我愛す珈琲の芳しき
このところ、堅い記事が続いた。今日は、やわらかめな話題をメモってみる。
昨日、車中で暇の徒然にラジオに聞き入っていたら、雑学的な話があれこれ耳にすることが出来た。確か、「81.3 FM J-WAVE」の「GROOVE LINE」なる番組だったと思うのだが。
例えば、今ではスッカリ馴染みになり、夏のみならず四季を通じてメニューの一つとなっている飲み物の一つであるアイスコーヒーが、実は日本が生んだ飲み物だというのだ。
他にも、眼鏡の鼻当ては日本人が考案したという話も同じ番組で聞いた。
← 適当な画像がなかったので、急遽、秘蔵(?)のインスタントコーヒーに被写体になってもらった。
「アイスコーヒー」
アイスコーヒーがまさか日本が発祥の地だとは。
「アイスコーヒー - Wikipedia」を覗くと、「日本のアイスコーヒー」なる項目に、「日本では大正期にコーヒーを冷やして飲み始めたのが発祥」とあって、微妙な表現。
これが、「日本で大正期にコーヒーを冷やして飲み始めたのが発祥」とあれば、取りあえずは(一定の)裏付けが取れたということになるのだが。
ちなみに、「関西圏では冷コー(れいコー)と呼ぶこともある」というのは意外。小生など、日本では何処でも「レイコー」と呼称するものと、根拠なく思い込んでいた。
関東圏では、一体、どう呼ばれているのだろう。「アイコー」? 逆に夏などにコーヒーを冷やさなかったら「ブレイコー」になる?
「インスタントコーヒー」
「インスタントコーヒー」は、日本人が発明したとは、以前、ラジオでだったかテレビでだったかは忘れたが、聞いたことがある。
「インスタントコーヒー - Wikipedia」によると、「1899年にアメリカのイリノイ州シカゴに在住していた日本人科学者の加藤博士が、緑茶の即席化の研究途上、コーヒー抽出液を真空乾燥する技術を発明。1901年にニューヨーク州バッファローで開催されたパンアメリカン博覧会で「ソリュブル・コーヒー」(可溶性コーヒー)と名づけて発表したのがはじめとされる」と記してあるが、「要出典」と付記してあり、加藤博士のちゃんとした姓名も含め、議論の余地があるようだ。
但し、「ネスレのサイトへようこそ -Good Food, Good Life」の中の、「お客様相談室 なぜなに?コーヒー NESCAFEのできるまで」によると、「ソリュブル(可溶性)・コーヒーを発明したのは日本人なのです。科学者・加藤了博士がその人で、1899年にアメリカで実験に成功。ご存知でしたか?」だって。
ただ、一般への普及ということになると、「(前略)ネスレ社は数年間の開発期間を経て、1937年にほぼ現在同様のスプレードライ法によるインスタント・コーヒーを完成させた。この製品は翌1938年に「ネスカフェ Nescafe」の商品名で市販され、インスタント・コーヒーの代名詞として知られるようになる」というのは、定説として受け入れられているようだ。
「缶コーヒー」
せっかくなので、「缶コーヒー - Wikipedia」も覗いてみる。
「歴史」の項に、「1965年9月に島根県浜田市のコーヒー店主・三浦義武(作家の故・三浦浩実父)によって開発された「ミラ・コーヒー」が世界初の缶コーヒーといわれているが、短期間で生産中止となり、詳細は不明である」とある。
やや議論の余地があるということか(「ミラ・コーヒーより前の1958年12月に外山食品が「ダイヤモンド缶入りコーヒー」(200g入、100円)を発売した記録があると」いうのだが、これも不祥のようだ)。
ただ、何といっても、「UCCコーヒー ミルク入り」だ!
「株式会社上島珈琲本社(現:UCC上島珈琲)が、コーヒー牛乳にヒントを得て1969年4月に日本初のミルク入り缶コーヒー「UCCコーヒー ミルク入り」を発売した」のだった。
「当時は瓶入りの牛乳などの飲料が、外出先で購入できる一般的な飲料であったが、缶飲料の登場によって、人々は自由に飲物を持ち歩くことができるようになった」!
あの缶にコーヒー! のちに缶入りのお茶が発売された時も、若干の違和感を最初は覚えたものだが、缶入りコーヒーも、どうなのかなと思いつつも、飲むと美味しいのだった。
そう、小生は「UCCコーヒー ミルク入り」が好きだった。
もともと無精な奴なので、インスタントでさえ、作るのが面倒。
が、それ以上に「UCCコーヒー ミルク入り」という缶コーヒーは、自分で按配して作ったインスタントのコーヒーよりも、適度な甘さがあり、美味しかった。
学生の頃、「UCCコーヒー ミルク入り」とアンパンやアンドーナツ、時にはハムサンドを一緒に買ってお八つ代わりに喰うのが楽しみだった。お八つ代わりと言っても、当時の小生にはやや贅沢で、めったにはできない。
その後、社会人になっていつでもこれくらいの真似ならできるようになったが、口が奢ったわけでもないが、高校や大学生の頃のようには美味に感じられなかったような。
UCCコーヒー ミルク入りとアンパンとの組み合わせは、学生の頃のささやかな贅沢だったのだ。
「さらにアイスコーヒー」
話を戻して、アイスコーヒーが日本が発祥の地なのかどうか。
ネット検索してみたら、さすが、「UCC上島珈琲」さんである。「UCC:月刊珈琲人:ニッポンの夏!冷やしコーヒー」なる頁に有益な情報が見つかった。
冒頭には、「日本では大正期にコーヒーを冷やして飲み始めたのが発祥」と転記した文を示したが、この頁には、「日本の暑い夏に欠かすことのできないアイスコーヒーは、既に明治時代のコーヒーシーンに登場し、当時は“冷やしコーヒー”と呼ばれていました。今日大阪の街で“レーコー(冷コーヒー)”という愛称で親しまれるアイスコーヒーの語源はここにあるように思えます」と書いてある。
小生、「日本では大正期にコーヒーを冷やして飲み始めたのが発祥」というけれど、でも、どうして日本なのかが得心が行かなかったが、「冷蔵庫どころか、氷すら手に入らなかった頃の日本の暮らしにおいて、コーヒーは、ガラス瓶に詰め井戸水に浸してつめたく冷やされたのだそうです。夏の暑さを少しでも快く過ごそうとする日本人の知恵と風情が漂ってきます」といった記述で、幾分は納得。
でも、未だ、完全に納得したわけじゃない!
日本以外でだって、氷のない国や地域、時代はあったはず。
上掲の頁の「フランス版アイスコーヒー」という項目には、「時代をさかのぼること今からおよそ100年以上も前の話、フランスの植民地だったアルジェリアには、冷水や氷で冷やした甘味の強いコーヒーがありました。アルジェリアのマザグラン付近を進行したフランス軍兵士たちが、これを後にパリに伝え、カフェの都パリでは(以下略)」云々とある。
どうやら、水に秘密があると思える。
ヨーロッパ、例えば、フランスだと水よりワインが水代わりに飲まれているという。湧水を飲むというのは、地域によっては難しいのかもしれない。
その点、日本は湧き水に恵まれている。水さえあれば、コーヒーは比較的簡単に作れる。後はどうやって冷やすかの問題で、日本には一昔前までは、井戸という強い見方があったのだ。水を汲めるだけじゃなく、夏など、スイカを冷やしたものだった。
つまり、水というより、井戸水など、すぐに飲める湧水が身近にあるかどうかもポイントだったのだろうということだ。しかも、市街地にあっても、井戸があれば、簡単に冷やせる。
こうした好条件が合わさって、アイスコーヒーが身近な飲み物になる土壌が育まれたと考えられないだろうか。
この辺り、コーヒーが好きな人、明治や大正の風俗や文化・庶民の生活に関心のある人など、格好の研究対象となりえるかもしれない。
アイスコーヒー、冷やしたコーヒーは、ヨーロッパにも昔からあったのかもしれないが、生活の中に馴染み溶け込んだ飲料スタイル・生活の中の有り触れた光景としてのアイスコーヒーは日本独自なのかもしれない。
アイスコーヒーは日本が発祥の地なのか、だとしたら何ゆえかを少し、調べてみたが、肝心の美味しいアイスコーヒーの作り方に付いては情報を探っていない。
例えば、「Excite エキサイトブロードバンドカフェ カフェコラム 日本の夏とカフェ」など参照願いたい(具体的には、「究極のアイスコーヒーの作り方」や「アイスコーヒー 水出しコーヒー」など)。
そのほか、このサイトの「カフェコラム バックナンバー」のどの記事もカフェファンならずとも面白い。
[関連サイト]:
「全日本コーヒー協会」
「日本インスタントコーヒー協会」
「UCCコーヒー博物館」
[拙稿]:
「バルザック誰もが主役の小説か」バルザックは無類のコーヒー党!
「一杯のコーヒーが紡ぐもの」コーヒーにまつわる思い出など
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コメント
「マザグランコーヒー」って、確かランボーの詩に出てきたはず。
そう思って調べてみたら、
『大洪水のあと』という作品中に、以下の一行がありました。
「「マザグラン・コーヒー」が、喫茶店で湯気を立てた」(粟津則雄訳)
その注釈には、
「アルジェリア戦役の際、マザグランの戦のときに飲み始められた。水あるいはブランデーを加えたコーヒー」と書かれてます。
UCCの記述とはちょっと異なるけれど、
これが「フランス版アイスコーヒー」ってことでしょうね。
ところで、
水で抽出する「ダッチ・コーヒー」というのがあるけれど(「コーヒー」ですよ!)、
これをそのまま(温めずに)飲む人がいたと考えるのは、
ごく自然だとも思います。。
――まあともかく、
日本の蒸し暑い夏に飲むアイスコーヒーは、
格別ですね。
ちなみに私は京都郊外在住ですが、
周りに「冷コー」と言う人はいません(笑)。
投稿: 石清水ゲイリー | 2007/05/16 10:26
石清水ゲイリーさん、さすがです。
指摘してくれないと、「マザグラン(コーヒー)」は読み過ごして、あまり銘記されることなく忘れてしまったかも。
なるほど、「「マザグラン・コーヒー」が、喫茶店で湯気を立てた」(粟津則雄訳)については、「ビーバーは巣作りに忙しかった。マザグラン・コーヒーが、小さなカフェで冷気を立てた」と訳している人もいる(小林秀雄)。
なかには、「マザグラン」という名称を出さないで「胡散な奴らが、家を建てた。「冷し珈琲」常連が、珈琲店で、煙草をふかした」などと訳している人も(堀口大學)。
コーヒーもホットばかりじゃなく、冷水かどうかは別にして水で抽出する場合もあったわけですね。これも、アイスの類いなのかな。
「冷コー」が関西特有だってのは、小生も得心がいかない。東京だって、結構、昔からレイコーって言っていたような。今は、この呼び方はダサいかもしれないけど。
投稿: やいっち | 2007/05/17 07:42