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2006/07/15

読書拾遺……ハイラル通信

 過日、「香月泰男と<神農>」なる記事を書いたことがある。立花隆氏著の『シベリア鎮魂歌 香月泰男の世界』(文藝春秋)を読んでいて、豊富な画像もあって楽しめたし、本書に所収となっている1970年文芸春秋刊「私のシベリヤ」のテキスト(香月著となっていた)が実は立花隆氏の手になるもの(インタビューして立花隆氏が文章に仕立てた。二人でワインをがぶ飲みしつつ、胸襟を開いての談話だったとか)だったことを知ったり、香月泰男の世界に触れることが出来た。
 改めて、香月泰男の作品を自らの目で見たいものと思っている。
 elma さんの「「香月泰男のおもちゃ箱」新潮社刊より」なる記事が、「「香月泰男のおもちゃ箱」は、彼の別の面をみることができる。子どものように喜んで作っていたという作品に谷川俊太郎さんが詩をつけたものだ」ということで、参考になる。
 
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→ 拡大できる。

 どういうタイミングなのだろうか、小生は、立花隆氏著の『シベリア鎮魂歌 香月泰男の世界』を6月末に借り出してきて、7月1日に、「2005年07月の索引(香月泰男の世界)」と題した頁で初めて記事に仕立てたのだが、7月1日付の朝日新聞の「be on Sunday」という別刷りの中で、香月泰男が特集されていたことを一昨日、知った。
 小生は、別刷り版は取り分けておいて、後で纏めて読むのが習慣だが、他の書籍類に紛れて、二週間ほども経ってからようやく目にすることになったのだ。

 特集の題名は「戦地から360通の絵手紙 香月泰男と家族 ハイラル通信」(山口・三隅)である。一面には、香月泰男の愛した久原山を左奥に、朝もやの田植えが終わった頃の田園の中を三両編成の列車が行くという写真が大きく載っている。
 丙種合格し「31歳で召集令状を受けた香月泰男は、1943年4月から2年余り、旧満州のハイラルに軍隊の営繕係として駐屯した。その間、山口県で暮らす妻、婦美子さんと3人の幼子に、絵を描いた軍事郵便はがきを毎日のように出し続けた。」(別刷り記事より)。
 これがハイラル通信と呼ばれるもの。

 香月泰男は婦美子さんと見合い結婚をしたのだが、新聞のその別刷りには、プロポーズした際のエピソードが載っていて、微笑ましい。
「結婚前に婦美子さんが「芸術家は品行が悪いから嫌い」と言うと、香月は「嫌いなら絵をやめてもいい」と答えた。だが結婚翌日から何くわぬ顔で絵を描いていたという」のだ。
 こうした想い出を婦美子さんは「夫の右手―画家・香月泰男に寄り添って」(求龍堂)にまとめたとか。

 この「戦地から360通の絵手紙 香月泰男と家族 ハイラル通信」という記事の文章が写真と相俟ってなかなか味わいがあって、そっくりそのまま転記したいが、そうもいかない。一読を薦める(文・神谷祐司/写真・山本正樹)。
 と思ったら、ネットで読めるではないか。写真も載っている:
asahi.com: 香月泰男と家族―山口・三隅 - 愛の旅人 - トラベル
 あーあ、なんだい。これだったら、このサイトへのリンクを貼っておくだけでよかった、小生が余計なことを書く必要などなかったんだ!(……。実は、この記事を書き終えてから、「ハイラル通信」という言葉でネット検索したら見つかったのである。早晩、削除されるだろうから、今のうちなので、是非、飛んでみてね)

 この記事を読んだのは一昨日だったが、「7月1日」付け朝日新聞の別刷りだと気づいたのは今日なのだった。ホント、迂闊な小生。
 こんなことをわざわざ書くのは、今日、図書館に行ったら、返却本の棚に『香月泰男の絵手紙』(小池邦夫編、二玄社)なる図録風の版の本が、これ見よがしに(?)置いてあるではないか!
 もう、小生に向って、これ、借りなよと言わんばかりである。
 小生、誰と競うわけでもないのに、慌てて小脇に抱える。
 本書『香月泰男の絵手紙』については、後日、感想を書くか(もしれない)。

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← 著者の瀬戸川 猛資氏は白血病で50歳で亡くなられている。若い! 同氏のことは小生、全く知らなかったのだが、映画(に限らない)への造詣が深く、且つ、小説も含め幅広く読み、観ていた人だった。敬愛されていたようで、「瀬戸川猛資という人のこと」や「Chanter Cine Club 第27回 「瀬戸川猛資さん」」などオマージュ風の文章がネットで散見される。惜しまれて亡くなられたのだ。
 
 今日、図書館へ行ったのは、過日、予約していた『ホーソーン短篇小説集』(岩波文庫)が届いたという連絡を受けたからである。
 某氏からパーティへの誘いがあったのだが、怠惰な小生、金曜日の営業が近年になく忙しく、一時間ほど早く仕事を切り上げたのだが、疲労困憊して、午前も午後も、それどころか、図書館での一時間ほどの滞在を終えて帰宅してからも、ロッキングチェアーでずっと寝て過ごす羽目になった(ようやく起き上がる気力が少し湧いたのは夜の八時を回った頃か。それでも、今も、体の芯に残る疲労は抜けきっていない。今にも寝ちゃいそう)。
 無精で怠惰で怠慢で、泥のような自分を感じる。
 こうしてまた世間から離れていく。

 この古い本をわざわざ予約したわけは、拙稿「ホーソーンとアメリカの闇」の中にて書いている。
 瀬戸川 猛資著の『夢想の研究―活字と映像の想像力』(創元ライブラリ)の中でホーソーンのことを褒めていたで、感化されやすい小生、食指が動いたというわけである。
 上掲の記事の中でも引用しているが、ここにも若干、転記を試みる:
ホーソーンの作品は、長編よりも短編においてその資質を十全に発揮している。代表的な短編である「若きヤング・グッドマン・ブラウン」などは、盟友メルヴィルに激賞され、またカフカを先取りしていると言われる「ウェイクフィールド」などは、20世紀のアルゼンチンの作家ボルヘスに、「文学における最高傑作の一つ」と言わしめる。また、現代アメリカの作家ポール・オースターなども、この「ウェイクフィールド」にインスパイアされて、『幽霊たち』を書き上げるなど、同世代は勿論のこと、後世にも多大な影響を与え続けている」。

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→ 高間大介/田近伸和著『進化の「謎」を探れ!  徹底対談「生命40億年史」』だが、まだ書店に並んでいないのか、ネット上の情報も乏しい。表紙を開くと、全長33メートルというスーパーサウルスの図像が載っている。ちなみに、今日のNHKテレビの「週刊こどもニュース」で、子供記者が復元されたスーパーサウルスの全身骨格体を取材するという話題があったっけ。

 今年の春には、メルヴィルの『白鯨』に深く感銘を受けた小生、「盟友メルヴィルに激賞され」となると、手を出さざるを得ないではないか。
 そのメルヴィルだが、立花隆氏著の『天皇と東大 上・下 日本帝国の生と死』(文芸春秋)や小熊 英二著『〈民主〉と〈愛国〉―戦後日本のナショナリズムと公共性』(新曜社)などの本を読むのに時間と精力を費やしたこともあり、中断していた『ピエール』を今日、また借り出してきた。
 我々の感覚からすると古風な文体であり旧弊な因習とアナクロニズムの雰囲気が濃厚、というより濃すぎるのだが、また、文体も時には耐え難いほど古臭く時に辟易してしまうこともあるのだが、それでもメルヴィルの筆力には圧倒されるものを覚えてしまっているので、中断していた箇所から読み継ぐつもりでいる。


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← 田近伸和著『未来のアトム

 高間大介/田近伸和著『進化の「謎」を探れ!  徹底対談「生命40億年史」』 (アスコム)を読む機会を得た。
 田近伸和氏というと、同氏著『未来のアトム』(アスキー刊)などの著作で有名である。
 小生も拙いながら、「田近伸和著『未来のアトム』を読了して」と題した感想文を書いたことがある。
 が、「Amazon.co.jp: 未来のアトム 本 田近 伸和」での松浦 晋也(ノンフィクションライター)の書評のほうが参考になるかも。
 ま、読み比べも一興かも。

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→ 「地球大進化」(NHKエンタープライズ)

 共著者の高間大介氏は、あの「地球大進化」を担当されたことのあるNHKの(科学畑の)チーフプロデューサーである。
 関連する記事として、「テレビ:ほ乳類VS恐竜、壮絶な進化の戦い CG駆使し検証--NHK16・17日-テレビ:MSN毎日インタラクティブ」がネットで読める。
 さらに、「NHKスペシャル 恐竜vsほ乳類 1億5千万年の戦い 第1集「巨大恐竜 繁栄のかげで」や「恐竜vsほ乳類 1億5千万年の戦い 第2集「迫りくる羽毛恐竜の脅威」」が面白い。

 今日、日曜日の夜にテレビで(二夜の予定で今日が第1集)放映されるのだ。

 あるいは、この番組の放映にターゲットを合わせて出版のタイミングが計られていたのだろうか(あくまで「進化の「謎」を探」るのがテーマであるからして、小生の憶測なのは明白なのだが…)。
[ 調べたら、幕張メッセで7月15日から9月10日まで無休で開催されている「世界の巨大恐竜博2006」に照準を合わせる形でラジオやテレビで特別番組が組まれているのだと判明。
 ネット検索してみる。「世界の巨大恐竜博2006 記念シンポジウム」などを覗くと、早速、会場を訪れた方がいることに気づく。
 そういえば、このブログにも登場する北海道大学総合博物館助手の小林快次(こばやしよしつぐ)先生による「恐竜の進化のふしぎ」と題された話(インタビュー)が今朝未明、NHKラジオで流れていたっけ。 (06/07/20 追記)]

DVD:NHKスペシャル 恐竜VSほ乳類 1億5千万年の戦い」も「2006年8月25日発売予定」とのこと。
 ちなみに、恐竜を扱った本は巷に溢れているが、故・カール・セーガン著の「『エデンの恐竜―知能の源流をたずねて』(長野 敬訳、秀潤社)は、1978年刊行と古いにも関わらず、当然、後発の研究書・啓蒙書のほうがデータ的に豊富であり訂正された知見もあるにも関わらず、今もって「恐竜モノ」ではピカイチではないかと思っている」。
 絶版になっているらしい。惜しい。一定の留保や解説を付した形で再版を切望する(小生は所蔵している)。データの新旧は訂正その他で対処できても、視野の広さ・独自さは古びたりしないのだ。
 本書で故・カール・セーガン氏はピューリッツァー賞も受賞している。

進化の「謎」を探れ!  徹底対談「生命40億年史」』 については、後日、感想文を書きたいと思っている(多分、書くつもり)。

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コメント

こんにちは、やいっちさん!

今日も面白く読ませていただきました。
香月泰男は、やはり、いいですね。軽くないのです。ジーンとくる絵です。でも、ハイラル通信は、いいですね。絵手紙で軽いタッチで書かれていますが、淡彩で、味わい深いものがありますよ。

「私の地球」持っていますよ。
カバーに記されているものを書きますね。

生きることも捨て身でかからなければならぬ。
愛することも捨て身でかからなければならぬ。
芸術を生むことも。
恋人を愛することも。

投稿: elma | 2006/07/16 08:03

香月泰男はシベリアシリーズで有名ですが、人間ですし多彩な面があるわけですね。
その意味で、奥さんの婦美子さん著である「夫の右手―画家・香月泰男に寄り添って」(求龍堂)が読みたくなっています。

絵手紙、楽しんでいます。自分でもやってみたくなるね。字も絵も苦手なんだけど。

「私の地球」の言葉、身に沁みますね。なかなか捨て身になってはできない自分には尚更。

投稿: やいっち | 2006/07/16 11:18

次に読もうと思っている本がメルヴィルなんです☆
「バートルビー」という作品で、
そのあとにいつか「白鯨」を読もうかと・・☆

投稿: ヘルミーネ☆ | 2006/07/16 12:47

ヘルミーネ☆さん、おもてなしの手料理、食べてみたいな。
次は、J.E.ラヴロック『地球生命圏 ガイアの科学』ですか。これも興味深い本ですね。ファンタジック!
読みかけの本が何冊かあるので、なかなか取り掛かれないけれど、暑い中、とにかくメルヴィルに挑戦です。
『白鯨』は、若い頃、無理やり読んだけど、全く、つまらなかったけど、この春に読んで感激。まさに世界的な文学作品だと実感しました。
なので、『ピエール』を読むのは、その流れなのです。

投稿: やいっち | 2006/07/16 18:25

やいっちさん、こん○○は。TBありがとうございます。
このところ恐竜展、毎年どこかで開催されているんですよ。恐竜は中国などで、新しいものがどんどん発見されているので、毎回毎回新しい知見が展示されています。ファンとしては目が離せません。
やいっちさんも出かけられてみては・・・。

投稿: じゅんぴん | 2006/07/20 22:11

じゅんぴんさん、TBだけして失礼しました。
ラジオでの小林氏の話でもありましたけど、近年の恐竜の研究の進展ぶりは凄いようですね。特に羽毛のある恐竜など、鳥と恐竜の関係が実証された点で、実に興味深い(小生は、素人の勝手さで、たとえば羽根を毟られたニワトリを見て、こいつ、恐竜の子孫に違いないってガキの頃、直感していました)。
今日も恐竜展の記事が載っていて、面白かった。
興味深い記事、これからも楽しみにしています。

投稿: やいっち | 2006/07/20 22:46

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