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2007/04/18

ヤンセンや北斎のエロ学ぶべし?!

4月18日 今日は何の日~毎日が記念日~」を覗いてみた。
 今日が忌日という人物に、まあ、孔子は別格扱いさせていただくとして、葛飾北斎、ギュスターヴ・モロー、山本五十六、アルベルト・アインシュタイン…などと、気になる人、小生のガキの頃のヒーローだった人と、いろいろいる。

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← ギュスターヴ・モロー Gustave Moreau「出現 (L'Apparition)」(1874-1876年 105×72cm | 水彩 | Musee du Louvre, Paris.)

 フランスの画家ギュスターヴ・モローについてはいつかは採り上げたいと思いつつ、果たせていない。今日は彼にスポットをとも思ったが、思えば葛飾北斎についても、他の人物との関連で言及したことはあっても、正面から俎上に載せたことはなかったような。

 といって、今更小生に彼に付いて語るべき何物もない。ただただ学生の頃から北斎の天才ぶりというのか、異形ぶりというのか、世界の同時代の傑物に比しても遜色のない際立った凄みに驚き呆れてきたのだった。

 知りたいことは、ネットでも、「北斎の生涯」や「葛飾北斎 - Wikipedia」などを覗けば大凡のことは分かる。
 そうはいっても、北斎は桁外れの創作家・芸術家・表現者なのだから、作品の数々を見るに限る。

 驚くのは、その画狂人北斎とも呼称されたりするその画業の凄さ・多彩さである(画狂老人卍と自署した時期もある。ちなみに、「葛飾北斎」も一時期使った数ある号の一つなのである)。
 役者絵や戯作の挿絵、肉筆画(美人画などの風俗画)、風景版画や花鳥画、「動植物や宗教的題材、あるいは和漢の故事古典に基づく歴史画や物語絵」などなど。北斎漫画(妖怪)や春画、奇想画(幽霊画)も有名だ。
 とにかく、「森羅万象何でも描き、生涯に3万点を越す作品を発表し」たのである。

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→ 「葛飾北斎 冨嶽三十六景 凱風快晴 (電脳刷)

 北斎というと、「吉良家剣客の子孫?」かということが話題になる。まあ、「この噂の出所はどうやら葛飾北斎自身らしい」ようである。

「神奈川沖波裏」は、それを見たゴッホが手紙で賞賛し、ドビュッシーが交響詩「海」を作曲した等、海外の芸術家に多大な影響を与えた。波頭が崩れる様は一見表現的だが、ハイスピードカメラなどで波を撮影したものと比較すると実に写実的なものであることが判る」とのことだが、北斎の代表作として知られ「凱風快晴」(赤富士)もテレビで特集された、プルシャン・ブルーとの絡みで注目される。

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← 「大丸ミュージアム ホルスト・ヤンセン展 ― 北斎へのまなざし ―」(2005年10月5日(水)→16日(日))

 小生の好きな(好きという言葉は的確ではないかもしれない。どこかエゴン・シーレのような、どこかフランシス・ベーコンのような、あるいはバスキアを予感させるような、魂の漂白感を覚えさせる)画家(版画家)の一人にホルスト・ヤンセンがいる。
「自叙年譜によれば、1929年、母親の旅行中、自由ハンザ都市・ハンブルクに生まれたヤンセンは、生涯の大半をこの港町で過ごし、1995年8月にこの世を去るまで、きわめて自虐的な人生を送りました。事実はともあれ、何度も警察の厄介になったという破滅的な生活の果てに、1960年代後半になってから、ヤンセンは版画家として注目を集めるようにな」った(「大丸ミュージアム ホルスト・ヤンセン展 ― 北斎へのまなざし ―」より)。
 そのヤンセンは、「葛飾北斎を師と仰ぎ、父のように深く愛したヤンセン。その想いは、北斎春画に着想を得て制作された連作「フュリス」で真骨頂を迎え」たという。

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→ 北斎「蛸と海女の図」(「葛飾北斎 - Wikipedia」より) この画を見ると、ヤンセンを圧倒する北斎のエロジジイぶりを痛感する。北斎にあってヤンセンに足りなかったのは、飽くことのないエロ精神だったのかも?!

 ヤンセンの北斎傾倒を示すかのように、『画狂人ホルスト・ヤンセン 北斎へのまなざし』(種村李弘 谷川渥 水沢勉 新藤信 / 平凡社)なる本がある。
 この本の紹介にも、「私生児として生まれ、早くに母をなくし、歳を偽って入った美術学校も素行不良で退学処分。身長190cm体重100kg、何故か女性には頗るモテてガールフレンドは数知れず、自身で「手ぬぐい亭」なる酒場を経営するほどの酒好きで、友人は少なく、無類の読書家。古今東西の芸術を熱心に学び、葛飾北斎との出会いは運命的なものとなった」とある。
 ホルスト・ヤンセンがゾッコン惚れ込んだ北斎。北斎春画にどんな着想を得たのだろうか。
 もう、十年以上も以前のこと、書店でホルスト・ヤンセン著の『リッツェ 少女たちの時間』(種村 季弘 訳 トレヴィル 版)を見つけたときは(出会ったときは)嬉しかったものだ。
 この翻訳本が刊行された95年にヤンセンは亡くなっている。

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← ヤンセン「フュリス」(1984 紙に水彩 © 2005,Lamme Janssen,Hamburg、 「八王子市夢美術館 ホルスト・ヤンセン展 北斎へのまなざし」より)

 最後に、もう一度、「画狂人ホルスト・ヤンセン 北斎へのまなざし|アート|心斎橋アセンス」を覗いてみる?
北斎を師とあおぎ、「デューラーの再来」と言われた天才線描家の世界」を垣間見ることができるかも。

 さらに、小生は所蔵していないが、ヤンセンの随筆である『ヤンセンの樹』(坂本直昭訳、大陸の対話社)があるようだ。
 今の小生には手にすることは到底、叶わないが、覗くだけは覗いてみたいもの。

 ヤンセンが北斎から学び切れなかったものは、諧謔を弄してでも自己をも相対化する北斎のエロ精神ではなかろうか。エロって徹底した自己の諧謔化なのかも。

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コメント

今日は!
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さすが、「赤い靴」には、何人かの方から、トラックバックを頂きましたが、私の、「深夜便」には、トラックバックの設定をしていませんので、、、今回のことは、「お許し下さいませ.。o○」

このようなことになっても、今後とも、よろしくお願い致します。
http://blog.livedoor.jp/iseko45/

投稿: つんちゃん | 2007/04/18 18:35

つんちゃん
赤い靴の記事、興味深かったです。麻布十番には赤い靴の像があるので、通るたびに赤い靴~♪って歌ってしまう!

投稿: やいっち | 2007/04/19 16:43

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