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2006/10/17

高橋松亭…見逃せし美女の背中の愛おしき

 浮世絵というと江戸時代のものというイメージが強い。実際、写楽・歌麿・北斎・広重といった名前が並ぶと壮観で、江戸時代が浮世絵の絶頂期だったことは間違いない。
 というより、江戸時代、彼らの版画絵によって浮世絵が始まったのだから、浮世絵というと江戸時代と思うのはむしろ当然なのだろう。
 もっとも、江戸時代の人が浮世絵を高く評価していたかどうかは別問題である。

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→ お馴染み紫苑さんに戴いた桔梗と薄(すすき)の画像です。仲秋の名月を見逃されたのだとか。詳しい事情は、画像掲示板でどうぞ。

 幕末から明治にかけて、日本に来た外国人が浮世絵に(も)着目し、海外に流出し(持ち出し)、マネ、モネ、ゴッホなど印象派を中心に影響を与えていった。そして逆輸入的に日本においても浮世絵の評価が高まったのだった。
 そうした次々と日本の文化の結実がドンドン海外に流出する現実、明治維新以後の混乱もあって、版画家も刷り師ら職人の生活も危うくなって、浮世絵や版画の文化が崩壊してしまうのではという危機意識も一方では明治には関係者の間にあったようだ。

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← 新井宿(あらいじゅく)。「Shôtei.com   Shôtei Gallery 」より。

 いずれにしても、幕末から明治にかけての浮世絵とは言い難いかもしれないが、その伝統を背負っての版画家に小林清親(こばやしきよちか)、川瀬巴水(かわせはすい)ら、錚々たる面々がいることも知られている。
 他にも新版画運動を起こした伊東深水などのような有名な版画家がいるじゃないか?
 ここでは、文明開化時代の東京や明治の日本の風景を描いた画家に焦点を合わせている。その理由は、ブログ記事「週末ジタバタ日記(フレッツ光へ!)」の末尾などを参照してもらいたい。

 さて、小林清親や川瀬巴水らについても、個別に採り上げたいが、今日は以下の紹介だけに留めておく。

東京ガス : GAS MUSEUM / 明治錦絵の世界-小林 清親」:
「弘化4年(1847)生れ、大正4年(1915)没。“明治の広重”といわれた清親は英人ワーグマンから油絵、下岡蓮杖に写真、柴田是真・河鍋暁斎に日本画を学んだとされ、独特の“光線画”は日本伝統の錦絵に西洋画の技法を取入れたもので、光と影を強調し、明治詩情を表現した。「猫と提灯」「海運橋(第一銀行雪中)」ほか、数多くの作品が残されている。」

富士山NET 川瀬巴水」:
「大正期に興った「新版画運動」の重要な担い手であった川瀬巴水(1883-1957年)は、東京市芝区(現・東京都港区)に糸組物職人の長男として生まれた。幼少から絵を描くことを好み、一時は周囲の反対もあって画家への道を断念するものの、27歳の時に日本画家の鏑木清方(1878-1972年)の門に入り、「巴水」の雅号を与えられた。1918(大正7)年から、日本各地の風景版画シリーズの刊行を始め、以降一貫して風景画を発表している。」

渡邊木版美術画舗 新版画 川瀬 巴水」なる頁を覗くと、相当程度の数の作品を見ることが出来る。


 ブログ記事「週末ジタバタ日記(フレッツ光へ!)」の末尾でも触れているが、この週末の成果(?)の一つが高橋松亭(たかはししょうてい、1871~1945)なる人物の発見だった。
 発見というのも大袈裟かもしれないが、小生にとってはやはり初耳(初見)だっただけに、発見遭遇だったのである。
 その契機は図書館で日曜日に観て来た川端龍子の図録を物色していたら、その書架の近くに高橋松亭を扱った本(画集)があったのである。
 それは、『こころにしみるなつかしい日本の風景―近代の浮世絵師・高橋松亭の世界』(清水 久男:編集、国書刊行会)である。
郷土博物館・特別展「高橋松亭・版画の世界」」なんていう展覧会が小生の居住地から遠くない大田区立郷土博物館で昨年末までやっていたのだった。気付かなかった。惜しいことをした。

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→ 大田区立郷土博物館で催されていた「郷土博物館・特別展「高橋松亭(弘明)・版画の世界」展のチラシ。渡邊木版美術画舗の渡辺英次さんによるすり師の実演もあったのだとか。

 逃した鯛は大きいって奴だろうか。せめて、展覧会チラシから高橋松亭、そして彼の周辺や明治時代の浮世絵版画事情を説明する一文を転記しておきたい:

浮世絵版画は、明治時代の新印刷技術であった石版、銅版、そして写真の隆盛により、明治37年に起こった日露戦争を描いた作品の出版を最後に制作されなくなります。これに伴い、版元と絵師・彫師・摺師の協同により版画制作を行う江戸時代以来の版元制度とともに、日本の伝統文化である木版画制作技術も衰退してしまいます。
このような状況の中で、伝統木版画技術の復興と、版画の普及活動をめざした版画運動「新版画[しんはんが]運動」を提唱し、自ら版元となり、その理想である芸術を本位とする新しい時代の版画「新版画」を制作したのが、渡邊庄三郎[わたなべしょうざぶろう]です。版元制度復活にあたり、木版画制作にかかる資金を調達するため、海外への輸出用に、江戸時代浮世絵の複製版画とともに制作されたのが「新作版画(複製に代わる新しい版画)」でした。その「新作版画」の絵師として、明治40年、最初に登用されたのが高橋松亭[たかはししょうてい](大正十年、弘明[ひろあき]と改名)(明治4(1871)年生~昭和20(1945)年没)だったのです。松亭の「新作版画」は、関東大震災までに大小500図以上の作品が出版されました。
高橋松亭は、これらの版画作品によって知られ、国内だけでなく、海外においても高い人気を保つ画家です。しかし、作品の知名度に比べ、画家本人の情報や資料はほとんど知られていないのが現状です。松亭は、大正時代から昭和17年に至る間、版画絵師としての仕事が最も充実していた時期を、現在の大田区内で過ごしたと考えられます。大田区内に居住した新版画の絵師には、伊東深水や川瀬巴水がいますが、これに松亭が加わり、この地がいかに画家の制作環境として優れていたかを教えてくれます。
本年は、高橋松亭(弘明)没後60年の節目にあたりますが、主要な作品を集めて紹介する展示会は、世界でも初めてのことです。展示では、作品を通して、その生涯と画業を回顧したいと思います。

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← 市野倉(いちのくら)。「Shôtei.com   Shôtei Gallery 」より。

 こうした転記を為すのは、小生としては、高橋松亭を知りたいし、世間にももっと知られていい版画家だと思うからである。
馬込文士村」をご存知だろうか。
 ホームページには、以下のように説明されている:

大正末期から昭和初期、東京の馬込から山王にかけての一帯(現在:大田区南馬込、中央、山王)に多くの文士、芸術家が住んでいて、互いの家を行き来し交流を深めていました。当時の馬込は武蔵野の面影を色濃く残し、静かな田園風景が広がっていました。いつしかこの辺りを「馬込文士村」と呼ぶようになりました。都市化が進んだ今でも、寺社や住宅地の緑も多く閑静な街並であることには変わりありません。起伏に富んだ小道は、かつて文士達が歩いた散歩道でもあります。文士たちの住んでいた場所にはモニュメントが置かれ、彼らの足跡を訪ねることができます。晴れたひとときあなたも散策コースを歩いてみてはいかがでしょうか。

文士、芸術家一覧」の項を覗いてみると、

石坂洋次郎、稲垣足穂、今井達夫、宇野千代、尾崎士郎、片山広子、川瀬巴水、川端茅舎、川端康成、川端龍子、北原白秋、衣巻省三、倉田百三、小島政二郎、小林古径、榊山潤、佐多稲子、佐藤朝山、佐藤惣之助、子母沢寛、城左門、添田さつき、高見順、竹村俊郎、萩原朔太郎、日夏耿之介、広津柳浪、広津和郎、藤浦洸、真野紀太郎、牧野信一、真船豊、間宮茂輔、三島由紀夫、三好達治、室生犀星、室伏高信、村岡花子、山本周五郎、山本有三、吉田甲子太郎、吉屋信子、和辻哲郎ら、錚々たる面々が名を連ねている。
 
 ん? 川瀬巴水や川端茅舎、川端龍子らの名が垣間見えるのに、やはり、大田区中央に居住したことのある高橋松亭の名が見えない! 一時期は人気を博したが、今では忘れられている。
 だったら、思い出してもらおうではないか。
 尤も、大田区に居を構えたことのある新版画の絵師・伊東深水の名も見えないから、「馬込文士村」に名を連ねるには、他にも選択基準があるのかもしれない…。

 さて、本文中にもリンクを示しているが、高橋松亭を扱うホームページというと、「Shôtei.com   Shôtei Gallery 」に尽きる:
Shotei.com   The Woodblock Prints of Takahashi Shôtei

 それにしても、ADSLから光にネット接続の方式を変えたのだけど、開通の具合が中途半端。やっぱり、自分で設定を弄ると、何処か変になるね。

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コメント

おお、コメントが可能になっている!

投稿: やいっち | 2006/10/18 13:57

凄く楽しかったよ!

投稿: YODA | 2006/10/20 02:11

YODA さん、来訪、TB、ありがとう。
北斎に現代のカメラマンが挑戦!プロ並みじゃなく、プロのレベルの写真ですね。様々な試みがされている。

投稿: やいっち | 2006/10/20 07:30

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