(経済界と共に)ホッと胸を撫で下ろしているとも思える。
悲しいかな、これが経済関係を重視する日本の立場であり現状なのだろう。
しかも、日本の政府にとって誠に都合のいいことに、日本人ジャーナリストの長井健司さんが軍の兵士により至近距離から射殺されるという不幸な事件があったにも関わらず、ビルマの軍事当局の不当な弾圧や仕儀に対して日本の世論が一向に盛り上がる気配が見られないことである。
せいぜい、外務大臣が苦言を呈しただけで、福田総理はダンマリを決め込んでいる。
よって、これからも政府は心置きなくミャンマーと呼称し続けるのだろう。
ODAでのミャンマーへの世界最大の援助国でもあるし!
つまり、ある意味、ミャンマーへの何らかの対応が迫られた際、終始、消極的な姿勢を崩さなかった中国(やロシア)以上に日本という国は後ろ向き…。まあ、軍事政権のスポンサーのようなものだから、仕方ないってことか?!
さて、日本の政府や経済界の意向はさておくとして、我々はどう呼称すべきか。
ミャンマーは軍事政権が選び決めた、国連も認めた正式な呼称だからミャンマーか。
それとも、ビルマの多くの民主勢力と共にビルマと呼ぶべきなのか。
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コメント
東京政府の対応を注視しています。中国に対抗する地下資源に対する経済的思惑は良く判らないのですが、どのような外交戦略があるのでしょう。
いずれにしても、報道人が射殺されて映像が出た以上、軍事政権のその実態が世論に与える影響は大きいと思われます。
そしてこれに対するマスメディアの対応を観察すれば、様々な真実が明るみになるような気がしますが、どうでしょう?
投稿: pfaelzerwein | 2007/10/06 16:38
pfaelzerwein さん
ビルマの国情については、ラジオでちょっと聞きかじっただけです。今回の事件が映像で世界中に配信されたことは、長い目で見ると軍事政権には打撃でしょうが、短期的にはデモが呆気なく押さえ込まれた現実は、軍事政権の安泰振りが示されたようで、反って不気味。
むしろ、長井さんの事件の映像が出て当惑しているのはミャンマーより日本の政府や経済界なのではないかと思えます。
あれがなかったら、ビルマの騒乱のことなど日本ではニュースにはまるでならなかったはずですから。
福田首相は、ジャーナリストの長井さんが至近距離から銃撃されたという理解は避け、一般人の日本人の長井さんが軍の関与で亡くなったのは遺憾というスタンスを全く崩さない。
情けないというか、これが日本の姿勢だし、そのことを日本のマスコミもジャーナリストも指弾しない。
経済面から国情を見ると、「インド洋方面への進出口を求めている中国からは多額の援助を受けている他、インドとは経済的な結びつきを強化しているなど、近隣の大国とは比較的良好な関係を築いている。また、軍事面から北朝鮮との関係が改善している」し、中国との結びつきで言うと、「ミャンマー政府に対する最大の武器供給及び経済援助国は中国である。ミャンマー政府は豊富な資源を背景に資源外交を展開しており、アメリカや日本などの自由主義諸国が人権問題から制裁を強めるなかで、中国は国連安全保障理事会でのミャンマー民主化要求決議案に拒否権を行使、その直後に、ミャンマー軍事政権は、中国国有エネルギー会社の中国石油天然ガスにミャンマー最大のガス田を譲渡している。また中国は、1994年6月から大ココ島(Great Coco Island)を賃借し、南下政策を実行、レーダー基地と軍港を建設して、インドに対抗する拠点としている。さらにミャンマーの軍港を中国海軍の軍港として使用することでも合意、中国はインドを包囲する軍事戦略上の優位を獲得している」とか。
もっと日本との関係の面から経済に注目すると、「アメリカのミャンマー製品輸入禁止と送金禁止はミャンマー経済に大きな影響を与えている」一方、日本はというと、「世界の民主活動団体から非難されながら出資投資をしているのが日本企業」だったりする。
(以上、「ミャンマー - Wikipedia」など参照。)
明らかに日本は中国などと並び、軍事政権の延命に貢献している。ということは、資源が豊富だし、嘗ては東南アジアの経済大国だったビルマが、勤勉な国民を擁していて、潜在的には再度、有数の民主国家として台頭しえるはずなのに、軍事政権を助け、その一方で民衆を弾圧することで、民衆らの潜在的活力や能力をどれほど阻害しているか、罪は深いと思う。
軍事政権の為政の矛盾がそろそろ極限に達しようとしている。その契機が、今回はこの夏、「ガソリン、ディーゼルなど燃料の公定価格が突然大幅に引き上げられた」ことだったに過ぎない。
同じような起爆剤はビルマの中にまだ少なからず潜在していて、遠からずまた破裂しそうという気がする。
とはいっても、「2007年7月24日、首都ネーピードーで、日緬官民合同貿易・投資ワークショップが開催された。両国間でこのようなワークショップが開催されるのは初めて。日本側からは20名、ミャンマー側からは30名が参加し、長期滞在ビザや輸出入ライセンスの取得など、在緬日系企業から寄せられる問題点について、率直な意見交換が行われた。次回開催が合意され、日緬二国間の貿易・投資の促進に向けた継続的対話の場として期待される」という現状にあっては、日本の当局が民主化への一助となる方向へ動く可能性は皆無かもしれない。
まあ、民主化より資源が欲しいのが日本なのだから、政府の方針や経済界の思惑に関し、局面の展開はないってことか。
(「ジェトロ - ミャンマー」参照:
http://www.jetro.go.jp/biz/world/asia/mm/basic_03/ )
マスメディアも、相撲のことで頭が一杯(日本の国民が海外事情への関心が疎いから、ビルマの国情など、三面記事以下の扱いってことですね。これが日本です。
投稿: やいっち | 2007/10/06 19:55