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2006/07/28

読書拾遺…これから読む本

 高間大介/田近伸和両氏著『進化の「謎」を探れ! 徹底対談「生命40億年史」』 (アスコム)を過日、読了したが、対談の中で興味深い本のことを思い出させてくれた。
 それは、アンドリュー・パーカー著『眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く』(渡辺 政隆/今西 康子訳、草思社)である。

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 この本の存在は知っていた。刊行して間もない頃、新聞の書評欄で本書が扱われていて、読みたいと思っていたからである。
 が、読みたい本は他にもあるし、雑事に紛れて失念してしまっていた。
 その本のことを上掲の本が思い出させてくれたというわけである。
「進化論の祖ダーウィンが終生悩んだ謎が二つある」として、「一つは、なぜカンブリア紀以前の地層から化石が見つからないのか? もう一つは、眼という「完璧にして複雑な器官」が進化によって説明できるのか? 本書によって、この二つの問いがふいにつながり、眼の誕生がもたらした壮大な進化ドラマが見えてきた」など、以下、出版社側による内容説明が興味深い。
 眼はその存在の恩恵にあまりに深く浴していて、有り難味が見えなくなっているほどである。
 光あれ、と、天(か何処か)で誰かが命じたのだろうか、その光を受容する器官がいつしか生まれた。
 当たり前のようで、不可思議極まる。
 眼の誕生の現場に立ち会った気分にホンの少しでもなれたらと、読むのが楽しみである。

 以前から読みたいと思っていたが、いざ、読もうと思うと、先に借り出されていて、なかなか手にすることのできなかった、半藤 一利氏著の『ノモンハンの夏』 (文藝春秋、文春文庫)をようやく借り出すことができた。
 図書館へ行った際、ほとんど諦め半分で昭和史のコーナーへ足を運んだら(いつも、そこは覗くのだが)、あったー! なのだった。
独り善がりな参謀やトップのために一般の兵士が犬死していくという図式は、多くの敗け戦に見られるが、その最も顕著な例の一つ<ノモンハン戦>を迫真の筆致で描く。著者はこの戦闘の実質の責任者であり、さらに日本を太平洋戦争に引きずり込むのにも加担した人物と戦後会うのだが(何と国会議員!)それを述懐して、<絶対悪>と吐き捨てるように書いている。冷静な記述に撤する著者が記した、最も痛切な言葉の一つだろう。暴走する陸軍や関東軍を当時のマスコミや右翼、若手外交官から国民までもが支持していたことも詳述されていて、時流の闇の深さを痛感させる。(守屋淳)」といった内容説明がされている。

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 最近、立花隆氏著の『シベリア鎮魂歌 香月泰男の世界』(文藝春秋)や、同じく立花隆氏著の『天皇と東大 上・下 日本帝国の生と死』(文芸春秋)小熊 英二著『〈民主〉と〈愛国〉―戦後日本のナショナリズムと公共性』(新曜社)など、明治以降の日本の世相を検証するような本を立て続けに読んできた中、ある意味、旧日本軍(陸軍)の一番、暗愚な戦いの状況を探る本書は、どうしても読みたかったのである。
 漱石本で飄逸な、それでいて独自の読みを披露してくれる半藤氏だが、こうしたきっちりした仕事もされているのだ。

 最近、昭和天皇の発言メモや新たな資料が出てきたりして、戦後60年を経て、日本もようやく本格的にあの15年戦争の反省をする時期に来たのかなという気もする。
 いずれにしても、過去を検証する営みは自分なりに細々ながらも続けていきたい。

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 坂部 恵著の『「ふれる」ことの哲学  ―― 人称的世界とその根底 ――』(岩波書店)を読み始めている。
「「ふれる」こと-主客の区別を超えた最も原初的な経験-の分析を手掛かりに,カントをはじめ,新たな視点からルソー,ニーチェ,ベルグソンなどの思考空間を読み解く試み.真のリアリティにふれる思考とは何か.」といった内容説明が出版社サイトにはされている。
 本書を読んでいて、懐かしい本の題名が出てきた。
 それは、同じく坂部 恵著の『理性の不安―カント哲学の生成と構造』(勁草書房)である。

「理性批判」の哲学者であり、「人間学」としての哲学の提唱者でもあるカントの思考の根底には、むしろ、近世的「人間」主体と、また、近世的といわず西欧の伝統的「理性」一般との存立をおびやかし、その解体と根本的な編成変えとをうながす無定形な不安が、そうおもってみれば、すでにはっきりとうごめきはじめており、それが、また、思考のかくされた究極の原動力ともなっていたのではないか。一言でいえば、およそこのような見通しのもとに、これまで比較的目を向けられることのなかったカント哲学のかくされた基層に、ともかくも一つのさぐりを入れてみること、これが本書の基本的なねらいにほかならない」と内容説明にはあるが、『「ふれる」ことの哲学  ―― 人称的世界とその根底 ――』を読んでいて、何処かで聞いたような話だなと思ったら、なんだ、学生時代に読んだ『理性の不安』とテーマが重なっていていたんだと気づいた。
 『理性の不安』という本は、何処か近寄り難いイメージのあるカントを当時の小生にも馴染めるような捉え方で説いていて、人間味ある、カントの抱える不安に気づかせてくれ、親近感さえ抱かせてくれたのだった。

 一人きりで暮らす日々の中、そうか、カントでさえもそんな揺れて止まない人間味ある人だったのだと、今思えば幼稚な読み方だったのだろうけど、救われたような気にさえしたのだった。
 坂部 恵氏というと、小生には未だに『理性の不安』と『仮面の解釈学』(東京大学出版会)なのである。
 この両書は、哲学を自分なりに考える、自分なりの表現スタイルで書くということを意識させてくれた本だったという意味でも、忘れ難い。大学に入って四年目も終わり頃の春のことだったろうか。

 これも、読み出して間もない本のこと。
 過日、図書館へ行った際、何故か新刊本のコーナーに、これみよがしに(小生の関心という意味で。興味のない人は素通りするだけだろうが、小生はというと、この本の表紙が眼に飛び込んできた!)、この本が鎮座していたのだった。
 それは、ジュール・ヴェルヌ著の『月世界旅行―詳注版』(高山 宏訳、W.J. ミラー注、ちくま文庫)である。

 えっ、今更、ジュール・ヴェルヌの『月世界旅行』?!
 そんなのガキの頃にとっくに卒業している本じゃない、が普通の反応だろうか。
 が、さにあらずなのである。
 実際、小生だって、小学校の終わり頃には読んでいたと思う。何しろ小生は推理小説派ではなく、SF小説派なので、近所の貸し本屋さんから、漫画の本か、さもなければSF、あるいは冒険小説の類いを毎日のように借りていた奴なのだ。

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← 大人のヴェルヌとある。だからってHな内容を期待しちゃダメ。そんな本なら他に山ほどあるって。
 
 ブックレビューには、「時は南北戦争後。大義名分を失った武器マニア「大砲クラブ」の面々が途方もないことを思いつく。「月に砲弾を!」資金集めに誘致合戦、嫌がらせ等あれやこれやの末、巨大砲が完成する。そこへ、砲弾に乗り込もうという無鉄砲なフランス人が現れた―。この古典的SFが、これほどアイロニカルな文明批評だったとは。物理学、歴史から精神分析まで、該博な注が多層な読みを可能にし、まさに現代の物語として蘇らせる」とある。
 そう、本書『月世界旅行―詳注版』は、まさにW.J. ミラー氏による詳注版がミソなのである。

 まだ、冒頭の数十頁を読んだだけなのだが、ガキの頃の恐らくは簡略版とはまるで印象が違う。まさに「この古典的SFが、これほどアイロニカルな文明批評だったとは」ということをつくづくと感じさせられている。
 とにかく、子供の頃に読んだものは、ジュール・ヴェルヌの本ではないと思っていい。たっぷりの注釈を読むのが、本文に劣らず楽しい。
 ジュール・ヴェルヌ自身がアイロニカルな人間で、親族一堂に嫌われたという。唯一、彼の息子だけが彼の理解者だったようだ(そのことに晩年になって気づく…)。
 図書館で手にした際には、今更とも思ったが、借りるかどうするか、図書館の奥の席に腰掛けて本書の性格を知って、これは読み直さないといけないと、強く直感したのだった。

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 小生は今、田舎にいる。帰省する際にいつも居住する部屋の中、机の上のパソコンに向っている。
 列車の中では、上掲のジュール・ヴェルヌ著の『月世界旅行―詳注版』を読むつもりなのだが(実際、往路では大分、列車中で眠ってしまって期待ほどは読めなかったが、それでも百頁ほど読めた)、自宅では夜中などに読む、他の本をバッグにしのばせた。
 それは、折口 信夫著『初稿・死者の書』(安藤 礼二編集、国書刊行会)である。

 誰にも、長年、読みたい読みたいと思いつつ、何かしらタイミングが悪いのか巡り会わせなのか、読めないままに月日が流れ、そのうち、読んだ気になってしまったり、もう、いまさら手を出すのも億劫かなという本があるのではなかろうか。
 小生には、この本がその筆頭(のうちの一冊)である。
 本書に付いて、小生ごときが説明する必要など、ないだろう。こちらではいろいろあって忙しく、感想も書けないだろうが、読むのが楽しみである。

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