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2006/12/14

サンタさん担ぐ荷物は本がいい?!

 このところの我が記事をつらつら眺めてみたら、読書拾遺的な日記を書いていないことに気づいた(思えば、この秋、習慣付いてしまった、CD聴取関連の話題も書いていない)。

 オートバイタクシー、時事的な問題(太平洋戦争開戦記念日)、ラジオで聞きかじった話街中で見かけた事柄(名称)のこと誰彼の忌日の話題などなど、話があちこち飛びまくっている(小生の関心が散漫だから、という言い方も有り得る)から仕方がないのだが、寝ること、書くこと、読むことが全ての小生、読書のほうも、牛歩というか遅々として進まないながらも、少しは読んでいる。

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← 何処かの家の壁を登るサンタクロースさん。煙突、探してるのかな。頑張って! 我輩の家じゃないのが残念! あれ? あの…、サンタさん。荷物、担いでないよ。忘れてきたのかな?→

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 ただ、読書感想文を書く余裕が持てないのである。
 最近(今月に入って)、読んだ、あるいは読んでいる最中の本、さらには近々読む予定の本、読めたらいいなと思っている本などを、書名だけになるだろうが、列挙しておく。

 最近、読んで感銘を受けた本の筆頭に挙げなければいけないのは、何と言っても鶴岡真弓氏の『 「装飾」の美術文明史―ヨーロッパ・ケルト、イスラームから日本へ』(日本放送出版協会)である。

「装飾」の世界をめぐる初めての旅 初めてのガイドブック。いかに「西洋」は諸文明の「装飾」を欲望したか」なんて説明だけだったなら、ほとんど関心を掻き立てられることもなかったろうし、小生、本書は決して手にしなかっただろう。

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→ 鶴岡真弓著の『「装飾」の美術文明史―ヨーロッパ・ケルト、イスラームから日本へ』(日本放送出版協会)
 彼女は今年発見した書き手の筆頭である。研究者(学者)というべきなのだろうが、同時に書き手として優れている人は少ない。彼女に付いては、めぼしい本は全て読んでいくつもり。
 あれこれの知見が目一杯、盛られているのは勿論なのだが、そこをつなぐ地の文章がいい。読んでいて想像力を刺激してくれる。この辺りが書き手としての才能なのだろう。

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← 山口 泰二氏著の『アメリカ美術と国吉康雄―開拓者の軌跡』(NHKブックス)

 続いては、山口 泰二氏著の『アメリカ美術と国吉康雄―開拓者の軌跡』(NHKブックス)を読んだ。
「後期印象派、表現主義、フォーヴィズム、キュヴィズムなど、ヨーロッパの最新芸術動向が紹介されるなか、アメリカ美術とは何か、アメリカ的とは何なのかを問い続けたのが、国吉康雄であっ」て、「アメリカ人になれなかったアメリカ画家国吉の軌跡を辿り直し、国家とアイデンティティ、美術と政治、芸術家と戦争などの問題を考える」という本書だが、国吉康雄は絵に留まらない存在だということを思い知らされた。
 国吉康雄の絵は好きだったが、本書を読んで、彼が背負った課題の重さを知り、一層、好きになった。
 幾つかの絵に焦点を合わせ、絵の背景などを謎解きするようにして、国吉の絵の世界を探っていく。
 選書版なので、車中で読むつもりだったのだが、面白いこと、それに掲載されている絵の数々をじっくり観たかったこともあり、車中で読み齧ったのは少しだけで、残りは自宅で一気に。


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→ 芳賀徹氏著の『渡辺崋山―優しい旅びと』(朝日新聞社 1986年)

 先週末の連休に一気に読んだのが、芳賀徹氏著の『渡辺崋山―優しい旅びと』(朝日選書296 1986年)である。
 本書も選書版なので、車中用に借り出しておいたのだが、マンの『ファウスト博士』を読む合間に気分転換にパラパラ捲っているうちに、あれよあれよという間に読み終えてしまった。まあ、『絵画の領分』以来の芳賀ファンでもあるので、予期できた結果かもしれない。
 渡辺崋山というと、国政(幕府批判)の故などで結果として自決したこと、彼の風貌を描く絵の何処か神経質で峻厳な気味で堅物に見られがちだが、彼の旅日記や彼の風景や動植物などを描いた絵を観ると、細部をおろそかにしない繊細さと優しさをつくづくと感じさせられる。
 彼の描いた動物の絵は垂涎モノである。ぴか一!

 とにかく、細部へのこだわり、実際のモノを見る目の厳しさは凄みがある。
 そのエピソードは、本書にも書いてあるが、「渡辺崋山 - Wikipedia」から転記すると、以下のようである:

 1835年(天保6)、画家友達であった滝沢琴嶺が没し、崋山は葬儀の場で琴嶺の父・滝沢馬琴にその肖像画の作成を依頼された。当時、肖像画は当人の没後に描かれることが多く、画家はしばしば実際に実物を見ることなく、やむを得ず死者を思い出しながら描くことがしばしばあり、崋山の琴嶺像執筆もそうなる予定だった。ところが崋山はそれを受け入れず、棺桶のふたを開けて琴嶺を覗き込み、さらに火葬された後に琴嶺の頭蓋骨を観察してそれをスケッチしたという。これらは当時の価値観や風習から大きく外れた行動であり、実際に馬琴はこれに大きな不快感を抱いたようである。

 画を観ると、そのリアルさに江戸時代の絵画とは異次元の気迫を感じる。

 でも、上記したように自筆画も添えられた旅日記が絶品なのである。

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← 中野雄氏著の『丸山眞男 音楽の対話 』(文春新書)

 中野雄氏著の『丸山眞男 音楽の対話 』(文春新書)を車中で読み始めていることは、折々、日記に書いてきた。
 本書も車中だけで読むつもりが、つい、自宅でも続きを読んだりするが、なんとか我慢して、今週、車中で読む分は残してある!
 ヒトラーが自決する際に、ワーグナーの自筆の楽譜と運命を共にした(と思われること)にドラマを感じる。いかにもヒトラーらしいというべきか、ワーグナーの音楽らしいというべきか。
 そのワーグナーの音楽(ライトモティーフ (Leitmotiv ) と呼ばれる機能的メロディの手法や無限旋律と呼ばれる構成上の手法)などについての、故・丸山眞男の独自の見解が興味深い。
 丸山眞男ファンならずとも、音楽(クラシック)に造詣の深い人が本書を読んだら、さぞかし感心もするし、知見も得られることだろう。

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→ ゲオルグ・ファウスト

 さて、自宅では、上記したようにトーマス・マン著の『ファウストゥス博士 』(『トーマス・マン全集6』(円子修平訳、新潮社)版)を読み続けている。
 在宅の日に、せいぜい20頁ほどなので、年内読破は予想通り、無理。
 ま、大ヨーロッパの大河のゆったりした流れに身を任せ、ゆっくりじっくり楽しめればいい。
 感想はそのうち書くかもしれないが、今は、「Wein, Weib und Gesang ファウスト博士の錬金術」を覗いてみてほしいと思うだけ。
『魔の山』では描き切れなかった(あるいは描く意図はなかったのか)肉体の絡む男女の恋愛が、せめて心理面だけでも描かれていたらと思うけど、でも、マンに求めるのは筋違いなのかどうか、確かめてみたい、なんて意地悪な(邪な?)意思も密かに抱きつつ、読んでみたりして。

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← 山田英春氏写真・文の『巨石 イギリス・アイルランドの古代を歩く』(早川書房)

 自宅では、山田英春氏写真・文の『巨石 イギリス・アイルランドの古代を歩く』(早川書房)をマンの本と交互に読んでいる。
 巨石文化への関心は、既にこのブログでも幾度かこの話題を採り上げたことでも分かってもらえるものと思う(「初詣の代わりの巨石文化?」や「フリードリッヒ…雲海の最中の旅を我は行く」など参照。ケルト文化との絡みも忘れてはいけないだろう!)。

 本書は、図書館がシステム変更のための二週間の全館休館に入る前の日、何冊かの本を借り、さて帰ろうとしたら、返却の棚に置かれていた本だった。
 新刊(今年の6月に出た)だが、既に貸し出され、且つ返却されていたということだ。
 その本をギリギリのタイミングで見つけたというわけだ。
 
初詣の代わりの巨石文化?」にも書いたが、小生が巨石文化へ関心を持ち始めた切っ掛けは、イギリスのストーンヘンジへの子供の頃からの関心もあるが、決定的だったのは、フリードリッヒの画に巨石がしばしば描かれていること。
 フリードリッヒの絵の中の巨石は、イギリスの巨石文化と直接、関係があるわけではないが、小生の脳裏に巨石へのロマン心が刻み付けられたのは確かのようだ。

 巨石の年代など、分かってきたことも少なくはないのだが、未だに誰が何の目的で作り、あるいは設置したのか分からない、不思議な文化。
 今は、窮屈に決め付けないで、あれこれ想像、それとも妄想を膨らませて楽しむべきなのだろう。

 ちなみに、本書の著者・山田 英春氏には、「lithosの日記」というブログがある。

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→ ウンベルト・エーコ著の『美の歴史』 (植松 靖夫/川野 美也子訳、東洋書林)

 近い将来、読みたいと思っている本は何冊もあるのだが、最近、発見し読みたいと思っているのが、ウンベルト・エーコ著の『美の歴史』 (植松 靖夫/川野 美也子訳、東洋書林)である。
 本書に付いては何も言うまい。エーコの本なのである。
「古代ギリシア・ローマ時代から現代まで、絵画・彫刻・音楽・文学・哲学・数学・天文学・神学、そして現代ポップアートにいたるあらゆる知的遺産を渉猟し、西洋人の“美”の観念の変遷を考察。美しい図版とともに現代の“知の巨人”エーコによって導かれる、めくるめく陶酔の世界」とやらを堪能すればいいのだ。

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← 『ちくま日本文学全集29 中 勘助』(筑摩書房)

 おっとっと、忘れちゃいけない。手元には、『ちくま日本文学全集29 中 勘助』(筑摩書房)がある。
「銀の匙」などの名品を久しぶりに味わいたい。
 冬になると、読みたくなるという本があるものなのだ。
 中野雄氏著の『丸山眞男 音楽の対話 』(文春新書)を読み終えたら、本書を車中で読むのが今から楽しみなのである。
 尤も、つい、自宅で繙(ひもと)いてしまうかもしれないけれど。
 
 尚、音楽(CD)拾遺は、別の機会に。

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コメント

思い返したら、「クリスマス」も「クリスマスイブ」についてもブログで扱ったことがない!
いつも一人で過ごすから埒外なんだね。
この「サンタさん担ぐ荷物は本がいい?!」での画像が唯一か。

「「茶の湯とキリスト教のミサ」に寄せて」が、すこしだけ、キリスト教関連の記事と言えるかも:
http://atky.exblog.jp/155203/

投稿: やいっち | 2006/12/24 20:34

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