歌舞伎の日阿国の踊りベリーに見ん
[今日の主役は、出雲の阿国]
「2月20日 今日は何の日~毎日が記念日~」を覗く。
今日もいろいろあったことを知る。
採り上げたい人物も目白押し。
たとえば、「多喜二忌」だという。「プロレタリア作家・小林多喜二の1933(昭和18)年の忌日。東京・赤坂で特高警察に捕らえられ、その日のうちに拷問によって虐殺された」日なのである。
小生、この事実は知っていたし、虐殺された小林多喜二の写真も本や雑誌で幾度となく見たことがある。
でも、29歳で亡くなったとは!
→ 阿国歌舞伎図(京都国立博物館・収蔵)の一部分(「日本一のかぶき者・出雲阿国」より)
今日は、「鳴雪忌」(別名、老梅忌)である。俳人・内藤鳴雪の亡くなった日なのだ。
彼に付いては、一度は正面切って採り上げたいと思いつつ、果たせないで来た。
僅かに、「木の実植う」の中で、『鳴雪自叙伝』(岩波文庫刊)を読んだ時のエピソードに絡め、ついでの形で触れているだけ。爾来、2年を経ている! 忸怩たるものがある。
俳人にはユーモアを解する人が多い(という印象を持つ)。漱石などその筆頭の一人だろう。内藤鳴雪も、本書を読んで、たくまざるユーモアとか大らかさを感じたものだった。
「東雲のほがらほがらと初桜」だけ、再度、掲げておく。
今日は、金嬉老事件、小野田元日本軍少尉発見などの事件があった。
伊波普猷、ハルトマン、志賀直哉、石川啄木、左卜全、志村けん、かとうかずこらの誕生日。
バールーフ・デ・スピノザ、村山槐多、中野好夫、武満徹らの忌日。
今日は、彼らについては、残念ながら、素通りする:
「今日は小林多喜二の忌日」
「『老人と子どものポルカ』余談」(左卜全)
「芝浦のこと、「城の崎にて」のこと」(志賀直哉「城の崎にて」)
「志村けん著『変なおじさん』」
「「石原裕次郎と啄木と」追記など」(この記事には、さらに余談を書いたはずだが、記事名その他を忘れた!)
「イルミヤフ・ヨベル著『スピノザ 異端の系譜』 安楽死とオランダと」
「雨音はショパンの」(武満徹…?)
← 「"Salome's Dance" RiRi in the Salome's Last Dance」(Kaw Charlieさんの「Belly Dance Photos Charlie Kaw」より)
今日、採り上げるのは、「歌舞伎の日」。
これは、「1607(慶長12)年、出雲の阿国が江戸城で将軍徳川家康や諸国の大名の前で初めて歌舞伎踊りを披露した」日が今日に当るからだという。
出雲の阿国(於国、国、国子、おくに、くに)が江戸で初披露したという歌舞伎踊りというのは、一体、どんなものだったろう。
「出雲阿国 - Wikipedia」
「伝説によれば、出雲国松江の鍛冶中村三右衛門の娘とされ、出雲大社の巫女となり、文禄年間に出雲大社勧進のため諸国を巡回したところ評判となったとされている」というが、小生、出雲(松江)生まれの女性と知ると、何故かそれだけでちょっと畏怖の念を覚えてしまう。
というか、出雲の女の生まれ変わりのような気がしてしまうのだ。
サラリーマン時代に出会ったブリリアントな女性の印象が強い。島根県の某市の生まれだという彼女だったが、その時点(二十年ほど前)で小生、既に畏怖を感じたのだから、出雲への思い入れが自分には学生の頃から染み付いていたということなのだろう。
古代史や考古学関係の本が好きで、聞きかじった古代の王国の余韻だろうか。神話の国・出雲。
それとも、出雲の阿国のイメージが強烈にインプットされている?
小泉八雲ファンの小生、彼の本を読みすぎたのか。
さて、今日、柄にもなく、「歌舞伎の日」を俎上に載せようと思ったのは(しかし、舞台の上で演じられる歌舞伎ではなく、出雲の阿国の歌舞伎は誰も見たことがないのだから、憶測・妄想を逞しくするのも許される?!)、今、車中で読んでいる『日本史を読む』(丸谷 才一vs山崎 正和対談、中公文庫)が(「立川流つまるところは火と水と」でもチラッと書いている)が、二人の丁々発止の遣り取りもあり、次々と意想外の知見が飛び出てきたりして、すこぶる面白いからである。
丁度、昨夜の営業は、後醍醐天皇や楠正成、足利義満観阿弥・世阿弥らが活躍した時代についての対談を読んでいたのだった。
(今回、本書を読んで、三条西実隆という傑出した人物の存在を教えてもらった。)
→ 「"Salome's Dance" RiRi in the Salome's Last Dance」(Kaw Charlieさんの「Belly Dance Photos Charlie Kaw」より)
日本の国は、古来より半島を含めた大陸の影響をモロに受けてきた。
縄文時代が弥生時代に移り変わったのも、大陸(そして半島)の戦乱の余波で大陸から相当数の数の大陸人(半島人)が渡ってきて移り住み、高度な文化や技術を齎したのだった。
邪馬台国が何処にあったにしろ、「魏志倭人伝」を読む限り、南方系の文化が色濃かったのは紛れもない。
(自宅では、武光誠著『邪馬台国と大和朝廷』(平凡社新書)を読んでいる最中。)
それが、大和朝廷の活躍した時代となると、明らかに北方系の文化に切り替わっている。
けれど、今の日本人の観点や価値観、生活習慣・風習などからして、日本人が日本人らしくなったのは、室町時代からではないか(などとも、『日本史を読む』にも書いてある)。
つまり、「室町時代に始まったものとして、生け花、茶の湯、水墨画、能、狂言、座敷、床の間、掛け軸、庭、醤油、砂糖、饅頭、納豆、豆腐」…などがあり、さらに、包丁道や小笠原流の礼法などもある。
「連歌は鎌倉時代から発達し、室町時代に最盛を迎え」ている(「宗祇や二条良基、宗長や心敬らの連歌師が出現」)。
お茶を薬として喫する文化自体は、「僧侶の栄西が宋からお茶の種と抹茶(まっちゃ)法という飲み方を持ち帰り、寺院などで薬として飲ませるようにな」ったのだが、「お茶が嗜好(しこう)品として庶民にも飲まれるようになるのは、千利休など茶の湯の文化が確立したのちの江戸時代から」のことだとか。
村田珠光、千利休の茶の湯。
(但し、お茶の木そのものは、もっと古くから日本にあった。「お茶の博物館 -日本茶博物館- 日本茶の起源」参照)
「庶民の間では短編の読み物集である御伽草子が読まれ、狂言や小唄、幸若舞などの庶民芸能が流行する」
「食文化では、味噌、醤油、豆腐など日本料理の基本要素が出揃った。醤油を除き、中国から伝わっていた要素で、室町時代の商工業発達によって普及した」という。
← 「"Salome's Dance" RiRi in the Salome's Last Dance」(Kaw Charlieさんの「Belly Dance Photos Charlie Kaw」より)
応仁の乱のあった室町時代は、安土桃山時代も含め、都市文化が生まれ花開いた時代だったという。ある意味、婀娜花的な時期でもあったのだろうか。百花繚乱というと大袈裟かもしれないが。
が、江戸時代になって、鎖国政策もあり、農業を主体とする、内向きの窮屈な文化に後戻りしてしまった(江戸時代も変遷するのだが)。
それにしても、改めて、出雲の阿国の歌舞伎踊りとは一体、どんなものだったのだろう:
「日本一のかぶき者・出雲阿国」
「河原乞食」(かわらこじき)という言葉がある。言うまもなく、禁止用語なのだろうし、使うのは自制すべきなのだろう。
けれど、「出雲の阿国が京都の四条河原でかぶき踊りを始め」たのであり、「江戸時代に四条河原で興行を行っていた歌舞伎役者を卑しめる意味で「河原乞食」という言葉が生まれたの」だった:
「演劇用語 河原乞食」
出雲の阿国は、まさに都市文化が花開いた典型の一つなのかもしれない。まさに都市文化最後の婀娜花だったのではないか。下克上の世でり、戦乱が常の時代だったからこそ、民衆のエネルギーが噴出したのだろう。
「阿国自身は1607年、江戸城で勧進歌舞伎を上演した記録を最後に、その後の消息は不明で」、「出雲に戻ったという伝承もあり、出雲大社近くに阿国の墓とされるものがある」というが、豊臣方の勢力を圧殺したあとは、江戸の治安政策もあって、江戸時代が始まって間もなく記録に残らなくなったのも、自然な流れだったのかもしれない。
但し、「江戸時代の士農工商制度では、商以下の身分、つまり非人だった歌舞伎俳優」なのだから、案外と盛んに興行が打たれていたとしても、表向きは身分ある人は楽しんだとしても口にはしなかった、記録には残されなかったというのが実際だったのではという憶測もしてしまうのだが。
やがて、舞台の上で様式化された歌舞伎や狂言や能となるに連れて、扱いも変わってきたのだろう。
見ることが叶うなら、出雲の阿国の歌舞伎を見てみたいものだ。誰か現代の阿国はいないものか!
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コメント
今朝、ラジオで聴いたのだが、「ミュージカル「阿国」(皆川博子原作、鈴木聡脚本・作詞、栗山民也演出)が3月3日から東京・東銀座の新橋演舞場で再演される」とか。
また、「歌舞伎の創始者「出雲の阿国」の芸と愛に生きた半生を力強く描き、評価の高い作品。90年の初演以来、阿国を演じている木の実ナナは「初めて演舞場に進出し、さらにハードにやりたい」と気力をみなぎらせている」という。
http://www.asahi.com/culture/stage/theater/TKY200702210218.html
サンバを契機に踊ることに(実際は見る側に留まっているが)関心を持ち始めたので、出雲の阿国のことにも単なる歴史上の興味を越えて関心が高まったのだった。
苦しい時期を乗り越えて今日がある木の実ナナさんの踊りや演技を見たいもの。
ああ、近所のラーメン屋さんへも行けない小生には舞台を見るのは叶わぬ夢だ。
投稿: やいっち | 2007/03/03 14:31
「阿国」をリンクして頂き、有難うございます。
阿国さん、そして歌舞伎の始まりについては、余り「難しく」考えるよりも、市井の人々が楽しめる「踊り」(舞いではなく)を広めた人々が居た…、と云う事でよいのではありますますか?
投稿: ダダさん | 2007/05/28 13:01
ダダさん、来訪、コメント、ありがとう。
「日本一のかぶき者・出雲阿国」はとても参考になります。
まあ、事実は小説より奇なるもの。われわれはあれこれ忖度するだけ。
それより、踊りを楽しんだほうがいいのは、間違いないですね。
小生も、昨日はサンバイベントへ行ってきました。
投稿: やいっち | 2007/05/28 14:05