ひたぶるに生きる百舌鳥ただ焦がれ見し
今日は何の日というサイトを覗いていたら、今日11日は、「「リンゴの唄」の日」だという。
「1945(昭和20)年、戦後初めて制作・公開された映画『そよかぜ』が封切られた。並木路子が歌う挿入歌「リンゴの唄」は戦後を象徴する大ヒットとなった」とのこと。
小生もこの歌は好きである。決して同時代に生きたわけではなく、小生が物心付き、テレビにかじりつくようになった頃にはこの歌は既に懐メロ的に折々歌われていた。
ネット検索してみると、「永遠に歌い続けられる 「リンゴの唄」の並木路子」という頁を発見(どうやら、ホームページは、「石のコロンブス」のようである)。
一読して、もう、この頁を発見しただけで、本日のブログは書き始めた甲斐があったと思った。
是非、リンク先に飛んで、一読願いたい。
何故だろう、ふと、百舌鳥(もず)という鳥のことが思い浮かんだ。別に最近、その姿を見かけたわけでも、その声が耳を叩いたというわけでもない。
まさか、小生の食卓には必ずといっていいほど、モズクが添えられているから? 帰省して食事の用意や買い物にも小生が行くのだが、あれこれ買う中の一品はモズクなのである…。
ま、これは冗談として……。
気になるので、季語随筆のブログでもあるし、鵙(=もず。ほかに、「百舌 鴃 伯労鳥」などとも表記するようだ)のことを調べてみたくなった。
手元の『連句・俳句季語辞典 十七季』(東 明雅/丹下博之/佛渕健悟 編著、三省堂)を開いて、「鵙(もず)」の項を覗いてみると、以下のようである:
[三秋・動物]モズ科の鳥の総称。同類=百舌鳥、鵙の高音、鵙日和、鵙の晴。関連=春の鵙[三春]、冬の鵙[三冬]。
「百舌鳥 - 知泉Wiki」によると、「なぜ「百舌鳥」などと言う漢字を当てられたのか?と言うと、もずと言う鳥は物まね上手で、周囲で鳴いている鳥の鳴き方をすぐにマスターして真似してしまうからだと言われています。つまり「百の声を持つ鳥」みたいな意味なのです」とある。
但し、百舌鳥」などと言う漢字を当てられたのかについては、異説もあるようだ。
「百舌鳥の高鳴き 75日 - 猫族*犬族 - 楽天ブログ(Blog)」なる頁を覗いてみる。
「百舌鳥は 全長約20cmの一見愛らしい鳥だが 実は肉食性でかぎ状に曲がった鋭いくちばしを持ち 気性が荒く 蛙・蜥蜴・魚など 何でも食べ 時には自分よりも大きな 蛇などにも果敢に襲いかかる事がある」など、百舌鳥について詳しいことを知ることが出来る。
特に、「秋の百舌鳥は「高鳴(たかな)き」と呼ばれる大きな鳴き声で縄張を主張し合うが 百舌鳥は冬になると親子も夫婦も関係なく単独行動をしなければならない為 百舌鳥にとって秋の縄張争いは命がけとなり 例年 秋の深まりをつげるあの甲高い鳴き声は 冬に向けて百舌鳥が必死で戦っている声なのである」という記述は、切なくもあり、一層、百舌鳥への思いが募る。
「兵庫県立南但馬自然学校」がホームの「南但馬自然学校 自然のページ 百の舌を持つ野鳥」という頁がまたいい。
まず、頁の冒頭でモズの愛らしい姿を見ることが出来る。こういう鳥をふと、見かけたりすると、嬉しくなりそうだ。
しかも、文中に何枚もモズの画像がリンクされている。
「“百の舌を持つ鳥”これは、モズがいろいろな野鳥のまねをするところから当てられた文字です。また、モズが鳴きまねをしていると判断するには、他の野鳥のさえずりも聞き分けられる能力が必要です」というのは、モズの「さえずりは注意深く観察をしていないとなかなか聞くことはでき」ないこともあって、ひたすら納得するしかない。
ネット検索を繰り返していたら、「なばなひとし迷想録 平成社会の探索 YNYN自然観察会・野鳥分科会 百舌鳥論議」なる頁を発見(ホームページは、「ようこそ しきしましゅげいどうへ 磯城島綜藝堂」)。
この頁を最初に見つけていたら、今日のブログのテーマは変更していたはずである。それほど、記述が充実している。小生の出る幕など、まるでない!
特にモズの漢字表記については、万葉集などにも遡って調べてあって、とても参考になる。
但し、「日本語で「モズ」を何故「もず」というの」かについては、「今のところ不明のよう」だ。残念。
モズのいる風景、あるいはモズの声などが織り込まれている句は、「俳句・季語の中の野鳥」の中の、「俳句と野鳥 むめも」の頁に幾つか紹介されている。
有名な句が集められているのだろうから、全部を転記したいが、幾つか選んでみる:
鵙の空書斎はひくくありと思ふ 山口 青邨
百舌鳥の下みな雨ぬれし墓ばかり 橋本多佳子
鵙昏れて女ひとりは生きがたし 三橋 鷹女
百舌に顔切られて今日が始まるか 西東 三鬼
われありと思ふ鵙啼き過ぐるたび 山口 誓子
夕鵙によごれし電球(たま)の裡ともる 山口 誓子
さらにネット検索して、他にもモズが織り込まれている句を見つけたので、以下に示す:
舌鳥なくや入日さし込む女松原(めまつばら) 凡兆(「猿蓑集 巻之三」より。「秋の入日は真横からさす。それによって赤松林の松の赤い幹が照らされる」…)
百舌鳥啼いて身の捨てどころなし (「種田山頭火句集」より)
鵙よ十方に原爆ゆるすまじ 湯井 岳秋(「広島ぶらり散歩」の中の「原爆慰霊句碑」より)
なんとなくなのだが、何故、モズのことが不意に脳裏に思い浮かんだのか、思い当たる節が……。
やはり、日曜日に行って来たサンバのパレードのことが印象に鮮やかだからだ。
別に、サンバパレードとモズとが直接にも、そして間接にも結びつくというわけではない。
ただ、そう、あくまでなんとなくなのだが、見かけの華麗さ、豪華さ、可憐さ、生命力の横溢感の炸裂といったカーニヴァル的な狂騒感と同時に、何か懸命で切なくて健気な何かをぼんやりと感じていたから、なのかもしれない。
懸命で前向きで生きることの賛歌を体一杯に表現する。なのに、何か悲しいような。
不思議だ。サンバの表のシーズンが終わった(裏のシーズンとは、来年のパレードや浅草目指して、既に仕込みの体勢に入っている…。そうした姿は表向きにはまるで見えないことを思ってのことなのだが)、一抹の寂しさ、喪失感の故なのか。
うーん。ちょっと違うか。
あるいは、もしかして、演技する人たちに圧倒的に漲る生命感と自分との落差の大きさに愕然として…なのかも。
分からん。
百舌鳥啼くは親も子もなき悲鳴かと
百舌鳥の声聞いて妬けるは我のみか
ひたぶるに生きる百舌鳥ただ焦がれ見し
[10月13日の夜、車中でラジオからモズの話題が。そしてモズが歌いこまれている歌が…。
そう、サトウハチロー作詞の「ちいさい秋みつけた」(中田喜直:作曲)である。
「綾よく口ずさんでいましたっけ「小さい秋みつけた」;サトウハチロー - livedoor Blog(ブログ)」には詞と共に、この歌への思い入れが書いてある。
せっかくなので歌詞を転記する:
ちいさい秋みつけた
サトウハチロー
一 だれかさんが だれかさんが
だれかさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋
ちいさい秋 みつけた
めかくし鬼さん 手のなる方へ
すましたお耳に かすかにしみた
よんでる口ぶえ もずの声
ちいさい秋 ちいさい秋
ちいさい秋 みつけた
二 だれかさんが だれかさんが
だれかさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋
ちいさい秋 みつけた
おへやは北向き くもりのガラス
うつろな目の色 とかしたミルク
わずかなすきから 秋の風
ちいさい秋 ちいさい秋
ちいさい秋 みつけた
三 だれかさんが だれかさんが
だれかさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋
ちいさい秋 みつけた
むかしの むかしの 風見の鳥の
ぼやけたとさかに はぜの葉ひとつ
はぜの葉赤くて 入日色
ちいさい秋 ちいさい秋
ちいさい秋 みつけた
今日、ネット検索していて、「百舌鳥(もず) - 万葉の生きものたち」なるサイトを見つけた。
「万葉集」よりとして、以下の歌が紹介されている:
秋の野の尾花(をばな)が末(うれ)に鳴くもずの
声聞きけむか片聞け我妹(わぎも)
(作者不明 巻十 二一六七)
「モズの早贄(はやにえ)」、「モズの磔(はりつけ)」の画像や、その説明があって、覗き見て楽しい。
全くの偶然だが、この記事の冒頭で話題の俎上に載せている、並木路子が歌ってヒットした「リンゴの唄」という歌だが、実はこれサトウハチローの作詞である。曲名を挙げておきながら、小生、作詞者名を書かないでいたことに今、気付いたのだった。
しかも、作曲者名も書いていない。万城目正である。
ラジオ、聴いていてよかった。ありがとう、NHKさん! (06/10/14 追記)]
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コメント
追記しました。
投稿: やいっち | 2006/10/14 09:02