水田を油田にって、既に油田じゃん!
「6月は環境月間」だそうである(「エコエコ促進日記! 6月は環境月間です!!」参照)。
だからなのだろうか、「テレビ各局でも、この環境月間に合わせて、キャンペーンを展開してい」るという(「エコエコ促進日記! テレビ各局もエコ月間!」参照)。
天下の(小生の大好きな)NHKさんも率先して「地球だい好き 環境キャンペーン」を行なっておられる。
「NHKが今月、地上波と衛星で121本」と報じられるほどの熱の入れようである(「「地球だい好き環境キャンペーン」 TV エンタメ YOMIURI ONLINE(読売新聞)」参照)。
→ 東京はこのところ、雨が降らない。空梅雨? それとも、梅雨入り宣言がカラフリ? この画像は6月10日の雨。我が部屋からの眺め。雨がザンザン降り!
昨夜、ラジオで聴いた話もその一環だったのだろうか。ラジオの番組中での特集は「地上波と衛星で121本」の数には入っていないのか入っているのか…ちょっと気になる。
さて、小生が聴いたラジオ番組とは、NHKラジオ第一の特集番組だった。多分、題名は「水田を油田に」だった(と思われる。いずれにしても、テーマは「水田を油田に」だった。これは言い換えると、「米からエタノールを」ということである)。
簡単に言うと、減反調整で余った水田を利用して食用ほどの質はないが、収穫量は食用に供される米に比べ格段に多い種類のコメを作り、その米で(バイオ)エタノールを作ろうという試みのようである。
ほとんど農地、それも土壌の質から畑には適さず米作しか望めない、某村(町)の方の話だった。
村(町)は減反政策で減反された農地は荒れる一方、畑にも適さない、そんな中で農家が働く意欲を失いつつある。そこへ水田を油田にという上手い話。たとえ食べるコメではないにしろ、コメを作れるのは田圃の質を保つ上でもありがたいし、村(町)当局がコメをエタノールに転換する施設を作ってくれ、且つ、農家が作った(食用でない
コメを全部、買い上げてくれるなら願ったり叶ったりだというわけである。
(但し、昨日の話では予算の確保のメドが立っていないという話だったが。)
このラジオ番組に直接関係するわけではないが、「日本農業新聞 - 稲でバイオ燃料 産業化めざし発足/東大中心にプロジェクト【関東】」によると、下記のような動きが始まっているようである:
東大大学院の研究グループが30日、稲を丸ごと原料にしたバイオエタノール製造の産業化を目指す計画「イネイネ・日本プロジェクト」を立ち上げる。産官学民の連携で、稲の生産から自動車燃料の販売までを行い、産業として成り立つことを実証するのが目的。農家や農業団体、産業界、地方自治体、民間非営利団体(NPO)などに参加を呼び掛ける。
なるほど、コメだけではなく、稲を丸ごと原料にしたバイオエタノールなら一層、効率性が高まる?!
← やはり、6月10日の雨。雷雨だった。右手前の黒っぽい物体は、健康器具。十数年前に通販で買ったのだが、組み立て方が分からず、結局、一度も使わないうちに、お蔵(ベランダ)行き! 物干しにもならん!
しかし、素人ならではの疑問が幾つかある。
そもそも、減反政策はいつまで続けるのだろうか。
近い将来、世界の食糧事情は間違いなく悪化する。日本の食糧安保は最悪の状況をさらに悪化させつつある。
そんな中、日本が(潜在的に)海外に輸出しえる農産物というと(他にもあるのかもしれないが)コメは筆頭に上がる産品である。
且つ、日本のコメは中国を含めた海外で、ブランドになりつつある。否、既にブランドとなっているのかもしれない。
となると、減反政策で調整されている遊休地をエタノールのための原料に供するコメを作るのではなく、堂々、ブランド米として輸出するコメを作ることを視野に入れてもいい段階に来つつあるのではないのか。
いずれにしても、食料が不足するのは目に見えているのだし。
小生などはコメからエタノールという研究より、日本のコメを御飯だけでなく、いろんなコメ料理に使えるよう、料理研究家と農家、技術者、関係当局らが一体になってコメ料理や調理品のメニューを拡大し、国内でのコメの消費量をアップさせる(同時に国内での食料の消費に占めるコメの比率を上げる)ことを目ざしたほうが、せっかく調整され畑地などになっている田圃を生かす、以て日本の食糧安保を確かなものにする一助になるのではと思うのだが。
そもそもバイオエタノールを如何に確保するかという発想は、これからも、車社会は絶対ですよということを自明の前提にしているように思える。本当なの? 自動車産業界の、あるいは経済産業省の、キャンペーンじゃないの?
車といっても、本当は個々の人が車を所有するのではなく、結局はエネルギーを消費するのだとしても、電車やバス、飛行機、船などの大量輸送機関をもっと充実させたほうがいいのでは。
できれば、ここにタクシーを入れて欲しいね。タクシーを気軽に利用できるように、それこそ庶民の下駄代わりに使えるようになれば、個人で車を所有し、各家庭に各個人のために車庫があったりするより、よほど資源やスペースの節約になるし、そうした公共輸送機関の利用と充実について根底から戦略を練り直したほうが、バイオエタノール燃料の生産に(トウモロコシやサトウキビやコメ、木材・草木、生ゴミのどれからエタノールを作るべきかという問いも含め)汲々とするより遥かに望ましいのでは?
さらに、もっと広くは、コメ(やトウモロコシ、サトウキビなど)をエタノール原料にすることについては、下記のような批判もあるようだ:
「食べ物を車に奪われてよいのか(2007年2月、衆議院調査局報告見解)」(東京大学名誉教授 もったいない学会会長 石井吉徳)
「農業も石油が支える。これを念頭にバイオマス利用を考えないと、国家の計を誤ることになろう」として、「現代農業を支える肥料、農薬などは石油、天然ガスから合成され、農耕機械も石油で動くからで、日本は食料自給率はカロリーベースで40%しかない先進国の中でも脆弱な国である」云々と訴えている。
さらに、よく言われることだが、日本のコメは石油で作られ、結果、「石油漬け農業が自然を壊滅」させた。日本人はコメを食べているのではなく、石油を食べているといっても過言ではないかもしれない。
下手な要約は止めておく。
とにかく、「食べ物を車に奪われてよいのか」(石井吉徳)を熟読玩味したいものである。
→ 6月11日、皇居の脇を通りかかった。雨に煙る皇居。
但し、「食べ物を車に奪われてよいのか」の冒頭付近で、「日本は温暖な気候に恵まれ水は大丈夫だが」という点は、賛成しかねる。
最近の空梅雨は別にして、日本は単位面積当たりの降雨量は少ないとは言えない。
が、日本は山国である。つまり、立て板なのである。そこに雨が降っても、一部は森林などに蓄えられるが(これも怪しくなりつつあるが)、降った雨の大半は川に流れ、海に一気に流れ込んでしまう。つまり、みすみすドブに捨てている(海をドブに喩えるのは恐縮だが、要は使わないで流している。水に流しているのだ)。
このことは、拙稿、「日本は水を大量輸入?!」などで書いたことがある。
こうした話は数年前、一斉にマスコミを通じて流された。これもキャンペーンだったのかもしれない。
念のため、 「総合地球環境学研究所」からの話を一部、転記しておく:
米1㌔を収穫するのに5100㍑の水が要る。同様に小麦は3200㍑、トウモロコシは2000㍑、大豆は3400㍑、必要だという。
肉類については、鶏肉1㌔に4900㍑、豚肉だと1万1千㍑、牛肉では10万㍑を要するという。記事の表現を借りると、「肉は大量の水が濃縮された食べ物」ということになる。
食糧生産に必要な水をバーチャルウオーター(仮想水)と呼ぶ。この概念を広めたロンドン大学のアンソニー・アラン教授によると、「沙漠が広がり、水の少ないアラビア半島などで人間が暮らせるのは、穀物つまり仮想水を輸入しているからだ」と言う。
日本が輸入している「仮想水」は、沖グループの計算によると、年間1035億㌧。国内で使われる農業用水(同590億㌧)の2倍近い数字である。
輸入相手国は、アメリカやオーストラリアが突出している。「水の塊」である牛肉の輸入が多いからだという。
要は、近年の少雨とかなんとかではなく、仮に今年、降雨量が多かったとしても、日本は降った雨の大半を土壌にさえ浸み込ませることなく、川に海に捨てている。決して、水は豊かではないのだ。
しかも、高度な消費社会であり輸入大国とあって、水を本来は降雨量の決して多くはない海外から加工品の形で輸入しているのである。
もう、日本も、水を水に流して済む時代ではないのである。
← 6月11日、おなじく皇居(内堀通り)にて。窓越しに雨のお堀を見た光景。結構な雨が降っていたのだ。
そもそも、地球上で利用可能な水は極小であり、その中で身の程知らずにも日本が水を大量に消費していることへの危機感は多くの方が共有しつつある。
そのための研究も進められつつある:
「北海道薬科大学 [ 桂 Vol.97―研究紹介 ] 天然鉱物を用いた水浄化法の開発化学分野 教授 國仙久雄」
水に付いては、他に、拙稿「水フォーラムのこと」「ウンチク癖はウォシュレットじゃ流せない」などがある。
他にも、石井吉徳氏の論考に異論をもたれる方もいるだろう。
それでも、読むに価する論考だと思う。
石井吉徳氏のホームページ:「豊かな石油時代が終わる」
関連する記事:「内田盛也レポート 「峠を越えた石油文明」 世界秩序の歴史的転換期」
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コメント
お邪魔します。
>そんな中、日本が(潜在的に)海外に輸出しえる農産物というと(他にもあるのかもしれないが)コメは
>筆頭に上がる産品である。
お言葉ですが輸出は無理だと思います。「人件費等のコストが高過ぎ
る」「味や食感が日本人好みに特化され過ぎている」ので。それとバイ
オエタノールはそれ程広まらないと思います。「(食料といった)モノ
を作るためにはエネルギーを費やせても、エネルギーを作るのにより多
くのエネルギーを費やしたら無意味になる」からです。「薪や炭を作る
目的の植林」というのは寡聞にして聞いた事がありません。
投稿: ブロガー(志望) | 2007/06/22 20:45
匿名の方の意見には原則、レスはしない方針だけれど、ま、いっかということで。
「日本ブランド13億の胃袋狙う 対中コメ輸出7月再開-政治ものニュースイザ!」
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/econpolicy/53597/
消費市場拡大に加え富裕層に高級志向が強まる中国に、日本からブランドものの「コメ」を売り込もうと、官民上げた取り組みが始まった。先月の日中首脳会談で日本米の7月からの対中輸出再開が確認され、新潟県産コシヒカリなど最高級米25トンが第1弾として、北京や上海の百貨店店頭に並ぶことが決まった。中国人に食の好みが近い香港や台湾向けの日本米輸出は順調に伸びており、次は“13億の胃袋”中国を狙った日本米ブランド確立を急ぐ。
日本からの農林水産物の輸出をめぐっては、25日に都内で開かれる「農林水産物等輸出促進全国協議会」総会で、小泉(こいずみ)純一郎(じゆんいちろう)・前首相(65)が名誉会長に就任する見通しだ。政府も積極的に支援する姿勢を鮮明にする。
(以上、転記。詳しくは上掲の頁を)
日本の農産物の輸出が難しいのは誰しも分かっている。そんな中で関係者は道を拓こうと頑張っているンだね。
バイオエタノールは小生も疑問を幾つも抱いている。ま、本文に書いてある通り。
投稿: やいっち | 2007/06/24 06:49
減反政策で調整されている遊休地はブランド米を堂々とつくればいいと重いまずか、まだ買ってくれる国があまりない。そのようなときに作れば米の価格は暴落、作らなければ荒れ地化。だから、とりあえずエタノールのための原料に供するコメを作るのでしょう。
いずれにしても、食料が不足するのは目に見えているのだし、農地を全部使うための政策はどんどん進めていってほしいですね。
投稿: 順番に | 2007/06/24 14:41