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2007/04/25

春深し円をなぞってパイまみれ

まったりと過ごす日曜楽しかり」で紹介している上原ひろみさんのCD『ブレイン』( トニー・グレイ (演奏), マーティン・ヴァリホラ (演奏), アンソニー・ジャクソン (演奏) 、ユニバーサルミュージック)を聴きながら、以下の記事を書く。
 だからって、記事内容と上原ひろみさんのCD『ブレイン』とは、直接には何の関係も無い。

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← 上原ひろみブレイン』( トニー・グレイ (演奏), マーティン・ヴァリホラ (演奏), アンソニー・ジャクソン (演奏) 、ユニバーサルミュージック) 今日は、ずっとこのCDを聴いて過ごした…。

 ただ、ラジオでは何度か聴いたことがあっても、こうしてCDで繰り返し聴くのは初めてであり、小生には未体験ゾーンに誘われるような、不思議な感覚に身を委ねつつ書いているというに過ぎない。

 さて、「まったりと過ごす日曜楽しかり」では、デビッド・ブラットナー著『π[パイ]の神秘』(浅尾敦則訳、アーティストハウス) (画像は、「Amazon.co.jp 通販サイト」より)も、書名程度だが紹介している。

 本書『π[パイ]の神秘』について感想を書くかも、などと書いているが、小生如きがπについて、今更何を語ることがあろう。

 こういった分野のことに興味のある人は、小生より遥かに造詣が深く、釈迦に念仏だろうし、興味の湧かない人には、題名を見ただけで敬遠するに決まっている。
 そうはいっても、数学に学的に関心が湧かない人でも、それなりにパイ(といっても、オッパイでもなく、お菓子のパイでもなく、数学の記号の「π」なのだが)で遊べることをチラッとメモっておきたい。

 それはπというと円周率ということで、円周率の記憶の話である。
 これも、興味のある人は大方のことは知っているだろうし、同好の士は、大概、若い頃に円周率をどれだけ覚えるかに挑戦したことがあるだろう。
 小生もささやかにトライしてみたことがある。が、記憶力にも難のある小生、何桁まで覚えたかなんて、恥ずかしくて到底、言えたものではない!

 たとえば、かの「2ちゃんねる」で「円周率を覚える会」ということで独立したスレッドが立っている。
 円周率を覚えるという、ある意味、究極の無意味・無目的な作業について、「なんとなく暇潰しにもなるし、最近流行の頭の体操にもなるかなと思いスレをたててみました」というのである。
 なんともはや!
 でも、小生、密かに共感している!

 今となっては挑戦しないのは、物好きな心が薄れてしまった、気力が湧かなくなった、目先の現実にアップアップしている、などなどで、ひたすら自分を情けなく思うだけである。

 誤解のないように書いておくが、円周率の記憶に挑戦しないからって、誰も非難などしない。挑戦する意味など最初から皆無なのである。
 というか、皆無だから挑戦するのだ、とさえ言えるかもしれない。

 そう、円周率を覚えようとする試みは、繰り返しになるが究極の遊びなのである。

 円周率を覚えるにも、数字を力技で、そう、数字をそのままに覚えるという手法にこだわる向きもある。
 何かの言葉やリズムに事寄せたりなぞらえたり語呂合わせして覚えるのは邪道だというのである。
  円周率を覚えることについても、主義主張があり流儀がある。さすがに流派や家元があるのかどうかは知らないが。

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→ ペートル・ベックマン著『πの歴史』(田尾 陽一/清水 韶光訳、筑摩書房) 日常での実用性を考えると、円周率は「3」であったって、構わない。だけれど、人類は円周率の神秘の世界へ分け入った。多分、探求の道は永遠に続くのだろう。

暗記法」という頁がある。この頁では、円周率の覚え方のあれこれを集約してくれている。
 ここには冒頭の一つだけ、転記させてもらう(31桁) :

3 1 4 1  59 2 6 5 3 58 97 9 
身 1つ世 1つ生 く に 無 意 味 いわ く な く
323  8 4 6 264 3  3 8379
身ふみ や 読 む 似ろよさん ざん 闇になく

 小生など、ちょっと悪戯で語呂合わせしてみたくなる。
 例えば、「妻子一国風呂混み怖くなく 佐津さんは養老風呂予算産婆さん無く」。
 即席なので文意も何もあったものではないが、結構、考えるのが楽しい。

 ここには敢えて転記しないが、同上の頁に、「途中からは奥の細道調になってい」るという「究極の覚え方」が紹介されている。
 これは、一読の値打ちがある。

 ここまで来ると、芸術の域に達していると言っても過言ではないだろう。
 というか、神が円周率を決める際に、松尾芭蕉の文の生まれるのを予見していた、あるいは、芭蕉がその天才で円周率の中に神のメッセージを読み取ったというべきかもしれない。
 円周率は、超越数であり、その数字に規則性はないと思われている(誤解の余地がありそうなので、「円周率に見る数学の歴史」参照のこと)。
 ということは、円周率にはあらゆる数字の並びがあることが可能性として考えられる。

 つまり、円周率の数字の並びを何処までも辿っていくなら、日本語の母音の融通無碍さという特殊性もあり、過去・現在・未来のどんな駄文も傑作の文学もメモ書きもビジネス文も、その気になって探せば見出せるかも…否…見出せるに違いないということでもあるのかもしれない。
 少なくとも可能性の否定はできないだろう(幽霊の存在を科学的には否定できないように)。

 日本語で円周率を語呂合わせ的に覚える事例を示したが、英語でも記憶する手法がいろいろ示されている。
 英語の場合、大概、数字を「各単語ごとの字数」で示す。
 つまり、YesとかCanは「3」を、haveやfindは「4」を示すとった具合である。
 母音的な自在さは英語にはもとむべくもない代わり、数字を語数の合う単語を見つけ出して、なんとか無理にも詩文に仕立てるという芸当が英語(やドイツ語、フランス語などの横文字の言語)には可能だということである。

 例えば、「May I have a large container of coffee? 」は、3.1415926」というわけである(英語の場合、句読点などの記号は無視する。これも便利に活用される)。

 中国(語)でも、円周率の語呂合わせ的記憶が試みられている。その成果を読むと、中国語の分からない小生には、どこか雅に聞こえるから不思議である()デビッド・ブラットナー著『π[パイ]の神秘』(浅尾敦則訳、アーティストハウス)に事例が載っていた)。

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↑ 上原ひろみTime Control」 画像は拡大可能。

 さて、デビッド・ブラットナー著『π[パイ]の神秘』(浅尾敦則訳、アーティストハウス)の末尾に紹介されている、英語での円周率の記憶法(語呂合わせ)として究極のものというか、最高に詩的(素敵)な事例を示すことで本稿を閉じたい。

 これはネットでも当然ながら紹介されている。
 たとえば、「円周率ものがたり」(ホームおページは、「ものがたり通信」)などを参照。

 マイク・キースが作ったπの暗記詩。「これは単にπの出だしの740桁を置きかえているだけでなく、エドガー・アラン・ポーの「大鴉(おおがらす)」をていねいに下敷きにして作られてい」る:
マイケル・キースが作ったπの記憶詩(小数点以下732桁まで)」(冒頭の「Poe,E」は「Pie,E」とも表記する)

 さらには、マイケル・キースが作った「A Self-Referential Story(自分自身の物語)」がまた凄い! ↓

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↑ 画像は拡大可能。(注)この文中における単語の文字数はπの各桁を表している。ピリオド以外の区切りのマークはゼロを表す。10文字以上の単語は2桁分を表す。ある桁では数字そのものが使われている(これが出てくるのは一度だけ)。「デビッド・ブラットナー著『π[パイ]の神秘』(浅尾敦則訳、アーティストハウス)」より)。

A Self-Referential Story(自分自身の物語)」の訳を示す必要はないだろう。
 ま、雰囲気だけでもということで、冒頭だけ:
「私はふと円の大きさについて考えた。巨大コンピューターの本体が静かにアセンブリ・プログラムを処理した。その内部に詰まっているのは、やっかいなものを計算するという私の全希望。(以下略)」
 デビッド・ブラットナー著『π[パイ]の神秘』(浅尾敦則訳、アーティストハウス)の末尾に大意が載っている。

 円周率の話に終始したが、「πを追い続けることは無意味ではなく、広い分野で役立ってい」るのも事実である(だから数学の研究者に予算が付く! 「SanEYE.com」の「あれこれ面白コラム集」はどれもとっても面白い!)。
 その上で、円積問題と併せ、πの神秘への探求、円周率という、あるいは宇宙の深遠よりも深いかもしれない神秘の世界への旅は続けられていくに違いないのである。

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