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2006/06/19

手塚治虫作「雨降り小僧」

 日本対クロアチア戦、惜しかったね。負けなくてよかったけど、勝つチャンスもあった!

 坪内 稔典氏著『季語集』(岩波新書 新赤版)を読んでいたら、懐かしい漫画に出会った。
 再会というと大袈裟かもしれない。内容を読んで、ああ、そんな話もあったっけ、という程度なのだし。
『季語集』の「雨ふり小僧」なる項の冒頭には、「雨が続いてなんとなく憂鬱な日には、手塚治虫の漫画『雨ふり小僧』を読むとよい。心が晴れる」とある。

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→ 手塚治虫『雨ふり小僧』(1975/09 「月刊少年ジャンプ」(集英社)読切) (画像は「Tezuka Osamu @World -雨ふり小僧-」より。ホームページ:「TEZUKA OSAMU @ WORLD FOOTER」) 手塚治虫さん(について)のホームページ:「Tezuka Osamu @World -トップページ-

 内容は、「雨降り小僧 - Wikipedia」によると:
 

戦後のある時期の日本。 おばけの雨降り小僧は、いじめられっ子の少年と仲良くなり、その願いを聞き入れてやる。その見返りに、雨降り小僧は少年と同じ長靴を要求するが、少年は突然の引越しで約束を果たせなくなる。それから数十年たって、かつての少年は大人になり、急に約束を思い出した。あわてて雨降り小僧の下に駆けつけると、小僧はボロボロになりながらも少年を信じて待っていた。そして……。

 おばけの雨降り小僧がいじめられっ子のモウ太に聞いてやった願いがどんなものか分からないと、興味が半減する。

「雨ふり小僧はからかさを被った少年の妖怪で、自分のまわりにいつも雨を降らせている」。モウ太の分教場が火事になったとき、雨ふり小僧に火事を消してくれ、と頼む」のだ。
 が、「雨ふり小僧は燃えやすい油紙でできており、火事を消すのは危険だった。だが、モウ太がブーツをくれると約束したので、危険を冒して雨を降らせた」のである。
 モウ太は、ただ約束を忘れたわけではない。町へ引っ越すことになり、そのどさくさで忘れたのだった。
 約束を「不意に思い出したのは四〇年後、娘に水遊び用のブーツをせがまれたときだった」。モウ太はブーツを持って村へかけつける。雨ふり小僧は橋の下に待っていた。ボロボロになって」。

 こうなると、モウ太がちょっと…ということになるが、元はというと、雨ふり小僧が「モウ太のはいている長靴を欲しが」ったのが話の切っ掛けのようなものだ。そして「「長靴をくれたら、3つの願いをかなえてあげる」と言う彼に、モウ太は、「町の子も持っていない珍しい宝物が欲しい」 「本校の奴らをこらしめてくれ」と頼む」わけで、その最後の願いが火事を消してくれ、なのである。
 しかも、雨ふり小僧は妖怪だというが、実は、捨てられた古い傘から生まれたのだった!(「手塚治虫傑作短編紹介」参照)。
 となると、一番の眼目は、実は、妖怪の正体というのは、「捨てられた古い傘」だという点にあるのかもしれない。勿体無いがキーワードになっている今日、この物語は改めて脚光を浴びるやもしれない。
 実際、この物語が原作となった劇が、劇団民話芸術座その他などで盛んに子供相手に披露されているようだし。
 あるいは、今や、原作(漫画)より劇のほうが有名になっているのかも。

 今更ここで手塚治虫についてその仕事などを説明する必要などないだろう。「手塚治虫 - Wikipedia」に任せるばかりだ。
 ただ、彼の仕事や存在の大きさは、これからもっともっと気づかれ語られていくはずだ。
 さて、肝心の「雨ふり小僧」は1975年の作で(「月刊少年ジャンプ」にて公表された)、小生が学生時代。小学校の時から漫画の本は目に付く限り読み漁ってきたし(あるいは保育所時代からかもしれない。我が家に「のらくろ」の特集本が束になっていて、小生は幾度も繰り返し読んだ。一体、何歳の頃から置いてあったのか、分からない)、学生になっても、社会人になっても、食堂を選ぶ基準のひとつは美味さや量も、値段もあるが、なんといっても目当ての漫画の本が置いてあるかどうかだった。
 そんな小生だからこそ、学生時代にも読み逃さなかったのだろう。

 手塚治虫漫画のファンは数知れずいるだろうし、膨大な数にのぼる作品群の中でも、好きな漫画というと、「鉄腕アトム」「火の鳥」「ブラック・ジャック」「マグマ大使」「リボンの騎士」「ジャングル大帝」とそれぞれ挙げる作品はいろいろあるだろうが、その中でも、この「雨ふり小僧」を印象的だと語る人は、少なからずいる。
Earth Dreaming~ガラスの地球を救え~ 3月5日 石井竜也さん」(ホスト役は手塚治虫の長女である手塚るみ子氏)を読むと、石井氏もそうだし、落語家の立川談志師匠も一番好きな手塚漫画として「雨降り小僧」を挙げている。

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← 手塚治虫『新寳島』(原作:酒井七馬 1947/04/01 単行本 育英出版) (画像は「Tezuka Osamu @World -新寳島-」より。ホームページ:「TEZUKA OSAMU @ WORLD FOOTER」) 「手塚治虫の単行本デビュー作」だという。小生が生れる前の作品なのだが、何故か懐かしくてならない漫画だ。一体、いつ、どんな形で読んだのだろう。

TezukaOsamu@Book 「雨ふり小僧」 『タイガーブックス』3巻 所収」なる頁を覗くと、より詳しく「雨ふり小僧」の内容や周辺を知ることが出来る。
 この頁によると、「雨ふり小僧」は、柳田国男氏か誰かの民話をもとに手塚流の味付けをされた作品だという。

 漫画のタッチや登場人物(キャラクター)を知るには、「Tezuka Osamu @World -雨ふり小僧-」がいい。ところで、この頁には、「雨ふり小僧というのは、日本の伝説や民話に登場する妖怪ではなく、手塚治虫が考えたオリジナルの妖怪です」と書いてある。
 
 一体、どっちが正しいのか。それとも誰かの民話をもとに手塚流の味付けをほどこされているのであり、キャラクターとしての妖怪「雨ふり小僧」そのものは手塚治虫が考え出したということか。
 この辺は、申し訳ないが、はっきりしない。
 ちなみに、「雨ふり小僧」なる妖怪は、水木しげるワールドにも登場する。

 肝心なことを書き忘れていた。
 坪内 稔典氏著『季語集』(岩波新書 新赤版)にて、「雨ふり小僧」の項が設けられているのは、この言葉が季語(「夏・生活、行事」)だからである。
 実際、例句が掲げられている:
 

 虹は約束雨ふり小僧やって来る   中居由美
 膝抱え雨ふり小僧は素足かな    津田このみ

 以下は小生の蛇足:

 虹は約束雨ふり小僧追いかけて
 膝抱え雨ふり小僧はズブ濡れさ    
 橋の下雨ふり小僧は待ちぼうけ    
 夢の島雨ふり小僧で満員だ    

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コメント

「雨降り小僧」は、思い出しただけで泣きそうになってしまう作品。
心が晴れる、というよりは、むしろ切ない。
ちなみにアジサイの語源は、「集(あづ)」「真(さ)」「藍(あい)」と言われている、と今朝の毎日新聞にありました。
藍を集めた花。いかにも。

投稿: 志治美世子 | 2006/06/19 09:22

やはり、親しまれている方が(ネット上とはいえ)身近にいるんですね。
アジサイの語源情報、ありがとう。改めて調べなおしてみます。
AERAの記事、やっと読めました! 憂い経験でしたね。小生にも違う性質だけど、お医者さんで嫌な体験がある。いつか、書くかな。

投稿: やいっち | 2006/06/19 09:36

 「雨降り小僧」の話し、初めて知りました。

 なんか、切ないですね。
 どちらも悪くないから余計かもしれないし、少年を信じて四十年も待っていた「雨降り小僧」の気持ちがとても綺麗だからかもしれません。

 なんか、ほんと、せつないなぁ・・・・・。

投稿: RKROOM | 2006/06/19 22:36

RKROOM さん、切ない話ですね。
でも、現実には結構、あるかもしれないとも思う。目立たないだけで。
スタンドプレーしか目に付かないけど、多くの人は地道に頑張っている。その頑張りは多くは報われないし評価もされない。そんなもの、当たり前ジャンと思われているのか…。
でも、地味な仕事や人目に付かない形で優しさを示している人は想像以上に多いのだと小生は根拠もなく信じています。
頑張って、頑張って、最後は森の奥で朽木の倒れるように静かにこの世から去っていく。
その本当の偉大さや優しさに気づくのは、なくなってから、随分と経ってから。それとも、最後まで気づかれないのかも。
評価も励ましも受けないでコツコツと。
でも、自分が納得いくようにやっていくしかない。そんな人、多いのだと思われませんか。

投稿: やいっち | 2006/06/20 03:29

雨の日が続くせいか、この小文へのアクセスが急増している。
やはり、手塚治虫(作の「雨降り小僧」)は人気あるんだね。

投稿: やいっち | 2007/07/14 22:25

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