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2006/05/07

タクシー規制緩和の見直し

 今年に入って、一度ならず二度までもテレビやラジオでタクシーについて、作家の堺屋太一氏の意見を聞くことが出来た。
 コメンテーター(評論家)として明快な(つまり小生にも理解が及ぶ)簡潔な意見を述べてくれるので、それなりに好感を抱いている。
 とにかく、小難しい理屈を捏ねないのが助かる。
 タクシーについての意見も、明快なものだった。
 同時に、その意見を聞いて、なるほど、日本経済全般については小生の理解力は及ばないものの、タクシー業界から観た規制緩和の意味合いと言うものがどんなものか、実に良く分かった。
 規制を緩和して規制に胡坐をかいている古い業態のものは退出願い、新しい意欲ある企業家が挑戦しやすくする、そんな土壌を作る。
 分かるような分からないような。
 が、タクシーについては、堺屋太一氏の意見によると、規制緩和によりタクシー業界は、以後、定年を迎えた(団塊の世代)やリストラされた負け組みの人たちの受け皿になっているというのだ。
 定年を迎えた世代については、年金を受け取っているので、タクシーはアルバイト感覚で済むのだとも言っていた。だから、タクシーで何十万も稼ぐ必要がないのだとも。

 なんだ、そのために規制緩和したのか。ドライバーのためでも、会社や業界のためでもなく、それどころか、お客さんのためでもなくて、これから定年を迎える段階の世代のためだったのか?!

 まあ、それは言い過ぎだとしても(でも、実際に団塊の世代など定年後の年代の方たちの受け皿となる業界に変わったと堺屋太一氏はテレビやラジオで言っていた)、規制緩和の眼目の大きな一つはそこにあったのだろうと受けとめざるを得ない。

 規制を緩和して新しい経営者が以前に比して格段に少ない台数の所有でタクシー会社を興し、業界に参入しやすくる、その結果、タクシーの台数が増え、街中で待たずにタクシーに乗れる機会が増えるし、料金についても規制緩和の結果、様々な料金設定が可能になる。
 要は台数を増やして、且つ料金設定も自由になることで、料金が安くなるというのだ。
 実際、大阪のタクシー戦争が典型だろうが、仙台でも、そして東京でも台数が急激に増え、料金設定も複数あり(値段も下がり)、規制緩和の狙いはズバリ的中したということになるのかもしれない。
 堺屋太一氏に限らず、団塊の世代の定年がいよいよ迫っていることの抱える問題・課題は多いし大きいことを多くの評者が指摘している。年金問題(年金の受給権限者が急増する)、退職金問題(一度に退職金の支払いが必要となる)、医療の問題、介護。

 その意味で、タクシーの台数が増える、タクシー会社が増えるとは、つまりタクシードライバーを求める会社も増えるし、タクシードライバーになりたい方の受け皿も増えるということだ。
 何もかも、狙い通りで、ほくそ笑んでいるということか。
 
 けれど、ここにはタクシードライバーの安寧を、翻ってはタクシーに乗られる方の安全・安寧という視点が完全に欠落している。
 タクシーの規制緩和が進んだけれど、規制緩和によってタクシーのお客さんが増えたわけでもないし、横ばいか減少傾向にある限られたお客さん(の数)というパイの奪い合いが過激化しているだけである。
 タクシー会社はドライバーを多く抱えれば、一人当たりの売り上げが少なくても、一人当たりのドライバーの売り上げからの会社の取り分を確保しておけば、とりあえずは現金収入も安泰だし、当面の経営に支障は生じない。
 悲しいかな、タクシー会社とドライバーとの利害の齟齬が生じてしまっている。時に亀裂にまで至ったりする。
 ちょっとした事故でも修理費の一部を運転手に請求する、事故が警察の扱いになると困るので示談に持ち込もうとするが、となると、示談の費用も相当程度運転手に負担させる、云々。
 断っておくが、経営者側が一方的に悪いとかという問題ではなく、経営側とドライバー側の利害が一致しづらくなってきつつあるという点を銘記してもらいたいだけだ。
 実際、せめて車内の環境を良くするため空気清浄機を新型化したり、ウイットネス装置を設置したり、会社によっては一定の経費を運転手が負担することで、高級車を用意したり、カーナビやETCも当然のように設置したり(さらに会社によっては法に触れることを覚悟の上で運転手の労働時間を増やしたり)、タクシーチケットで乗ってくれる会社を営業で増やしたり、などなど、可能な限りの工夫をしているのである。

 小生について言うと、運転手になって10年余りだが、最初の数年は地理にも不案内だったにも関わらず、とにかく流しに徹してやっていた。
 というより何処かの企業とかホテルとか駅に付けるまでもなく、狙い目の場所で車を走らせていたら、次々にお客さんを見つけることができた…、それどころかトイレや食事に行きたくでも、お客さんに見つけられてしまい、回送表示にでもしないと休めなかったのである。
 それが、97年8月から始まった橋本龍太郎不況(その年の4月に行われた減税の廃止、消費税のアップなどなどの結果が表面化したのが8月だった。実際は、財務省(旧大蔵省)不況というべきだろう。財務省当局の言いなりで政策を決定したツケが国民に、国に回ってきたのだ)で、一気に流しの営業が不調となった。
 その後、更に既に不況に突入していると言うのに、タクシー業界の規制緩和が開始され、ドンドン業界への新規参入が始まった。料金の多様化も始まったのは言うまでもない。
 で、97年7月以前の売り上げを100としたら、98年の1月は50まで落ち込んだ。
 その後、少しは持ち直したものの、60から良くて70ほどだろうか。
 つまり、頑張っても3割は減ったわけである。
 それも、法的に許される労働時間を目一杯使って7割であって、97年7月までは、結構、早退したり有給を取ったりしていたのだ。その上での100に対し、目一杯働いて今の70なのである。

 仕事が引けた日は、精根尽き果てて、何もする気力・余力が湧かない。ほとんど寝たきりの生活に終始している。経済的に不如意だし、出かける気にもならない。
 これは、小生自身の体力が衰えている側面もあるが、これとて、97年までは週に一度はプール通いすることができたから、体力も健康面も自分なりに維持できていたのであって、これが現下の健康法はというと、ひたすら寝るだけなのである。

 朝日新聞(5日朝刊)に「便利さと安心の両立を」という記事が社説の欄に載っていた。
 規制緩和で一定の効果があったが、その負の面が目立っているという主旨の内容だった。
「信用調査機関の東京商工リサーチは、業界はなお増車が続くと分析する。会社はそれなりにもうかる構造だからだ。そのしわ寄せが運転手に集まる。」という。
 さらに、「交通事故も気になる。タクシーなど事業用乗用車による人身事故は、この10年で48%も増えたという統計もある。」というのだ。
 
 小生も記憶にあるのだが、最低賃金の保証や労働時間の厳守は自由化の前提だったはずだ。そのルールを厳格に守っている、あるいは当局は会社に守らせているのだろうか(小生の会社は結構、厳格である)。
 健康面への目配りも大切だが、健康を保てる労働環境であるかどうかは、ここまで構造不況だと一会社レベルではどうにもならない側面があるのではないか。
 事故を頻繁に起こす運転手、交通違反を何度も犯す運転手は、プロのドライバーとして失格のはずだから、何処かの会社を首になったら、他のタクシー会社が引き取るというのは、変な話だ。

 業界全体としての取り組みも大事だろう。規制緩和がすんなり法的に政治的に認められてしまったのも、規制に安住していた面があったと言われても仕方がないのではないか(労働組合潰しという政治的意図もあったようだ)。
 未だに、基本料金に留まる時だと、お客さんが「近場で申し訳ないけど」などと、エクスキューズを言って、申し訳なさそうに乗ってくることがしばしばである。特に雨などの時。乗りたくはないが、雨だから仕方ない、でも、近場、ああ、近場だと運転者はいい顔しないなー……。
 長年の業界の近場の客を大切にしなかったツケが回っているのかもしれない。長距離のお客さんも歓迎だが、今は乗ってもらうことが先決の時代になっていることが、業界の宣伝も足りなくて(あるいは運転手側の意識も旧態依然で)、お客さんの側に周知されていないのではなかろうか。

 それでも、規制緩和の負の面が目立ちすぎていると思う。
 あるいはデータがもっと表に出たら、タクシー規制緩和は実は失敗だったという結論になるのでは。当局もそろそろ気づき始めているのではないのか。

 会社で毎月のように病気で瀬線離脱される方が出てくる。事故の報告を毎朝、聞かされる。料金が下がったことで同じだけ働いても従来よりその分、営業収入が減るのだから、疲れきった体に鞭打って働いているのだ。病気がちになるのも無理からぬ面がある。競争が激化して危ない運転を余儀なくされ、その結果事故が増えるのも充分予想されたはずなのだ。
 業界の意見を聞き、お客さん(利用者)の意見を聞き、経営者側も経営者と運転手の利害が一致する方向を模索し、その上で当局も規制に付いて見直す時期に既に来ていると考えるのである。

 そのうち、機会を設けて、具体的にどのような点を見直すべきか、考えてみたい。理想は、経営者側(新規参入者も含めて)、ドライバー側、利用者側のそれぞれの利害と安全・安心が一致することにあるはずだろう。

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タクシーエッセイ」カテゴリの記事

コメント

橋本竜太郎ではなく、龍太郎ですよね。
僕はねえたとえば吉祥寺の南口の駅前にいつも一台だけつけている練馬ナンバーのタクシードライバーとか、やはり下北沢の駅前で一台だけ客待ちしているドライバーの心理を考えますね。
常識から言ったらタクシー乗り場に順番につけるべきですよね。
どうしてもお客さんがほしいんでしょうね、タクシーが邪魔だとかそこまで考えないんでしょうかね。
団塊の世代がタクシー乗務員って、彼らは経済的にある程度たくわえがあるからわざわざ過酷な勤務をするとも思えない。
僕は規制緩和なら基本料金を自由にすること、タクシーの数を増やすのではなくお客さんのことを考えるならそれが一番と思う。

投稿: oki | 2006/05/07 22:48

oki さん、いきなりのコメントですね。
間違いの指摘、ありがとう。名前を間違えるのは情けない。ちょっと怒りがあって、慌てて書いてしまった。早速、訂正しておきました。

>団塊の世代がタクシー乗務員って、彼らは経済的にある程度たくわえがあるからわざわざ過酷な勤務をするとも思えない。

 そうなのです。この指摘を受けて、肝心の記述を漏らしていました。「団塊世代については、年金を受け取っているので、タクシーはアルバイト感覚で済むのだとも言っていた。だから、タクシーで何十万も稼ぐ必要がないのだとも。」という一文を加えました。これも堺屋氏が語っていました。もう、タクシーは(団塊世代の)定年後の仕事に相応しい業界となったとも。
 彼はタクシーという仕事の過酷な面をまるで実感も実態も知らないで、勝手で暢気な評論家の視点で考えているだけ。

 料金を自由にする。事故や違反(安全と安心)と背中合わせの仕事だということを考えると、必ずしも経済的合理性では済まないのではと思うのです。


投稿: やいっち | 2006/05/07 23:02

大雑把に読ませて頂き、大雑把に考えました。この種の規制緩和の思想には自由競争と自然淘汰があると思うのですが、業界だけでなくて、秩序が一度崩壊して仕舞わないと新生出来ないのではないでしょう。

特に注目に値するのは、高齢者の雇用としてこういった職業を考えるとなると、若者の雇用にも影響してきますね。誰もプロフェッショナルを目指さなくなる。現在は二級免許が必要十分条件ですか?そうなると、プロはプロでギルド式の職能組織を形成して対抗する必要があります。労働条件闘争だけでなくて、職能教育や地位向上から技能検定など自治組織の形成を疎かにして来たのではないかと思います。産業別組合などの問題は重々承知していますが、規制緩和には職業別組合などが必要とされる気がします。

ナヴィ頼りの運転手を認めるとしても、廉く能力の劣る運転手を増やすのは、特にアジアに圧倒的に多いお抱え運転手を含めて、交通の混乱を招く様な気がします。タクシーへの公共性の視点が欠落しているのではないでしょうか?

料金の自由化が一例で、利用者にサーヴィス・安全・快適などの選択の余地が無い限り、自由市場は成立しないでしょう。差異を明確にしていかないと。

投稿: pfaelzerwein | 2006/05/08 12:02

pfaelzerweinさん、タクシー(業界)のことに関心を持ってくれて嬉しいです。
あれこれ考える余地はたくさんありますね。

悲しいかな今のタクシー業界は若い人には魅力の薄いものになっている。余程好きでガッツがないとタクシーだけでは生活できない。そんな業界にしてしまったようですね。
一方、プロのドライバーとしての自覚も必ずしも持っているとはいえない面がある。ギルドとなるには、相当に技術的に経験的に優れていないと成り立たない。そんな業界にしようという意図は業界にも当局にもない。当局はリストラされた中高年の受け皿にちょうどいいという認識に留まっている。
その結果、事故が増え、病気や過労と戦かいつつ働く人が増え、お客さんもその影響を被る。重大事故がタクシー、バス、トラック業界に増えている惨状を当局は今頃になって焦っている。こうなるのは目に見えていたのに、対策は切羽詰ってからでないとしないという旧態依然たるもの。
今日の朝日新聞に「過労・飲酒を放置」していたら、「一発で営業停止」という記事が一面に載っていたけど、遅きに失している。その対策も夏からだって。
とにかく、役人は自分で現場で働くという実体験も感覚も共感する想像力も欠如している。堺屋氏も、タクシーやトラックなどの営業の実情を何も知らない。机上の空論を綺麗に描いているだけ。規制緩和を唱える連中は、ホント、<知識>人なんだね。
そうはいっても、業界としての取り組みが見えないのも情けないね。規制を旧に復することしか願っていないように見える。今の窮状をチャンスとしてタクシーは、実は将来に向けて可能性のある業界だという認識をもっと自信を持って取り組むべきだろう。
介護や医療が大事とされる時代にあって、タクシーは人が人を運ぶというマン・ツー・マンという凄い仕事なのだという認識を持つと、可能性はいろいろ生まれてくる。その努力を業界として率先して積むべき時なのでしょうね。
いざ、具体論となると難しいのは誰しも分かっているのでしょうが。

投稿: やいっち | 2006/05/08 19:48

やはりこれからは車椅子の人でも乗れる介護タクシーとか、救急車の機能を備えた民間救急タクシーとかそういう方面にタクシーも特化していかないとタクシー業界の未来はないでしょうね。
はっきり入って今の一律660円、個人タクシーは650円ですか、そんな風にみんな同じ値段なのか理解に苦しむ。
車椅子の人は公共交通を利用するのに不便があるし、消防庁の救急車も出ずっぱりで不足しているという。
タクシーがそういう側面をになえれば1000円、二千円と料金設定しても文句は来ないでしょう。
需要があるところにタクシーも進出しなければ未来はないというのが乱暴な僕の考えなのです。

投稿: oki | 2006/05/09 00:52

タクシーじゃないけれど、民間の救急車は既にありますね。これは資格か一定の訓練を経る必要があるみたい。

車椅子のまま乗降できる介護タクシーは既にあるようです。

救命の講習を受けたドライバーの運転するタクシーも走っています。車体の後部などに赤いステッカーが貼ってある。

実際、東京は地下鉄などが発達しているけれど、それでもタクシーを使う人が多い。それは階段があまりに多くて、地下鉄に乗るまでが大変で、足に不具合のある人は地下鉄を敬遠してしまうことがある。

タクシーのそうした福祉や介護の機能面を考えると、料金設定を自由化するのもいいけれど、安くある必要もある。
よって、小生は行政などとタイアップして、料金の半額などにして、その安くした分を行政などが負担するようにと考える。
現状でも福祉券とか身障者割引はあるけど、割り引いた分は会社や運転手の負担になるだけで、辛すぎる。

こうしたことも含めて、タクシーは高齢者や身障者に使いやすい条件を備えた可能性をもっと探ったほうがいいと考えるわけです。


投稿: やいっち | 2006/05/09 03:00

失礼ですが、業界以外の方は頓珍漢な意見が多いと思います。

東京ディズニーランド、美味しいラーメン屋、ケーキ屋、その他小売
→お客が行きたいと思って、そこへ行くのである。各店は積極的にサービスを模索し、できればテレビで紹介するくらいになればよい。

公衆便所、タクシー
→人は便所が良くて行くわけでなく、便意を催すから汚くても入るのである。タクシーも車で行かないと困難を伴うから、仕方なくバスより高い金出して乗るのである。決してタクシーが目的ではない。

私は、近くの有名ラーメン店やケーキ屋、整体院にタクシーで送っていった事はあるが、公衆便所まで、、とか、サービスのいい○○タクシーにこれから乗るから、、、と言って私のタクシーに乗ってきた例を知らない。あたりまえで、これらが目的地とはならないからだ。

結論。人々に行かせたくなる業種は、市場原理の自由競争やればよい。
公衆便所やタクシーは、わざわざ遠くから、それを目的として来ない以上、地域における適切な数合わせが必要である。
公衆便所を必要のない位、沢山増やして、「便利になった」というのと、タクシーを必要のない位増やして、「乗りやすくなった」と言っているのと同じである。ただし、どちらにせよ増やしすぎは「きれいな便所」「サービスの良いタクシー」を維持できるわけがないことは、自明の理である。

投稿: タクシードライバー | 2006/12/03 13:09

皆さんの勘違いは、「タクシー業界は苦しい」と思っていることです。タクシー業界は儲かっているから、車を増やせるんです。トヨタが好調だから、設備投資を増強するのと同じです。
苦しいのは単にタクシー運転手だけのことです。「タクシー業界の将来がない」とか言うのは、おかしなことで、一時間ワンメーターの客が一組だけ乗る条件で、既にタクシー会社はやっていける筈です。
(660-30)×0.5=315円 20時間勤務(一日に付き標準労働)6300円
★30は消費税。0.5は歩合(0.5は良い方です。うちは0.4)

どうです?6300円はレンタカー並みの収入をタクシー会社にもたらしているので、全然会社困らないです。
結論。「タクシー運転手の未来は歩合給である限り、無しである。」

投稿: タクシードライバー | 2006/12/03 13:19

タクシードライバーさん、コメント、ありがとう。
●おっしゃられるように、タクシーという仕事の弱点(?)は、サービスにあります。お客さんにサービスし、好印象を与えたからといって、そのお客さんが再度、乗っている可能性は皆無に近い(同じ会社のタクシーに乗ってくれる可能性は僅かにあるようだけど)。
つまり、サービスしてもそのタクシー会社の印象がアップする可能性があるだけなのです。
その点が、他の商店と同じですね(但し、長距離を走るお客さんは好印象を抱いたタクシードライバーを選ぶ可能性があるようです。個人タクシーなど)。

なので、サービスしても、見返りはない。その場限り。タクシー運賃だけの無償のサービス。サービスしても会社には都合がいいだけ。ドライバーが誰からも褒められるわけじゃない。
無論、誰彼に褒められようと思ってサービスしているわけじゃなく、人間として、社会人として当然の礼儀を尽くしているだけなのですが。
その意味で、逆に言うと、タクシーという仕事は最高のサービス業だと思います。
しかも、マン・ツー・マンという凄さ!

●また、おっしゃられるように、タクシー業界が苦しいといっても、不況になると(あるいは規制緩和でタクシー業界への参入が容易になり、タクシーの台数が増える=実質、タクシー業界にとっては逆風と同じ)、以前も書きましたが、悲しいことにタクシー会社とドライバーとは利害が一致しない事情が生まれる。
つまり、タクシーの会社はドライバー(の人数)さえ確保しておけば、日々、一定の現金が入る。だから、とにかくドライバーを増やそうとする。
当然、業界への新規参入もあるから、タクシーの台数、つまり、タクシードライバーが増えるわけで、そうすれば会社の経営は安泰するわけですが、一方、台数の増加の結果、(規制緩和や不況の)辛い皺寄せがドライバーを直撃するというわけです。
誤解のないように書いておくと、会社も(経営者や担当者によって違うけど)、個々のドライバーを大切にしようとする場合もあるわけで、ドライバーと会社の利害がどこまでもズレル、というわけではないのですが…。
まあ、せいぜい、仕事が終わって営業の窓口で売り上げを報告する際には、たまには「ご苦労さん」の一言くらいはあっていいと思うのですが、それも全くないのが現実です。
こんなところに会社側の(個々の運転手への関心はなくて、売り上げだけがナンボなのか、事故はなかったのかといった)本音が如実に現れるんですね。

投稿: やいっち | 2006/12/03 19:55

私は、もし利用客にとって、よい方向になるなら、今の規制緩和も良いと思います。しかし、歩合給のタクシー業界での規制緩和は、デメリットの方が、メリットを上回ると思います。
やいっちさんのご指摘のように、会社と運転手の利害が、完全に反比例させているのが、歩合給制という悪法です。固定給にすれば、全て会社と運転手の関係が一蓮托生の正比例関係になると思います。
業界は固定給にしない言い訳として、「サボる運転手がいると会社が赤字になるから、、、」と言うのですが、どこの会社でも管理職は、同じ問題を抱えているわけで、やる気を引き起こさせるのも管理職の勤めなのです。それに今はGPSがあるので、何処で何をやっているのかは、すぐに解るので、絶対に固定給にするべきです。こうすればタクシーは適正台数まで自然に減り、各種サービスをしないと会社が今度は本当に潰れる事になります。
今の歩合給のままで、一時間待ち、ワンメーターのお客一組乗せてれば、それでいいなど、この業界のずるさには、呆れるばかりです。
あと、求人広告。私も40万との事で、この業界に入りましたが、入ってみると40(フォーティ)じゃなくて14(フォーティーン)万円でした。決して笑い事でないですが、笑ってしまいます。(苦笑)このような嘘の土壌になっているのが、歩合給なのです。
あと新聞などは、タクシー業界の真実を伝えません。新聞広告を毎日載せている最大の顧客である、タクシー会社に触れることはタブーですから。

投稿: タクシードライバー | 2006/12/04 19:35

あとついでに「タクシー運転手の中で売り上げに差があるが、しっかり考えて運転している運転手がより多く稼いでいるから、運転手の中でも競争原理が働くので、歩合給は優れている。」という意見がありますが、私から見ると、こう主張する人は、この業界を知らない人です。
運転手にとって、駅でお客が乗ってきても、お迎えで迎えに行っても、一部の常連客を除いて、何処へ行くか解らないのです。
また、今日はイベントが何処であるとかを掴むと言う事も有りますが、それでも一組の客を送って、戻ってくるのには絶対時間がかかるので、他の運転手と差が大きく生まれません。
では、どうするか?稼いでいる運転手は、毎日深夜長距離のお客が当たるからです。でも、本来なら、長距離客に当たるのは確率論なんですが、稼ぐ運転手は、「殆ど毎日必ず当たる」というマジックを使うのです。マジックの種は、会社の電話番に賄賂をやることで、電話番も賄賂をくれた運転手には、稼ぎになるような上客を優先に廻し、儲からない客を賄賂を出さない真面目な運転手に廻すのです。
「深夜○○研究開発会社の○○さんは、いつも会社チケットで遠距離の○○まで、乗っていく。」という事を電話番は知っていて、廻すのです。まあ、そういうマジックがないと他の運転手より毎日稼げるわけないですが、、、。
少し前まで、若い女の子のドライバーいました。毎日物凄く稼ぐのです。(ベテランでもありえんくらい)もちろん、電話番にえさ(自分の体)を提供してました。もう結婚退職しましたけどね(笑)結婚資金を貯めていたのかな~(笑)

投稿: タクシードライバー | 2006/12/04 20:09

タクシードライバーさん、再度のコメント、ありがとう。
お知らせしたように、ブログ、10時からメンテナンスに入るので、今、きちんとした返事ができません。
業界のこと、詳しいようですね。
メンテナンスの終わる12月7日(木)15:00以降、記事の更新をします。
どうぞ、悪しからず。

投稿: やいっち | 2006/12/05 09:47

タクシードライバーさん、タクシー関連エッセイは下記であれこれ書いています:
http://blog.drecom.jp/ecchu/category_1/
http://atky.cocolog-nifty.com/bushou/cat1960814/index.html

投稿: やいっち | 2006/12/09 08:26

二十日夜のNHKテレビで「参入・増車制限で新制度」というニュースを見た。
ネットで関連情報を探したら、下記があった:
「2007/11/20-12:54 参入・増車制限で新制度=タクシー競争激化で、仙台は禁止へ-国交省」(時事ドットコム)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco&k=2007112000469
 国土交通省は20日、タクシーの競争激化を受けて、新規参入や台数増加を制限する新制度を導入し、札幌、旭川、仙台、長野、富山、広島の各地域を同日付で指定したと発表した。また、参入・増車を禁止する「緊急調整地域」の要件を緩めた上で、交通事故増加や運転手の労働条件悪化の傾向が強い仙台を来年1月に指定する。
 冬柴鉄三国交相は同日の閣議後記者会見で、「規制緩和の流れに逆行するのではなく、若干の見直しが必要と判断した」と説明した。
                     (以上、転記)
  === === === === === ===

本文にあるように、「札幌、旭川、仙台、長野、富山、広島の各地域」にて「新規参入や台数増加を制限する新制度を導入」される。

そう、小生の郷里の富山も、帰省の折にタクシーで駅から我が町まで行く。その際、ドライバーさんとお喋り。近況を聴く。口々に苦境を訴えていた。

ようやくのことで、遅きに失しているけれど、当然の流れだ。
この規制緩和は、タクシー業界での事例に見られるように、当の業界で働く労働者の現場を無視し、利用者や参入者の都合を優先している。タクシーという仕事の性質など何も知らない、机上の空論。
安ければいいって考え。
身を削って働いていることを知らない。
タクシードライバーのマナーの向上など、一定の効果はあったのかもしれないが、失ったもの犠牲になったものがあまりに多いし大きい。事故や病気で業界を去った人も多いと聴く。

投稿: やいっち | 2007/11/21 02:04

ようやく行政も重い腰をあげ始めるようだ。

「タクシー台数を再規制へ、規制緩和による供給過剰に歯止め 経済ニュース マネー・経済 YOMIURI ONLINE(読売新聞)」:
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20080702-OYT1T00873.htm
 国土交通省は2日、2002年の規制緩和で生じたタクシーの供給過剰に歯止めをかけるため、地域の実情に応じて新規参入や増車を再規制する方針を明らかにした。

 過当競争でタクシー会社の収益が悪化、運転手の収入減や事故増加といった弊害が目立つためだ。3日の作業部会で規制案を示し、年内に結論を得たうえで年明けの通常国会に道路運送法の改正案を提出する考えだ。

 規制案は、タクシー台数が増えている地域を対象に事前審査を厳格化し、新規参入や増車数を制限するなど緩やかな「需給調整」を行うことが柱だ。

 新制度は供給過剰の度合いに応じ、全国を〈1〉過剰が深刻な地域〈2〉過剰と見られる地域〈3〉問題のない地域――に3区分する。過剰が深刻な地域では減車を促す。それ以外の二つの区分は悪質業者の排除や運転手が過酷な労働を強いられない規制を設ける方針だ。

 法令違反を繰り返したり、運転手の待遇改善を実施しないタクシー会社には、減車を命じる新たな行政処分の導入も検討する。

(2008年7月3日03時01分 読売新聞)

投稿: やいっち | 2008/07/03 15:57

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