06志村銀座パレードへ(2)
本稿は「06志村銀座パレードへ」の(2)のつもりである。
少なくとも画像は、間違いなく06志村銀座パレードで撮ったもの。
但し、画像の配列は、(1)とは違って、時間系列順ではなく、下記の記事の内容に可能な限り合わせている。
← 今回のパレードで一番、凄かった。カメラ小僧の追っかけも多かった。その理由は…リベルダージ(G.R.E.S.LIBERDADE)のメンバーになると分かる…かも。
「カーニヴァルテーマ「太陽」」の(4)以降で引用(転記)するつもりでいたが、なかなか(4)に取り掛かれないので、やや変則的ではあるが、ここ「06志村銀座パレードへ(2)」の頁に、クリス・マッガワン/ヒカルド・ペサーニャ著『ブラジリアン・サウンド―サンバ、ボサノヴァ、MPB ブラジル音楽のすべて』(武者小路 実昭/雨海 弘美訳、シンコーミュージック)からカーニヴァルに関係する項目を(やや羅列風に)転記する形を採る。
◎ ところでエスコーラのサンバ・エンヘードが選ばれると、今度はパレードの準備のために全精力が注がれることになる。このころにはアーラ(エスコーラをいくつかの単位にわけた「班」のようなもの)のためにカルナヴァレスコがデザインしたコスチュームがいよいよ注文される。テーマに基づいておのおののアーラには違ったコスチュームと役まわりがある。(略)コスチューム代についていえば、ほとんどすべての参加者のコスチュームは自腹でそろえられる。そして多くの人々が月賦でその代金を返している。(略)
→ コミッサォン・ヂ・フレンチ(先頭委員会)
← アーラ・ダス・バイアーナス
パレードでは二つのアーラが必須項目となている。一つはアーラ・ダス・バイアーナスだ。これは年長の女性がバイーア風のターバンと幅の広いレースのついた衣装を着てパレードするもので、1943年にマンゲイラが導入したものだ。このアーラは、カンドンブレーの熱心な信者でマンゲイラのブロコの産みの親でもあったバイーア女性、チアたちに敬意を表するため作りだされた。もう一つは、コミッサォン・ヂ・フレンチ(先頭委員会)で、これはふつうエンヘードと関連したコスチュームを着たアーラとなっている。彼らは厳かに歩いたり、踊りというよりも「所作」といった方がよいような動きをしながらパレードを開始する。(p.61-2)
← アーラ・ダス・バイアーナス
→ ポルタ・バンデイラとメストリ・サラ
◎ ふつうブラジル人なら誰でもサンバのステップを踏めるが、こみ入った特別なステップを踏める人はなかなかいない。それができる人はパシスタと呼ばれる。エスコーラの最も重要なパシスタはポルタ・バンデイラ(団旗を持って踊る女性)とメストリ・サラ(祭りの引き立て役の男性)だ。この二つのキャラクターは19世紀のソシエダージの時代に遡るきわめて古いものだ。ポルタ・バンデイラはエスコーラの旗を振りながら優雅に踊り、メストリ・サラは彼女のまわりをエスコートしながら力強く踊る。(p.62)
→ ポルタ・バンデイラとメストリ・サラ
← ポルタ・バンデイラ(とメストリ・サラ)
◎ ブラジルのカーニヴァルは、ニューオーリンズの「マルディグラ」やスペイン語圏の他の国々で行われるものと同様、四旬節の前に行われる祭りで、そもそも古代ギリシャやローマ人たちの行っていた前キリスト教的な祭りを起源とするものだ。紀元前6世紀ころ、ギリシャ人たちは、酒や自然の力の神様であるディオニソスを祝う春祭りを行っていた。この祭りでは人々が町を練り歩いて浮かれ騒ぎ、山車などが出ることもあった。この季節の祭りをローマ人たちは、奴隷と主人が服を着替えて立場を逆転し大騒ぎするサチュルナリアや、ディオニソス神のローマ版であるバッカスを祝う酒の祭りなどに発展させた。こうした祭りは、たいてい酒に酔って乱痴気騒ぎとなり、あらゆる権威は面目を失ない、社会秩序が逆転し、すべてが無礼講となった。(p.54)
◎ アーラとアーラの間にはエンヘードの重要なシーンを描いた装飾の施された巨大な山車、カーホ・アレゴーリアが出る。この山車は、彫刻、建築、それに機械工学が合わさった真の芸術作品といえるものだ。この山車の上にはデスターキ――豪華な衣装を着た、もしくはほとんど何も身につけていない男女――が立っている。この山車を作るには何百という人々の手が必要とされ、期間も半年におよぶ。お針子、彫刻家、大工、鍛冶屋、画家たちが、パレードの最後の最後まで蟻のように忙しく働いてやっと出来上がるものなのだ。(p.62)
◎ パレードの始まる前から、山車に乗ったプシャドール(メインの歌手)がサンバ・エンヘードを歌いだす。プシャドールには5,000人の歌声をバテリーア(太鼓隊)のセクションと合わせる責任がある。彼は同じ曲をほとんど2時間近くも歌い続けなければならない。しかも失敗は許されないのだ。メンバーたちはヂレットール・ヂ・アルモニーアに気合を入れられながらエンヘードを少しずつ歌い始める。
このヂレットール・ヂ・アルモニーアはまた、パレード中、メンバーが高いテンションを保ち続けるように心がけなければならない。エスコーラの全員が伴奏なしで2、3度エンヘードを歌うと、パレードの準備段階の最も興奮する瞬間が訪れる。バテリーアの演奏が始まるのだ。この場に立ちあった人間は、生涯けっしてこの瞬間を忘れないだろう。メストリ・ヂ・バテリーア(パーカッションの隊長)のホイッスルのもと、300人のバテリーア軍団が一糸乱れぬ正確さで歌に合わせてリズムを叩きだす。ホイッスルは指揮者のバトンの役目をしているのだ。(p.64)
◎ バテリーアの指揮者に話を戻すと、彼らはまったく驚異的な耳をしている。リハーサルで、何百という打楽器奏者のなかでたったひとりが間違いを犯しても、それを指摘できるほどの能力を彼らは持ち合わせているのだ。そんな時、指揮者は間違えた奏者のところに行って正しいリズム・パターンを大声で叫ぶか、演奏を止めさせて他の奏者の演奏を聴かせたりする。指揮者はすべてのパーカッショニストが完全にシンクロして複雑なヴィラーダ(リズム・パターンのチェンジ)やパラジーニャ(演奏停止)を行えるようにしなければならない。このパラジーニャは、パレードの最中にパーカッションだけが止まり、歌だけでリズムが保たれるという効果を生みだすものだ。パラジーニャの後、再びバテリーアの演奏が始まるのだが、この一連の作業はいってみれば(現実には不可能だが)ジャンボ・ジェット機の離陸を滑走路の切れる間際でストップさせ、そこからまた離陸態勢に持っていくということを音楽でやっているわけだ。とてもできそうにないことだが、実際彼らはそれをやっているのである。(p.65)
◎ コンセントラサォンでバテリーアの演奏が始まる時、人々のエネルギーのレベルはものすごい高さになる。「その音量の凄さといったら、へヴィメタ・バンドの倍はある」とロバォンがいうように、興奮の度合は最高潮に達し、本番のパレードへ向けての準備は完了する。
ゲートが開かれると、ストップ・ウォッチが押され、花火が打ち上げられる。そしていよいよコミッサォン・ヂ・フレンチ(先頭委員会)が、観衆たちに挨拶を送りながらサンボドロモに入場する。本番の開始だ。(p.66)
◎ スルド(バス・ドラム)のビートがあたりに響きわたる。このドライブ感あふれる基本ビートに乗って、残りのドラムやパーカッションが力強いリズムを叩きだす。これこそカーニヴァルを華やかに飾るバテリーアだ。バテリーアは次の楽器群によって構成されている。まず魔術的なローリングを響かせるカイシャと呼ばれるスネア・ドラム。そして、ポップコーンが出来上がった時のような高音を出すタンボリン(タンバリンに似ているが、小さなシンバルはついておらず、手ではなくスティックで叩く)。時に悲しそうな、時にユーモラスなうなり声を聴かせるのはクイーカ(摩擦によって音を出す太鼓)だ。そして金属製のスプリング・ギロのヘコヘコと、二つのベルのついたアゴゴーがある。また打楽器以外のものとしては、ウクレレのような形をしたカヴァキーニョ(哀感のある高音でハーモニーをつける)、そしてメロディーを大声で歌うプシャドール(リード・シンガー)がいる。(p.31)
→ ステージショー! かぶりつきで見たかったが、がぶりよりで場外での遠望風な撮影に。
← フラッシュが凄い! フラッシュまで小生のデジカメは負けていたっけ。
◎ カーニヴァルのパレードの様子を説明しよう。まず重層するリズムが遠くから溶け合って響いてくる。やがてサンバ隊が近づくと、隣の人と話もできないような耳をつんざくような音が迫ってくる。目の前を通り過ぎるころとなれば、音の凄さに汗は飛び散り、頭はくるくるとまわりだし、祭りの絶頂感に達する。気がかりなどいっぺんでふっとでしまう。カーニヴァルを体験した人たちは、誰でもこんなふうになる。そして、これこそがサンバなのだ。(p.31)
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コメント
・・・、用語・人名事典がいるな・・・。
投稿: 志治美世子 | 2006/09/06 14:53
「用語・人名事典がいるな…」
そ、そ、そうなんです。
って、安請け合いを小生がするわけにはいかんし。困った。
我がリベルダージでサンバ関連の用語事典を作って欲しいのだけど(楽器とカーニヴァル用語だけでも)、なかなか実現しない。
我輩がやるってのは、おこがましいよね。
いつもなら、大方の人には珍しい用語があったら注釈(乃至、関連サイト)を付しておくのだけど、今回は時間が足りなくって。
うん、サンバ関連の用語・人名事典は、課題だ。若干、過大な課題だが。
投稿: やいっち | 2006/09/07 07:26