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2007/09/08

洪水は今、現場で起きつつある!

 車中で相変わらずC・オフィサー 著/J・ペイジ著『地球の物語 痙攣する青い惑星』(中島 健訳、青土社)を読んでいる。
 刊行年が94年と古いのが気にかかるが面白いのだから仕方がない。
 このところ、お蔭さまで暇とは言えない程度には仕事が忙しい。なので、車中での待機中の読書も進まない。もう借りてから十日も経つのに三分の一も読めない。

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→ 映画『天地創造』(監督: ジョン・ヒューストン 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン) スケールの巨大な映画だった。今じゃ、こんな映画の制作は無理か。すぐ、CGに頼っちゃうし。映画の宣伝で女性のヌードシーンが出てくることを知り(でも、後姿)、それを見たい一心で映画館へ足を運んだという記憶がある。純心だったのだ! この映画か、市川雷蔵主演の「眠狂四郎」か、ボンド映画(『ロシアから愛をこめて』or『ダイヤモンドは永遠に』)に痛く刺激され初の夢精を経験したのだった! どの映画だったのかはっきり覚えていないのは男として不覚だ。…それとも、近所の女の子と相撲したのが直接の契機だったっけ?

 嬉しい(?)悲鳴はともかく、今日もまた本書からネタを戴く。まあ、今の時代に無縁とは言えない話題のはず。 それは洪水の話。

旧約聖書』の「ノアの箱舟」の話は有名であろう。昔、映画にもなったっけ。「天地創造」の中の一場面だったか。

ノアの方舟 - Wikipedia」によると、下記のような話(『創世記』):

ヤハウェ・エロヒム(「主なる神」と日本語では訳されている)は地上に増え始めた人々が悪を行っているのを見て、これを洪水で滅ぼすと「神に従う無垢な人」であったノア(当時600歳)に告げ、ノアに箱舟の建設を命じた。ノアとその家族8人は一所懸命働いた。その間、ノアは伝道して、大洪水が来ることを前もって人々に知らせたが、耳を傾ける者はいなかった。

箱舟はゴフェルの木でつくられ、三階建てで内部に小部屋が多く設けられていた。ノアは箱舟を完成させると、家族とその妻子、すべての動物のつがいを箱舟に乗せた。洪水は40日40夜続き、地上に生きていたものを滅ぼしつくした。水は150日の間、地上で勢いを失わなかった。その後、箱舟はアララト山の上にとまった。

40日のあと、ノアは鴉を放ったが、とまるところがなく帰ってきた。さらに鳩を放したが、同じように戻ってきた。7日後、もう一度鳩を放すと、鳩はオリーブの葉をくわえて船に戻ってきた。さらに7日たって鳩を放すと、鳩はもう戻ってこなかった。

ノアは水がひいたことを知り、家族と動物たちと共に箱舟を出た。そこで祭壇を築いて焼き尽くすいけにえを神にささげた。神はこれに対して、ノアとその息子たちを祝福し、ノアとその息子たちと後の子孫たち、そして地上の全ての肉なるものに対し、全生物を全滅させる大洪水は決して起こさないことを契約した。その契約のしるしとして、空に虹をかけた。


 転記文中に、「ノアは箱舟を完成させると、家族とその妻子、すべての動物のつがいを箱舟に乗せた」とある。
 全ての動物とはどういうことだろう。微生物は埒外なのだろうか。植物はこの世の災禍の原因じゃなかったろうに、救済の対象ではないのか。それとも、植物は全く関心の外? あるいは人(や神)が救わなくても、植物はしぶとく生き残るって思っていた? 全ての種の植物が生き残れると?
 全ての動物という時、海や川に生きる動物は含まれていたのだろうか。そう、魚や貝やサンゴ礁の類いはどうだったのだろうか。洪水で水没したって、彼らはもともと水棲の生き物なのだから、箱舟に乗せる必要はない?
 ここには人間と動物、動物とその他の植物、そもそも動物とは、生き物とはどのようなものとして理解されていたのかという問題があるような気がする。

 さて、「古代の大洪水にまつわる伝説や神話(大洪水神話)は、世界中に存在し、その発生を主張する学者や研究者も多い」という。
 世界的な規模の洪水が起きたかどうかは別にして、神話の生まれ語られる地域を壊滅的な状況に追いやった大洪水は過去、幾度もあったことは間違いないようだ。
 そもそも、地震や津波、火事、火山、台風と天災はいろいろとあるが、被害というと洪水によるものが圧倒的だという。
 なんといっても、洪水はその地域を根こそぎで灰燼に帰してしまう。
 だから、神話として語ろうにも語り部が残らないほどに破壊的な洪水もあったのだろう。

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↑ ミケランジェロ『アダムの創造』(画像は、「Welcome to Salvastyle.com サルヴァスタイル美術館 ~西洋絵画と主題解説~」より)

『旧約聖書』(『創世記』)に記述されるノアの箱舟の話だが、今では、この話には土台となる神話があったことがほぼ定説となっているようだ。
 本書にも書いてあるが、ネットで検索したら、下記のサイトでそつなく書いてあって、もう、このサイトを紹介するだけで本稿は終了にしたい気分である:
ノアの箱舟 ~箱舟と洪水伝説の真相~」(ホームページは、「古代の不思議」)
(そつのない文章もいいが、画像の選択がいい!)

 このペイジに記されているように、「ノアの箱舟」伝説「のような洪水伝説は、旧約聖書の中だけにある話ではないのである。近東周辺には、似たような伝説がたくさんある」:
大洪水 - Wikipedia
 以下、上掲ペイジから転記する:

 古代メソポタミアには、「ギルガメッシュ」という叙事詩がある。それによると、神々の一人、天空の神エンリルが、増え過ぎた人間たちの騒ぎ立てる音で、ついに不眠症になってしまったところから原因が始まる。苛立ちを覚えたエンリルは、様々な天変地異をもたらして人間たちに反省を促そうとしたが、人間は少しも改める様子がなく彼らの騒ぎ立てる騒音は、ますますひどくなる一方であった。

 とうとう頭に来たエンリルは、大洪水を起こして、劇的にすべてを始末してしまおうと考えた。計画は、成功しそうに見えたが、寸前のところで出産の女神イシュタルは、絶望のあまり泣き出し、知恵の神エアは、好意を持った一部の人間に箱舟のつくり方を教えて、様々な動物とともに大洪水から救ったのであった。こうして、人間は、繁殖と知恵の神の計らいで辛くも滅ぼされそうになったところを救われたのである。

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← C・オフィサー 著/J・ペイジ著『地球の物語 痙攣する青い惑星』(中島 健訳、青土社)

 この叙事詩「ギルガメッシュ」は、紀元前3千年頃にメソポタミアで書かれたものとされ、恐らく、世界最古のものである。つまり、旧約聖書が書かれる2千年以上も前に存在していたことになる。その後、この叙事詩は、何世紀もの間に中近東の至る所で書き写されていった。そのあらましは、形を少しずつ変え異なってはいるが、一様に大洪水の伝説の形で記されているのである。したがって、古代オリエントの文献にいろいろある大洪水にまつわる伝説は、すべて、この話を起源にしているとみてよい。


ギルガメシュ叙事詩 - Wikipedia」によると、「主人公のギルガメシュは、紀元前2600年ごろ、シュメールの都市国家ウルクに実在したとされる王であるが、後に伝説化して物語の主人公にされたと考えられる。  最古の写本は、紀元前二千年紀初頭に作成されたシュメール語版ギルガメシュ諸伝承の写本。シュメール語版の編纂は紀元前三千年紀に遡る可能性が極めて高い」という。
 この「ギルガメシュ叙事詩」の中に、「ウトナピシュティムの洪水の神話」が出てくる。
「神が起こした大洪水から箱舟を作って逃げることで永遠の命を手に入れたウトナピシュティム」の話が、どうやら後世の少なからぬ洪水伝説に影響を与えているようで、「ギルガメシュ叙事詩」自体、『旧約聖書』(やギリシャ神話など)に影響を与えているが、「特にノアの方舟のくだりは、ウトナピシュティムの洪水の神話が元になっていると」考える考古学者や文献学者は少なくないようである。

 なお、「ギルガメシュ叙事詩」は、矢島 文夫氏により翻訳されている:
ギルガメシュ叙事詩』(ちくま学芸文庫 )
 本書には、ウトナピシュティムの洪水の神話が訳されて載っているが、ノアの箱舟との類似点の多さには驚かされる。というか、もっと神話性が高いような気がする。
 類似点は、本書に拠ると、下記などである:

 大洪水に関するギルガメッシュとノアの伝説の驚くべき類似は、起源が共通であり、シュメール人からアッシリア人とヘブライ人へと(ヘブライ版の場合はいくつかの神ではなく一体の神へと重要な変化を伴うが)伝えられた物語であることを示している。この物語はアブラハムとその家族により、彼らがバビロニアの都市ウルから逃れたとき伝えられたのかもしれない。これらの物語は共に神々あるいは一体の神の人類に対する怒りに始まり、僅かな人間を救い箱舟の作り方を詳しく教える神の介入を含んでいる。箱舟の中身にはウタナピシュテムあるいはノアや家族だけでなく、動物や植物も入っている。嵐は七日あるいは四〇日間続く。箱舟はニシル山かアララト山に漂着する。鳩や燕や烏が戻ってこなくなるまで続けて放される。洪水の後、神々や神の方で後悔し、ウタナピシュテムあるいはノアと契約が行なわれる。

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→ 『ギルガメシュ叙事詩』(矢島 文夫翻訳、ちくま学芸文庫 ) 「ニネベ出土の粘土書板に初期楔形文字で記された英雄ギルガメシュの波乱万丈の物語。「イシュタルの冥界下り」を併録。最古の文学の初の邦訳」だとか。

 さて、本書での本題というか筆者らのメッセージはここからである。
 つまり、最大の洪水は過去のどんな洪水でもなく、「現在も進行中のゆっくりしたものである。すなわち、海面の上昇」なのである。

 この「海面の上昇」も厄介な問題である。海面の上昇が齎す災禍もさることながら、そもそも何ゆえ海水面が上がりつつあるのか(「氷期が終わり大陸の上にあった氷床が融けた」ことに伴う、「ユースタシーな海水準変動」→「海水準変動-Geologin」参照。なお、「ユースタシー: eustacy」とは、「海水量の変化による世界的規模の海面の昇降」のこと)、「温暖化による海水の熱膨張」の温暖化の原因は人間の経済・産業活動にあるのか。それとも、大きな意味で氷河期と間氷期とのサイクルで氷河が溶ける時期に当っているだけなのか:
海面上昇 - Wikipedia

 原因が人為的なものが大きいか否かは別にして、海面上昇の傾向は否定できない。
 海水面が上がるとは、実際には豊富とは言えない限られた資源である水が海水の形に成ってしまう。飲める水、生活に使える水、地上の植物に供給できる水が乏しくなることも意味する。
 温暖化が起因しているのなら、気象の変化を誘発する。旱魃や大洪水を齎す嵐の増加。
「地下水にも深刻な影響をもたらす」し、それ以上に水資源をめぐっての争いが激しくなるに違いない。
(水資源をめぐっての問題については、拙稿「ウンチク癖はウォシュレットじゃ流せない」の中の、「日本も実は水資源に乏しい国なのである。水の輸入大国だという現実を忘れてはならない!「日本は水を大量輸入?!」や「森のこと水のこと」参照」を見てね!)

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