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2007/09/25

ベックリン…死への旅路は若き日より

 いきなり余談だが、昨夜また鍵(束)を紛失した。
 ポケットの中に入れておいたはずが、昨日の営業中、それも真夜中になって、トイレを済ましてハンカチを仕舞った際に、なんだかポケットの膨らみが小さい…。もしや…。手を突っ込んでみると……、ない!!
 ひょええええーーーである。
 車の運転席の下も探したが見つからない。
 小生、真っ青。

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← 鍵束を紛失したと気付いた瞬間の小生の胸中はこんな風だった!

 思えば、小生、財布は小学生の時に初めて持ったビニール(ほとんどオモチャ)の財布をポットン式トイレに落っことして以来、紛失したことはない。
 傘だって、ビニール傘を一度、置き忘れたことがあった(かどうか)。
 が、鍵(束)については、何故かよくトラブルを起こす。
 無くしたこと数回。バイクや自転車にくっ付けたまま、バイクを置き去りにしたこと数回。帰宅して、ドアノブに差し込んだまま、翌朝(出勤時)になるまで気付かなかったこと数回。
 鍵束を落として、気付かず、戻ってみたら、鍵の取っ手部分のプラスチックの残骸だけが路上に無残にもバラバラに落ちていたこと二度。


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→ 22日の真夜中過ぎ。仕事を終えて帰宅したら、我が邸宅の通路に赤ちゃんヤモリが。小生をお出迎え?

 買ったばかりのオートバイのキーの合鍵を落としたこと(少なくとも)二度。
 小生のことだから、忘れてしまっただけで、まだトラブルがあったかもしれない。
 …ああ、あったあった。
 でも、きりがないのでこれ以上書くのはやめておく。

 さて、気を取り直して…。閑話休題(万事休す)! 
 急いでベックリンの話題に移ろう。

 何かの記事を書くためネット検索していたら、不思議な画風の絵に遭遇した。
 一見したところ、小生が好きな画家フリードリヒ(カスパー・ダーヴィッド・フリードリヒ)のようにも思える。
 でも、似ている雰囲気が漂ってくるのだが、見たことのない作品。

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← 「樅の木のある高原」(1849)/ベックリン 77×74.5cm カンヴァス、油彩 バーゼル美術館(Kunstmuseum Basel)

 まあ、好きな画家であり、展覧会へ足を運んだことがあるし、彼に関する本も所蔵している、それどころか彼に付いての小文を綴ったことがある:
フリードリッヒ…雲海の最中の旅を我は行く
(丁度、一年前の昨日の雑文だ。今も結構、アクセスの多い頁。フリードリヒ人気の高さが伺える。)
 とはいえ、フリードリッヒに小生が知らない作品があっても一向に不思議じゃない。
 が、絵に付せられた情報を見ると、「樅の木のある高原(1849)/ベックリン 77×74.5cm カンヴァス、油彩 バーゼル美術館」とある。
 ベックリン?!

 それにしても、上掲の画像を表示した頁にはホームページ(表紙)へのリンクボタンがない。
 ホームページは「音楽とペーパーバック」だろうか(違うかもしれない!)。

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→ Böcklin, Arnold「Wettertannen im Jura bei sinkendem Abend, 1849」(Kunstmuseum Basel) 冒頭に掲げた画像とは色合いが随分違う! 本物はもっと違う?!

 小生、ベックリンも好きである。彼に付いての雑文を綴ったこともある:
ベックリンの「死の島」と髑髏
(惜しむらくは、この頁には画像を掲げるのを怠っている。この頃は、未だ、ネットで見つけた絵画サイトから画像を借りるのを遠慮していた気味がある…?! 後日、機会を設けて画像を付したい。アクセスは少なからずあるが、文章だけだと、さっさと去っていくようだから、親切の意味もあるし、絵画画像は是非、付しておきたいものである。)

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← アルノルト・ベックリン「Die Toteninsel (Erste Fassung), 1880」 (『死の島』 画像は、「Kunstmuseum Basel」より) この作品については、「ドイツ音楽紀行 アーノルド・ベックリン 「死の島」」や「Tomotubby’s Travel Blog メトロポリタン美術館で見たベックリン」、さらには「死の島」が参考になる。この絵、何処かフリードリッヒの『昔の英雄たちの墓碑』の影響を感じる。

 ネットで調べてみると(上記してあるように)、「樅の木のある高原」は「バーゼル(市立)美術館(Kunstmuseum Basel)」にあるとか。
 再度、このサイトから同じ画像を探してみる。

 さて、アルノルト・ベックリンについては、「ベックリンの「死の島」と髑髏」にて大凡のことは書いている。
 過不足のない情報を知りたいなら:
アルノルト・ベックリン - Wikipedia

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→ アルノルト・ベックリン「Der Frühling, 1862」 ベックリンにはこんなアンニュイな雰囲気を描いた絵もある! (『春』 画像は、「Kunstmuseum Basel」より)

 とりあえずは、下記の点を承知しておれば今は十分かもしれない:

アルノルト・ベックリン(Arnold Böcklin, 1827年10月16日 - 1901年1月16日)は、19世紀のスイス出身の象徴主義の画家。

19世紀末のヨーロッパの美術界はフランス印象派の全盛期であったが、戸外にキャンバスを持ち出し、外光の下で身近な風景を描き出した印象派の画家たちとは対照的に、文学、神話、聖書などを題材に、想像の世界を画面に表わそうとする象徴主義の画家たちも同時代に活動していた。ベックリンはこうした象徴主義・世紀末芸術の代表的画家の1人である。


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← アルノルト・ベックリン「Die verlassene Venus, um 1860」 (『見棄てられたヴィーナス』? 画像は、「Kunstmuseum Basel」より)

 象徴主義の画家。
 しかし、何と言っても、下記の点が小生に限らず多くのベックリンファンを惹き付けるところである:

『死の島』は暗い空の下、墓地のある小さな孤島をめざし、白い棺を乗せた小舟が静かに進んでいくさまを描いた神秘的な作品である。この作品に見られるように、写実的で緻密な描法と、画面にただよう神秘的・幻想的な雰囲気がベックリンの特色である。20世紀のシュルレアリスム絵画にも大きな影響を与えた。

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→ アルノルト・ベックリン「Odysseus und Kalypso, 1882」 (画像は、「Kunstmuseum Basel」より) 「死の島」には、こんな秘密があったのか?!

「神秘的・幻想的な雰囲気がベックリンの特色である」という点が、冒頭に示した作品を偶然見て、改めて実感を持って感じさせられたのだった。

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← 『ラフマニノフ:交響的舞曲、死の島、岩、』 (アーティスト: ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団, ラフマニノフ, デイビス(アンドリュー)  出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン) 「~「ロシアの瞳」のその奥に~ 瞳・その1 現代に通ずる死の予感を直視したラフマニノフの「死の島」」なる記事が参考になる。特に、「実はベックリンの「死の島」は同じ題名で5枚の違った絵が描かれ、ラフマニノフもその複数の絵を目にして曲想を固めて行くのですが、面白いことに彼が最初に出会い、且つ最も感銘を受けた素材が、実は原作のどれでもない、銅版画による白黒の複製であったことは大変興味深い事実です。「もし最初に実物を見ていたら、おそらく『死の島』は作曲されなかっただろう。」と本人が語るように、絵として完成された「死の島」に音楽を寄せたのではなく、「死の島」というモチーフの彼方に見えた世界によってラフマニノフの音楽創造が爆裂的に増殖したと言えます」というのは興味深かった。アルバムジャケットが白黒の所以である!

ベックリンの「死の島」は、福永武彦の同名のタイトルである小説「死の島」のモチーフにな」ったこと、「ラフマニノフがインスピレーションを受け同名の曲を作曲した」ことなどは既に書いた。
 あるいは、「レーガー(1903年)がこの絵に触発された交響詩を作曲していることでも知られ」ているのだろう。

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→ アルノルト・ベックリン「Bergsee mit Möwen, Anfang Winter 1847」 1847の作品。二十歳! 小生には、今回はこの作品を発見したことが驚きであり、ベックリンの凄みを感じさせた。ある意味、「死の島」以上に死の雰囲気が濃厚ではないか! ホントに二十歳の頃の作品なのか信じられないような暗さだ。(画像は、「Kunstmuseum Basel」より)

 話はどうしても、「死の島」絡みになってしまう。
 こうなったら、「死者の島」なる記事も覗いてみたくなる(ホームページは、「フランスの文化・フランスの風景」)。
 なんたって、ベックリンの絵の着想を得た島とは違うが、「死者の島 Ile des Morts」なる島があることを教えてくれるし、ベックリンの絵のモチーフになったイタリアのオルタ湖(の島)の画像も見せてくれる。

 ここには掲げ切れなかったが、ベックリンには、『波間のたわむれ』(1883年)や『死神のいる自画像』(1872年)、『聖なる森』(1882年)など、他にも紹介すべき作品があるが、今回については、「バーゼル美術館(Kunstmuseum Basel)」所蔵の作品の数々を堪能したことで、まずは十分だろう。
(まだ物足りないという方は、「アート at ドリアン 西洋絵画史」の中の「アーノルド・ベックリン」をどうぞ!)

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