日の下のサツマイモの時ほくほくと
「カラスの森?!」なる記事の末尾で(さらには、関連してコメント欄でも)、以下の話題を疑問の形で提示している:
植物は、大地に根を下ろしている。それは強みであると同時に、外敵に対し、移動(逃避)という手段を取れない憾みがあるということでもある。
それでも、植物はここの種類においてはあれこれあっても、生き物全般としては大成功を収めている。
植物って、どうして綺麗なのか。
綺麗だと思っているのは人間だけなのか。動物…鳥や昆虫類も綺麗だと思っている? それとも蜜などに惹かれているだけ?
だったら、どうしてあれほど多彩・多用な花々を咲かせる必要がある。無用なことにエネルギーを費やすはずもなく、花びらの形や色の多彩さは何を物語っているのか…。
ま、読みながら、ボチボチ、瞑想・妄想してみることにしようと思っている。
→ 30日、日中、日比谷公園脇で仮眠。
そのため、取っ掛かりとして、西田治文著『植物のたどってきた道』(日本放送出版協会)を日曜日に借りてきたのだが、車中で読むはずが、日中は予想外に忙しくて読めず、夜は疲れているし、目を酷使したくないこともあってやはり読めず、に終わった。
なので、本書の感想文はいずれということにする。
ここでは多分、関連する話題を扱う。
話題の焦点は、サツマイモ。
でも、青木昆陽の話ではない。
サツマイモの話に移る前に、小生には、一昨年のものだが、「日の下の花の時」なる記事があることをメモっておく。
若干、文中より転記しておく:
人間にとって多くの花が魅惑的であるように、あるいはそれ以上に昆虫にとっては、花(の蜜)はなくてはならないものだろう。昆虫が花に誘われるのは、両者の長い関わりがあるのだろう。
花は人間に好まれるように進化したのか。そういった花もあるのだろう。そうでなく、勝手に人間の生活圏に侵犯する植物は、たとえ可憐な花が咲くものであっても、雑草とされてしまう。
同時に昆虫に受粉させるべく進化した花もあるのだろう。人目の届くところで見受けられ愛でられる花の多くが綺麗なものなのは、分かるとして、人里離れた場所にある花であっても、美しく感じるのは何故なのだろう。単に花だから? それとも、昆虫などを魅するように進化したことが、たまたま人間の審美眼にも適ったということ?
昆虫による受粉の様子を写真と説明で。
さて、緑の葉っぱは、まさに陽光を浴びるべく進化を遂げた。紫外線に耐性を持ち、あるいは万が一、紫外線により遺伝子が損傷を受けても、修復する遺伝子も備わっていたりもするという。
それは、葉っぱだけではなく、花びらだって、そうした耐性などのメカニズムを備えているのだろうという。
そうでなかったら、そもそも咲きはしないのだろうし。
しかし、実際の花々を見てみると、花の命は短い。文字通り、儚い命を宿命付けられている。ということは、仮に(そして恐らくは)紫外線への耐性があったとしても、そのメカニズムは、葉っぱなどに備わる持続的な耐性(特に常緑樹)とは、自ずから違う脆弱なものである可能性も高いように思われる。
そう、蕾が開花し、満開になり、受粉、受精の時を迎え、蜜や香りなど(人間の目には美しく見える花の様子もなのだろうか)、さまざまな老獪なるテクニックを駆使して昆虫や鳥などに受粉の手伝いをさせる。その間は、植物にとっての生殖器を日のもとに晒す。生物にとってそこが損傷を受けると致命的でもあるはずの性器、生殖器を紫外線その他の危険にまともに晒してまでも、受粉受精の時を持つしかない。
蠱惑(こわく)の時、勝負の時、運命の時。束の間の装いの時。
身を誘惑と危険との極に置いてでも、次世代のために敢えて花を咲かせる。
「ツツジの宇宙」も参照。
← 30日の夜、皇居から芝公園方向を望む。東京タワーが小さく見える。
さて、関連する話題ということで、今日、採り上げるのは「さつまいも」の話。
「屋上サツマイモ栽培によるヒートアイランド対策効果の実証実験」がかねてより行なわれていて、その結果、「芝を用いた屋上緑化に比べ蒸散量で約1.5倍の効果を発揮」といった結果が出たことの報告を兼ねた(?)プレスリリースが昨日、あった。
残念ながら、肝心の昨日のプレスリリースの記事をネットで見つけることはできなかった。
引用・転記は、「NTTファシリティーズ:ニュースリリース 平成18年8月29日」からのもの。
「サツマイモは葉面が蒸散することにより気化熱(水が水蒸気に変わる際に必要な熱)が発生し、大量の熱を吸収することから周辺の空気の温度上昇を抑制できます。この蒸散効果等を定量的に把握するために測定器を設置して検証を続けていますが、これまでの測定の結果、従来採用されてきた芝生による屋上緑化と比べ蒸散量で約1.5倍の効果があることが確認されました」とあり、さらに、「なお、実証実験の最終結果は収穫(11月)が終わった後に公表する予定です」とある。
その公表が昨日、あったらしいのだ。
その話題を昨日、お乗せしたお客さんたちも話していた(が、内密な話かと、ネットで書くのはまずかなと思っていたら、夜だったか、ラジオのニュースでも関連する話題が伝えられていたので、ここにメモしておくわけである)。
日曜日の深夜に植物の話をブログに持ち出したばかりだっただけに、おお! という感じで聴いていた。
屋上緑化の話題は、今更の感があるかもしれない。
例えば、「しなやかな技術研究会 『壁面緑化ガイドライン』を作成し、都施設の壁面緑化モデルが完成しました! - プレスリリース 東京都環境局」など参照。
「しなやかな技術研究会 Solar2は、グリーンのベールにおおわれていた」も興味深い。
「NTTファシリティーズ:ニュースリリース 平成18年8月29日」の中の、「背景とねらい」の項を覗いてもらいたい。
「早急なヒートアイランド対策が求められて」いる中、「その対策の一つとしてオフィスビルなどに屋上緑化が少しずつ取り入れられて」いる。
が、「管理方法や植物選定によってはヒートアイランド対策の効果が期待できないこともあると言われています。また導入後の栽培・手入れに手間とコストが掛かるため、そのまま放置されるケースも少なくありません」とある。
この点については、「サステナ・ラボ サツマイモが都市を救う?」なる記事が詳しいし分かりやすい。
「ヒートアイランドを軽減する方法として、屋上緑化が用いられることがあ」るが、「屋上緑化するためには、通常はまず屋上に土を入れ、そこに植物を植えることになります。大きな木を植えようと思えば、土を深く入れる必要がありますし、植物自体、あるいは水やりした水で、屋上にはかなりの荷重がかかることにな」り、「普通のビルは屋上にそんな荷重がかかることは設計に入ってい」ない以上、無理がある。
それゆえ、「なるべく軽い植物、つまり根を張らず、浅い土で済み、水やりも少なくて済むようなものが選ばれるの」だが、「あまり水分を必要としない、つまり蒸散をしない植物を植えたり、浅い土しか入れないのでは、期待されるような温度を下げる効果は得られ」ない。
その矛盾を解決すべく登場したのが、「屋上サツマイモ栽培によるヒートアイランド対策効果の実証実験」というわけである。
「NTT都市開発などが、ビルの屋上で水耕栽培システムでサツマイモを育てるシステムを開発して実験したところ、これまで使用されていた芝生による屋上緑化に比べ、蒸散量で1.5倍の効果があった」こと、また、「水耕栽培なので土による断熱は期待できませんが、サツマイモは高さが40~50cmになり、葉が互いに重なりあうことから、遮熱効果があるといいます。そして、土を使わない水耕栽培なので、施行も、管理も簡単というメリットがあるということ」だそうな。
ガビーン! 上で、「残念ながら、肝心の昨日のプレスリリースの記事をネットで見つけることはできなかった」と書いているが、今になって見つかった(小生、ネット検索しながら書いているので、こういうことは往々にしてある。しかも、灯台下暗しだった!)。
「NTTファシリティーズ:ニュースリリース 平成18年10月30日 屋上サツマイモ栽培によるヒートアイランド対策効果の実証実験結果 ~サツマイモの蒸散作用により太陽からの正味エネルギーの約80%を吸収~」なる記事があるじゃないか。
その冒頭に、「アーバンネット三田ビルの屋上において、サツマイモの水気耕栽培システム(以下、本システム)導入によるヒートアイランド対策効果の共同実証実験を実施してまいりましたが、測定の結果、サツマイモの蒸散作用により太陽からの正味エネルギー(*1)約80%を吸収する等高い効果があることが確認できましたので公表させていただきます」とある。
そう、お客さんも、ニュースでも、「サツマイモの蒸散作用により太陽からの正味エネルギー(*1)約80%を吸収する等高い効果があることが確認できました」という話の、「80%」という数字が異口同音に(?)口吻に上っていた。
視聴率や投票率、支持率と、数字が一人歩きする。それだけ、数字の効果も印象も鮮明なのだろう。
素人の頭では、「80%」の意味することをきちんとは理解できないのだが、とにかく「80%」、おお!! なのである。水戸黄門さまの印籠より凄いかもしれない。
とにかく、「一方サツマイモ緑化区は、今年の日照時間が平年に比べ7割程度と低く、サツマイモの生育が遅れたにもかかわらず、太陽からの正味エネルギーの約80%がサツマイモの蒸散作用により吸収されていることが確認されました」ってのは、凄いことなのだろう?!
また、「無処理区の屋根表面温度は最高温度55℃となり、屋根コンクリートがヒートアイランド現象の要因となっていることが分かりました。一方サツマイモ緑化区は最高温度28℃にとどまり、最大温度差が27℃であることから高いヒートアイランド緩和効果が確認されました」ってのも、おお、そうなのか! である。
今後は、夏場の直射日光対策などに関連し、帽子や衣服にもこうした「サツマイモ」効果服を開発してもらいたい。あるいは、日傘、ちょっとした小屋の屋根。勿論、車のボンネットや屋根にも。
ここに透過性の太陽光パネルを窓に使えるようになったら、鬼に金棒か。
上掲の「サステナ・ラボ サツマイモが都市を救う?」なる記事の末尾にある一文に注目:
「もちろん秋にはサツマイモも収穫出来ます。今回の実験でも、11月に実際に収穫するのだそうです。収穫の楽しみがあるというのも、いいかもしれませんね。それを焼き芋にしておやつにすれば、従業員への福利厚生にも役立つのかもしれません(笑) 形だけの屋上緑化ではなく、ちゃんと「実」のある屋上緑化ですね」。
このコメントは、秀逸ではなかろうか。
ついでに食した人が路上で勝手にガスを放出しないで、所定の場所でガスを放出するよう義務付け、蓄積させたりして二次利用させたなら、臭いだけのガスも本望ではなかろうか。
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コメント
こんばんは!
いろいろとためになるお話をありがとうございます。私も同じような興味をもっております。
あまり、知識はないのですが・・・。
生命の永遠の維持のために、花がきらびやかだったり、そうでなかったり・・・これは、「風媒花」と「虫媒花」でちがうようですね。
1万種以上もの草花ができ、色とりどりの装いをするのは、やはりDNAの組合せ?なのでしょうか。よくわかりません。その辺のところをやいっちさんが書いてくださるとよいのですが・・・期待しております。
品種改良もおこなわれバイオテクノロジーで咲かせる花もたくさん出てきていますね。
投稿: elma | 2006/10/31 19:13
すみません、訂正です。1万種以上(これは、やいっちさんが書いた植物が作りだす化学成分の種類でした)は間違いです。
地球上には約40万種以上あるようです。以下のサイトを参照いたしました。
http://www.sci-museum.niihama.ehime.jp/special/kouen000319/index.html
投稿: elma | 2006/10/31 19:33
elma さん、コメント、ありがとう。
「日の下の花の時」や「ツツジの宇宙」では瞑想風に綴ってみたので、今回は、多少は研究の成果に事寄せて書いてみたいと思っています。
動物も興味深いけど、植物もその不思議な世界は奥が深い。
それが苔などにまで範囲を広げると、際限がない!
それだけに、小生のこと、マイペースでボチボチで書いていくでしょう。
西田治文著『植物のたどってきた道』も、車中で読むつもりなので、読了するのは来週一杯かも。
ま、楽しみは、ゆっくりじっくり、です。
紹介していただいた「21世紀の食糧と環境」については、思うことはいろいろありますが、ここでは米のことだけ少し。
日本では長らく減反政策が執られてきたけれど、せっかくの米という資源を無駄にしていると思う。
米について、国を挙げて、官民がこぞって米を食する工夫とアイデアを募るべきだと思う。
米を使っての斬新な食品を考え出し、米の需要を増して、食料の自給率を上げる一助にすべきだと思っているのです。
投稿: やいっち | 2006/10/31 22:02
今朝(22日)のNHKニュースで「迅速調理が可能な良食味青果用サツマイモ新品種「クイックスイート」」なる話題が提供されていた:
http://nics.naro.affrc.go.jp/hinsyu/kansyo/quicksweet.html
電子レンジでも簡単に調理が可能だとか。
ああ、でも、我が家の電子レンジは調子悪いからダメだ!
投稿: やいっち | 2006/12/22 07:42