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2006/08/02

この花の名は…月下美人

 折々覗かせていただいている「花の俳句」というサイト、数日振りに開いてみた。
 今日の花は、「鹿の子百合(カノコユリ)」なのだが、小生、実物を観たことがないような。
 記述を読むと、「四国から九州にかけて分布し、海岸の崖や山中の岩場に生える。また、栽培もされる。」とある。テレビや写真はともかく、栽培された鹿の子百合は見たことがある…のかどうか、はっきりしない。

Sionsunflower

→ 紫苑さんにいただいた書中お見舞いの画像です(勿論、これ、表題の月下美人とは違います!)。

 ぼんやり記憶を辿りつつ、画面をスクロールしてみたら、「月下美人(ゲッカビジン)」が7月30日に扱われている。
 月下美人! 花の名前はどれもこれも妙があり、その命名のうまさに感嘆するばかりだが、この月下美人というのも、よくぞ付けたりと言いたくなる。
「開花時期は7~11月である」とあるが、季語上は、夏の扱いとなっている。
「芳香のある白い花を咲かせる。大輪の豪華な花で、夜8~9時ころに開花し、4時間ほどでしぼむ。美人薄命の喩えから「月下美人」の園芸名がつけられた」とあって、そういう事情もあるから「月下美人」なのか、と納得させられる。
花と観葉植物(葉っぱの岬)」の中の「月下美人」なる頁を覗くと、My月下美人と題されていて、愛されているのだと感じさせられる。
「香りが強く、匂いで花が咲いてる事によく気付きます」というが、小生は嗅覚に障害があり、そんな話を聞くと、羨ましくなる(その代わり、トイレの匂いに鈍感だったりするが、これは人に羨まれる能だろうか)。
 町中などで女性と通り過ぎて、ふと、香水なのか化粧品の香なのか、ふんわり漂ってくるのを感じる、そんな機会にも、あっても、気付かずに逃しているのだろう、きっと。

季節の草花」の表紙には、月下美人と酔芙蓉の花たちが(この酔芙蓉も素敵な語感、そして表記の印象も印象的な名の花だ)。
 サイトの中を覗いてみると、「月下美人の秘密」という頁が見つかる。
「内部を知りたくて(^^; 半分に裂いてみました。」以下、なかなか分析的で、好奇心に訴える画像が並んでいる。

 我がブログに久々登場の「黛まどか「17文字の詩」2002年7月の句」の中に、「月下美人ひとの気配に開きをり」という句が載っている。
「月下美人の蕾の近くを人が通りかかった時、ゆっくりと花が開き始めました。まるで人の気配に気づいて花開いたかのように……。」と、いつもながら、句に付す短いエッセイで来訪者の気持ちを捉えるのが上手い。
 常々書くことだが、句を嗜む人は、句を筆(ペン)で書く機会が多い(人の目に字が見られることが多い)から、字はそこそこに上手いほうがいい(小生は思いっきり下手で、我が生涯において、自分より下手な人には未だ会ったことがない)。
 同時に、鑑賞する力、そして鑑賞したこと感じたことを文章に簡潔に表現する力も必要だと思う。
 芭蕉にしろ、句の力もあるが、紀行文の語調・文調に惹かれて魅入られた人も多いはずである。

 さて、説明としては、やはり「月下美人 - Wikipedia」が詳しい。
 が、ここでは、花言葉は「はかない美、儚い恋、繊細、快楽、艶やかな美人」という点だけ、参照させてもらう。
 けれど、方々のサイトに書いてあるように、栽培はしやすい。繁殖は挿し木だし、花そのものは短命かもしれないが、植物としての月下美人は比較的強健だという。
 化粧や外見でひきつける時期は短いが、だからといって命までが短いわけではなく、結構、しぶとかったりする。これぞ、いかにも女性的なのか。

米村浩次の花の世界」の中の「月下美人」に見られる記述によると、「葉のように見えるのは実は葉ではなく、茎が葉状に変化したも(の)で、これを茎節とか葉状茎と云います。茎節はいかにも葉のように薄く、基部の茎は木化します」という。
 じゃ、葉っぱはどれなの? って聞きたくなる。

Kuwaegekka

← 桑江知子が歌った曲・「月下美人

季節の花 300」の中の「月下美人 (げっかびじん)」がまた例によって画像がいい。
「花びらは天ぷらにして食べられる」ことを教えてくれたサイトは多いし、「名前は、真夜中に美しい花をつけることから」と書いてあるのはいずこも同じ。
 が、以下の逸話はここで知ったもの:

 昭和天皇が皇太子時代の1923年に台湾を訪れたときに、「この花の名は?」と質問して隣にいた総督が「月下の美人です」と答えたことからこの名が定着した。

 あるいは、花のこと、月下美人に詳しい人なら、有名な話なのだろうか。
 小生は初耳(初見)だが。
(「長北庭園」によると、「ときの台湾総督 田 健次郎」(小学館 日本大百科全書より)となっている。田 健次郎氏は、田英夫(でん ひでお)氏の祖父である。)

 と、ここまで書いてきて、実に恥ずかしい事実を知った。自分の不明さを思い知らされる現実。
 実は、小生、「月下美人をめぐって」という雑文を三年前に書いていたのだ。
 しかも、その小文の中で、ご丁寧にも、上で紹介した月下美人と昭和天皇の逸話を引用しているではないか!
 きれいさっぱり忘れている。
 さすがに、この文を読み返して、書いたこともあったなーと、かろうじて思い出しはしたが。


月下美人花びら散らし命あり
月下美人月よりもなお儚かり

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