« 賢治の俳句…花はみな四方に贈りて菊日和 | トップページ | デルヴォー…凍てついた夢想 »

2006/08/14

青い月 赤い月

月の魔力?」と題した小文を一昨日、書いた。その記事に対しelmaさんより戴いたコメントが小生に「ブルームーン」のことを思い出させてくれた。
 断っておくが、フルムーンではない。ブルームーン、つまり、「青い月」である。
 小生、以前、既に「ブルームーン」の話題を採り上げたことがあったと思っていたが、どうやら思い込みだったようで、未だのようだ。
ブルームーン」と題した掌編を書いた際に、「ブルームーン」をキーワードにあれこれ調べたのが印象に残っていて、関連する雑文を書いたと思い込んでしまっていたのかもしれない。

44789503261

→ 小浦昇/絵 青居心/詩『青い月の物語』(ダイヤモンド社)……著書の表紙の銅版画も筆者の手になる。

 せっかく、「ブルームーン」なる言葉、それとも現象が話題に上ったのだ、もう一押しして「赤い月」と併せ、若干のことをメモしておきたい。
 今回は、掌編「ブルームーン」の中で扱っているカクテルのこと、バラのこと、「こちらブルームーン探偵社」などは扱わない。
 また、「赤い月」というと、なかにし礼氏の小説、あるいはその映画化された作品を思い浮かべられるかもしれないが、今回はその話題も素通りする。
 主に自然現象の中の「ブルームーン」に焦点を合わせる。

 例によって今、車中でちらちら読み続けている池内 了(いけうち さとる)著の『天文学者の虫眼鏡―文学と科学のあいだ』(文春新書)にまたまたお力を拝借させてもらう。
 偶然なのか、「青い月 赤い月」の話題を「月の魔力?」を書く前の日にこの本で読んでいたのだ!

 当該の頁から転記する。その項目は「月がとっても青いから」と題されている(ちなみに、この曲も上掲の掌編中で登場している!):

 月の光は太陽の光を反射したもので、その反射光は日光よりは赤みがかっている。しかし、月光の下で景色を見ると青白く見える。これは眼の錯覚によるもので、「プルキニエ効果」と呼ぶらしい。暗黒の中では目の瞳孔が大きく開いて、エネルギーの高い青白い光を実際以上に強く感受するためだ。「月光の曲」や「月の砂漠」の雰囲気には、落ち着いた白光の月こそふさわしいようである。

「プルキニエ効果」について、より詳しくは、「暦と天文の雑学 太陽の色・月の色」を参照のこと。

44789504822

← 小浦昇/絵 青居心/詩『赤い月の物語』(ダイヤモンド社)

 夏の月は時に業火が燃えているかのように赤く見える。これは、月に原因があるのではなく、地球の大気のためである。大気中に含まれる塵が多くなれば、月の光のうち青い光は散乱されるが、赤い光は通過することができるから、月が赤く見えるのだ。火山爆発が起こって大気中の塵が増えると、月はいっそう赤く見える。フィリピンのピナツボ火山が大爆発を起こした後、一年間も赤い月が続いたことが良く知られている。朝日や夕陽が赤いのと理由は同じである。


 赤い月や火山の話で思い出したが、以前、ムンクの「叫び」を本ブログ「番外編「山焼く」」で扱ったことがある。
 ムンクの「叫び」という作品は、背景に異常な夕焼けが描かれている。これはムンク特有の感性の故(のみ)ではなく、実際に当時、インドネシアのクラカトア火山の爆発の結果として、世界的にそうした現象が見られたのであり、ムンクはそうした現象に彼ゆえの感性で感応したという内容を書いた。

 青い月について、もう少々上掲書から:

 (月が青く見えるのは)月が赤く見えるのとは反対の現象が大気中で起こっている。つまり、月の光のうち、赤い光は散乱されてしまい、青い光のみが真っ直ぐ通過してくるのだ。これは大気中の塵が〇・五ミクロンくらいの小さなサイズで煙霧状になっている場合に起こり、山火事や水蒸気性の火山噴火があると、このような塵が増え、何らかの作用でサイズが揃うという条件を満たさねばならないらしい。だから、めったに起こらないが、山岳地帯に住むアメリカ先住民は度々目撃しており、青い月に関する民話もあるそうだ。

001216koura

→ 小浦昇氏の新作(銅版画)などは、「小浦昇 Noboru Koura」にて見ることができる。「Gallery Tsubaki ギャラリー椿」のうちの頁。

 最後に、同じく上掲書より:

 大気中の塵の状態が右(上記)のようになれば、原理的には太陽も青く見える場合も有り得ることになる。といっても、太陽光のエネルギーによって煙霧状の塵は吹き飛ばされやすいから、青く輝く太陽は長続きしない。よほど幸運な人しか目撃する機会はなさそうである。

 一晩中、訳の分からないことをくんずほぐれつやってしまった、そんな朝帰りの時は、世の中全てが真っ蒼に見えてしまうが、これはどんなメカニズムなのだろう。

 それにしても、「月の魔力?」は凄いものだ。ここまで話題を引きずらせるのだから。
 あるいは、その前に、ジュール・ヴェルヌ著の『月世界旅行』 のことを俎上に載せたからなのか

|

« 賢治の俳句…花はみな四方に贈りて菊日和 | トップページ | デルヴォー…凍てついた夢想 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

書評エッセイ」カテゴリの記事

科学一般」カテゴリの記事

コメント

そういえば、ルナティックって「頭がイカれた」とか「気違い地味てる」とかって意味があるよね。

投稿: 志治美世子 | 2006/08/14 13:00

どこかの国の首相を連想する。
被害者(被害国)のことも少しは思わなくっちゃ。

投稿: やいっち | 2006/08/15 08:23

大気の影響で、いろいろな色合いがあるのでしょうね。同じ太陽でも、空でも、いろいろなバリエーションがあるような気がします。地中海でみる紺碧のような青、ピンク色に近い空の青もあるし・・・光の乱反射のせい?私は、科学的なことは知りませんが・・・。

確かにロシアや満州で見える太陽や月は、赤いですよ。これは、自分が確かめたことです・・・モスクワからの帰り、飛行機の窓から見て涙がでるぐらい感動と感涙・・・でした。

漆黒の夜もあるし、白夜があるように・・・そうしたものが人間の心理に与えるものって、あるような・・・気がします。

投稿: elma | 2006/08/15 21:57

elmaさん、「モスクワからの帰り、飛行機の窓から見て涙がでるぐらい感動と感涙…」に垂涎の感。
自然現象に付いて科学的な説明はされてきたし、これからもされていくのでしょうけど、それはそれとして、目に、そして心に感じるものは格別なものだということ、それだけはいつの時代になっても変わらない真実なのでしょうね。

投稿: やいっち | 2006/08/16 00:58

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 青い月 赤い月:

« 賢治の俳句…花はみな四方に贈りて菊日和 | トップページ | デルヴォー…凍てついた夢想 »