快川紹喜…心頭滅却の意味如何に
昨日、月曜日も黄砂がほぼ全国的にひどかったようだ。日本もひどいが中国本土はもっと凄まじい黄砂現象に見舞われているようである。
来年の夏は北京オリンピックが開催される。黄砂被害が影響しないのかと懸念されるが、黄砂の時期は過ぎているだろうから、大丈夫なのだろう(か)。
(「中国では、BC1150年頃に「塵雨」と呼ばれていたことがわかっている。また、BC300年以後の黄砂の記録が残された書物もある」というから、黄砂の歴史はあまりに長い! さすがに四千年の文明を誇る国だと、妙なところで感心したり…。)
← 格好いい!!(大河ドラマ「風林火山」)より
久しぶりに「4月3日 今日は何の日~毎日が記念日~」を覗いてみた。覗く時は連日のように覗くが、覗かない時はまるで開こうとしない。
どうやら、最近、朝方にNHKラジオ第一の5時半頃に放送される「今日は何の日」を聞き逃しているから、人に影響されやすい小生、上掲のサイトを開く気にならなかったものと思われる。
さて、ぼんやり頁を眺め降ろしていくと、忌日の項に気になる記述があった:
1582年 快川紹喜 (臨済宗の僧) 織田信長に抗し自焼
小生の勘違い・記憶違いでなかったら、快川紹喜というと、「心頭を滅却すれば火も自ら涼し」で有名な禅僧ではなかったか。
(尤も、小生のあやふやな記憶の中では、「心頭滅却すれば火もまた涼し」だったはずだが…。)
早速、例によって「快川紹喜 - Wikipedia」を開いてみる。
「快川 紹喜(かいせん じょうき、生年不詳 - 天正10年4月3日(1582年4月25日))は、安土桃山時代の臨済宗の僧。俗姓は土岐氏で、美濃国の出身」云々とあるが、その辺りは素通りしていく。
「武田信玄に迎えられて塩山恵林寺に入寺し、信玄に機山の号を授けている」とある。
(恵林寺は、夢窓国師(疎石)が開山した古刹である。)
となると、NHKの日曜日夜八時の 大河ドラマ「風林火山」の中にもあるいは登場する人物かもしれない。
ドラマの筋書きは分からない。主人公は山本勘助(演じるのは内野聖陽)だが、武田信玄(演ずるは市川亀治郎)はずっと重要な人物であり続けるだろうから、その関連で快川紹喜も登場すると期待していいかもしれない。
さて、ここからが肝心である。
「織田信長の甲州攻めにより武田氏が滅亡して領内が混乱すると、中世において寺院は聖域であるとする社会的観念があったため信長に敵対した六角義弼らを恵林寺にかくまい、織田信忠の引渡し要求を拒否したことから焼討ちにあい、一山の僧とともに焼死を遂げた。このとき残した「安禅必ずしも山水を用いず、心頭滅却すれば火も自ら涼し」の辞世で知られる」という。
「安禅必ずしも山水を用いず、心頭滅却すれば火も自ら涼し」(安禅不必須山水 滅却心頭火自涼)が快川紹喜の辞世の言葉のようだ。
さて、「快川紹喜は明智光秀と同じく美濃国の土岐氏出身であり、同族であったと見られている。このため、本能寺の変において光秀が信長・信忠父子を討ち取った事件に、彼の死が影響したとする見方もある」という。
ということは、織田家の手により焼き討ちにあい、焼死した快川紹喜の仇(かたき)を取るため、快川紹喜と同族の明智光秀が信長・信忠父子を本能寺(の変)にて焼き討ちにしたとも考えられるわけだ。
実際、恵林寺と共に快川紹喜が焼死した(信長の家臣沼尻鎮吉(シゲヨシ)が恵林寺に火を放ったとされている)、僅か三ヵ月後に「織田信長は本能寺の変で明智光秀に殺され」たという事実や経過を考えると、憶測というより、案外と無理のない推測ということになるやもしれない。
(「甲府勤番風流日誌 武田家滅亡後の山梨の歴史」参照)
つまりは、俗っぽい見方をすると、焼死した快川紹喜の怨念が信長・信忠父子を(自刃ではあろうが)焼死せしめたともいえるかもしれないわけである。
まあ、歴史の真相は未だ藪の中という面がありそうだから、あくまで話に留まる。
それに、仮にも快川紹喜は偉い禅僧なのである。少なくとも禅僧の快川紹喜が恨みを呑んで死んだというのは生臭すぎる(但し、同族の明智光秀は武士だし俗人なのだから、怨念を腹に含んで執念を燃やすということも、ありえない話ではないのかもしれない。
さて、快川紹喜の辞世の言葉とされる「安禅必ずしも山水を用いず、心頭滅却すれば火も自ら涼し」について。
後半の「心頭滅却すれば火も自ら涼し」については、よく知られている。その意味合いについては、少なくとも字面くらいは小生にも分からなくもないが、前半の「安禅必ずしも山水を用いず」は今ひとつ、理解が及ばない。
ネット検索してみると、「禅の境地は、必ずしも静かな山や川を必要とはしない」という意味だと説明するサイトがあった。
まあ、そう理解するのが穏当なのだろう。
ただ、上記したように、恵林寺は夢窓国師(疎石)が開山した古刹であり、その夢窓国師は「「苔寺」で知られる京都の西芳寺、天龍寺、鎌倉の瑞泉寺など、多くの庭園の設計でも知られている」人物なのだ。
となると、「安禅必ずしも山水を用いず」というのは、恵林寺開山の師である夢窓国師の教えや教えを形にしたところの山水をも否定することになるのではないか。
なんてことも、やはり俗物の揣摩に過ぎないのだろう。
→ 井上 靖 著『風林火山』(新潮文庫) (「Amazon.co.jp 通販サイト」より)
しつこくネット検索を続けてみた。
すると、下記のサイトが浮上してきた:
「汝が語るは汝が真実 火もまた涼し」
このサイトによると、「安禅必ずしも山水を用いず、心頭滅却すれば火も自ら涼し」は、概ね「静かな環境(山水)がなくても、ちゃんと修行はできる」といった意味になるとか。
その上で、「実はこの台詞には元ネタがあって、杜荀鶴(とじゅんかく)という唐の詩人が」と続くのだが、そこからは、リンク先を覗いてみて欲しい。
ただ、結果として「心頭滅却すれば火もまた涼し」も間違いではない、むしろ、この言葉の生まれ伝わった経緯も織り込まれていて、より正しいとも言えなくもないわけであると記しておく。
さて、小生らしい蛇足を加えておく。
上掲の日記の末尾には、この言葉が残った事情についての、誰しもが抱く疑問も書き連ねてあって、興味深い。
小生などは、俗物だから、快川紹喜禅僧が火の手が迫って熱く苦しい中、つい悲鳴をあげて水を欲した、水を頭から架けて欲しいと希(こいねが)った、でも、そんな余裕のある人など誰もいるはずもなく、ええくそっ、水がないのか、ちきしょー、だったらいいや、水なんかなくなって熱くなんかないぞ、と負け惜しみの叫び(悲鳴)を上げた、ああ、せめて武士のように、首を切り落としてくれたなら、そう、心頭を滅却してくれたなら火なんて熱くないのに…ただ、この<事実>を記録した「信長公記」には、快川紹喜のお詫びや怨念への恐怖や、織田氏の蛮行の印象を少しでも和らげる意味や狙いもあって、美談風に記録した…んじゃないかなどと思ってしまうのだが、やはり、いくらなんでも、下衆(ゲス)すぎる解釈なのだろうね。高僧の達観した心中など凡愚たる小生に分かるはずもないし。
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コメント
今日は!
またまた、高度な内容に、、このまま帰ってしまおうかと思いながら、、やっぱり、それでは寂しすぎるので(/_;)
「黄砂に吹かれて~」中島みゆきさんの歌どころではなくなりましたね。これは、地球上の大きな課題ですね。植林を増やすのが良いのでしょうか?
「臨済宗」のところでは、最近読み始めている「玄侑宗久」は、確か臨済宗の僧侶です。 もし、本屋さんに行かれたら、手にとって観てくださいね。もう、ご存知かもしれませんが、「中陰の花」の芥川賞作家です(苦笑)
http://blog.livedoor.jp/iseko45/
http://tsunnchan.at.webry.info/
投稿: つんちゃん | 2007/04/03 11:51
つんちゃんさん、先ほど、メンテナンスが終わったとか。やっとレスできます。
コメント、ありがとう!
黄砂に続いて、今日は富山湾つながりでもある能登に雪が降ったとか。
花冷えの雪、花散らしの雪ですね。昨日、今日と富山は寒い!
小生のブログは、日記もあれば、仕事の愚痴もあれば、関心の赴くままに、知らないことを調べてメモするという記事もあります。
知らないことを知らないからこそ調べてみる。知っていることを書くというわけではないんです。
快川紹喜と明智光秀や本能寺の変との<関連>(あくまで推測)も、今回、調べていく間に、もしかしてと思ったことです。
今日の記事の主眼は、末尾の呟きにあるかも。
玄侑宗久さん、未だ短いエッセイしか読んだことがない。機会を設けて読んでみますね。
なお、下記の記事も覗いてくれたらと思います:
http://atky.cocolog-nifty.com/bushou/2007/03/post_1d7b.html
投稿: やいっち | 2007/04/04 22:47