2005年07月の索引(香月泰男の世界)
恒例となった月初めに提供する昨年同月の索引・目次である。
つまり、毎度、断っているが、昨年の七月の分。念を押すが今年の七月の目次ではない。今月、これから何を書いていくか、神様はともかく小生には皆目、見当も付かない。
例によって、「表題」(主なテーマ 日付)である。
それにしても、今年も半分が終わってしまって、残すところ、半年。半分まではそれなりに長いように感じられることもあるが、残りが半分となると、減るのが目に見えるような気がする。梅雨が終わったら暑い(はずの)夏。なんとか乗り切ったとして、秋風が身に沁みる、そうして気が付くと、今年も終わりだと嘆くわけだ。
さすがに人生五十年以上も生きると、このパターンに慣れる。
← 今日、借り出してきた瀬戸川 猛資著の『夢想の研究―活字と映像の想像力』(創元ライブラリ)は、「ミステリマガジン」に連載されていたもの。映画と本とをクロスオーバーだって。瀬戸川氏は既に亡くなられている。車中で読むのが楽しみ!
慣れてはいかんのだろうが、ちょっと例えが間違っていることを承知で言うと、オッカムの剃刀であろうとする。
「オッカムの剃刀( Occam's Razor)とは、14世紀の哲学者・神学者のオッカムが多用したことで有名な哲学原理で、 「ある事柄を説明するのに、必要以上の仮説を立ててはならない」というものである」が、人生を恙無く、憂さ辛さ面倒さを最小にして生きるのに、不必要な波風を立てることなく、人生の荒波にもあくまで無抵抗勢力で柳に風と生きるべきだということ。
曲がりなりにも哲学を齧ったものが、こんなふうに惰弱の徒に成り果てるとは、嘆かわしい限りである。
なんちゃって。ま、ボチボチ、のんびり愉しみつつやっていく。毎日、書くってのも結構な仕事なのだ。
「出発は遂に訪れず…廃仏毀釈」(廃仏毀釈と教育基本法 2005/07/01)
「『太陽』グランプリを受賞!」(ロシア映画「太陽」 2005/07/01)
「青柳いづみこ、ドビュッシーを語る」(ドビュッシーとオカルトと 2005/07/02)
「紫陽花のこと…七変化」(手毬花、額の花 2005/07/03)
「牛込パレードへ」(レポート 2005/07/04)
「ハンモック…ロッキングチェアー」(運転手は石ころ 2005/07/05)
「牛込パレード(2)」(レポート 2005/07/06)
「水の綾…句作一周年」(短冊の願いを読まれて恥を掻き 2005/07/07)
「ヒースの丘」(イギリスの風景 2005/07/08)
「水中花…酒中花…句作一周年」(汗駄句仙柳徒然 2005/07/09)
「廃仏毀釈補遺」(関秀夫著『博物館の誕生―町田久成と東京帝室博物館』 2005/07/10)
ようやく立花隆氏著の『天皇と東大 上・下 日本帝国の生と死』(文芸春秋)を読了。面白かったが、上下巻で1400頁余りと、かなり読み応えがあった。次はこれまた大部(900頁)の小熊 英二著『〈民主〉と〈愛国〉―戦後日本のナショナリズムと公共性』(新曜社)にようやく本腰を入れることができる。
一方、立花隆氏著の『シベリア鎮魂歌 香月泰男の世界』(文藝春秋)を今日から読み始めることができた。『天皇と東大』に引き続いて、立花隆氏の本だが、まあ、香月泰男の世界に没入するつもりで、豊富な挿画も含め、ゆっくり愉しみたい。
「香月泰男美術館」は、生地である山口県長門市の三隅にあるとか。香月泰男のシベリア・シリーズ全作品を一堂に展覧したいが、予算の関係などがあって、叶わないと本書に書いてあったが(また、その全体を通してみないとシリーズの醍醐味は分からないとも)、さて今もそうなのだろうか。
本書『シベリア鎮魂歌 香月泰男の世界』には、1970年文芸春秋刊「私のシベリヤ」のテキストが載っている。刊行当時は香月泰男著だったのだが、実は、立花隆氏がゴーストライターだったのだとか。同氏が29歳、学生だった頃の仕事なのだとか。立花氏が香月氏のところへ赴き、ワインを二人でがぶ飲みしつつ、インタビューをして、意気投合、口の軽くない香月氏の口をほぐして談を得、書き上げたのだという。
今はまだ感想文を書くような段階でもない。その代わり、今は、「三田洋のWeb site」中の「わたしが師事した画家 香月泰男」を紹介しておく。
小生の下手な感想文などよりずっと味わい深い。
「石綿…火浣布」(アスベスト問題 2005/07/11)
「御来迎…ブロッケン」(最初で最後の富士登山 2005/07/12)
「長嶋茂雄さんのこと」(誰が貴方をそう変えた 2005/07/13)
「ジュール・ヴェルヌ…オリエント」(ジュール・ヴェルヌ没後百年 2005/07/14)
「夜光虫…二つの顔」(夜光虫は獰猛 2005/07/15)
「ラムネ…サイダー…アイスコーヒー」(粉末ジュース 2005/07/16)
「栃と餅…スローライフ」(野本寛一著『栃と餅』 2005/07/17)
「数のこと」(素数のこと 2005/07/18)
香月泰男も体験した過酷なシベリア抑留のことに一言、触れておかざるをえない。
「シベリア抑留 - Wikipedia」によると、冒頭に、「シベリア抑留(シベリアよくりゅう)とは、第二次世界大戦(太平洋戦争・大東亜戦争)末期にソビエト連邦軍の満州侵攻によって生じた日本人捕虜(民間人、当時日本国籍者であった朝鮮人などを含む)を、主にシベリアやその他の地域に抑留し、強制労働に使役したことを指す。」とある。
以下、「1 概要」 の各項をざっとでも目を通してもらいたい。
その上で最後の「1.6 犠牲者数 」項から一部を引用する:
「従来死者は約6万人とされてきたが少なすぎるという指摘があった。近年、ソ連崩壊後の資料公開によって実態が明らかになりつつあり、終戦時、ソ連の占領した満州、樺太、千島には軍民あわせ約272万6千人の日本人がいたが、このうち約107万人が終戦後シベリアやソ連各地に送られ強制労働させられたと見られている。アメリカの研究者ウイリアム・ニンモ著「検証ーシベリア抑留」によれば、確認済みの死者は25万4千人、行方不明・推定死亡者は9万3千名で、事実上、約34万人の日本人が死亡したという。また1945年から1949年までの4年間だけで、ソ連での日本人捕虜の死亡者は、37万4041人にのぼるという調査結果もある。」
数十万人の死亡者があったことを銘記しておくべきだろう。
その上で、末尾近くの、「シベリア抑留に遭った著名人」という項に注目。
芸術家に限っても、香月泰男 (洋画家)を初め、横山操 (日本画家)、佐藤忠良(彫刻家)らがいるわけだ。
吉田正(作曲家)の作曲した「異国の丘」(作詞:増田 幸治 /補詞:佐伯 孝夫)に励まされ、あるいは涙した人も数知れない。
小生など、全く、そんな体験などあるはずもないのだが、この歌を聴くと、妙に胸がジンと来てしまう。
著作権の問題があるのだが、敢えて3番の歌詞を転記させてもらう:
今日も昨日も異国の丘に
重い雪空日がうすい
倒れちゃならない祖国の土に
たどりつくまでその日まで
「ヨットの帆ならぬ」(バイククルージングと風 2005/07/21)
「端居…仮住まい」(三尺寝 2005/07/22)
「黒百合…悲劇の花」(佐々成政とクロユリ伝説 2005/07/23)
「麦茶…喫茶去」(禅と茶と 2005/07/24)
「夏座敷…風」(持病の睡眠時無呼吸症候群 2005/07/25)
「飯饐る…校舎」(おにぎりに梅干 2005/07/26)
「雲の峰(入道雲)…スペースシャトル」(リチャード・P・ファインマンによるスペースシャトル「チャレンジャー号」事故少数派調査報告 2005/07/27)
「「夏の夢」は季語ではない」(おまえはケダモノだ、ヴィスコヴィッツ 2005/07/28)
「チョウよトンボよクジラよ」(『万葉集』には、蝶(チョウ)は登場しない 2005/07/29)
「環境考古学…勘違い?!」(畑作牧畜系の文明と稲作漁撈系の文明 2005/07/30)
「鬼灯市…俳句事始」(さだまさし「ほおずき」 2005/07/31)
「有刺鉄線を目にするたびにシベリアがよみがえる。もっとシベリアを描き続けなければならないと思う。シベリアにいる間中、有刺鉄線は私たちの心を刺しつづけた。どんなに待遇がよくなろうと、仕事が楽になろうと、それある限り私たちは捕虜であることを実感させられた。多分私は今でも捕われの人なのだ。」
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コメント
こんにちは!
すごいですね。まさに一日1冊の読書。それも多岐にわたるジャンル!
私も見習いたいですが、とても無理・・・かも。
所感を楽しみにしております。
最後の「有刺鉄線の話」私も感銘いたしました。
リンク貼らせていただいてよろしいでしょうか?
投稿: elma | 2006/07/02 13:09
elmaさん、一日一冊なんて無理ですよ。週に三日は通勤時間などを含めて24時間の仕事外出もあるし。
せいぜい週に三冊。読書とは他人の頭で考えることと、昔の哲人が言ったとか。
小生は、まさにそれを地で行っているようなものです(といいつつ、それも実は難しい!)。
香月泰男の偉業。作品群。実に素晴らしいです。高島野十郎といい、香月泰男といい、凄い仕事をした人がいた…、それだけで胸が熱くなる。
リンク、大歓迎ですよ。
投稿: やいっち | 2006/07/02 20:03