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2007/10/13

霧の作家・宮本秋風の周辺

 ある小冊子を見ていたら、とてもいい木版画を見つけた。
 いい木版画家を見つけたというべきか。
 それは、宮本秋風(しゅうふう)という作家(木版画家)。作品名は「雨音」である。名前だけは聞いたことがあるが、ネット上に限っても多少なりとも纏まった形で作品を見たことはない。
 まして、覚束ない記憶ながら、実物を見る機会にはまだ恵まれていないはず。
 宮本秋風氏は世間的はどれほどの認知度があるのか。既に結構、知られている?
 せっかくなので、紙上にて(パソの画面上にて)宮本秋風氏の世界を楽しませてもらうことにしよう。

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→ 宮本秋風「川霧」(画像は、「東京書芸館」より) クリックすると拡大する。画面の中央に小舟と人影が見える…だろうか。見えるはずである。これが《ぼかし》の技法なのである!

 小冊子とは「しょげい倶楽部」(「東京書芸館」が発行元)。内外のいろんな作家の作品を紹介してくれている。
 小生には到底、手の出ない作品ばかりだが、眺めて楽しむ分には有り難い冊子である。

 以前、この冊子を通じて知った王子江の『天地斎徳 日月同明』 を紹介したことがある:
王子江『天地斎徳 日月同明』を巡って

 生憎、小冊子を発行している「東京書芸館」の公式ホームページ内では宮本秋風氏の「雨音」を紹介する頁は見つけられなかった(実際にはあるが見つけられないのか、まだ新作なので掲載(紹介)に至っていないのか、分からない。
 が、同じサイトに宮本秋風氏の「川霧」を紹介する頁があった。

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← 宮本秋風「雨音」(画像は、「株式会社 ギャラリー・トレンド」より) クリックすると拡大する。冊子で見た木版画の写真とは、色合いが違う。印象も違う!

 この頁に略歴が載っている。
 ここでは、冊子「しょげい倶楽部」から略歴を転記する:

 一九五〇年、福岡県生まれ。一九六九年、東京で飯岡修画伯に油彩を師事するが、次第に油彩から木版画へと関心を移し、前例のない技法を開発しながら独自の画風を作り上げる。一九八二年に作品がボストン美術館、ロックフェラー記念美術館等に買い上げられ、世界的に注目される。国内はもとより、シアトル、ロンドン、パリなど海外でも個展を開催し、国際的にも活躍。二〇〇一年にシアトルにもアトリエを構え、二〇〇五年には画業35周年を記念し、初めての木版画集『宮本秋風木版画集』を出版。CWAJ(アメリカンクラブ)版画展招待作家。

Art043

→ 宮本秋風「あじさい」(画像は、「株式会社 七彩社」より)

川霧」の頁に戻る。
 この作品について、下記のように説明されている:

 早朝の深い静寂の中、しだいに山里の空が白み、ほのかに赤みの射した山際には、かすかに赤みを帯びた朝の光。 水墨画のような山々や水辺には、淡くあるいは濃く、白い川霧がたちこめています。眺めるほどに、細やかな水滴が、指先に触れるような驚くべき精妙な描写です。

 が、この描写の説明には肝心な点が触れられていない。
 それは、本作品をじっくり眺めるならば(掲載した画像を拡大して眺めるべし!)、その中央部分に《ぼかし》の技法で微かに小舟と人影が描かれているのが分かるはず、という点である。

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← 宮本秋風「夏の月」(画像は、「株式会社 七彩社」より)

 小生は冊子「しょげい倶楽部」で宮本秋風氏の「雨音」を見て、即座に気に入った。が、ネットではなかなか適当な画像が見出せない。それでも上掲の画像を発見した。ネットでの画像と冊子に載っている写真とは雰囲気がやや違うが、でも、どちらを見ても情緒があり、しっとりとした落ち着きを感じるだろう。

展示作品リスト 宮本 秋風ホームページは、「株式会社 ギャラリー・トレンド」)で宮本秋風氏の数々の作品を見ることができる。

 また、「国宝復刻作品から現代アートまで、心とからだの「美」をご提案-七彩社(ななさいしゃ)」と謳う「株式会社 七彩社」の中の、「宮本秋風の世界」という頁でも幾つかの作品を見ることができる。
「(株)七彩社は宮本秋風の作品を世界中で最も多く取り扱う会社です」と銘打っているのだ。

 この頁から一部、転記させてもらう:

 宮本秋風はこの木版画の技法で風景を描き出す。しかし、他の木版画家のように単に伝統木版画の技術を継承して作品を創るのではなく、既存の木版画技術にはない「複雑なぼかし」や「雲母(キラ)まぶし」といった独自の技法を駆使し、宮本ならではの作品世界を創り上げ続ける絵描きである。

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→ 宮本秋風「さみだれ」(画像は、「株式会社 七彩社」より)

 一部では霧の作家と呼ばれているらしいが、ネットでは宮本秋風氏についての情報はあまり得られない。ネット検索で浮上してくるのは大概がオークション関連。
 ブログなどで同氏を採り上げられたことは未だないということなのか。

 但し、何度も参照させてもらっている「株式会社 七彩社」の中に、「宮本秋風初木版画集刊行!」という頁を見出す。
 この中で、宮本秋風氏の木版画集刊行に際しての談話(?)が載っている。一部、転記する:

(前略)その後も木版画を創りつづけ、いつのまにか35年が過ぎていたのです。この間に油絵では表現できない木版画のおもしろさにいつしか取りつかれていました。
私は劣等生であったが故に、今もこうして好きな木版画を創ることで生きていられるのだと思います。

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← 宮本秋風「ゆく春」(画像は、「ギャラリー名画堂」より)

 せっかくなので、小冊子「しょげい倶楽部」からもう少しだけ(部分的に)転記しておく。

 まず、『雨音』について:

 本作『雨音』は、本誌においてご紹介するたび数多くの反響をいただいている版画家、宮本秋風氏の二〇〇七年度の最新作です。辺りの音さえ吸い込むかのような濃淡に棚引く霞。そぼ降る雨が水面に刻む波紋。観るものに不定のリズムを感じさせ、あたかも譜面のない管楽奏を奏でるような本作は、「視覚以外の感性に訴えかけてくる」と謂(い)われる宮本氏の魅力が如実に現れた作品といえるでしょう。

 技法について:

 その感性もさることながら、特筆すべきは繊細緻密な木版画技術です。宮本氏は既存の木版画にはない高度な技法である「ぼかし摺り」「雲母(きら)摺り」といった独自の技法を存分に駆使。通常の木版画では、原画を彫師、摺師に託して制作しますが、宮本氏は一枚一枚の版木の彫りから彩色の摺りまで、すべてを自らの手で行なう「自彫り自摺り」。原画を一切描かず、下絵なしで版木に彫刻刀で彫り込むため「刀で絵を描く画家」と讃えられています。

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→ 宮本秋風「紫薫の朝」(1994年制作 360×535㎜) (画像は「株式会社 七彩社」の中の「宮本秋風初木版画集刊行!」より)

 転記文中、「雲母(きら)摺り」という用語が出てくる。
 かの写楽もこの技法を使ったという。
古活字版 徒然草」でも「雲母〈きら〉摺り」が施されている。
ギャラリー三昧 齋藤清展」によると、「雲母(きら)摺り」とは:

料紙装飾や浮世絵版画の技法の一つ。版木に糊のりや膠にかわをつけて紙に摺り、その上に雲母(うんも)の粉を篩ふるいかけ、乾いたあと、残りの粉を払い落とす。浮世絵で雲母粉を用いた版画の刷り方。銀粉のような効果を出したもの。

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コメント

 ごぶさたしています。といってもRSSという便利な機能で、新稿がアップされるたびにお知らせが来るので、いつも興味深く拝見させていただいています。
 宮本秋風(しゅうふう)さん、名前も存じ上げなかった方ですが、すっと心にはいって来る作品ですね。net上でもゆっくり見ていたくなりますね。
(10/11の「君の名は」は、ゼフィランサスですね。そういえば、かなりまえの「君の名は」書きこもうと思いながら失念してしまいました・・・。
ゼフィランサスについては、拙日記に書いたことがありました↓。ご暇な折に。)
http://www3.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=325457&log=20070915

投稿: かぐら川 | 2007/10/13 18:42

かぐら川さん
コメント、ありがとう。
「RSSという便利な機能」、小生、理解していませんでした。
アクセスしてくれたところには、嬉しくて覗きにいくというパターンです。
今は事情があって余裕がなく(11月一杯くらいまで)、なかなかコメントを残すというわけにはいかなくて、我ながら情けないです。

宮本秋風さん、いい作家ですね。実物は小生も未だ見ていない。今はネットや手元の小冊子だけ。
いつか、実物にめぐり合いたいです。

ゼフィランサスのこと、ありがとうございました。

投稿: やいっち | 2007/10/14 07:03

初期の作品からずっと見て来ていますが…少しずつ変わってきたように思います!!まだまだ無名の頃は暁鐘という月刊誌の表紙を飾っていました!!最初の個展は黒崎のそごう…だったと記憶しています!その頃から心があたたまる作品が多かったですね!!最初の頃は多色木版画と言ってました!前職のままだったら彼は平凡な人で終わっていたかも…と思います!彼の版画に対する思いが今を築いたのだと思います…多くの方に見ていただきたいと願います…!

投稿: あらいぐま | 2008/11/13 02:13

あらいぐまさん

小生より古くから親しんでこられたのですね。
いろいろ教えていただき、とても嬉しく思ってます。

恥ずかしながら小生が宮本秋風という作家の存在を知ったのは、日記にあるようについ先年のこと。
しかも、まだ実物を観ていない。

絵を描く人で上手い人は数知れずいるのでしょうが、自分のスタイルを見出せる人は少ないのでしょうね。

独自の手法と技術を持つことで、自分の画境を拓き、彼ならではの静謐な世界を我々に与えてくれた…すばらしいことです。

投稿: やいっち | 2008/11/13 19:28

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