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2006/11/13

週末まったり日記(ロクタル管篇)

 土曜の荒れ模様の天気とは一変して、日曜は風が強かったものの、まずまずの空。
 日中は閉じ篭って、「秋菜に塩!」と題した駄文を綴った以外は、読書と居眠りに終始。

 こんな日に閉じ篭りは勿体無い?

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← 柴田翔著『されど われらが日々──』(文春文庫)……。本書を掲げる理由は下記する。

 でも、晴れた外をベランダ越しに眺めつつ、戯文を綴るなんて、考えようによっては贅沢かも。
 ちょっと、無理がある? 
 夕方、すっかり日が落ちた頃になって外出。
 といっても、向う先は、返却する本やCDをバッグに詰め込んで図書館へ。

 先週までと同じような格好で自転車を駆り、出かけたら、風の冷たいこと。
 擦れ違う人も、ジャケットなど羽織っている。
 ほんの一週間で、まるで違う外気温になっている。
 そういえば、日曜には東京でも木枯し一号が吹いたとか。

 窓を閉め切った生活を送っているから、風が吹いていることは木々やベランダの洗濯物の揺れ具合で分かっても、風の冷たさまでは分からない。
 尤も、隙間風が何処からとなく吹き込んでくるのか、それとも、外の冷たさが室内をも冷え込ませるのか、部屋でロッキングチェアーに腰を埋めているというのに、鼻水が垂れる!

 小生の鈍い身体感覚では寒さにも気付かないということ。
 あるいは、タクシーという仕事特有の職業病かと思ったり。

 そう、夏は必要以上に冷房し、冬は過剰に暖房する。
 それというのも、お客さんが乗った瞬間に、夏なら涼しい、冬なら暖かいと感じてもらう必要がある。
 となると、運転手には時に過度で過酷な温度を保つ必要がある。
 吹き出し口からの冷風などの直撃を受けないよう、神経を払っておかないと。

 そんな条件下で長く乗るから、体の感覚が麻痺したり、体感温度が狂ったり、とにかく温度調節が変調気味になるのである。
 運転手さんは、エアコンの効いた車内で仕事できて、いいね、なんて言われても、愛想笑いで応えるしかないのである。

 さて、図書館では、これは習慣というのか、それとも小生特有の癖なのか、車内で読むための本をまず物色する。どの棚を眺めても、単行本だけじゃなく、新書か文庫本の中から車内読書に相応しい本を探すのが習いになっているのだ。
 今回は、黒田 恭一著『はじめてのクラシック』(講談社現代新書〈874〉)という本に出合えた。
 これなら、車内では堅苦しい内容だと、読むのが億劫になる、そんな不都合も生じない。
 また、ラジオで同氏の名前は折々耳にしている。

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→ 黒田 恭一著『はじめてのクラシック』(講談社現代新書〈874〉)

 物理や数学、天文学、生物学、化学などのコーナーは必ず足を運ぶ。
 ミチオ・カク著『パラレルワールド  11次元の宇宙から超空間へ』(斉藤 隆央訳、日本放送出版協会)なる本を発見。比較的新しい本のようだ(正確な刊行年月がわからない。何故なら、奥付けの頁が破かれている! どうしてこんなことをするのか。そんな本が目立つ!)。
 ミチオ・カク氏の本は、『アインシュタインを超える―宇宙の統一理論を求めて』(講談社ブルーバックス)以来だから、久しぶりだ。十数年ぶりか。

 本書の内容は、「ブラックホールへの決死の旅、タイムマシン、もうひとつの宇宙、そして多次元空間-。宇宙論の世界を席捲する革新的な宇宙の姿を鮮やかに描き出す、SFを超えるサイエンス・ノンフィクション」というものだが、ここには同氏が超弦理論の専門家だという肝心の記述が抜けている。
 この手の本は大好き。下手なSF小説より遥かに想像力を刺激してくれる。
 
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← ミチオ・カク著『パラレルワールド  11次元の宇宙から超空間へ』(斉藤 隆央訳、日本放送出版協会)

 別に季節モノの本ではないのだが、秋になると読むたくなる本がある。
 灯下親しむ秋というわけではないが、晩秋にあって、オレンジ色の灯下で好きな本を手にまったりしたくなるのだ。
 それは、オリヴァー・サックス著『タングステンおじさん―化学と過ごした私の少年時代』(斉藤隆央訳、早川書房)である。
 この本は、一昨年だったか、読んだばかり。
 そもそも小生は、オリヴァー・サックスのファンなのである。同氏の訳本は大概のものは読んでいるはず。
 本書は同氏の専門に関するものではなく、題名で想像が付くように自伝風な本。
 男の子なら多くの子が一時期は過ごす鉱物好き、メカ好き、科学好きの頃。
 同氏は、非凡な人間の非凡な少年時代を映し出してくれる。
 ある意味、小生のヒーローの少年の時期を垣間見るような気分。

 本書を思い出すとき、何故か連想式に脳裏に浮ぶ本がある。
 本というより、実際にはある有名な小説に併載された短い回想風の文章というべきか。
 それは、芥川賞を受賞した柴田翔著の『されど われらが日々』の単行本が刊行された際、同書に載っていた小品で、題名が「ロクタル管の話」だった。

 小生、受賞作品の印象は、読んだ直後に薄れてしまったが、こちらの佳品は内容は忘れたものの、印象だけは未だに鮮やかである。
 今風に言えばアキバ系というかオタクがかっているというべきか、真空管、とりわけロクタル管の美しさに魅了された少年の心理を描いた、文学的観点からしたら、なんてことのない小品である。
 けれど、小学生の終わりごろに天体望遠鏡を作って月を眺めて、その美しさに感激し、「ラジオの初歩」(だったかどうか覚束ない)という本を片手にラジオ製作に挑戦し、高校生になっても、何を勘違いしたのか物理クラブに入部し、アインシュタインを英雄視していた小生、光電子効果を使った照明(デコレーション)装置を作り、文化祭で披露したことのある小生には共感せずにはいられない作品だったのだ。

Lay's experiments [books 6-220] 真のオタク小説はこれだ!」なるブログには、嬉しいことに「ロクタル管の話」から抜粋した文章が載っている。
 是非にとは言わないけれど、チラッとでも、抜粋してある文章を読んでみて欲しいと思ったりする。

 オリヴァー・サックス著の『タングステンおじさん』は、こうしたマニアックなまでの心理や体験を非凡に敷衍したもの。
 読むだに懐かしさと賛嘆の念とで胸が一杯になる。
  
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→ オリヴァー・サックス著『タングステンおじさん―化学と過ごした私の少年時代』(斉藤隆央訳、早川書房)

 小生は『ケルト美術への招待』 (ちくま新書)を読んで以来、鶴岡 真弓氏のファンになってしまったようで、同氏の本を図書館でも渉猟してしまう。ケルトに関心があるから同氏の本を探していたのが、今ではとりあえず同氏の本を読んじゃえ、というわけである。
 日曜も、ケルト関連の本がありそうな棚を物色していて、鶴岡 真弓著『「装飾」の美術文明史―ヨーロッパ・ケルト、イスラームから日本へ』(日本放送出版協会)を発見! というわけだった。

 日曜に返却した鶴岡真弓/鎌田東二編著の『ケルトと日本』(角川選書)だが、感想文さえ書く時間を持てなかったが、鶴岡真弓の文や対談での発言は興味深かった。

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← 鶴岡 真弓著『「装飾」の美術文明史―ヨーロッパ・ケルト、イスラームから日本へ』(日本放送出版協会)

 この頃、図書館へ行くと、必ずAVのコーナーでも棚を眺める習慣が出来てしまった。
 AVといっても、HなほうのAVではない。
 さすがに図書館には R指定のCDはない(多分)。
 実は、村治佳織氏の新譜「ライア&ソネット」を探したのだが、(大田区内の図書館には)あるはずもなく、予約も叶わなかった。
 結局、購入の要望という形になった。
 けれど、AVの棚を物色していたら、ヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ」などの収まったCDがあるではないか。過日、富田勲氏のテープ(予約で。CDだと思っていたので予約したのだが)を借りたが、我が家にはテープを聴くラジカセがない!
 見つけたのは、『ブラジル風バッハ/中丸三千繪&ベルリンフィル12人のチェリストたち』(中丸 三千繪、東芝EMI クラシック)である。
 このCDについては、「ブラジル風バッハ(ヴィラ=ロボス,ピアソラ…)ベ゙ルリンフィル12人のチェリストたち他 Un Dia de Noviembre-ウェブリブログ」なるブログの記事が詳しい。

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→ 『ブラジル風バッハ/中丸三千繪&ベルリンフィル12人のチェリストたち』(中丸 三千繪、東芝EMI クラシック

アントニオ・カルロス・ジョビンから西条八十の周辺」の本文で、さらに同記事のコメント欄でジョアン・ジルベルトの話題を書いている。
 そう、つい先日、国際フォーラムでジョアン・ジルベルトのコンサートがあったのだ。
 同氏には数々の奇行や伝説がある。例えば、「ジョアン・ジルベルト来日公演レポート」参照。

 当然ながら、今回の公演も来年にはCD(DVD)化される。無論、小生が図書館で借りたのは、2003年の来日の録音モノ:
ベスト・オブ・ジョアン・ジルベルト ~ポートレイト・イン・ボサ・ノヴァ』(ユニバーサル ミュージック クラシック)

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← 『ベスト・オブ・ジョアン・ジルベルト ~ポートレイト・イン・ボサ・ノヴァ』(ユニバーサル ミュージック クラシック)

 ちなみに、ディスクジョッキー(DJ)、ナレーターの秀島史香さん、あるいはラテン系なダンスのインストラクターなどをされているSUNAOさんも、ジョアン・ジルベルトのコンサートに行き、その時の模様を日記に書いている:
秀島史香の日記 神の手  Date: 2006-11-06 (Mon)
SUNAO'S DIARY★★Miracle Stage ★★

 余談だが、つい最近のニュースとして、「ボサノバの巨匠・ジョアン・ジルベルトに隠し子」なんてのがあった。
「「イパネマの娘」などを大ヒットさせ、ボサノバという分野をつくりあげたブラジル音楽の巨匠、ジョアン・ジルベルト氏(75)に2歳の娘がいることが分かった。ブラジルの有力紙「グロボ」などが9日報じた」だって。
 尊敬に値する!

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コメント

初めまして。
ネットでフランク・永井の「公園の手品師」を検索していく中でここへたどり着きました。
色々お読みですね。
『されどわれらが日々』『タングステンおじさん―化学と過ごした私の少年時代』懐かしい。

『されどわれらが日々』は学園紛争に明け暮れた
団塊世代の若さと、挫折の青春そのものでした。

やいちさんはきっとお若い方なのでしょうね。
『タングステンおじさん―化学と過ごした私の少年時代』は今の子供たちに読んでほしい一冊です。
有難うございました。
富山はよいところですね。白えびのお刺身美味しいですね。もちろん鱒寿しも好きですが。

投稿: tibisato | 2006/11/20 10:21

tibisatoさん、来訪、コメント、ありがとう。
フランク・永井の「公園の手品師」なる記事は、地味だけど、結構、共感を持って読んでくださる方が多いようです:
http://homepage2.nifty.com/kunimi-yaichi/essay/tejinasi.htm
この記事でも察せられるように、小生はtibisatoさんよりは数歳ほど若いけど、もう、若いとは人に思ってもらえない年代です(精神年齢は別にして)。

『タングステンおじさん―化学と過ごした私の少年時代』は、今時の少年にも読んでもらいたいし、そういう時代を懐かしく思い返したい方にも推奨の本です。
小生自身、二度目の今、じっくり読んでいます。やはり、素晴らしい本、書き手も素晴らしい。

ブログ、読ませてもらいました。犬との生活、お母様の介護生活、田舎暮らしならではの自然を満喫する生活、そしてイモ煮会!

富山のことも詳しいのですね。来富されたことがあるのでしょうか。


投稿: やいっち | 2006/11/20 11:29

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